ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第58話~練習試合、終了です!~

『大洗女子学園の勝利!』

『『『『『『『『『『『……………』』』』』』』』』』』

 

大洗チームの勝利を告げるアナウンスが響き渡り、その場には暫くの静寂が流れる。

レッド・フラッグのメンバーは戦車から降り、黒煙を上げ、白旗が出ているチハと、同じく黒煙を上げていながらも、白旗は出ていないⅣ号を交互に見やる。

それは、中央部に固まっていた一行も戦車から降り、紅夜達と同じような反応をしている。

 

「わ、私達……………勝ったの……………?」

「そのようです…………」

 

Ⅳ号のハッチから外を見た沙織が呟き、華も唖然としながら返した。

 

「……………」

 

その様子を見ていた紅夜は静かに微笑み、IS-2の車内に戻ると、インカムを握って高らかに言った。

 

「やったぞ、お前等!俺等の勝ちだ!」

『『『『『『『『……………ヤッターーーッ!!』』』』』』』』

 

その通信を聞いた、あんこうチームからカモさんチームまでの、全てのチームのメンバーが歓声を上げる。

沙織と華、そして麻子の3人は、未だに自分達の勝利が信じられないとばかりに、口をあんぐりと開けている。

 

「あっ……………ああぁ…………」

 

装填手用のハッチから、黒煙を上げ、白旗が出ているチハを視界に捉えた優花里は、全身を小刻みに震わせている。

そして、キューボラから上半身を乗り出したみほの方へと向く。

 

「や……………やりましたね、西住殿!」

 

そう言うと、優花里はハッチから砲塔へと乗り移り、みほに抱きつく。

いきなり抱きつかれた事に、最初は戸惑いの表情を浮かべていたみほも、やがて自分達の状況を飲み込んだのか、優花里を抱き返した。

 

「友情だねぇ、青春だねぇ……………」

 

IS-2の砲身に腰掛け、抱き合って勝利を喜んでいる大洗チームのメンバーを見て、紅夜はそう呟く。

 

「おい、紅夜!大洗の連中労いに行こうって、静馬が言ってるぜ~!」

 

其所へ、ハッチから出てきた達哉が声を掛ける。

 

「ああ、悪いが先に行っててくれ。後から行く」

「あいよ!」

 

そうして、達哉達は大洗のメンバーへと駆け寄っていき、その場には、紅夜と3輌の戦車が残された。

砲身から地面へと降り、紅夜は、自らの愛車を真正面から見据える。

車体や、砲塔の側面にまで至る傷が、この場に駆けつけるまで何本もの木々を薙ぎ倒してきた事を感じさせる。

彼の愛車は、傷だらけになりながらも、堂々とした様子で佇んでいた。

 

「良く頑張ったな……………偉いぞ、我が愛車よ……………そして、お前等も、ご苦労さん」

 

IS-2のフェンダーを優しく撫で、それから他の2輌も同様にフェンダーを優しく撫でると、紅夜は達哉達と労い合っている大洗のメンバーの元へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

「これで、大洗女子学園と、知波単学園の練習試合を終わる……………一同、礼!」

『『『『『『『『『『ありがとうございました!!!』』』』』』』』』』

 

審判の号令で、両チームのメンバーが一斉に礼をする。

 

その後、回収車によって、今回の試合で使用された戦車が次々と回収され、其々の学園艦へと運ばれていく。

それからは、両チームのメンバー同士での交流が行われていた。

大洗チームでは唯一の日本戦車である八九式を使うアヒルさんチームには、知波単のメンバーの多くが群がっている。

達哉達ライトニングや静馬達レイガンのメンバーは、その知波単チームのメンバーの中に、彼等が現役時代に試合をした時のチームメイトが居たらしく、当時の礼を言われていた。

そのメンバーが思いの外多かったのか、たじたじになっている達哉達を遠巻きに見ながら、紅夜は夕焼けの空を見上げ、試合に勝ったと言う余韻に浸っていた。

 

「ふぅ……………現役時代の戦歴と合わせたら、これで45勝目か……………今のところ、連戦連勝負け無しだな。これを何時まで続けられるのやら……………」

 

そう呟いていると、其所へ絹代が近づいてきた。

 

「だ……………こ、紅夜さん」

 

絹代は一瞬、試合開始前までのように『旦那様』と言いそうになったのを何とか抑え、言い直す。

 

「お、おぅ……………やっと、その名前で読んでくれるようになったか………西さん」

 

絹代の方へと振り向いた紅夜は、未だにトラウマが消えていないのか、若干表情をひきつらせながら言った。

警戒心が残っている事を悟った絹代は、苦笑を浮かべた。

 

「あー……………やはり未だ、警戒されてますか?」

「そりゃまあな。だってあの時のお前さん、メッチャ恐かったんだぜ?いきなりキスされたり、抱きつかれたり、挙げ句の果てには『旦那様』呼ばわりされたり」

「よ、『呼ばわり』って……そんな人聞きの悪い言い方しないでください………」

 

即答で答えた紅夜に、絹代は若干咎めるような視線を送る。

その様子に、紅夜は今の絹代には海で遊んだ時のように誘惑してこないと悟り、次第に何時ものペースを取り戻していた。

普段通りにおちゃらけた謝罪をして、軽く笑う。

それにつられて、絹代も軽く笑う。

少し笑うと、絹代は真剣な面持ちで紅夜を見つめた。

 

「……………?どうした?」

「いえ………改めて、あの時のお礼を言いたいと思いまして……」

「お前等を助けた事か……………未だ気にしてたのか?別に忘れちまっても良かったのによぉ……………」

「いいえ、それは出来ません。やはり私達は、貴方に窮地を救ってもらったのですから、忘れる訳にはいきません」

「義理堅ェなぁ、お前は………良いんだか悪いんだか……」

 

そう言って、紅夜は苦笑を浮かべる。その苦笑は、何処と無く嬉しそうに見えた。

 

「さて、それじゃあそろそろ戻ろうぜ。アッチの方でも、そろそろ交流が終わりそうだ」

「ええ、そうしましょうか」

 

そう言って歩き出そうとする紅夜に、絹代は名残惜しそうに返事を返すと、先に歩き出した紅夜の隣に並び、メンバーの元へと戻っていった。

 

 

 

 

 

「ちょっと隊長!なぁに人の兄を独占しているんですか!?兄様と話したい事が一杯あったのに!」

「あ、ああ。すまないな、長門妹よ」

 

大洗チームと知波単チームのメンバーで交流が行われている場所へと戻ってくると、綾が絹代に詰め寄る。

 

「おい、綾。話ならラインや電話で幾らでも出来るんだから良いだろ?西さんに迷惑掛けちゃいけません」

「ちょっと兄様!隊長の肩持つの!?前までは名前聞いただけで取り乱しそうになるぐらいに怯えてたのに!!」

「今の西さんは安全だから良いの」

「どんな理屈よ、それは!?」

 

のんびりと構えて言う紅夜に、綾は堪らずツッコミを入れる。

 

「それよりも綾、お前五式戦車の車長になったんだな。ビックリだぜ」

 

紅夜は話題を変え、綾が五式戦車の車長になっている事についての話を切り出す。

すると、綾は得意そうに胸を張って言った。

 

「フフンッ!伊達に兄様のチームの練習についてったり、体験がてらに1日隊長やらせてもらったりしてないわ。今回はそれが生かされたわね」

「正にその通りだな、敵ながら天晴れだ」

「そうでしょう?もっと褒めてくれても良いのよ?」

「調子に乗りすぎるな」

「あいたっ」

 

紅夜が褒めると、天狗になったかのように得意気になる綾の頭に、紅夜はチョップを入れた。

 

「それじゃ、私はそろそろ移動車の方へ戻るわ。兄様、今度泊まりに行くから、その時はちゃんと準備しといてよね?」

「え?いやいや、泊まりに来るとか正気か?」

「勿論でしょ?………もっと話したかったのに……会えない間、私がどれだけ寂しい思いをしてきたと思ってるのよ………」

 

後半辺りから、綾の声は小さくなって紅夜の耳には届かなかったが、それはある意味、綾にとっての救いだった。

 

「と、兎に角!今度絶対に泊まりに行くわ!そのときは連絡するから、ちゃんと用意しておいてよね!」

 

そして綾は、顔を赤く染めながら走り去っていった。

 

「やれやれ、相変わらずよく分からん妹だこった………つーか、何が『兎に角』だよ……悪いな、西さん。彼奴、お前さんのチームで何か迷惑とか掛けてないか?」

「いいえ。彼女は五式戦車の車長として、頑張ってくれています」

「そっか………それなら良いんだがな」

 

紅夜の言葉に絹代が微笑んで返すと、紅夜の表情にも笑みが戻る。

 

「妹さんにも好かれるなんて……………恋敵は多いですね……………」

「ん?何か言ったか?」

「い、いえ!何も!」

「そっか……………まぁ良いか」

 

基本的に、あまり細かい事は気にしない性分である紅夜は、絹代の言葉をあっさりと信じて気にしない事にした。

 

「さて、そろそろ戻ろうぜ。アッチの方でも、そろそろ交流が終わりそうだ」

 

そう言って、紅夜は先に歩き出そうとするが、それを絹代が呼び止める。

 

「あの、紅夜さん……」

「ん?」

 

紅夜が振り向くと、絹代がスマホを取り出し、顔を赤くしながら近づいてきた。

 

「よ、良かったら………アドレスの交換を……」

「ああ、別に良いぜ」

「あ、ありがとうございます!」

紅夜は何の抵抗も無く、あっさりと承諾し、絹代は花が咲いたような笑みを浮かべる。

そして、互いのアドレスが電話帳に登録されると、ラインにも、其々が登録される。

 

「それではまた、連絡しますね」

 

嬉しそうにスマホを胸に当てた絹代が、顔を赤くしながら言う。

 

「あいよ、何時でもしてこい」

「はい!」

そんな会話を交わし、すっかり和解した2人は其々のチームのメンバーの元へと戻っていった。

そして別れの挨拶を終え、其々のチームが学園艦に乗り込んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー、今回の練習試合では、本当にご苦労であった」

 

学園に戻ってくると、メンバーの前に生徒会メンバーの3人が立ち、桃が代表して言う。

 

「今回の試合で勝利出来たのは、諸君等の頑張りと、ライトニングとスモーキーの2チームによる活躍あってのものだと思う」

 

桃がそう言うと、メンバーは嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「だが、油断は禁物だ。何せ今回の練習試合では全チームが参加出来たが、準決勝ではレッド・フラッグの参加チームが2チームに減らされる。今回のようにはならないと思え」

 

そして、桃は一呼吸の間を空けて言った。

 

「準決勝の対戦相手は、プラウダ高校だ、心してかかるように……………では、解散!」

 

そうして、メンバーは其々の家路につく。

紅夜も帰宅し、家に着くと、夕食などを済ませ、部屋のベッドに潜って眠りについた。

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