ディメント   作:もやしメンタル

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第3話《己の強さ》

「では自己紹介といこうじゃないかっ!って聞いているのかい少年!?」

「はあぁぁ…終わりだ…ニールさん達になんて言えばいいんだ…」

目の前で騒がしい女の子をよそに僕は項垂れる。

いくらこの状況を説明するにしても、少女に拐われただなんて絶対信じちゃくれないだろう。

あれから僕は、強引に腕を引っ張られ建物の中、つまりこの子のアジトに通されたのだが…。

「あの…、本当にここがあなたのアジトなんですか…?」

「ムッ、何だいその言い方っ、これでも居心地はいいんだからなっ!」

そのアジトというのが、とんでもなく

狭くて。ボロい…。

ていうか絶対にこれは廃墟に無断で住み着いてるだけだろ!?

というのもここは、使われなくなった風車小屋だ。と言っても風車なんて原型をとどめていないし、思いっきり廃墟だ。

中は石造りで作られていた部屋が運よく残ったらしく。生活に必要な最低限の設備はあった。

「ふふん、探して探しまくってついに見つけたお風呂場ありの家!いやー、神は見捨てなどしないもんだねぇ」

「どんだけ贅沢なホームレスですか!!」

「誰がホームレスだ!少年っ、隊長に向かってなんだその態度は!」

「だから入りませんって!はやく帰り道教えてくださいよ!?」

「やだよーっ、教えたら帰っちゃうんだろ」

「当たり前です!!」

「ぶーっ少年のイケズっ!そんなことするんだったら残り少ないキュウリあげないぞっ♡」

「別にいりませんよ!!」

人差し指をチョンっと鼻に当ててくる少女に、今は恥ずかしさなど微塵も感じない。

こんなに人を怒鳴りつけるのは初めてで溜息が漏れる。いつも叱ってくれるニールさんの苦労が身にしみて分かった…。

そんなことに大きく溜息をついてから、僕はその時になって気づくことがあった。

「…それで、他の人たちはどこにいるんですか?」

「ふぇっ?」

辺りを見渡すが、街のメインストリートから外れたこの通りには人っ子ひとりいないようだ。

どこかに出かけているのかと尋ねた瞬間、少女は素っ頓狂な声を上げる。

「?、どうかしたんですか?」

「あはは…いや〜。そ、その〜」

頭に手を当て汗を流す少女。そんな姿に最悪の状況が頭に浮かんできた。

「ま、まさか…」

「あ、ありがたく思いたまえっ!君を私の派閥の1人目に任命しようっ!」

「帰ります!」

入り口へと脚を向ける。そんな僕の腕に少女がしがみつく。

「待ってくれぇ!なんでも、なんでもするからーっ!!」

「なんで僕が認定する側なんですか!?」

あまりに必死なので、僕もそこまで鬼ではない。帰り道も分からないので、仕方なく元の場所に座った。

「はあぁ…、それで、本当に派閥なんですか?」

「そうともさっ、一ヶ月前に【マテリアル】で印鑑を押してもらったとも!」

【マテリアル】とは僕が今までずっといた【ディメント養成所】の事だ。この街の管理所となるあの施設は、一般的には【マテリアル】と呼ばれている。派閥を結成するためにも許可を下すのは【マテリアル】だ。

「きっとしつこく頼み込んだんだろうな…」

胸を張る彼女は「あっ」と、座る僕の前に真っ直ぐ向かい合った。

「そういえば自己紹介がまだだったねっ。私はアマリアだ!少年はなんというんだい?」

「…サクです。サク・ティネル…」

もうクタクタになりながら、どうにでもなれと僕が答える。するとアマリアさんは満面の笑みになりながら、再び手を差し出してきた。

「じゃあこれからよろしく頼むぜっ、サク!」

いきなりの呼び捨てに苦笑いし、その手を握り返…。

「ってだから僕は入りませんって!」

危ない危ないと手を引っ込めると、アマリアさんは「ちっ、もう少しだったのにっ」と指を鳴らした。

「だいたいっ、何でそんなにも僕なんですか?自分は全然強くなんて…」

「君は強いよ」

「…えっ」

僕の言葉を遮り発せられた言葉には、今までのアマリアさんからは考えられない真剣な声だった。

僕が目を見開いていると、アマリアさんは一歩一歩、僕に近づき、身をかがめ、座る僕と同じ目線となる。しかも顔がものすごく近い。鼻と鼻がぶつかりそうだ。

至近距離で見るアマリアさんの美しさに顔が赤くなる。そんな僕をまっすぐに見据える彼女は、そっとその両手で僕の頬を包み込んだ。

「君は強いよ」

再びの言葉。

気づけば僕の体はピクリとも動かなくなっていた。

ディメントを1度使っただけでもまともに動けなくなるような僕に問いただすようにそう告げるアマリアさん。静寂が場を包み込んだ。

「あ!それとこれからは隊長と呼んでくれたまえっ」

「…へっ?」

するとすぐに近づけていた顔を離したアマリアさんは、両腕を横いっぱいに広げ、また先ほどと変わらない彼女に戻っていた。そんな様子に僕は只々唖然とする。それに気づいたアマリアさんは。ピョンっと僕にまた近づいた。

「君はもっと自分に自信を持ちたまえ。なんたって君はっ…」

「君は?」

「き、君は…」

言葉の途中で停止するアマリアさん。僕が首をかしげるとダラダラと汗をかき出して後ろを向いてしまった。

「さ、さーっ!では早速儀式を始めようかっ!」

「ん?儀式…?」

なんだかはぐらかされた気がするが、聞いたことのない言葉に疑問を持っていると。こちらを振り向いたアマリアさんが笑顔で答えた。

「儀式というのは、その派閥の証となり、さらに力を手に入れる、つまりは人間の力の境界線を超えることのできるようになる刻印を、体に刻むことだよっ」

初めて聞くことだった。

確かに派閥へ行ったディメンター達は、常識をはるかに超えた力を持つと聞くが。そういうことだったのか…?

「と言っても、そこから強くなるかはその人次第だけどねっ」

そう言って完全に向き直るアマリアさん。そんな彼女に、僕は口を開いた。

「それが、アマリアさんはできるんですか…?」

「だから隊長だって!ああそうさっ、誰もが隊長になれるわけがないだろう。この技を扱えるものだけが、隊長の権利を得る…」

そうして瞳を閉じたアマリアさんは、すぐにバッと両手を広げた。

「よしっ、じゃあやろうじゃないか!」

「え!?いやだから、僕は入りませんって!」

「またまた照れちゃって〜」

「照れてません!!」

ドタンバタンとしているうちに、時間は過ぎ去ってゆくのだった…。

 

* * *

 

「グッモーニーング!サークっ!!」

「グハッ!?」

いきなりの衝撃に目が覚める。

どうやら自分は眠ってしまったようだ。起きた原因であるアマリアさんは、床に寝ている僕に抱きついていた。それに気がつき完全にパニックになる。

「なななな…っ!?」

「いやぁ〜、寝ているサクは可愛らしかったな〜!食べてしまいたいっ!」

「何言ってるんですか!?」

そこで「はっ!」と気づく。まさか寝ている間に刻印を…っ!!

「いやだな〜、いくら私でも寝ている少年にそんなことはしないよー」

体のあちこちを探す僕は、彼女の言葉にホッとする。

そんな僕を見て、なぜかアマリアさんはポカンとしている。

「…もしかして、今の言葉だけで信じたのかい?」

「えっ?だってしてないんですよね?」

「ま、まぁそうだけど…。その、私が嘘をついているとは思わないのかい?」

「嘘なんですか?」

「そ、そうじゃないけど…。なんだか調子狂うな…」

僕が首をかしげると、アマリアさんは頬をかいた矢先、グゥと僕のお腹が情けない音を出した。

「……」

「……」

きょとんと立ち尽くすアマリアさん。

顔を赤くする僕。

思えば昨日、ご飯を食べる前に連れてこられちゃったんだよな…。

するとアマリアさんは苦笑いを浮かべ、立ち上がった。

「なんだお腹が空いているのかい?じゃあ何か食べにでも行くか」

そう言って僕の腕をとると、アマリアさんは風車小屋のドアを開けた。

 

* * *

 

いくつものお店が並ぶメインストリート。その中を僕達は、

いくつもの視線を受けながら歩いていた。

『なんだあの子』

『もしかして”あの派閥”に入ってるのかっ?』

『まさか、またあの女が連れ込んでるだけだろ』

その視線は冷たく、痛い。

僕というか、アマリアさんに向けられたものだということはすぐにわかった。

小声で交わす言葉が耳をかすめる。

自然と道が開き、そこに入った子供がすぐに母親に引っ張られていった。

「…すまないね、やっぱり待っていてもらうべきだったかな」

「えっ」

前方を歩いていたアマリアさんが振り返り笑う。

しかしその笑みはとても悲しそうなものに感じた。

 

 

そうして歩いていると、アマリアさんは人気のない路地裏へと入っていく。気がつけばそこには一つのお店があった。

「入るぜクレア」

そう言ってアマリアさんはドアを開ける。すると、一人の女性がこちらに振り向いた。

うねりのある緑色の髪は肩に少し当たる程度の長さ。顔は大人びていて、どこか色っぽさを感じさせる。シャツの裾を捲り上げ、開かれた胸元の大きな胸に急いでそこから視線をそらせた。

「あらアマリア、今日は一人じゃないのね。誰かしら?そこの坊やは」

僕の存在に気がついた女性は、珍しそうに僕を見つめた。すると僕の隣でアマリアさんが、目の前の女性とは違う小ぶりなその胸を張る。

「へっへーん!聞いて驚けクレア!ついに私の所にディメンターが…」

「だから入りませんって!!」

そんな僕達に、クレアと呼ばれた女性はクスッと笑った。

「もしかして、アマリアに巻き込まれちゃったのかしら」

「巻き込まれたとはなんだ!」

そう言ってそっぽを向いたアマリアさんは、「じゃあサクはここでご飯を食べればいいさ」と出て行ってしまった。

「えっ!行っちゃうんですか!?」

「君が無断で逃亡しないことぐらいわかったさ、今来た道だって覚えただろう」

「は、はい」

「じゃあ私はこれから忙しいんでね、失礼するよ」

バンッ!

「……?」

「まったくあの子は」

何故か怒ってしまったアマリアさんに、僕はきょとんとし、クレアさんは溜息をついた。

 

 

「なんだかアマリアが迷惑をかけてるみたいで、ごめんね」

「あはは…」

作ってもらったご飯を食べながら、僕は苦笑いする。

「あの…、アマリアさんとはどういった関係なんですか?」

「んー私達は、まぁ、腐れ縁みたいなもんよ」

なんだかこれ以上聞いてはいけない気がしておし黙る。

するとクレアさんは目をわずかに細めながら口を開いた。

「周りがとるアマリアへの態度はもう見た?」

「…はい。なんだったんですか?あれ」

僕の質問に、こちらを見つめていたクレアさんは、次にはその瞳を伏せていた。

 

 

「あの子ね…。一族の生き残りなのよ」

 

 

「…え」

言葉の意味が一瞬分からなかった。あたりを静寂が包み込む。

やがてそれを断ち切ったのは、再び口を開いたクレアさんだった。

「その事件の内容は、私には教える権利はない。でも、あの子以外は、みんな…。そんな中必死で逃げてきたあの子が周りから向けられた言葉は、『汚れた能力者』。たった一人生き残ったのも、あの力のおかげ。というかことの原因はアマリアにあった…と」

目を見開く。

浴びせられていた視線を思い出す。その目はまるで、この世の汚物を見るようなものだった。

「ここに住んでいいと言ったんだけどね。迷惑をかけるからって断られたわ。あの子は誰にも頼らない。人が死んでしまうことを恐れて動けない」

そこまで言ったクレアさんは、伏せていた瞳を僕にへと向けてきた。

「そんなアマリアのあんな表情久しぶりだったわ。しかもあの子がこんなに誰かを求めるだなんて…」

そこまで言ったクレアさんは、僕の手を握った。

「お願い。あの子を支えてあげてくれない?」

「ーっ!」

真っ直ぐに見つめられる瞳。そんな瞳に僕は、

合わせることができなかった。

「僕なんて何の力もありません…」

そんな僕に、クレアさんは「図々しかったわね」と笑い。それからは別の話題へと変わっていった。

 

* * *

 

人目を避けるため、路地裏を歩いて行く。

あの少年の前でだと、何でだか強がってしまう自分がいる。

本当の私は、こうして俯いていることしかできないのに…。

「見つけたぞ」

「っ!?」

かけられた声にバッと顔を上げると、そこには複数の男達が。嫌な予感が体に走り、後ずさる。しかし

「おっと、どこ行く気だお嬢ーちゃん」

「っ、放し…っ」

背後から腕を掴まれる。

強い力で握られ、顔が歪む。

そんなアマリアに、一人が口を開いた。

「じゃあ行こうか」

 

* * *

 

「ただいまアマリアさん」

ドアを開けると、中は静まり返っていた。

「忙しいって、本当だったのかな?」

内容は分からないが、どこかへ行っているアマリアさんに、何だこの信頼感…などと考えながら、オンボロの一つの椅子に座った。

そして頭をよぎるのは、さっきのクレアさんの話。

そんなこと思いもしないような笑顔の少女。

その姿は、なぜだか

とても懐かしく感じられた。

 

* * *

 

「このっ、放せ!!」

街から出た森の中で、アマリアは木に縛り付けられていた。

巨大な壁のおかげで街には入ってこないが、それを超えた森の中には”怪物が現れる”ため、派閥のものを除いては、誰も入ろうとはしない場所だ。

「いいだろう放してやる。だがそのかわりに、俺たちに刻印を刻め」

「なっ!?」

そこで全てを悟る。この男達の目的は、力。

一線を超えた力を手に入れられる刻印だ。

しかし、いくら刻印を刻んだところで強くなれるというわけではない。そこでも試されるのは、才能、努力といった、普通のこととかわりないのだ。

「…すまないが、それはできないよ」

刻印を与えても、結果は目に見えている。

何より、今この力を与えることを認めているのは一人だけだ。

すると一人の男がニッと笑い、踵を返した。

「だったらお前はここに置いていく。せいぜいモンスターの餌にでもなってろ」

「っ!そ、そんなこと許されると思っているのか!?」

「まー普通だったら【マテリアル】の奴らがタダじゃおかないだろうなー」

「だったら…っ」

「普通だったら、だ。お前がもしいなくなっても、”誰も気付きゃしねぇよ”」

「ーっ」

その言葉に目を見開く。ここは街から完全に引き離された場所。このことが知られるには、誰かしらが自分がいないことに気づかなければならない。

そんな者はいない。

クレアとも極力会うのを控えているから、数日いなくても疑問に思わないだろう。それ以外に知り合いがいるはずがない。

ここに置いて行かれたら、自分は間違いなく死ぬだろう。でも…

「最後に一回だけ聞くが…」

「嫌だね」

でも、それでいい。

ずっと思っていたことだ。自分もあのとき死ぬべきではなかったのかと。

周りからさげすまれ続けるくらいなら、いっそこれが一番いいのかもしれない。せめて最後まで、自分には失望されたくない。

「バカなやつだ。せいぜい強がってろよ。行くぞお前ら」

最後にそう吐き捨て、男達が去っていく。最後に振り向いた男はこちらを向き、口を開いた。

 

「じゃあな、『汚れた能力者』」

 

あの中の一人が、モンスターが寄り付かないようにする臭い袋を持っていた。あれがなくなった今、すぐにモンスターが寄ってくるだろう。

『グルァアア…』

思ってすぐに現れたのは、巨大な熊のような姿の【ベアー・ザック】。

ポタポタとよだれを垂らしながらこちらに寄ってくる。その額には、モンスターとしての証である玉が埋まっている。宝玉のようにエメラルドに輝くそれは、美しさなどはモンスターの雄叫びによってかき消された。

そう、これでよかったんだ。

周りから蔑まれ、嫌われてまで生き残った意味なんてなかった。

何にも必要とされず。必要とするのを恐れて目をつむってきた。

もう心残りなんてありはしない…。

もしあるとすれば。クレアに、あの少年に黙っていなくなってしまうことだ。

サクは風車小屋で待っているのだろうか。

そういえばあの少年を、気づいたら自分は必要としてしまっていた。求めてしまっていた。

たまたま見た闘技場での一戦。

あの瞬間に体が震えた。

間違いないと

この子しかいないと

そう思ってしまった。

モンスターがどんどんと迫ってくる。

あの時もこんな感じだった。

押し寄せるモンスターで、視界が赤く染められていくのだ。父が、母が、みんな死んでいく。みんな…

 

 

 

「フレイムウィンドオオオオオオッ!!」

 

 

 

 

瞬間

視界が一気に赤く染まった。

「……え?」

しかしその赤は、血ではなく。

炎だった。

目を見開く。

目の前に現れたのは、サクだった。

体が凍りつく。そして震えだす。私は引き裂かれんばかりに叫ぶ。

「なんで来たんだよ!?逃げるんだ!君が死んでしまう!!」

振り向いた少年の顔は、笑っていた。

「あなたが言ってくれたんじゃないですか。『君は強いよ』って」

「ーっ!?」

瞬間に走り出した少年は、純白に輝くサーベルを炎で包み込み、モンスターへと突っ込んでいった。

爆炎により吹き飛ばされていたモンスターが起き上がり、雄叫びをあげる。

刻印を刻まれていない者が相手にするモンスターではない。無茶苦茶だ。

しかしサクは怖気ない。

自らのディメントの風によって速度を上げ、一気に間合いを詰める。炎を纏う一刀の剣が、【ベアー・ザック】に向かって振り上げられた。

切り裂き、切り裂かれる。

アマリアはその光景を呆然としながら見守っていた。

その速度、威力によって、必死にモンスターに食らいつく少年。

その体は傷つき、命を削ってゆく。

「ああああああああああああッ!」

少年はそれでも怯まずモンスターに向かいうって行った。

 

 

 

 

「大丈夫ですかっ?」

「どうして、ここに…」

目の前に広がるのは、崩れ落ちたモンスター。そしてそれを倒した少年もまた、血まみれに、フラフラになりながら縄を解いた。

「いつになっても帰ってこないから、いくらなんでも僕を放って置きすぎだと思って。街を探してもいないし、なんか嫌な予感がしたんですよ」

「なん、で…」

歯をくいしばる。自分でもよくわからない感情がこみ上げてくる。アマリアはそのまま俯いた。

「私は、汚れている…」

何人もの死体を見捨て、見殺しにしてきた私は…

 

 

 

「そんなことない。あなたは、綺麗だ」

 

 

 

瞬間目を見開き、少年を見つめる。サクは優しく微笑んでいた。

 

 

「アマリアさん。僕は、死にませんよ」

 

 

「ーっ」

「あなたを一人になんてしない。入ります、あなたの派閥に。僕に力をくれませんか?”隊長”」

「ーぁ」

涙腺が壊れる。涙が止まらない。恐れていた何かが心の中で溶かされていく。

少年の手が伸び、胸に抱かれる。私は只々その体にすがりつき、嗚咽を漏らした。

「サク、私はあなたといたい」

「はい……」

抱き締められる。

ただ泣くことしかできない体が、少年に包まれる。

「ずっと一緒にいます」

静寂が包む森の中で、私は少年の胸の中で泣き続けた。

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