ディメント   作:もやしメンタル

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第25話《襲撃》

「これで最後だったか?」

「はい、そのようです」

第5エリアにてクエストだったツリー・ザック五体の確保を終え、僕達は引き返すことにした。

「しっかしこんなもん何に使うんだろうな」

「やっぱり木ですから、それなりには使えるのでは?」

「ツリー・ザックは、普通の木より丈夫でいいんだってニールさんが言ってたよ」

そんなたわいもない話ができるのは、このエリアがいたって安全なエリアだからなのだが、帰りにモンスターという荷物があることが難点だとウンザリする。

そんな時

「あれは…ウサギか?」

「ラビット・ザック。すばしっこいけど問題ないから、二人はそのまま歩いてて」

そうして僕は、持っていた二体のツリー・ザックを二人に託し、ウルスラグナを抜き放つ。

軽く地面を蹴り、加速しながら剣を構え、振り抜こうとした…

一瞬、ほんの一瞬の感覚だった。

「…っ!?」

痛覚とか、そういうものではない。

あの時と、同じ感覚…。

「なっ、おいサク!?」

「あ」

しまった。

目の前には飛びかかってくるモンスター。

「はぁああっ!」

そしてシルアさん…?

突如横から高速で現れた彼女は、飛び蹴りをモンスターに食らわせ吹き飛ばした。

流石デス…。

片足で着地したシルアさんは、すぐにこちらへ顔を向けてきた。

「サクさん、何かありましたか」

「い、いや何も…っ」

「コルァア!なにしてんだサク!!」

「す、スミマセンでした!!」

謝るしかできず、ペコペコ頭を下げ、やっと二人が歩き出してから。

僕は一人己の手を見つめ、汗を滲ませた。

「始まった…」

 

* * *

 

「おーしっ、じゃあ俺が換金所行ってくるわ」

「では、私は今日の晩ご飯の買い出しを。サクさんはどうしますか?」

「……」

「? サク?」

「へっ?あっ、僕はクエストの報告してくるよっ」

明らかに上の空、というかむしろ深く考え込んでいたサクに、二人は首をかしげるが、ここは了解した。

三人はそれぞれ別れる。

そしてサクは、再び己の手を見つめ、顔を引き締めながらマテリアルの奥にへと進んでいった。

 

 

「んっ、サク君。以外と早かったね」

そう言って振り返ったニールは、すぐに口を閉じた。

「どうしたの?」

相談事ももちろん前から乗っているニールは、落ち着いた声でサクに問う。

しかしサクからは予想外の答えが返ってきた。

「ニールさん…。”あれの予兆が始まりました”」

「な…っ」

持っていた書類が落下しそうになりながら、ニールは青ざめる。

そうしてサクに駆け寄ると、手を掴み…

「駄目です!!」

手に触れる間際、そう叫んだサクの言葉で動きを止める。

サクはやがて「あ…」と肩を揺らし、俯いた。

「す、すみません…」

静寂が周りを包むが、ニールが断ち切る。

「あ、あははっ。気にしない気にしない!って言うか今の私がいけないから!…じゃあ、行こうか」

「…はい」

俯くサクに胸のあたりがズキンと痛むのを堪え、ニールはサクを連れ歩き出した。

 

* * *

 

「遅いぞサク!またあのアドバイザーと遊んでいたんだろうっ!」

「はは…。す、すみません」

キーキーと説教をしてくるアマリアに苦笑いし、僕は部屋に入る。

あれから三時間もの間が経ってしまったのだから、アマリアが怒るのも無理はないだろう。

「サクさん。やはり今日、どうかしたんですか?怪我でもなさいましたか?」

こちらへやって来たシルアさんが心配そうな顔をして尋ねてきたので、僕はかぶりを振る。

「なんともないよ。心配かけてごめん」

そう言った後も僕を見つめていたシルアさんだったが、アマリアの手を叩く音で視線を変えた。

「さーて。もうそろそろ刻印を一度見ておこうか」

「ーっ」

その言葉に、僕は大きく肩を揺らした。

「? サク?」

「あっ、僕今回いいです!」

「へ?なんでだい?」

首をかしげてくるアマリアに、嘘なんて一文字も浮びあがらない僕はダラダラと汗を流す。

しかしやがて、アマリアはため息をついた。

「君が嘘が下手なのは知ってるけど、頑固なのも知ってるよ。まぁ強制的に聞いたりはしない。ただ…」

そこまで言った後、閉じていた瞳を開き、アマリアはまっすぐに僕を見つめた。

「私達は、力になるからね」

「…っ」

まるで心を読んだかのようなその言葉に目を見開く。

こちらを見つめているのはアマリアだけではなく、ルーカスとシルアさんもだった。

そう、僕達は互いに支えあっていく仲間。そんなことはわかっているんだ。けど…。

 

だからこそのことだってあると思う。

 

「……すみません」

自分は、みんなを巻き込みたくない。

いや違う。

頼る資格がないんだ…。

「おいサク!!」

「止めるんだルーカス」

「でもよぉ!」

納得ができないというように拳を握り締めるルーカスに、僕は俯くことしかできない。

そして彼を止めたアマリアは、やがて口を開いた。

「……わかった。でも相談したくなったらいつでも言ってくれ」

「………はい」

その時

ドアがノックされる音が響いた。

「【アマリア派】、マテリアルより伺った者だ」

「? 珍しーな、向こうから来るなんて」

「はーい、今いくよ」

そう言いアマリアがドアに駆け寄り開くと、スーツ姿の男性が一人、そこに立っていた。

「…要件というのは…?」

アマリアの質問に男性は頷いた。

「先ほど壁外にてモンスター達が暴走しているという報告があった。一種の興奮状態だ。その数がかなりあってな、幾つかの派閥に指示を出している」

「クエストか。今すぐかい?」

「ああ、他の派閥も向かっている。隊長も、今回は司令塔として参加だ」

「了解した」

男性は手に持っていた紙をアマリアに渡し一礼すると、去って行った。

そして振り返ったアマリアは、顔を引き締める。

「みんな。早急に向かうよ」

 

 

「で、壁っつってもどこのだ!?」

「えーっと…東エリアだ!」

ルーカスの質問に、僕に背負われるアマリアは紙を見て答える。

建物を飛び越え加速し疾走する。

「っ、あそこですか?」

シルアさんの言葉に前を見据える。

そこにはもう幾つかの派閥が壁の前で集まっていた。

すぐに僕達も合流する。

すると、隣から肩を叩かれた。

「っ!クレアさん!」

「久しぶりね」

そういえばクレアさんも違う派閥に入ってるんだっけ。などと思っていると、すぐ近くから変な声がした。

「ま、またお前達か!!」

「おーヨダンかー」

「どうでもいいように言うな!!」

隣にレスカルさんを連れ、ビシッとこちらに指をさす彼にアマリアは普通に流している…。

「まったく!お前のような派閥が呼ばれるとは驚きだな!」

「しょうがないだろう。だいたいが呼ばれるんだから」

完全に以前とは違いアマリアが優位にいる状況に汗を流し、僕は辺りを見回し…

「むぬっ!?」

変な声を上げてしまった。

「あーー!サっちーだ!!」

「サ…っ!?って、ルシアさん!」

ちょうど向こうも気づいたようで、いきなりルシアさんが大声を上げる。

周りからの視線に焦っていると、隣のシルアさんが呟く。

「サクさん。お知り合いですか?」

「あ、うん。いちおう…。この国で最強の派閥だよ…って、なんかシルアさんって、ルシアさんと名前似てるね」

「はぁ、そうですね」

「そんなことはどうでもいいんだ!サク、『サっちー』ってなんだ!!」

隣でギャーギャー言っているアマリアをよそに、駆け寄ってきたルシアさんに頭をさげる。

「お久しぶりで…」

「あぁあああああっ!!」

いきなりの叫び声に驚き顔を向ける。

するとそこには…。

「サク・ティネル!何故あなたがここに!!」

「マヤさん!?と、いうことは…」

「また、会ったね」

「! セフィアさん」

気まずそうに出てきた彼女に僕は

 

「この前は本当にありがとうございました!!」

 

深々と頭を下げた。

周りはついていけていないが、僕の言葉に、セフィアさんは初め僅かに目を見開いていたが、すぐに優しく微笑んだ。

「やれたんだね」

「はい!」

彼女の言葉があったから、僕はシルアさんを救えた。

あの時明らかにセフィアさんの言葉がそうさせてくれたんだ。

「なに見つめあってるんですか!!」

入ってきたマヤさんに遮断され、グイグイ詰め寄られる。

「なんなんですか!毎度毎度あなたは!!」

「すすすスミマセン…っ!!」

毎度僕は怯えることしかできないのだった。

そんな時

「こら。よさんかマヤ」

「う…っ」

マヤさんの頭にチョップが命中した。

唖然としながら視線を移すと…。

「おー!坊主がサク・ティネルか!!」

「へ?」

視線には大きな胸が広がり顔を赤らめる。

しかし飛び退く暇もなしに

勢いよく抱きしめられる。

「ん!んーーっ!?」

完全に大きな胸に顔を押し当てられている状況に、顔を赤くする、とゆうか息ができない!?

「な!?こらー!そこの乳でか隊長!!ラミス派だかなんだか知らないけどサクを離せーーっ!!」

「あの、サクさんが死んでしまいます…」

「ん?あー、スマンスマン」

解放された僕はすぐさま距離を置く。

そんな自分に「あっはっは」と笑う彼女は、どうやら【ラミス派】の隊長のようだ。

カンカンに怒っているアマリア、そしてじっとこちらを見てくるシルアさんに僕が焦っていると、彼女はスッと右手を出してきた。

「まー今回は大掛かりな共同クエストということで、頑張ろうじゃないか」

その言葉に黙り込んだアマリアは、前に出て、頷いた。

「ああ。よろしく頼むよ」

その時

「あらラミス。久しぶりね」

突然の声に顔を向ける。するとそこには綺麗な女の人がいた。

ラミスさんに負けず劣らず豊かな胸が露出され、どうしても目に入ってしまう。

長く伸びるストレートの白髪は、彼女の色っぽさを更に際立てていた。

「だ、誰ですか…?」

「私達【ラミス派】と肩を並べる【フローラ派】です!そんなことも知らないんですかっ」

「……スミマセン」

マヤさんにはもう何も言えなくなっている中、ある人物に気づく。

フローラさんの後ろにいる男性。

身長はかなりある。体つきもがっしりとしていて、表情は全くうかがえない無表情だ。

そんな彼に、僕は目を見開く。

【フローラ派】、それにこの人は…

「サクさん。彼らは西エリアでの…」

「うん、そうだね…」

あの時、結果救われた【フローラ派】の隊長、それに副隊長。

あの時、目の前の男性は言っていた。

「フローラ様に感謝するんだな」と。

という事はあれは意図して救ってくれたということなのだろうか…?

そんなことをあれこれ考える。その時

目があった。

「…っ」

あまりの迫力に、反射的にそらしてしまった。

命の恩人に凄い失礼だよな…、何やってるんだ、僕。

「残念ながら、今回私達は別のクエストがあって、参加はできないけど…」

俯く僕の視線に、誰かの足が入り込んだ。

頭を撫でられる。

優しく。でもどこか…

艶かしく

「また会いましょう」

そう耳元で囁かれた。

 

* * *

 

「おーっ、これはだいぶ集まっとるなー!」

隊長はそれぞれ少し離れた丘に集まり指令を出すのだが、主力であるラミスはそう言って下を見渡した。

「随分と余裕だね」

そんな彼女に次にやってきたアマリアは横目で指摘する。

ラミスはあっはっはと頭に手を当て笑うだけなのに対し、アマリアは溜息をついた。

再び歩き出したラミスは、丘のギリギリまで行くと腰を下ろし、「どれどれ〜」と表情を変えず飄々としながら状況を確認する。

「こんなのが本当に最強の派閥の隊長なのか?」

ボソリとそう言ったアマリアは口を尖らせる。

「コレ。なにを失礼なことを言ってる」

突然かけられた言葉にドキッとし、後ろを振り返ると

「ぅわ!フィルスじゃないか!」

「すぐ会う時がきたな」

そこには、ついこの間の共同クエストで一緒だったフィルスがいた。

「まさかこんなすぐに会えるとは思わなかったよ!」

「そうだな。だけど今は…」

そう言いながらフィルスは視線を前を向ける。

同じく向きを変えたアマリアも、「そうだね」と頷いた。

「よし!では、全員集まったみたいだな」

パンッと手を合わせたラミスは、立ち上がる。

そして親指で後ろを指差した。

「見たとこ、数は五十位だな」

「ご…っ!?」

つい声が出てしまい手で押さえる。

今軽がる言ったが、モンスターが五十。

考えたくもない状況にアマリアは息を飲む。

周りも騒めく中、ラミスは淡々と続ける。

「そんで自分らは全部で7の派閥だ。まぁ7と言っても、人数は大体いるだろう。ヨダーンっ、期待しとるぞ〜」

「うぐっ!?」

変な声を上げるヨダンはほっといて、さらに続ける。

「今自分の団員は、目の届く範囲が良かったというのもあり、10人連れてきた。あまり多くても邪魔なだけなのでな」

「…っ。邪魔だって!?多いほうがいいに決まってるじゃないか!」

「まぁそう言うな嬢ちゃん」

「じょ…!?」

顔を引きつらせるアマリアに、まあまあとフィルスがなだめる。

そんな中、ラミスは「さて」と、瞳を閉じ、3秒後ゆっくりと開いた。

目つきを変える。

「団員の中でも優秀なのを連れてきた。よってまずはそいつらを送り込む、魔導師以外のラミス派は戦闘開始、そう伝えろ。」

「は、はい!」

連絡班にそう告げる彼女に反論するものは一人もいない。何故ならその実力を誰もが痛いほど知っているからだ。

例え十だろうと、不可能でないのがラミス派だ。

アマリアも、表情を変えたラミスに気圧されてさえいた。

一気に場が引き締まり出す。

「これが前衛だ。残りの派閥で残り30といったところか?ヨダンはプラス20ほどだな」

その言葉に、こういった経験が無いアマリアほどとはいかないが、緊張を覚えているヨダンが頷く。

「よし、では中衛はお前に任せるぞ。ダウスのやつがいなくなったからな。ったくアイツめ、こういう時に役に立たん」

それにアマリアはギクリと肩を揺らすが、どうやらスルーされたようだ。

「後衛はその他だ。魔導師がいれば待機させろ。そいつらで一気に方をつけるからな。以上!」

再びラミスが手を合わせる。

その瞬間

周りが一気に動き始める。

「なんだなんだ!?」

わけがわからなくなってるアマリアに、フィルスが耳打ちする。

「共同クエストと言っても派閥のことは自己責任。つまり自らの派閥の司令塔は、あくまで自分達が動かすんだ」

「そ、そうか。よしわかった!」

たどたどしいが頷くアマリアは、連絡班のもとに向かう。

自分達は隊長といえど、刻印は刻まれていない。

しかもモンスターを寄せつける傾向もあるため、戦場には近づけない。なので指令は連絡班に任せるのだ。

唇を噛み締める。

完璧だった。

あれが最強の派閥。あまりに違う立ち回りだった。

「負けてられない!」

 

* * *

 

「もー!今日はジンラスもいないの!?」

「いや、あいつなら先に前衛に行ったぞ」

「えー!?なにそれズルーイ!よしっ、すぐ行こう!今すぐ行こう!」

そう言ってカラムさんとセフィアさんの腕をぐいぐい引っ張るルシアさんはこちらを振り返り

「じゃあねさっちー!私達行ってくるねー!」

そう言って手をブンブン振るルシアさん。

ははは…っ、全くの余裕で。

そんなことを思いながら、1つ引っかかることを言っていた。

ジンラスさん…?

過去の記憶が蘇る。

あれはそう、2年前。

僕はジンラスという人に会っている。

…名前が同じだけかなぁ…?

「じゃあね、サク」

「あっ、はい!えっと…」

思考の途中、セフィアさんに声をかけられハッとし、口を開く。

首をかしげるセフィアさんに、僕はこんなこと言える立場じゃないけど、などと思いながらハニカミ言った。

「セフィアさんも、気をつけて下さい」

彼女の瞳がわずかに開かれた。

「ったく。マヤが後ろに行ったからいいものの、いたらまたドヤされてたぞ」

「うぐっ!?」

溜息をつくのは、同じく幹部のカラムさんだ。

僕はブンブン首を振り、「そんなんじゃありません!」と抗議する。

「じゃっ、サっちー達も気をつけてねー!」

最後にそう告げ、彼らは言ってしまった。

「…なんか凄いのと知り合いだなサク」

「へっ?あ、いやっ、知り合いなんかじゃ…!」

「むー…」

「? シルアさん?」

「むー…」

むーって何…?

何故か前方を向き頬を膨らます彼女に汗を流していると、僕達にも指令が届いた。

「後衛、か」

「まぁ、小規模派閥ですし突然ですね」

「うん。じゃあ行こうか」

そう言って

 

踏み出した時だった

 

 

「生きるのには、命と同じくらいに何が必要かわかる?」

 

 

「ーっ!!」

心臓が大きく跳ねた。

呼吸が浅くなる。

目眩がする。

体が震える。

その言葉は…

何で…

 

「なーんちゃって!」

 

少女がいた。

でも

 

 

あの人じゃない

 

 

「!? サク避けろ!!」

瞬間、爆発する。

「っ、大丈夫ですかサクさん!!」

ギリギリのところをシルアに救われたサクは、その場にへたり込んだ。

「…っ、やっぱりどうかしたのかよサク!」

 

「はいはーい。お喋りはそこまでね〜」

 

「「…っ!?」」

爆発の、そしてさっきの声の張本人の少女は、その青みがかったロングヘアーをなびかせながらこちらへ歩いてくる。

「お迎えにあがりましたよ〜。サク・ティネル」

「な…っ、どういうことだ!?」

「サクさん!?」

しかしサクはへたり込むのみで反応を示さない。

「くそっ、他の派閥は!?」

「もう作戦に取り掛かってしまいました。おそらくこの爆発も戦いの一部と思われ特に意識されないと思います」

「それが目的か…っ」

そう言ってルーカスは前方の少女を睨みつける。

彼女はニコニコと笑いながら、その足を止めない。

「…勝てるかシルア」

「……すみません」

顔を歪め、シルアは謝罪する。

それを聞いたルーカスは、サクの腕を掴んだ。

「サク。立てるか?」

反応はない。

サクはただ胸を押さえ、浅い呼吸を繰り返している。

過呼吸に陥っている。

「ーっ。おいサク!しっかりしろ!」

「サクさん!しっかり息を吸ってください!」

そんな二人の声は届かず

サクは地面に倒れこんだ。

「!? 私がサクさんを…っ」

「く…っ。任せたっ」

少女は突っ込んでくる様子はない。

シルアが素早くサクを背負い、次には

「逃げるぞ!!」

駆け出す。

「あれれ〜。逃げちゃうのー?」

そう言って笑う少女は次の瞬間

「「な…っ!?」」

「追いついたっ」

一瞬で目の前に現れた。

凄まじい脚力。

その力は、シルアを大きく凌ぐ。

「ランク上位者か…っ」

そう言ってルーカスが大剣を振りかざす。

が、それよりも相手が上回った。

「遅〜いっ」

「カハ…ッ!?」

吹き飛ばされる。

「ルーカスさん!!」

目を見開いたシルアは、すぐに視線を相手に移す。

今の攻撃は、武器などではない

足だ。

「貴方、もしかして…っ」

「うーん?もしかして武器持ってないけど、”お前も”なの?」

「ーっ!」

間違いない、カルトラだ。

しかし腰には短剣が装備されているのを見ると、基本的には武器を扱うのだろう。

今の攻撃は最短ルートの攻撃を繰り出すため、短剣を抜く動作を省くため。

少女はスッと手を前に出す。

「ねぇ、その子ちょうだい。そしたら殺さないであげるよ?」

その言葉にギリっと歯を食いしばり、シルアは足に力を入れた。

瞬間

「リネ、後方から多数来た。引くぞ」

別の声がした。

声のした方を見上げると、丘の上に、鎧姿で性別もわからない人物がいた。

「え〜あとちょっとじゃーん!」

「時間がない。行くぞ」

「ふぁ〜い」

そう言い背を向けた少女は、パッと振り返る。

それに身構えるシルアに、無邪気に笑い、手を振る。

「また会いにくるね〜同士ちゃーんっ」

そして、消えるのは一瞬だった。

それとほぼ同時、後衛組が一気にやってくる。

魔導師がほぼだが、どうやら【フィルス派】もいるようだった。

「? どうしたんスかシルアさん?ってサクさんどうしたんスか!?」

「何かあったのか!?」

その中、呆然と立ち尽くすシルアは、ハッと我に帰ると、周りの言葉に構わずルーカスが突っ込んだ岩の元へ駆け出した。

「ルーカスさん!意識はありますか!?」

「あ、あぁ。なんとかな…。ったくあの怪物女め…」

頭から出血しているが、それも浅いようだ。

悪態がつけるほどの元気はあると確認し、シルアはホッとする。しかしすぐに表情を引き締めた。

「今回のって、まさかあの女どもの仕業か?」

「…どうやら、私達が見た人物以外にも、仲間がいそうな気がします。おそらくその中にテイマーが…」

「くそっ、どうなってんだ!」

そうして二人は赤髪の少年を見つめる。

気絶してしまったが、息は正常だ。

敵の狙いはサク。

理由はわからなくても、彼の様子からしても何かあるのだろう。

「サク。お前一体…」

何者なんだ?

その言葉は声に出さず。

次には二人の空間だけに沈黙が訪れるのだった。

 

 

 

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