ガールズ&パンツァー~RED FLAG~   作:弐式水戦

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第66話~絶体絶命へのカウントダウンです!~

プラウダチームの戦車隊が動き出そうとしている中、みほ達大洗チームは進撃を続けていた。

 

「やっぱ、雪積もってるなぁ……………」

 

周囲を見渡せば、大洗の戦車とレイガンのパンター以外には、雪で真っ白になっただけと言う世界を見渡し、紅夜はそんな事を呟いた。

 

「そりゃあ北緯50度越えてるからなぁ~、雪ぐらい積もってても、何の不思議もねえだろうよ」

 

何時でも砲弾を装填出来るよう、弾薬庫から砲弾を取り出して構えている勘助が、軽く笑いながら言った。

 

「分かってるんだけどさぁ……………こんなにも辺り一面雪だらけの世界なんて、大洗の学園艦じゃ殆んど見ねえじゃん?まあ、別に見た事が無いって訳じゃあないんだけどさ」

 

勘助が言った事に、紅夜も笑いながら言葉を返す。

 

「雪景色なんて、スキー場行けば幾らでも見れるぜ?」

「ソイツは人工の雪だから却下」

「そっか」

 

話を聞いていた達哉の提案は、紅夜によってあっさりと却下されてしまった。

 

 

そうして暫く進んでいると、一行は降り積もった雪によって出来た、巨大な雪の壁と出会した。

 

「雪の壁か、見るのは久し振りだな……………チームが同好会リストから除名された辺りに、オッチャンとプラウダの学園艦に、除雪作業のアルバイトしに行ったのを思い出すなぁ」

「んで、其所に除雪用のシャベル置き忘れてきたんだっけな?あれIS-2に付けてたヤツだってのによ」

「それについては悪かったっての」

 

紅夜達ライトニングで、そんな会話が交わされている中、あんこうチームでは……………

 

「華さん、前の雪を榴弾で撃ってくれる?」

「分かりました」

 

みほの指示に華が答えると、優花里がすかさず、榴弾を装填する。

華が引き金を引くと、激しいマズルフラッシュと共に撃ち出された榴弾は、前方の雪の壁へと吸い込まれていき、一瞬、その雪の壁にめり込んだかと思えば爆発して雪の壁を粉微塵に吹き飛ばし、大洗の戦車隊が通れる程度の道が出来た。

 

その道から、大洗の戦車隊が進撃を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奥様!撃ったのはお嬢ですよ!」

 

その様子を観客席から見ていた新三郎は興奮気味に言い、拍手を送る。

 

「華を活ける手で、あんな事を……………」

 

だが、未だに華が戦車道を続けていると言う事を認めていない百合は、渋い顔をしながら溜め息をつく。

 

「……………せっかく此処まで来たんですから、応援して差し上げてください」

 

その様子を見た新三郎は、何とも言えなさそうな気持ちを押し殺して笑みを作ると、百合に応援するように促すが、百合の方は相変わらず、溜め息をつくばかりであった。

 

 

「雪の壁を榴弾で吹き飛ばす、か……………まあ、大概の連中ならやるだろうな」

 

2人のやり取りを、若干遠めの場所から見ていた蓮斗は、2人へと向けていた目線を、スクリーンに映る大洗チームへと向け直した。

 

「それにしても、プラウダねぇ……………確か、去年黒森峰を破ったって連中だったな」

 

そう呟き、蓮斗はかぶっていた帽子を脱ぐと、右手の人差し指でクルクルと回す。

 

「にしても、試合開始前の紅夜の怒りっぷりは凄かったなぁ。突風が此処まで来やがったし、近くにあった自販機のゴミ箱引っくり返してたからなぁ……………」

 

そう言って、蓮斗は笑みを浮かべながら柵に凭れ掛かると、スクリーンに映し出される大洗チームを見る。

 

「さてと……………そんじゃ、大洗のガキ共の頑張りを見つつ、もう少しこの辺を散歩してみるかね」

 

そうして、蓮斗はその場を後にし、観客用エリアを柵に沿って歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

視点を戻し、大洗チーム。

雪の壁を榴弾で吹き飛ばし、先へと進む一行は、景色が殆んど変わらない雪原地帯を進撃していた。

 

「……………ッ!敵、発見しました!」

 

そんな時、パンターのキューボラから上半身を乗り出し、双眼鏡で前方の警戒をしていた静馬がそう叫び、それを聞いたみほも、すかさず双眼鏡を取り出し前方を見やる。

彼女等の視線の先には、3輌のT-34/76が横1列に並んでいた。

 

「11時の方向に敵戦車の姿を確認、各車警戒!」

 

無線機に向かってみほが叫ぶと、アヒルさんチームの八九式を守るようにして、他の戦車が展開する。

 

「相手は3輌だけ………外郭防衛線かな……?」

 

みほが呟いた瞬間、相手のT-34が発砲し、その砲弾が大洗の戦車の周りに着弾した。

 

「気づかれた!長砲身になったのを活かすのは今かも!」

 

みほはそう呟き、車内に引っ込む。

 

「華さん、左端の1輌を狙って。カバさんチームは、真ん中の1輌に攻撃してください」

 

みほの指示を受け、華はスコープを覗きながら照準を合わせ、既に狙いを定めていたカバさんチームのⅢ突が砲撃を仕掛け、みほの指示通りに真ん中のT-34を撃破する。

 

「あんこうチームも攻撃します!」

 

そうしてⅣ号も砲撃を仕掛け、左端に居たT-34を撃破する。

 

「ほう……………」

 

キューボラ様子を見ていた紅夜は、感嘆の溜め息をついた。

 

「命中しました!」

「凄~い!一気に2輌も撃破出来るなんて!」

 

万が一に備え、次の砲弾を取り出していた優花里が命中を告げ、沙織は此方が先に、敵戦車を2輌も撃破すると言う先制点を取れた事に喜びの声を上げる。

 

「やった!敵の鼻を明かしてやったぞ!」

 

それを見ていたアヒルさんチームの典子は、嬉しそうに言った。

 

「昨年度優勝校の戦車を撃破したぞ!」

「時代は我等に味方している!」

 

カバさんチームのエルヴィンとカエサルも、自信に満ち溢れた声を上げる。

 

「試合開始から、此方が先制点を取れるとは……………これは行けるかもしれん!否、絶対に行ける!」

「この勢いでGoGoだねぇ!」

 

カメさんチームの桃と杏も歓声を上げ、自分達の優勢を確信したような表情を浮かべている。

 

「あーあー、皆して調子に乗っちゃってまぁ……………」

「仕方無いんじゃないの?何だかんだ言っても、相手は去年の全国大会での優勝校。そんな学校の戦車を、此方が先に2輌も撃破出来たんだもの。元々、戦車道初心者な彼女等からすれば、ある意味であれは、当然の反応と言った感じかしらね……………」

 

歓声を上げている大洗チームを見ながら、紅夜が呆れたように呟くと、IS-2の直ぐ隣にやって来たパンターのキューボラから上半身を乗り出した静馬が言った。

 

「ロシアのT-34を撃破出来るなんて、これは凄い事ですよ!」

「……………」

 

優花里が興奮して言うが、みほは難しそうな表情を浮かべ、ただ黙っていた。

 

「……………?」

「どうしたの?」

その様子を不思議に思った優花里が首を傾げ、沙織が訊ねる。

 

「何だか、上手く行きすぎてる……………」

 

みほがそう呟いた瞬間、1発の砲弾が撃ち込まれる。

みほがキューボラから上半身を乗り出すと、生き残っていた1輌のT-34が、大洗の戦車隊に背を向け、逃げ出そうとしていた。

 

「全車前進!追撃します!」

 

みほの指示を受け、大洗の全戦車8輌が一斉に動き出し、逃げ出したT-34を追い掛け始めた。

 

 

 

 

 

 

「おーおー、こりゃスゲェや。1対8での鬼ごっこが始まったぜ?」

 

その頃、観客席にて観戦しているスモーキーチームの大河は、エキシビジョンに映し出される光景を見て、笑いながら言った。

 

「仲間がやられたから、それに恐れをなして逃げてるのか、それとも罠に嵌めるために逃げるふりをしているだけなのか……………はてさて、どっちなのかしらね……………」

 

大河の傍らに立つ深雪が、興味深そうに言う。

 

「それにしても、先に2輌撃破したのは良かったわね。後の事を考えると、少しでも戦力を落としといた方が良さそうだもの」

 

大河と御幸の直ぐ前にある席から観戦していた千早が、そう呟いた。

 

「まあ確かにそうだが……………見ろよ。紅夜と静馬、それから大洗の隊長さんは、素直に喜んじゃいないみたいだぜ?」

 

そう言って、新羅がエキシビジョンに視線を移すと、其々の戦車のキューボラから上半身を乗り出して、逃げているT-34を見ている紅夜と静馬、みほの3人が、何やら複雑そうな表情を浮かべていた。

 

「何か俺、嫌な予感がしてきた……………何が起こるのかは分からんが、兎に角嫌な予感がする……………」

「それが、貴方の考えすぎで終わると良いわね、煌牙」

 

煌牙の呟きに深雪が言うと、煌牙は全くだとばかりに頷いて、視線をエキシビジョンに戻す。

深雪が言ったように、煌牙が言う『嫌な予感』、煌牙の考えすぎである事を祈りながら、スモーキーチームの残りの4人は、視線をエキシビジョンに戻すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

そして再び視点は戻り、雪原地帯。

其所では、攻撃も何もせず、ただひたすら逃走するT-34を、大洗の全戦車が追い掛けると言う、何ともつまらない鬼ごっこが続いていた。

 

「逃げてばっかだねぇ~……………なんで逃げるだけなの?」

「向こう側の戦車が1輌だけなのに対して、此方が全車両で追い掛けているからじゃないですかぁ~」

 

何もせず、ただひたすら逃走するT-34に、沙織が疑問の声を溢すが、それに優花里が答えるようにして言う。

 

「そうだよねぇ~。何故か追うと逃げるよね、男って♪」

 

沙織がそう言うと、優花里は一瞬ながら、何とも言えないとでも言いたげな表情を浮かべつつも、取り敢えず苦笑を浮かべた。

 

そうして暫く追い続けると、その先にプラウダ本隊が、横1列に並んで待機していた。

 

「彼処に固まってる……………フラッグ車、発見しました!」

 

それを、M3リーのキューボラから双眼鏡で見ていた梓は、赤い旗を付けたプラウダのフラッグ車を視界に捉え、そう叫ぶ。

 

「千載一遇のチャンスだ……………良し、突撃!」

「「「「行けぇぇぇぇぇええええええっ!!!」」」」

「アターック!!」

 

みほの指示を待つ事無く、桃が独断で指示をだすと、カバさんチームのⅢ突やアヒルさんチームの八九式、他にもカメさんチームの38tやウサギさんチームのM3リーが速度を上げていく。

 

「ちょっと!?待ちなさい!」

「ああ!?カモさんチームまで進みすぎちゃダメです!」

 

みどり子が待つように言って、カモさんチームのルノーまでもが速度を上げる。みほは制止を呼び掛けるが、結局はみほ達あんこうのⅣ号もが速度を上げていく。

 

そのあまりの速度に、先程まで先頭で走っていた紅夜達のIS-2や静馬達のパンターは、あっという間に抜かれ、置き去りにされてしまった。

 

「あーれま、彼奴等、勝手にやり始めちまったよ……………紅夜、どうする?せっかくだから俺等も混ざるか?」

 

操縦手用の窓から様子を見ていた達哉は、紅夜に聞く。

 

「うん?そうだな……………」

 

紅夜はそう呟き、並走するレイガンのパンターへと目をやる。

キューボラから上半身を乗り出していた静馬と目が合い、紅夜はどうするかと視線で問いかける。

 

「……………」

 

静馬は何も言わずに目を伏せ、ただ首を横に振った。

 

「そっか……………分かった」

 

そう言って、紅夜は軽く頷いてから言った。

 

「達哉、取り敢えずは連中に合流するつもりで行ってくれ。それから、連中よりも2メートルぐらい後ろで急停止だ」

「Yes,sir!」

 

達哉が答えると、紅夜は静馬の方を向き、右手の薬指と小指を曲げて残りの3本を密着させて真っ直ぐ伸ばし、軽く振って、加速する事を知らせる。

速度を上げ、前に出たIS-2の後にパンターが続く。

 

暫く進んでいくと、既にプラウダの戦車隊に砲撃を仕掛けている、レッド・フラッグ以外の大洗の全戦車が居た。

既に撃ち合っていたらしく、向こうではT-34/85が1輌、黒煙を上げて白旗が出ているのが見えた。

 

「良し、この辺りで良いだろう……………停車!」

 

紅夜が言うと、達哉と雅は、ほぼ同じタイミングで一気にギアを落とし、ブレーキペダルを踏み込む。

急なギアチェンジで、IS-2の排気口が一瞬火を噴くと、若干スライドしながら停まった。

かなり派手な停車だったからか、大洗のメンバーが彼等に気づいた。

 

『長門先輩、須藤先輩、向こうにプラウダのフラッグ車が居ます!援護してください!』

 

ウサギさんチームの梓からそんな声が飛ぶが、その次の瞬間には、プラウダの戦車隊はフラッグ車を庇うようにしながら後退していく。

 

「逃がすか!」

「追え追え~!」

「ブリッツクリーク!」

「待てぇ~!」

「行け行け~!」

「ぶっ潰せー!」

「ぶっ殺せー!」

「やっちまえー!」

 

プラウダの戦車隊が後退し始めると、先陣を切って走り出した38tを皮切りに、Ⅲ突とM3リーが急発進し、プラウダの戦車隊を追い始める。

 

「ストレート勝ちしてやる!」

「ちょっと!待ちなさいよ!」

 

それに続いて、あろうことかアヒルさんチームの八九式も走り出し、それからカモさんチームのルノーも後に続く。

 

「ちょ、おいお前等!無茶すんな!つーかアヒルさんチーム!テメェ等フラッグ車だろうが!下手に敵陣地に乗り込んでんじゃねえ!戻れ!」

「そうよ!相手の罠かもしれないわ!戻りなさい!」

 

紅夜と静馬が制止を呼び掛けるが、プラウダの戦車隊を追い始めた一行は、構わず突き進んでいく。

「ちょ!?ちょっと待ってください!」

 

みほも言うが、メンバーはそれすらもお構い無し。プラウダの戦車隊が逃げていった廃村へと突っ込んでいく。

 

「ご、ゴメンね紅夜君。取り敢えず私達も行くよ」

 

すまなさそうに言って、みほは麻子に指示を出してⅣ号を発信させ、自分達も廃村へと向かう。

 

「ちょ、おい待て!……………あークソッ!何なんだよ今日の彼奴等は!?どいつもコイツも調子に乗って、後先考えずに突っ込んでいきやがって!!後でどうなっても知らねえからな畜生!」

 

紅夜はいつになく、荒々しく吐き捨てる。

此処まで荒れる紅夜は、静馬達でも初めて見たと言わんばかりの表情を浮かべている。

 

「紅夜、荒れてるなぁ~。あんなにも荒れてるのは初めて見るよ……………そんで静馬、これからどうする?」

 

操縦手用のハッチから、自分達が乗るパンターよりも数メートル前で停車しているIS-2のキューボラから上半身を乗り出し、荒れ模様で居る紅夜を見た雅は、静馬に訊ねる。

 

「……………取り敢えず、稜線ギリギリまで戦車を近づけて、上から様子を見ましょう。でも先ずは、紅夜に許可を貰いましょうか」

 

静馬はそう返し、紅夜へと通信を繋げた。

 

「紅夜、聞こえる?」

 

そう問いかけると、少しの間を空けて紅夜が応答した。

 

『おう……何だよ静馬………』

 

応答した紅夜の声は、完全にだらけたような声になっていた。

 

「かなりお疲れのようね……………いえ、今の貴方は……………疲れてると言うより、彼女等に呆れてるって感じかしら?」

『ピ~ンポ~ン、だ~いせ~いか~い』

 

完全にだらけたような声色で、紅夜は正解だと告げる。

 

『よく分かったなぁ、静馬~。でも、なぁ~んで其処まで分かっちまうのかねぇ?副隊長?』

「これでも貴方の幼馴染みなのよ?何年一緒に居たと思ってるのよ、隊長♪」

 

紅夜の質問に、おどけたような声で微笑みながら、静馬はそう返した。

 

「貴方との付き合いは、13年と少し。此処に居るメンバーの、誰よりも長いんだから……………貴方の考える事なんて、案外直ぐに分かってしまうのよ。ある意味、愛の力で為す技かしらね?」

 

そう言うと、静馬は恥じらいながら微笑む。

 

『何だそりゃ?つーか、一番長いったって、途中から達哉が入ってきたし、その差も数日程度しかねーけど?』

「そんなものはどうでも良いのよ」

 

そう言って笑う紅夜に、静馬はそう言い返した。

 

「それでなんだけど、稜線ギリギリまで近づいてみない?敵に見られないように気を付けながら」

 

紅夜の機嫌が少し良くなってきたのを察した静馬は、此処で本題に入る事にした。

 

『ん?別に良いぜ。行くか』

「ええ」

 

そうして、紅夜との通信は切れた。

 

「紅夜からの許可が出たわ。雅、エンジン音を響かせないようにし注意しつつ、パンターをIS-2の隣につけて」

「はいはーい、お任せあれ~」

 

雅はそう言うと、アクセルペダルをそっと踏んでパンターを静かに発進させ、紅夜達が乗るIS-2の隣につける。

そして、両戦車の車長が互いに顔を見合わせると、其々の操縦手に指示を出し、大洗の戦車8輌が突っ切っていった稜線までやって来ると、なるべく相手に自分達の戦車が見られないような位置で戦車を停め、降車して廃村での砲撃戦を見物しようとするのであった。

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