少し文字が続き読みにくい感じになっていますがご容赦下さいまし。
「あ、ごめん。皆先帰ってって」
放課後、一科生――主に森崎駿と一悶着あったが、達也が自前の特殊能力と交渉術を用いてその場を丸く収めた為、特に問題のない普通の放課後になった。
「どうされたのですかお姉様?」
深雪が首を傾げながら夢に問うと、夢は少し慌てた様子で答えた。
「いやちょっと今日発売のゲームを予約し忘れててね。急いで買いに行かないといけないのさね。てゆーか言ってくるよぉぉぉ!」
その場で足踏みを忙しなく行っていた夢は、我慢できない! と言わんばかりの速さでその場を去った。
「……凄い人ですね」
ほのかが口を開け呆れていた。
***
夢は全速力で目的地に向かう。近所のゲームショップと夢が称するその場所は、司波家からはおよそ八キロも離れているのだが、加速魔法以外にも様々な工夫を凝らせる夢にとっては『近所』と言っても刺し違えのない距離ではあった。
無論、それは前述した通り、夢が魔法をいつも通りに使えた場合である。普段通りでなくとも、いち高校生の枠をとうに飛び越した魔法演算とサイオン量がある夢(それでも魔法だけとなると深雪以下であり、本人の言葉通り上の下がいいとこだが)は使おうと思えばこの程度の魔法はかなり体調が悪くても問題なく使用できる。
その夢が、唐突に、何かに躓いた訳でもなく、転んだ。
「ドッピオ!?」
時速八十キロと、自身でもかなり速い速度で移動を行っていた夢は、列車から外に投げ出されたように道路の上を、体を削られながら数回跳ね、壁に激突した後に止まる。
「っ!」
「ははは、まるでハリウッド映画だ」
パチパチ手を叩きと、一人の青年が笑いをかみ殺し切れていない顔で既に満身創痍の夢に近づいてくる。
「君が四葉の兵器か。それにしては随分呆気ない幕切れだ」
「……誰だ…………」
殺意の炎を轟々と燃やしている夢は、静かな声で襲撃者を睨む。
「怖い怖い、折角の顔が台無しじゃないか」
「……死ね」
夢は素早く汎用型CADのパネルに指を走らせる。入力した魔法式は加重系統の拘束魔法『グラビティバインド』、通常は拘束をする為に使用するものだが、夢はこれで相手を潰すレベルで発動するつもりだった。
『つもり』だった。
「……あるぇ」
「はははははは! 残念で~~~したっ!」
青年は潰れていなかった。否、それどころか魔法が正常に作動した前兆すら存在しなかった。
しかも、だ。
夢は通常のCADから魔法式を取りこみ、魔法を発動する以外にももう一つ、意識下に作られた魔法演算領域にて別の魔法を発動していたが、それも不発に終わっていた。
「……
夢の身内である達也が得意とする超高等魔法。『
しかし、だからこそ夢は己の魔法が術式解体によるものではないと確信していた。
「なんだと思う?」
「…………呪術師……」
「せいか~い♪ 君を葬る為に派遣された最強の呪術師で~す」
「……どこから派遣されたのかな?」
「言うとでも?」
「吐かせるまでだよばぁか!」
夢は激痛が迸る体を無理やり動かす。四つん這いから地面を蹴り、足元を狩るタックルの様な姿勢のまま青年に接近する。八雲によって鍛えられた瞬発力と魔法による加速度によって爆発的な瞬間的速度を叩きだした夢に、先ほどまでポケットに両手を突っ込み、余裕の表情をしていた青年は一瞬目を見開いたが、青年の反応はそれだけだった。
「っ!?」
一瞬にして青年との距離を詰めた夢の技量は言わずとも凄まじいが、それに一瞬しか遅れを取らなかった青年もまた凄まじい技量の持ち主だった。おそらくは青年の『接続』であろう能力にて、夢は見えない壁に衝突したかのように弾かれた。
「人に触れないと発動できない呪。というのは不便だねぇ……おっと、仲間を呼ぼうとしても無駄だよ。通信は僕の仲間がジャックしてるからね」
「用意周到過ぎやしないかな?」
「これでも足りないくらいだよ。君は四葉の最大レベルの危険人物だからね。まあ、当てが外れた感が否めないけど」
サイレンサー付きの銃取り出す青年の話を聞きながらも、ひたすらCADを操作する夢。
「だから無駄なんだって。僕の『接続』は『
なにそれずるい。と頭の中で愚痴る夢だが、青年が自らの能力をバラしたことによって一つの光明を得た。
「……そこか」
夢は小さく呟く。その呟きを聞きとった青年は不思議そうな顔になった。
「ん? 何が?」
「お仲間さんの位置だよ!」
夢は腕の力だけで跳ぶようにして立ち上がり、爆発する様な脚力で地面を蹴る。しかし、進む先は青年ではなく、全く反対方向。それに加え今度は先ほどよりも全然遅い。
「なっ!? くそっ!」
青年が初めて目に見えて慌てる。その様子を目の隅で捉えながらニヤリと笑う。
「ほらどうした! 動きに干渉する呪なんだったら使ってみろってんだ!」
「このっ!」
銃を構える青年に向かって、夢は立ち上がる瞬間に拾った小石を手首のスナップだけで投げ飛ばす。飛翔する小石は吸い込まれる様に青年の右目を貫く。
「っっっっっっっっ!!」
顔を大きく歪ませるが悲鳴を上げない青年。それだけでかなりの修羅場を潜り抜けてきたことが伺える。
「そこだぁぁ!」
夢は己に様々な魔法を掛けた。
地面を蹴るインパクトと同時に加速と加重魔法を掛けることで、拳の破壊力を何倍にも跳ねあげ、硬化することで拳自体の強度を上昇。拳が目標と接触した瞬間にその反動を発散させることで拳にかかるダメージを大きく軽減。後に減速により爆発的に増した速度を殺す。
大太鼓を叩いた様に空気が振動する、音が遅れて聞こえた様に固いものが砕ける音が聞こえた。
夢が拳を放ったのは何もない空間だった。しかし、すぐにその空間から滅茶苦茶に顔が潰された人間が出てきた。
光を何重にも屈折させ透明化させる魔法『ライトカーテン』を使用していた固い装備で身を包んでいた人間は、おそらくジャミングを行っていた人間なのであろう、重々しい機械(既に砕かれたが)を持っていた。
「さて」
夢は一息つき、銃をこちらに向け、今この瞬間引き金を引こうとしている青年を一瞥した。
「タネがばれたら弱いんだね」
青年の銃弾をいともたやすく交わした夢は、二弾目が放たれる前に接近し、顔面を片手で掴む。
「『
***
この青年に夢を襲う様に手配をしたのは大亜連合の人間だった。顔を隠しており誰なのかは不明だが、それなりに上にいる人間だろうと夢はあたりをつけた。
外道接続は、相手の脳に直接命令を下す以外にも相手の記憶を覗きこむことができる上、『接続』である為、魔法を使った形跡が一切残らないことを四葉は高く買っている。それは皮肉にも達也と深雪の実母の能力に近く、遠かった。
――閑話休題。
青年の脳を覗いていた夢は、青年の脳内に本人でも見ることが叶わない。所謂『ブラックボックス』が存在することに気付く。夢は何の躊躇いもなしにその中身を覗いた。
瞬間。
『やっほー! 元気にしてるかなマイシスター!』
久しく聞く自らの兄の声が響いてきた。
『別け合って夢ちゃんと直接会うことができないからね。彼にこっそりメッセンジャーをやって貰おうと思ったんだよ』
椅子に座りニコニコとしている夢の兄――現は、まさにビデオレターのような気軽さで夢に対してメッセージを残していた。簡単に言う現だが、このレベルのことをやるにはかなりの技術が必要だ。
『さて、僕がこんなに危ない橋を渡って夢ちゃんに伝えたいことはなにかと言うとね。警告と報告をしようと思ってね。と言うのは最近世界中のあらゆる機関が呪術師を手に入れちゃってね。攻撃態勢を取っているんだよ。四葉の情報網を疑ってるわけじゃないんだけどね、呪術師に関しては魔法師はどうしても後手に回ってしまうからね、心配で。まあ夢ちゃんの外道接続は『接続』シリーズの中で最強にして最悪の力だからまあ多分大丈夫だと思ってるさ。いざとなれば
そこまで来て急に映像が途切れた。
「……さり気なく私の奥の手まで話ちゃって。暗にこれ消さないと情報漏れるぞって……脅しですか……まあ消すからいいんだけど」
青年からその情報を消し、とある細工をしてから立ち上がる夢。
「さて……真夜さんにお願いしないとなぁ。まあ情報が美味しいからこれは借りにはならないはず」
ぶつぶつと呪文の様に次にすることを呟く夢。携帯端末を操作して通信をする。
「あ、ちょっとお願いしたいことが――」
ゴォォンン!
突如。夢の後方から爆発音が聞こえる。
「え――」
その音は加速した夢よりも速い速度で夢に接近した。
背中に大激痛を覚え、夢は意識を失った。
戦闘シーン書くの好きなんですけど、今回は何故かあまり筆が乗らずな感じでした。
ちなみに呪術師と魔法師が真正面から戦えば基本的に呪術師の方に軍配が上がります。今回に限っては体術さえあれば勝てそうってか勝てると思いますが。
追記:補足
今回夢と戦った青年ですが、青年は現代魔法において必須な行動、つまるCADを操作するのに合わせて『接続』を行い魔法を空回りさせていました。何故CADを使わないでも魔法を発動できる夢が、相手の意図もせずに魔法を発動できなかったのかと申しますと、単純に『CADによる通常魔法と同時に発動していた』からです。