ディメント   作:もやしメンタル

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第34話《それぞれの思い》

「で!今どういう状況なんスか!?」

「何にもわからないのに飛び出すからだよマキちゃん…!」

前方のカルトラの少女、鎧の人曰くネルをビシッと指差し言うマキに、シルアは汗を流す。

いい加減、慣れなければ…。などと考えながら、前方から視線をそらさないまま口を開く。

「今回の騒動の元凶です。彼らを倒さなければ、モンスター達は止まらないはずです」

「おー!なんか凄い事してたんスね、シルアさん達!」

「こ、これって自然現象じゃなかったんだ…っ」

小さく頷き、歯を食い縛る。

問題は、余裕たっぷりに笑っているネルという少女をどう倒すか…

「まーようするに、あの人を倒すんスね!だったらやるっきゃないっスね!」

刀を抜き構えるマキに、シルアは一度ポカンとしたが、すぐに今度は大きく頷いた。

「じゃあ、行きます!ユニスさん、サポートお願いします!」

「は、はい…!」

「おーっし!!」

疾走する。

「お!やっとかかってきた。待ちくたびれたよ〜ってか増えてるし」

まだ腰の短刀を抜こうとしないあたり、余裕があると判断したのだろうか。そんな相手にシルアとマキは一気に突っ込む。

シルアの回し蹴りをネルは後ろに飛び退き回避する。それでも止まらずシルアは蹴りを繰り出す。

ネルは次には前に出て、攻撃を繰り出す。

その時

「あんま趣味じゃないスけどー」

ズザザッと砂埃を上げ現れたマキの位置はネルの背後。

「ーっ」

瞬間的な速さで刀を振り抜く。

カキーン、と

火花が散る。

マキの刀は、短刀とぶつかり合っていた。

ネルが短刀を抜いた。

「そうこなくっちゃ!やっぱりやるなら剣と剣っスよ!」

「…っ、このガキッ」

初めてネルから笑みが消える。

どうやら予想よりもマキは上をいったらしい。

ただでさえ2対1

いや、3対1

「ー!?」

飛んできた矢を、ネルが間一髪で避ける。

しかしそれを許さないと言うようにマキが第2の攻撃を繰り出す。

すごい…

先ほどの矢は、ユニスの放ったものだ。

こちらが戦う中で、正確に狙う事など、普通は不可能。

相手の動きを正確に把握していなければならないのではないか…?

いや

相手を知るはずがない。つまり

マキさんを知り尽くしている。

彼女が次に出す攻撃は、そのタンミングは、次にどう動く。

きっとそれらを全て把握しているんだ。

何より驚くのは、そのコンビネーションということだ。

「シルアさん今っス!」

「…っ、はい!」

一瞬の思考を振り切り、地を蹴る。

ユニスの矢との攻撃がやりづらいようなネルに向け、蹴りをー

 

「調子に乗んなッ!!」

 

「ー!?」

「あ、やばいっスね」

「マキちゃん!シルアさん!」

高速だった。

まるで目で追えない攻撃を食らう。

蹴りなのか、拳なのかも分からないまま飛ばされる。

マキも同時に吹っ飛び転がる。

なんとか起き上がり、約5M先で膝をつき口を拭っているマキは、頭から浅くではあるが出血していた。

前を見る。

先ほどの衝撃で頭がクラクラする中、立っているネルはもう笑ってはいない。

怒らせてしまったようだ。

なんて攻撃力…

「だ、大丈夫!?」

「自分は平気っスよ。シルアさんは?」

「…大丈夫です」

答えながら考える。

たった一撃でこのざまだ。このままじゃ負けてしまう。

考えろ、考えろ、考えろ…っ

 

「…っ。マキさん!ユニスさん!お願いが!」

 

「は、はい…!」

「なんスか?」

この戦いは、長引いたら確実に仕留められる。相手はじわじわと、獲物を狩るようにこちらを消耗させようとしている。

ならば

「20秒ほど、時間を稼いでください。一気にカタをつけます!」

仕掛けるだけだ

マキは迷いなく親指を立て、ユニスも続いて頷く。

その瞬間、シルアは駆け出す。

「お願いします!」

ネルに向かって…ではなく、真逆へ

「 逃すわけないじゃん…!」

すぐに後を追おうとするネル、しかし

「おっと、忘れないで欲しいっスね!」

「ち…っ」

刀と短刀がぶつかり合う。

1秒

「邪魔だし!!」

繰り出された蹴りを後ろに飛び避け、刀を握り直し地を蹴る。

マキの攻撃速度はみるみる増してゆく

5秒

「く…っ、お前ランク何だよ!?」

「ちょうどこの前、Dになったっスよ…っと!」

激しく火花が散る

「今まで手、抜いてただろ!!」

「何のことっスか!」

「このーって!?」

矢が飛ぶ

「く…っ」

間一髪で避け、頬にかすり血が滲む

10秒

それと同時に、シルアは急停止し、すぐに方向転換。

元来た道を

全力で疾走する

加速し、凄まじいスピードになる

「鬱陶しい…!」

「よそ見は、ダメっスね!!」

「!?」

左腰からの斬撃が、入った

「うぐ…!?」

血が飛び、ネルが歯をくいしばる。

「ユニスっち!!」

「はい!」

マキにもう一本、刀が投げられる。

それを難なく掴み取り、持ち手を逆にし、振り抜く

「こ、の…!」

ネルは大きくしゃがみ込み回避。

15秒

シルアの狙いは、助走をつけること。

最大限の速度で繰り出す蹴りなら、いくらランクが劣っていても、仕留められる。

いや

「仕留めてみせる!!」

 

ずっと自分は奴隷として生きてきた。

自分のカルトラの力は、破壊し、利用されるものでしかなかった。

 

でも、サクさんが教えてくれた。

 

自分の力で、何かが、ほんの一握りでも、守れるということを。

 

サクさんが、私を変えてくれた、導いてくれた、助けてくれた。

 

暗闇から光へと、手を差し伸べてくれた。

 

そのとき決めたんだ…

 

20秒

 

 

この力は、この人のために使おうと

 

 

「はぁああああああああああッッ!!」

ネルが目を見開く。

その顔が歪む。

目の前にあるものは、シルアの繰り出した蹴りだった。

 

吹き飛ばす

 

激しく転がり、地面に体を打ち付ける。

そして約20Mの地点にあった岩に衝突する。

激しく揺れる地面。砂煙が舞う。

「ま、まじっスか…」

「す、凄すぎ…」

マキとユニスがポカーンと口が開く中、シルアは起き上がり、身を翻した。

 

* * *

 

「おぉおおっ!!」

大剣を振りかざし、相手の長剣とぶつかる。

押し合う中、もう一つの影。

「よ…!」

背後に回り込んだハルが短刀を突き出す。

しかし

「甘いわ…!」

「うぉ!?」

ルーカスの大剣を振り払い、腹に蹴りを食らわすと、すぐさま向きを変える。

「げっ、マジ?」

苦笑いを浮かべるハルに水平切りを繰り出す。

それをハルは短刀で何とか受け流し、後ろに飛ぶ。

それと同時に持っている短刀を相手めがけ投げる。

交わした相手はそのまま地を蹴った。

「血迷ったか、丸腰だぞ!」

「それは、どうかな…っ」

思いっきり何かを引く。それは一度キラリと光った。

「…っ、糸…!」

すぐさま振り返る。

そこには勢いよく帰ってくる短刀。

「どこ見てんだ!!」

「…っ」

ルーカスが大剣を振り下ろした。

ヴォルスの頭に直撃する。

しかし

「か…って!」

腕のしびれにルーカスは顔を歪める。

ヴォルスは短刀を弾き飛ばし、次に

回転を利用した回し切り。

「こんの…っ」

ルーカスに当たる直前。割り込んだハルは隠し持っていた片手剣でガードする。しかし、堪えきれない。

2人もろとも吹き飛ばされる。

地面に体を打ち付けながら、やっと停止した後、ふらつく体を何とか起こす。

「なんだよ…あいつの鎧っ、硬いにもほどがあんだろ…!」

「こりゃまいったね…、攻撃力も凄いし、鎧関係なしに速い。…でも」

「?」

カタンッ

ハルが黙ったすぐ後に、そんな音がした。

顔を向けたルーカスは目を見開き、次にはニヤリと笑う。

頭の鎧が割れていた。

地面に落ちたそれは、もう使い物にならないだろう。

「ルーカスの攻撃は、以外に強いってことだね」

「なんだよその言い方!」

相手はやはり男性のようだ。

凛とした表情で、歳はそれなりにいっていて、僅かに白髪交じりの髪は短い。

「それに、頭に直撃したんだ。振動だってあるはずだから、結構クラクラしてたりし…」

勢いよく突っ込んでくる。

その速度は先ほど以上。

「どこがクラクラだ!?」

「あ、あはは…」

大きく横に飛び込み回避する。

相手の振り下ろした攻撃は、地面にめり込み、激しく揺れる。

「さっきより強くなってねぇか!?」

「怒らせたかな…?」

中腰で中央のヴォルスを見る中、彼はゆらりと起き上がり、ヒュンッと剣を振り払った。

「お前ら、タダで済むと思うなよ」

瞬間

ルーカスに拳が命中する。

「速…っ」

吹き飛ぶルーカスを、さらに追うヴォルスは、止めとばかりに長剣を振り絞る。そして

「間に合わ…!?」

振り抜…

 

「【ヴェロス・エストレア】!!」

 

「!?」

光の矢が降り注ぐ。

そして

ヴォルスめがけて落とされた。

激しく辺りが揺れる。

「かは…っ、ごほ!」

むせるルーカスは、揺れる視界から、彼女を捉える。

「お前、洞窟の…っ」

「よくわかりませんが、助太刀します」

「え、マヤ・カルヴァート!?」

金色になびく髪、サファイヤのような瞳。

それは【ラミス派】であるマヤだった。

「一度しか言いませんよ!今からルーカスさんの大剣に私の魔法を覆います。攻撃力が大きく上がるので、決めてください!援護します。そこのあなたも手伝ってください!」

「りょ、了解」

テキパキと指示を出し、マヤは杖を構える。

その先には起き上がるヴェロスが。

「小娘が、なんて魔力してやがる…っ」

「行きます!」

マヤが杖をルーカスに向ける。

「【我が力とし、加護とせよ】」

短い詠唱の魔法。

 

「【セイント】!」

 

次の瞬間、ルーカスの大剣が光り出す。

「そんなに続きませんので!」

「おう!」

「この小娘がぁあ!!」

再び攻撃してきたヴォルスを

「フッ」

ハルが止める。

「ガキが!!」

繰り出される攻撃を、ハルは交わしてゆく。

「チョコマカと…!」

「避けるのは得意でね…っと!」

大きく飛ぶ。そして

「おぉっら!!」

「ーッ!!」

ルーカスが思いっきり振り絞った大剣を叩き落とす。

とっさに出した相手の長剣と衝突する。

激しく光が飛び散る。

 

ディメントの暴走。

それは過去の事件で、たっぷり味わった。

サクも姉のようになった。

あの時、姉は笑っていた。サクはどうだったのだろうか。

あいつはいっつも悩んでた。

副隊長として、役目を果たそうと、いつも努力してる。

日も上がらない早朝に、いつも特訓してるのだって知ってる。

少しでもみんなのためにと、頑張っている。

俺は言った。『俺は信頼のない場所にいる気はねぇからな』と。

 

認めるぜ

 

お前は、信頼できる副隊長だよ。

 

相手の長剣が

くだけ散る。

「おぉおおおおおおおおおッッ!!」

大切断

光が、辺り一帯に充満した。

 

崩れ落ちるヴォルス。

ルーカスは、剣を振り払い。

身を翻した。

 

 

 

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