ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第64話~準決勝、始まります!~

カチューシャの失言によって紅夜が怒り狂い、その場で暴力騒ぎが起こりそうになると言う、プラウダ高校とのいざこざも何とか解決し、大洗チームでは作戦会議が行われていた。

 

「兎に角、相手の部隊規模や戦術に呑まれないよう、落ち着いて行動するようにしてください」

 

集まったメンバーの前で、真面目な面持ちのみほが作戦を伝える。

 

「プラウダは引いてから反撃すると言う戦法を得意としていますので、仮に此方が有利になる時があっても、そこでさらに踏み込むなどの行動は控えるようにしてください。フラッグ車を守りつつゆっくり前進して、先ずは相手の出方を見る事から始めましょう」

「それが妥当だな。現役時代でもそれっぽいやり方してきやがったし……………迂闊に踏み込んだらあっさりと潰される」

 

みほの言葉に、紅夜は自らの体験を混ぜて賛同する。

 

「でも、それから紅夜達ライトニングが大暴れして、敵を全滅させたんじゃない。あの時の車長、悔しさやら恐ろしさやらで泣いてたわよ?『たった1輌の戦車にやられた~』とか叫びながら」

 

静馬はそう言って、当時の事を思い出したのかクスクスと笑っている。

その光景に、大洗チームのメンバーは改めて、紅夜達レッド・フラッグが自分達の味方である事に感謝した。

もし彼等が敵だったら、後はどうなるのか考えたくもない。

 

「ま、まぁ……………ジェノサイドの意見もあるのだが……………」

 

其所へ、カバさんチームのエルヴィンが話を切り出し、メンバーの視線が彼女に向けられる。

 

「ゆっくり進むのも確かに良いとは思うが、此処は一気に攻めると言うのは如何だろうか?」

「えっ?」

みほの考えた作戦とは全くもって対をなす発言に、みほは戸惑いを見せる。

 

「うむ」

「妙案だな」

「先手必勝ぜよ」

 

そんな中で、おりょう、左衛門佐、カエサルの3人がエルヴィンの案に賛同する声を上げる。

 

「おいおいカバさんチームの皆。気持ちは分かるが、もう少しリスクと言うのをだな……」

 

実際にプラウダの同好会チームとの試合を経験している紅夜は、エルヴィン達にリスクを考えるようにと促すが……………

 

「そんなの大丈夫ですよ!」

「私もそう思います!」

「こう言うのは勢いが大事です!」

「此処は是非、我々のクイックアタックで!」

 

紅夜の言葉を遮り、アヒルさんチームのメンバーが声を上げる。

 

「ちょっと貴女達、さっきの西住さんや紅夜の話を聞いてたの?実際に連中の戦法を知ってるのが此処に10人、観客席に行ったスモーキーのメンバーも合わせれば、15人も居るのよ?もう少し考えてからものを言いなさい」

 

厳しそうな表情を浮かべ、静馬は口を挟む。それは経験者だからこそ出来る表情であるのだが……………

 

「そんなの大丈夫ですってば!」

「それに私達だって、曲りなりにも準決勝までやって来られたんですし、このまま行けます!」

「うんうん!負ける気がしません!」

「それに敵は、私達の事を完全にナメてましたし、さっき長門先輩にあれだけ怒られたんだから、絶対怯えてますよ!」

「一気に攻め込んで、ギャフンと言わせてやりましょうよ!」

 

ウサギさんチームからも、そんな声が上がる。

 

「確かに勢いも大事だし、試合が長引けば相手が有利になるだけですからね……………」

「ああ、私も同感だな」

「こりゃ、一気にやる以外に無いねぇ~」

 

おまけに、生徒会メンバーの3人も彼女等の意見に賛同しており、現在、みほの考えた作戦に賛同しているのはレッド・フラッグのメンバーのみとなっていた。

 

「………はぁ……手に負えないわ」

 

溜め息をつき、疲れた様子で静馬は言うと、紅夜の元へと下がる。

 

「……………分かりました、一気に攻めましょう」

『『『『『ええっ!?』』』』』

 

そんな時、みほが作戦を変え、エルヴィンが提案した作戦へと変更し、それを聞いたレッド・フラッグのメンバーが驚愕の表情を浮かべる。

 

「ちょい西住さん、本気か?未だ早まる時じゃねえぞ?」

「そ、そうだよ西住さん。慎重に行く作戦じゃなかったの?」

「考え直した方が良いんじゃない?」

 

達哉、雅、千早の3人が詰め寄り、あんこうチームのメンバーが相槌を打つものの、みほは答えを変えなかった。

 

「小山先輩の言う通り、この戦いが長引けば、雪上での試合に慣れてる相手側の方が有利になる……………それに、皆がこんなにも勢い付いてるんだし……………」

「私達はそんなのを気にしてるんじゃなくてね!」

「雅、止めろ」

 

口調を荒げそうになった雅を、紅夜は落ち着かせる。

そして、そのままみほへと向き、見据える。

 

「……………本当に、それで良いんだな?」

 

その言葉に、みほはゆっくりと頷いた。

 

「……………分かった。お前がそうするってんなら、俺等はそれに従うよ」

「紅夜!?」

 

紅夜の言葉に、雅が声を上げる。

だが、紅夜に鋭い目を向けられ、何も言えなくなる。

 

「隊長がこうだって言うなら、俺等は従うまでだ」

 

紅夜はそう言い聞かせ、達哉の元へと歩き出そうとするが、その際、雅に耳打ちした。

 

「実際に連中のやり方を体験させりゃ、大洗の奴等も気づくだろ」

「ッ!成る程、そう言う事か……………了解。にしても、中々嫌なやり方考え付いたね」

 

からかうように言う雅に、紅夜は苦笑を返す。

 

「まぁ、孫子もこう言ったモンだしね。『兵は拙速になるを聞くも、未だ巧の久しきを観ず』……………ダラダラ戦うのは国家国民のために良くない。チャッチャと集中してやるのが良いってコト。ね?西住ちゃん」

 

そう言って、杏がみほにウインクする、

それを見たみほは頷き、再びメンバーへと向き直った。

 

「では皆さん!相手は強敵ですが、頑張りましょう!」

『『『『『『『『『『オオーーーーーッ!!!』』』』』』』』』』』

 

みほの言葉に、レッド・フラッグのメンバーを除く大洗のメンバーは拳を突き上げる。

紅夜達も顔を見合わせ、戦前の誓いを行う。

スモーキーが居なくても、戦前の誓いを行う彼等からは、かつて『伝説のチーム』とさえ呼ばれた《RED FLAG》の覇気が溢れ出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、観客席近くの小高い丘の上では……………

 

「この寒さに、プラウダよりも数が劣っている状態で、大洗はどうやって勝つつもりでしょうか……………」

 

丘の上に陣取っている聖グロリアーナの1人、オレンジペコが、エキシビジョンに映し出される大洗の様子を見て心配そうに言う。

その直ぐ横で紅茶を飲んでいたダージリンは、落ち着き払った様子で言った。

 

「確かに大洗は、数や練度の質ではプラウダより遥かに劣っている……………でも、そんなハンデを覆してくるのが彼女等よ。それに、『彼等』も居るから尚更ね」

 

そう言って、ダージリンはIS-2に乗り込んでいる紅夜を見る。

「追い詰められてからの爆発力……………大洗は其所が恐ろしいの。それに、『彼等』と言う起爆剤や火薬などがてんこ盛りな存在が居るんだもの。ある意味今回の大洗は、核兵器よりも恐ろしいわ」

 

そう言って、ダージリンは微笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁーて、ガキ共はどんな試合を見せてくれるのかねぇ~」

 

観客席へとやって来た蓮斗は、観客用に用意された椅子に腰掛け、エキシビジョンを見ていた。

黒髪に蒼い瞳を除けば紅夜と瓜二つであるその容姿や、今は紅夜達レッド・フラッグの男子ぐらいしか着ていない、『パンツァージャケットに身を包んでいる』姿は、観客の視線を引き付けているのだが、当の本人は全く気にしていない。

 

そんな時だった……………

 

「紅夜……お兄ちゃん……?」

 

そんな控えめな声が後ろから聞こえ、蓮斗は声の主へと振り向く。

其所に居たのは、紅夜から譲り受けたボコの縫いぐるみを抱えた愛里寿だった。

 

「あ、違った………ごめんなさい……」

「別に良いって、気にすんな」

 

謝る愛里寿に、蓮斗は手をヒラヒラ振りながら返した。

 

「それよかお前さん、紅夜と知り合いなのか?」

「うん。大洗の学園艦で迷子になってたのを助けてくれた」

 

蓮斗の質問に、愛里寿はそう返す。

 

「愛里寿~!」

 

其所へ、愛里寿の母--千代--が合流した。

 

「もう、目を離したら直ぐに居なくなるんだから……………」

「うぅ………ごめんなさい……」

 

呆れたように言う千代に、愛里寿はシュンと俯く。

 

「まあまあ母親さん、そう怒ってやるな。そんだけ紅夜が好きなんだろうよ、この子は」

「は、はあ……………」

 

陽気に言う蓮斗に戸惑いつつ、千代は蓮斗の隣に座っている愛里寿の隣に腰かけた。

 

「ところで、紅夜お兄ちゃんとはどんな関係なの……………?」

 

突然、愛里寿は蓮斗にそんな質問を投げ掛けた。

 

「んー?俺と彼奴か?そうだなぁ……………」

 

そう言って、蓮斗は暫く悩むようなポーズを見せた後、軽く微笑んで言った。

 

「『戦車道で同じ夢を見ていた、2人の戦車乗り』……………ってヤツかな」

「同じ……………夢?」

「因みに、どのような夢なの?」

 

愛里寿の言葉に、千代が続く。

 

「今は……………否、昔から、戦車道ってのは女だけの武道だった……………だが、それに俺は、どうしても納得出来なかった……………『戦車道を通じて、女が何かを見つけられたなら、男にも見つけられるんじゃねえのか』って……………そう思ったんだよ……………そんな思いから生まれた夢さ」

「つまり、『男でも戦車道が出来る世の中にする』……………と言う事?」

「まっ、簡単に言っちまえばそうだな」

 

千代が話を纏めると、蓮斗はそう言って返す。

 

「だがまぁ、その夢を達成する事無く、俺は……………」

「「……………?」」

 

口ごもってしまった蓮斗に、2人は首を傾げる。

 

「いや、何でもない」

 

そう言って、蓮斗は『雄叫びを上げる白虎が描かれた帽子』をかぶり直した。

 

「あ、それとだがお嬢ちゃん。紅夜を狙ってるなら、早めに取っ捕まえといた方が良いぜ?前なんざ紅夜の奴、大洗の子と仲良く下校デートしてやがったからな」

「むぅ……………その人、ズルい」

 

そう言って、愛里寿はボコの縫いぐるみを強く抱き締め、頬を膨らませる。

その様子を見て、蓮斗は可笑しそうに笑っていた。

 

「彼奴、人気者だなぁ。やっぱこの世に留まっといて良かったぜ」

 

蓮斗はそう呟き、席を立ち上がった。

 

「んじゃ、俺ちょっとばかり用事思い出したからおいとまするぜ。紅夜に会ったら、よろしく言っといてくれや……………んじゃな」

そう言って、蓮斗はその場を立ち去った。

愛里寿はボコの縫いぐるみを左手に抱き、右手を小さく振っている。

 

「不思議な青年ね……………ん?」

 

その後ろ姿を見ていた千代は、怪訝そうに目を細めた。

 

「《白虎隊》……………?そう言えば、あんなのが描かれたパンツァージャケットを着ている学校や同好会チームなんて、あったかしら?それに、さっき彼は、『戦車乗り』を自称していた……………紅夜君もそうだけど、彼は一体、何者なの……………?」

 

そう呟きながら、千代は再び蓮斗の姿を探す。だが、その姿はまるで、『最初から、その場に居なかったかのように』消えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「大洗、勝てるのかねぇ~?」

「さあ、どうでしょうね……………少なくともそれは、試合が終わらなければ分からない事よ」

 

自販機で買ったものと思わしきコーンスープの缶を片手に呟く大河に、深雪がそう言う。

新羅や煌牙、千早の3人は、彼等2人の直ぐ前の椅子に座り、談笑している。

 

「それにしても、彼処で紅夜が暴れなかったのは奇跡ね……………」

「ああ。下手したらカチューシャさんとやら、紅夜になぶり殺しにされてたかもしれねえからな……………まぁ、流石に人ブッ殺すような真似するような奴じゃねぇが、あんなにもぶちギレたんだ。落ち着いたように見えても、内心では未だ荒れ模様かもな……………」

 

そう言う大河に、深雪が返した。

 

「ええ、恐らくはそうでしょうね。紅夜って、仲間や仲間の頑張りを侮辱する者を本気で嫌ってるから……………あのカチューシャさんからの言葉への仕返しとばかりに、プラウダの戦車隊に突っ込んで行って、其所でプラウダの戦車がボロボロになるまで徹底的に暴れる、なんて事が起こらなければ良いのだけど……………」

「ソイツは保証されねえだろうな……………」

 

大河がそう言うと、深雪はヤレヤレと言わんばかりに溜め息をつく。

 

「おろ?あれって俺等が現役の頃に最後に戦ったチームの隊長さんじゃね?」

 

そんな時、煌牙が左を向いて言う。

スモーキーのメンバー全員が目を向けると、彼等から大した間を空けない所に、黒森峰の制服に身を包んだまほと、黒いスーツ姿であるまほとみほの母親--西住 しほ--の姿があった。

そのさらに奥には、華の母親--百合--や新三郎の姿もあった。

 

「結構来てるんだなぁ……………」

「そりゃそうでしょう。準決勝なんだから、嫌でも人は集まるし、注目するわよ」

 

どうでも良さそうに呟く新羅に千早がツッコミを入れる。

 

そして暫くの時間が流れ……………

 

《試合、開始!》

 

試合の開始を告げるアナウンスが会場一帯に響き渡り、両チームの戦車隊が一斉に動き出すのであった。

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