オリジナル小説を優先して書いてる上、それの締め切りが近くなってきてしまったのでさらに更新が遅くなると思いますが、重ね重ね申し訳ございません。
本作品は「原作をある程度読んでいる」ことを前提に書いていますので、オリキャラがいてもいなくても変わらない場面は極力省いていきます。
『
現代魔法、また古式魔法ともその方向性を違える『呪』と呼ばれる力である。
現代における魔法とはつまり『事象に付随する
故に、どんなルートで魔法の様な効果を発生させているかは未だ未知の領域でり、この力を知っている一部の魔法師達は完全にお手上げ状態であった。
一人を除いては――。
***
「……懐かしいなぁ」
夢はベットの上で上半身だけを起こし、まばたきを数回する。時刻は目覚ましをセットした時間よりも三十分以上も早い。
「……兄さん今何してるやら」
自らの唯一の肉親である兄――『
彼曰く、「『呪』は魔法師にとって最大の天敵に成り得る」らしい。
らしいと言うのは、言わずもがなながら、それが未解明である部分が大きい為である。おそらく『呪』の力を理解しているのは『呪』の力を有する者――『呪術師』以外には東現のみであろう。
「……まあいいか。私は究極的には達也と深雪がいれば生きていけるし」
切り捨てる様に言う夢は、そそくさと着替えを済ませ、リビングへと向かった。
「! お姉様、おはようございます」
「ん、深雪おはよー早いねー」
「お姉様こそお早いじゃないですか。何かなされていたんですか?」
「ああ、ちょっと懐かしい夢を見ちゃって早く起きちゃったんだ。だから朝食作ってたのよ。今日先生のとこ行くんでしょ?」
夢はバスケットにサンドイッチを入れ、缶コーヒーを口にする。
「そんな、すいません」
「いいのいいのー。まあ深雪が作った方が美味しいんだけどね」
「ふふ、ありがとうございますお姉様。コーヒー淹れましょうか?」
「おー是非是非」
「朝から仲睦まじいな二人とも。おはよう」
夢がソファに腰を降ろした時、達也がダイニングに現れた。
「夢は分かるが深雪はなんでこんなに早いんだ?」
「はい、先生に進学のご報告を、と思いまして」
「そうか。先生も喜ぶだろう……喜び過ぎてタガが外れなきゃいいけど」
「その時は私が深雪を守るさね」
ウインクをしながら横ピースをする夢に達也は「任せたぞ」と微笑んだ。
***
単純な魔法を複合したもので、約時速六十キロを維持しながら移動して十分の小高い丘にある寺。それが現在の目的地だ。
僧侶や和尚という名の戦闘員を構えているその寺に、深雪はローラーブレードのまま躊躇なく入る。
「おっしゃあ! 三日振りの夢ちゃん無双だぞオラァ!」
「お前が来るといつも騒がしくなるからな」
入るや否や、達也と夢はここの修行僧と二十対二の総掛りの洗礼を受けた。その二人を心配そうに見つめる深雪の死角ををついて唐突に陽気な声が聞こえた。
「深雪君! 久しぶりだねぇ!」
「先生……! 忍びよらないで下さいと何も申し上げているじゃないですか……!」
「いやー、それは難しいね深雪君。何故ならこの九重八雲は「忍び」だからね。忍びよるのは性みたいなもんさ」
「由緒正しいのも存じ上げておりますが……」
「そんなことより!」
「は、はい」
「それが第一高校の制服だね? いいねぇ清楚な中にも色気がある……ほころばんとする春の蕾……そう! これは萌えだよ! 萌えなんだよ深雪君!」
「よく分かってるじゃないですか先生」
「っと!」
八雲が目にも止まらない速度で左に飛びよる。八雲の背中に隠れていた(飽くまで深雪視点だが)夢はうんうんと頷いている。
「清楚と色気は表裏一体なものですよ。そう、それはまるで光と闇の様に。清楚に包まれたその中には溢れ出んばかりの色気が……! 未だに青さを残した若々しさも「幼さ」といった言葉で装飾できてしまう。熟した木の実も美味しいけど若々しい未熟なものだって美味しい。草食系女子並びに装飾系妄想女子の私にはこれ以上ないご褒美ですよ」
持論を口早に広げて畳む夢は、後光のせいか深雪には輝いて見えた。
「いやー。今のは危なかったよ。悔しいけど隠密性においては僕より夢君の方が上かな?」
「上ならとっくに仕留めてますよー。一瞬でも触っていられれば私の『接続』でおじゃんなんですけどね」
「流石に一瞬なんてそんな長い時間触っていられる程僕は甘くないよ……っとと!」
八雲が腰を落とし左手を掲げる。そこに達也の手刀が落とされる。
「師匠、俺は夢と話しながらでも倒せる相手なんですか?」
「……正直最近は厳しいと思う……よ!」
八雲が達也の右腕を巻きこみながら、右で達也の正中線を狙う様に突きを繰り出す。達也は巻き込まれた右腕を外し、身を投げてそれを回避する。
「そこっ!」
「っ!」
達也が片膝をつき体勢を立て直そうとしている場所に夢のかかと落としが襲い掛かる。達也はそれを腕を交差させガードする。
「お姉様!?」
深雪が悲鳴染みた驚愕の声を上げる。対し夢は笑う。
「はは、深雪。世界とは残酷なのさ!」
「その通りだね!」
かかとを落とし達也にガードをされ、硬直していた夢の背後から八雲が出現した。八雲は回し蹴りを夢に向かって放つが、夢は達也の交差した腕を足場に空中へと躍り出た。
「あっぶな!」
夢が引き気味の笑みを浮かべたことによって深雪は気付いた。これは八雲対達也、夢ではなく。八雲対達也対夢なのだと。
熱を増していく闘いに、手を握りしめていたのは深雪だけではなかった。
***
1-A。深雪と夢の所属するクラスである。
「やっぱ深雪綺麗だよね。すれ違うたびに人がこっち振り返るよ」
「そんな。お姉様の方が美しいですよ」
実際には二人の相乗効果であることは言わずもがなであった。
所属する教室のスライドドアを開けると、視線が一斉にこちらを捉えた。その意味するところは好奇心。自分とこれから一年を共にする人間はどんな人間なのか。しかし、その好奇心の目は深雪を見た瞬間に羨望の眼差しへと本質を変えた。
「司波さんだわ、すごい綺麗ね」
「やっぱりこのクラスだったんだ」
「まるで天使だな……」
様々な感想を口にする生徒達。それら全てを聞き分けてから夢は独りでに、深雪にも聞こえない音量で呟いていた。
「天使じゃなくて女神だろ」
自らの席を確認してると深雪が夢に声を掛けた。
「お姉様。席はどちらですか?」
「ん。深雪の左前だね」
指定された席に向かう途中。夢は深雪に向けられている視線に気づいた。
(光井ほのかちゃんと北山雫ちゃん……か)
夢は自らが作成した「可愛い子ノート」の中身を、ページを開く様に思い出す。
(かわいいなぐへえへ。お近づきになりたいでござる)
穢れた想いを、夢は表情におくびにも出さずに席に座る。
「あ、あの。司波さ……」
びたーん。と張り付く様な音が教室中に響いた。ほのかが顔面から転んだのだ。
訪れる静寂。しばらくして氷が溶けだす様に他の生徒達の陰口が聞こえてきた。
「あれ大丈夫……?」
「A組にあんなアホなやつがいるなんて……」
その中。夢は全く違う感想を抱き、拳を強く握り締めながら身を震わせていた。
(ド、ドジっ娘キターーーーーーー!)
夢は無意識に立ち上がっていた。思わず叫びそうになった感動の言葉を必死に抑制した。しかし、その気持ちは抑えきれずにいた。
「ぐぐ……どうしよう」
どのような方法でこの衝動を解消しようか思案しながら、夢が改めて席に座る。そして気付く。自分の前の席の住人も自分と同じポーズを取っていたことを。
「……君、名前は?」
夢が話しかけるとその少し小太りをしているメガネの少年は、不敵な笑みを浮かべ手を差し伸べてきた。
「『
「エル・プサイ・コングルゥ。分かったよ安心院さん」
――ここに一つの出会いがあった。
***
昼食時。新入生は未だに勝手が分からず大混雑を起こす食堂。その中で、早めに見学を切り上げたのが功を奏し席を確保できた達也達は、会話を交わす。
「工房見学楽しかったですね」
「中々有意義だったな」
「可愛い子いっぱいいたー」
「きゃ!?」
「うお!?」
「!?」
突如として出現する夢。達也以外のエリカ、レオ、美月は驚き声を上げた。
「夢、もう昼食は済ませたのか?」
「今から~」
そう言いながら夢はやけにトッピングが施されているカレーライスのトレーを達也達のテーブルの上に乗せた。
「達也、なんだコイツ。一科生みたいだけどよ」
「ああ、俺の幼馴染みたいな奴だ。一科生とか二科生とかにこだわる人間じゃないから安心しろ」
「達也がそう言うなら信用するぜ。西城レオンハルトだ。レオって呼んでくれよろしくな」
「よろしくねー、私は東夢。夢って呼んでいいよー」
人懐っこい笑顔を浮かべるレオに対し、柔和な笑顔を浮かべる夢。
「エリカちゃんと美月ちゃんは昨日振り~。皆美味しそうなもの食べてるね~」
「そう? 夢のなんかやけにトッピングされてるんだけど」
エリカが指摘するように。夢のカレーライスはまるでここに通い馴れている様な、所謂「通」のようなトッピングのされ方だった。
「いやなんかオプションあるんだったらそれっぽくないのを追加したくならない?」
「……私はそんなチャレンジャーじゃないわ」
「私も……」
エリカと美月が互いに顔を合わせ困った様に頷き合ってるのに対し、レオは白い歯をむき出しにしながら笑う。
「分かるぜその気持ち! なんとなくだけどな」
「レオとはいい酒が飲めそうだなー」
互いに笑いあい、雰囲気がいい具合に調和した時、通路側から深雪がやってきた。
「お兄様、私も今から昼食なんです。ご一緒してもよろしいですか?」
達也は「勿論だ」と言葉を口にしようとしたが、深雪の周りにいた一科生達が異議を唱えてきた。
「
「おどりゃクソ森」
夢が嘲笑うかのように言う。それを聞いて一瞬だけ呆けた一科生だったが、すぐに意識を取り戻したようだった。
「貴様二科生如きが……って、お前一科生か!?」
夢の制服についているエンブレムを指差しながら、驚きの声を上げる一科生。その背後から「一科生が二科生と一緒に……?」「あ、あの子A組で見た」等の声がする。
「ふんっ、一科生如きと昼を共にする奴なんてたかが知れてる」
驚きの声を上げた一科生は鼻を鳴らしながら夢を馬鹿にする。しかし夢は今にも噴き出しそうな顔をしながら言うのだった。
「程度が……くくっ……知れてるのは……ふっ…………ふぅ」
台詞の途中で夢はカレーライスと共にトレーで運んできた水を口に含んだ。そしてそのまま再びカレーを咀嚼しだす。
「……あ、あの?」
美月が夢に、何故か申し訳なさそうに話しかける。そこで夢はやっと気付いた様に、口内にあるカレーを飲み込んでから口を開いた。
「深雪、さあ座りなよ一緒に食べよう」
「え? あ、はい」
「ちょっと待てえええええ!」
一科生が怒鳴り声を上げ、夢を指差しながら吠える。
「貴様一体何様のつもりだ! 僕を無視するとはいい度胸じゃないか!」
「いやいや、上級生もたくさんいるなか、上級生の皆さんが楽しく昼食を取ってる中。それをぶち壊してまで私に喧嘩を売る君の度胸には負けるよ」
そこで一科生はハッとしたように周りを見る。
周りにはその一科生を目の敵……までは行かずとも、邪魔な存在ととらえた視線が四方八方に存在した。
「っ~~!」
雰囲気に耐えかねた一科生は「覚えてろ!」と負け犬の遠吠えを上げて戻っていった。4