魔法科高校の呪術生   作:トンペティ02

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入学

 人造魔法師実験。それは魔法を扱えぬものにとっては、ある意味で魅力的な響きを持つ名称である。しかし、勿論のことながらその内容は残酷極まるものだ。

 平に言ってしまえば、他人に自分の脳を弄らせ強制的に魔法演算領域を作りだすものだ。

 好き好んでその実験の被検体を志願する人間は、僅かだ。また、本人の意思に関係なく被検体となるケースも少なくない。否、むしろそのような実験だからこそそちらの方が多いのかもしれない。

 ただ、多いと言っても。この実験を行うことのできる、他人の脳を弄り魔法演算領域を作りだすことのできる可能性を持っている人間は一人しかいなかった為、多いと言ってもこの実験による被験者、もとい、被害者は少ない。

 何よりこの実験は、ある意味で『本命』とされていた人物に僅かながらの魔法演算領域を付与した時点で、実験を行う側に問題が発生した為完全に中止となった。

 それでも、『本命』の下準備、或いは実験台として、数名の『試作品』があったことは言わずもがなの事実である。

 その『試作品』の中で、唯一生き残ることができた少女が居た――。

 

 

***

 

 

「納得できません」

「まだ言っているのか……?」

「あはは、深雪なら何万回でも言うと思うけどね私は」

 第一高校入学式の日、揉め事を起こしている一組の男女とそれを見て笑いながら茶化す女子生徒の姿がそこにはあった。

「何故お兄様が――」

「だから――」

 会話から察するに軽い口喧嘩をしている男女は兄妹なのだろう。先ほどから、兄を敬う女子生徒と自らを卑下する男子生徒は平行線となる会話を繰り広げている。

「ってゆーかそろそろ深雪行かないとまずくない? 時間じゃね?」

 もう一人の女子生徒は腕時計で時刻を確認しながら、深雪と呼ばれている女子生徒へと声を掛けた。

「ですがお姉様!」

 一対二となり不利になったにも関わらず、予想以上に頑なな深雪の姿勢に兄と思われる男子生徒は、深雪の肩に両手を置いた。

「深雪。例えお前が答辞を辞退してもその役目が俺になることは絶対にない。お前の評価を下げるだけの結果になるんだ」

 少しきつい口調で深雪を諭した男子生徒だが一転し、「それにな、深雪」と優しい声色で、まるで恋人に接するかのような甘い雰囲気を醸し出しながら言う。

「俺は楽しみにしているんだよ、俺の自慢の妹の晴れ舞台を」

「……! はい! 行って参ります! お兄様、お姉様」

 雪女と言われれば納得してしまいそうな白い肌の少女は、その頬を可愛らしく薄紅色に染めて会場へと向かっていった。

「達也人わる~い。あんなこと言ったら深雪断れないじゃ~ん」

 達也と呼ばれた男子生徒に女子生徒がもたれかかる。

「まるで俺が悪い人間みたいな言い草だな、第一あれは本心だ」

「人を殺す気がなくても殺したら犯罪なんよ」

「……ところで夢は何かしないのか?」

 夢は達也から二、三歩離れると手を後ろで組む。

「いや別に? 成績は学年十三位くらいになるようにしたしね。そこまで目立つってレベルじゃないはずだよ」

 さらっととんでもないことを言う夢に対し、達也も「それもそうか」と頷く。つまりこの程度のことは二人において日常茶飯事なのだ。

「順位は?」

「勿論十三位」

「相変わらずの精度だな。間違ってもエリート意識を持ってる人間の前でそんなことは口にするなよ?」

「微調整は得意なんでね。はいはーい」

 バレリーナの様にくるくるとその場で回転しながら、気軽に返事をする夢。達也はすぐ近くにあった腰掛けに座りスクリーン型の携帯情報端末を開く。

「達也はあと二時間どうする気?」

「見ての通りだ、読書をする」

「ふーん。じゃあ私は適当に散歩してるわ。入学式終わったらね~」

 夢は軽やかなステップを踏みながら達也と別れた。

 

 

***

 

 

「お兄様お待たせ致しました」

「早かったね、深雪……?」

 達也の語調が疑問形になったのは、実の妹が凍りつく笑顔と今にも具現化しだしそうな般若を後ろに控えさせていたせいだ。

「お兄様? その方たちは?」

「柴田美月さんと千葉エリカさんだ」

「早速クラスメイトとデートですか?」

 凍てつく吹雪が襲ってきたかのように周りの気温が下がる。

「そんなわけないだろ深雪。ただ話をしていただけさ。それにその言い方だと二人に失礼だろ?」

「あ、申し訳ありません。柴田さん千葉さん。司波深雪です。お兄様同様新入生ですのでよろしくお願いします」

 最早無意識の領域だったのだろう。ストレスが相当に溜まっていた深雪はハッとしてから頭を下げて、高校生に成り立ての人からすれば些か仰々し過ぎる態度をとった。

「こちらこそよろしくお願いします」

「こっちこそよろしくね」

「私もよろしくね☆」

「「「!?」」」

 深雪、美月、エリカが驚きのあまり後退する。――実際に少女の登場に驚いたのは三人だけではなく、達也を除くこの場の全員なのだが――突如三人の輪の中に現れた少女は満足げな笑みを浮かべながら口を開いた。

「私の名前は『(あずま) (ゆめ)』フリーのカメラマンさ」

「もう! 脅かさないで下さいお姉様!」

 深雪は抗議の声を上げるが夢はそれを軽く受け流す。

「達也とも深雪とも切っても切れない幼馴染ってやつよ。よろしくね、柴田さんに千葉さん」

「うん、よろしく。あと私はエリカでいいわ。夢も深雪も名前で呼んでいいかな?」

「ええ、苗字じゃお兄様と区別が付きにくいですもの」

「もーまんたい」

「あは、深雪って意外と気さくなのね」

「あなたは見かけ通り開放的な人ね、よろしくエリカ」

「いやー。二人とも仲良くなっちゃってお姉さん嬉しいよ」

 見えない何かに納得するように夢は何度も頷く。

 

 

***

 

 

「家って落ちつくよねー」

 夢がソファーに寝転ぶ、それを見た達也は苦笑いをする。

「すっかり我が家だな」

「だってもう三年目だよ。完全に我が家だよ。居候であって居候でない」

「私はもうお姉様は家族の一員だと思っていますよ」

「はは、その通りだね」

 上品に笑う深雪、普通に笑う夢。その二人を見守る父親の様に微笑む達也。その雰囲気は家族のそれと全く同じであった。

 が。

 ピーー!

 夢の所持する携帯端末より警告音の様な音が鳴った。瞬間、司波家にあった柔らかい雰囲気が切り刻む様な静けさに変わった。

「はい……」

 打てば響く速度で夢は通話を開始する。何度か相槌をうった後に、携帯端末を耳から離した。

「ちょっと仕事入ったね」

「……お気を付けて」

「……気をつけろよ」

「今日は美味しいものがいいな! 行ってきます!」

 

 

***

 

 

「……で、こいつらをとりあえずしょっ引けば言い訳ですね」

「その通りでございます」

 夢は渡された紙の資料を燕尾服を着た老人に返す。

「でもこの人数なら……というより殲滅が目的なら達也の方が適任だと思うのですが?」

「この者達は()()ですので、捕獲ついでに()()()()()()()ということですよ」

「……へー。面白そうですね」

「……飽くまで夢殿の任務は無力化でございます。くれぐれもお忘れなきように。後始末はわたくしめが承ります故」

「……努々忘れない様にします。夢だけに」

 

 

***

 

 

「これからどうする?」

 一般人と変わらない服装(盗品だが)の男達は、とあるホテルの地下駐車場に集まり、作戦会議をしていた。

「手始めにこの力がどこまで通じるのかを試す。復讐込みでな」

 男達は無言で頷く。全員の瞳には復讐の炎が宿っていた。とても近づける雰囲気ではない、異様なプレッシャーを放つ男たちに、しかし歩み寄ってくる人物が居た。

「なんだガキ?」

 ビリビリと肌で感じさせる男は威圧するように、しかし警戒心を百パーセントにしながら問う。こんな場所に、わざわざこんな男たちに笑顔で歩み寄ってくる少女に。

「趣味でヒーローをやってる者だ。なんだその適当な設定は」

 少女――夢は、早口で自答を行い動き出す。非常に俊敏な動きで近くにいた二人の男の腕をそれぞれ掴む夢。

 次の瞬間、夢の両手から紫電が一瞬走った様に見えた。

 それに対する男達の行動は迅速ではあったが、正しくはなかった。

 何もされていない男たちは魔法によって強化された身体で後退し、十数メートルの距離を取る。一方、夢に腕を掴まれた男二人は、力無く崩れた。夢はそれでも男達の腕を離さない。

「ガキ! 何者だ!」

「仲間二人がやられたのに余裕だね。どれどれ、どんな魔法を使うのかな~」

 夢の言葉は無事な男達に対して向けられているものではなかった。飽くまで確認をする様な口調に男達は違和感を覚えた。

「やばいぞこいつ! フォーメーションBで行くぞ!」

 ――曲がりなりにも実験体か。面倒になる前に潰す。

 頭の中で舌打ちをしながら、夢は己の持つ特殊な力を発動する。

 

 

 それは魔法と呼ぶにはあまりにも禍々しく。

 超能力と呼ぶには使い勝手の悪い力であった。

 

 

「ふむ。成程。個人個人ではなく全体で一つとして魔法を使用する――群体生物的なあれねあれ」

 

 

 次の瞬間。フォーメーションを組む為に夢側に出てきた男五人は凍りついた。それは比喩ではなく、氷が男達を包んだという意味だ。

「なっ!?」

 最後に一人だけ残った男は驚愕に目を開く。それは魔法を知っていて尚、異常な光景だったのだ。

「そんな……貴様! 一体どれだけの魔法演算領域とサイオン量が!」

「……私は上の下くらいだと思うけどね」

 夢は笑う。

 男は知る由もなかった。今現在行使した魔法によって、夢が使った魔法演算領域とサイオンは共に『零』であるということに。

外道接続(ルームコネクト)

 それが現在、たった一つだけ夢が行使している『魔法のようなもの』の名称である。

 魔法のようなもの――この魔法が蔓延る社会にて、それでも魔法であると断定できない一種のオカルトのような魔法。概念的には魔法とは全く別のものである。故に数少ない関係者からは『(のろい)』と呼ばれるそれは、名前負けしない性能を秘めていた。

 曰く『触れている人間を自分の外付けハードの様に扱う力』

 明確に言えばこの限りではないが――その力により夢は先ほど、触れている男二人分の魔法演算領域とサイオンを使い魔法を行使したのだ。

「ちっく……」

 男は負け犬の遠吠えずら満足に上げられなかった。

 

 




初めまして、PIPOと申します。
正直使い方がイマイチ分かっていないので変な部分があるかもしれません。

R-15は保険です。保険なんだからねっ!
タグもどういったことを書けばいいのかさっぱりです。
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