ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第2話~茶髪少女、助けます!~

その日の夕方……………

 

「あら、紅夜じゃない。奇遇ね」

「おお静馬、今帰りか?」

「ええ、ちょっと終学活が長引いちゃったのよ。はぁ~あ、早く終わってほしかったわ」

「おいおい静馬、学校ってのは普通、4時ぐらいに終わるモンだろ?今昼の3時だぜ?」

「それでもよ。今日は6限目がカットされる日なのだけど、集会とかが入って面倒だったのよ。全く……………せっかく早く帰れると思ってたのに……………」

 

紅夜は家に帰る途中、気だるげに下校している静馬に会っていた。

静馬は当然ながら、大洗女子学園の制服を着ているのだが、彼女の容姿が大人に近いため、紅夜は制服姿の静馬は似合わないと、心の中で思っていた。

 

「それにしても紅夜、ごめんなさいね。今日行けなくて」

 

すまなさそうに言う静馬に、紅夜は笑って手を降った。

 

「別に構わねえよ、学校優先だから気にすんな。土日に来れば良いさ……………それよか、他の連中はどうした?何時もは一緒に帰ってるだろ?」

「何時もはね……………でも、今日は皆、先に帰っちゃったわ。ものの見事に置いてきぼりを喰らったわよ」

 

 

それから2人は、今日あった事について話し合っていた。

紅夜の話は、静馬曰く何時もの事らしく、特に紅夜が言わなくても、大体何があったのかの察しはつくようだ。

それに対して、とある事情から高校生活と言うものを味わえない男子陣の1人である紅夜からすれば、たとえ女子校でも、高校生活と言うものには興味があるため、静馬の話は彼からすれば、非常に新鮮なものだった。

 

「ああそうそう、今日は転校生が来たのよ。黒森峰から」

 

そう静馬が言うと、紅夜は目を丸くした。

 

「へぇー、あの黒森峰から?マジで?」

「ええ、大マジよ。聞いた時にはビックリしたわ」

 

信じられないとばかりに聞き返す紅夜に、静馬は笑いながらそう答えた。

 

 

 

 

 

黒森峰女学園とは、戦車道において、ドイツ戦車の中でも非常に有名且つ強力な戦車を持つばかりか、戦車道において古い歴史を持ち、今では最早、戦車道の顔とも言われている流派--西住流--の家元の学校であり、戦車道全国大会で9連覇したと言う事で、世界的にも知られている戦車道名門校だ。

だが、昨年の全国大会はとある出来事により、決勝戦でロシア戦車を使うプラウダ高校に敗れ、10連覇を逃していると言う。

 

そして黒森峰は、紅夜達レッド・フラッグが戦車道同好会チームとして最後に戦い、その試合でレッド・フラッグに破れた学校でもある。

 

「黒森峰かぁ……………………あの時の子は元気にしてるかなぁ………………?」

「さあ、どうかしらね?それにしても、あの時は本気で驚いたわよ?貴方のIS-2の砲撃を喰らった戦車から火災が発生して、貴方が火の中に飛び込んで、取り残された乗員の子2人を助け出したって言うんだもの。まあ、そのうち1人は別みたいだけど」

「ああ、それな」

 

紅夜と静馬は、その時の試合について一通り話すと、それからは口を閉じて歩く。

 

すると、黒森峰から転校してきたという転校生の事を思い出した紅夜が、思い出したかのように言った。

 

「それにしても、黒森峰って戦車道全国大会で9連覇したって言う超名門校なんだろ?そんなトコに通ってるエリートの子が、こんな大して何も無い所に何の用だ?」

 

紅夜がそう呟くと、静馬がジト目で睨み付けた。

 

「紅夜、それは私達大洗女子学園や、他の生徒達に喧嘩を売っているのかしら?特にこれと言った取り柄が無いからって、そこまで言われたら流石の私も黙っていないわよ?」

「悪い悪い、冗談だよ」

 

紅夜は、自分の呟きに怒って拳を振り上げている静馬を落ち着かせる。

 

「でもまあ、こう言ったものの、はっきり言えば私も気になるわね。転校するなら、もっと良い高校があると思うのだけど………」

 

振り上げていた拳を下ろした静馬が手を顎に当てて言う。

 

「まあ、それには話せない事情ってのがあるんだろうよ。少なくとも、その理由を本人に聞くとかは止めとけよ?聞かれたくない事だってあるんだからな」

「そうね、そうするわ」

 

そうしているうちに、2人はとある交差点に来ていた。

 

「じゃあね」

「ああ、学校頑張れよ」

 

そう挨拶を交わし、紅夜は直ぐ近くの家に着いた。

 

「はあ~あ、やっぱ戦車乗り回すだけってのは退屈だな…………まあ、だからと言って、もう表舞台には出ねえけど」

 

そう呟きながら、紅夜は鍵を開け、中に入っていった。

そしてそれからは、思い思いに過ごすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、大洗女子学園の学生寮の部屋では、1人の少女が居た。

電気の消え、夕日が僅かに射し込む程度の薄暗い部屋で、山積みにされた荷物を見ながら……………

 

「この大洗女子学園なら、戦車道は無い…………もう私は、戦車になんか…………ッ!」

 

そう呟きながら、その少女--西住 みほ(にしずみ みほ)--は、昨日の全国大会での出来事と、その後の出来事を思い出し、部屋のベッドに腰かける。

それから暫く、そのままベッドの上で膝を抱えていた。

 

「あ…………荷物出さなきゃ…………それに、買い物とかもしなきゃ………………まあ、それは土曜日でいっか………………」

 

そう呟きながら、みほは山積みにされた段ボール箱を開け、荷物の整理を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、今日はどうするかねぇ~」

土曜日の朝、集まりの無い日に外に出た紅夜は、家の回りを散歩しながら、今日と言う日に何をするかを考えていた。

基本的に、集まりの無い日は退屈している彼からすれば、学校に通うと言うのは羨ましい事である。

そう考えつつも、紅夜の足が止まることはない。

紅夜はその日の午前中は、今日1日の予定を考えながらの散歩だけで潰れてしまったという。

 

 

 

 

 

 

「結局、何も思い付かずに歩き回ってたらコレだよ………」

 

その日の夕方、結局何かをすることなく1日を終えようとしている紅夜は、溜め息をつきながら家路につき、交差点に差し掛かっていた。

 

「お、コンビニか………適当に雑誌でも買って…………ん?」

 

紅夜は、自分の直ぐ前を歩いている1人の茶髪の少女を視界に捉えた。

普段ならそのまま、何事もなかったかのように無視するのだが、今回は違った。

 

「(あの子、歩き方からして上の空状態で歩いているな…………信号が赤に変わるのはもうすぐだぜ?)」

 

そう思いながら足を止める紅夜を余所に、その少女は信号を渡ろうとする。だが、歩行者用の信号は既に、青から赤に変わる寸前だ。

 

「おい、其所の茶髪のアンタ!あぶねえぞ、止まれ!」

「えっ!?」

 

紅夜が叫んだが、それは手遅れだった。少女は道路の真ん中へと踏み出していたのだ。

少女は信号に気づいたが時既に遅し。信号が赤に変わると、少女の横からスピードを出したセダン車が突っ込んできていた。

 

そのセダン車はけたたましくクラクションを鳴らす。

 

「おい逃げろ!轢かれるぞ!!」

「!? きゃぁぁああああっ!!!」

 

突っ込んでくる車に気づいたものの、少女は悲鳴を上げて立ち尽くす。

 

「あークソッ!呼び止めた俺も悪いけど彼奴も彼奴だな!ボーッとしながら歩きやがって!」

 

そう口悪く毒づきながらも、紅夜は勢い良く飛び出し、少女を横抱きに抱えると、そのまま着地云々に構うことなく、反対側の歩道へと転がった。

勿論、その少女を庇うようにして、自分が下敷きになると言うのも忘れてはいない。

そして紅夜は、その少女を抱き締めたまま、歩道に背中から叩きつけられた。

 

「あーイテェ………この痛さは、翔にスパナで頭殴られた時以来だぜ………つーかあのセダン、何も言わずにどっか行きやがったか……………まあ、別に気にしねえけどさ、轢かれてねえし」

 

そう呟きながら、紅夜は抱き抱えている少女の方へと視線を向けた。

「おいアンタ、怪我はないか?」

「う、ううん………………ッ!?」

 

目を閉じていた少女は、視界に紅夜の顔を捉えた瞬間、顔を真っ赤に染め上げ、直ぐ様に離れた。

 

「あ、あああの!?」

 

紅夜は何も言わずに立ち上がると、服や腕についた汚れを払う。そして少女の方を向いて言った。

 

「その様子を見る限りでは、怪我はなかったんだな…………」

「あっ……………は、ハイ!」

 

その返事を聞いた紅夜は、安堵の溜め息をついた。

 

「まあ、アンタが無事で良かったよ。それに悪かったな、変に呼び止めて危ない目に遭わせそうになって……………だが、流石に上の空で外出歩くってのは止めとけ。今みたいになるぜ?」

「あ、ハイ!ありがとうございました!!」

 

そう言って、その少女は深々と頭を下げた。

 

「別に良いさ。んじゃな、気を付けろよ~」

 

紅夜はそう言うと、コンビニへと向かった。

 

「えっ…………あ、あの!?」

 

少女は紅夜を呼び止めようとしたが、紅夜は既に、コンビニへと入っていた。

 

そしてその少女は、コンビニで戦車道の雑誌をどうでも良さそうに読んでいる紅夜を見ながら、彼女の家路についた。

 

 

 

 

それから約10分後、紅夜は雑誌を買って家に帰ると、ベッドの上で雑誌を広げ、そこからは何時ものように、のんびりと過ごすのであった。

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