ディメント   作:もやしメンタル

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第39話《才能》

「ハムハムハムハム!」

「「「…」」」

物凄い勢いでご飯を食べてゆく少女に、サク達は汗を流す。

現在は、たまに来る飲食店に来ているのだが…

「っぷはー…おかわり!」

「まだ食うのかよ!?」

一体その細い体にどうやって入ってゆくのか、次々に出される料理を完食してゆく。

流石に店の人も走り回りもう勘弁という顔だ。

そして最後に大盛りのピラフを食べ終えたところで、やっと手を止めた少女は、「ふー」とお腹をさすり

「こういうのは腹八分目って言いますしねっ」

と言いにこりと笑うのだった。

そんな少女にポカンとし、積み重なった皿を見つめ…

「「「はぁぁ…」」」

僕達は同時に溜息を吐くのだった。

 

 

 

 

「今回のクエスト代パーだな…」

「本当にスミマセン、スミマセン!!」

店を出てルーカスが軽くなった財布を振り、肩を落とす。

それにやっと我に帰ったというように、涙ぐんだ少女は高速で頭を下げた。

「全部払ってもらうなんてどう償えばいいのかっ」

いつの間にか土下座に変わっている少女は、またも高速で何度も頭を下げ、地面にヒビを作っている。

「また怪我しちゃいますって!頭を上げてくださいっ」

アタフタする僕の声は聞こえていないような少女を、シルアさんがヒョイと持ち上げ立たせることで止まらせた。

「落ち着いてください」

「は、はい!スミマセン!」

シルアさんの言葉に再び我に帰った少女は再び土下座をしようとしてシルアさんに止められる。

そんな彼女に、僕は頬をかいた。

「えっと…、とりあえず無事でよかったです。もう体は平気ですか?」

それを聞き、やっと動きを止めた少女は、僕に向き合った。

「は、はい。あのっ、このたびは本当に…っ」

「もう謝らなくていいです」

途中でまたシルアさんに止められる彼女に苦笑いしていると。隣でルーカスが首をひねった。

「でもよ。なんで洞窟で倒れてたんだ?1人だったからソロってことかもしれねぇけど、一文無しだし」

「えっと、それは…」

俯きモジモジしている少女。

そんな彼女に僕は一歩近づいた。

「あの、言いたくなければ言わなくても大丈夫ですよ。無事ならなりよりです。じゃあ僕達は行きますね」

「困らせてごめんな、忘れてくれ」

「では、お大事に」

それぞれ頭を下げ、アジトに向かって歩き出そうと

「ま、待ってください…!」

「「「?」」」

声をかけられ振り返る。

少女は手をギュッと握った。

 

「私を…あなた方の派閥に入れてくれませんか!?」

 

* * *

 

「いやぁ歓迎するよ!よろしくねっ」

「よ、よろしくお願いしますっ」

ブンブン握手され慌てている少女を見て、僕達は汗をながす。

「えっと…ソロじゃなかったんですか?」

「は、はい。派閥に入ってたんですけど、あの洞窟で置いていかれてしまって…クビだと…」

「クビ!?」

困り顔でそう言う彼女の言葉に目を見開く。

それに少女の手を握ったままアマリアはうんうんと頷いた。

「派閥の世界は厳しいからねぇ」

そこまで言うと、閉じていた瞳を開け、アマリアは両手を上げる。

「まぁ堅苦しいのはその辺にして、さっそく自己紹介だ!」

そんな隊長に僕達が苦笑いする中、アマリアは両手を腰を当て胸を張る。

「私はアマリア!この派閥の隊長だっ」

「え、えっと…副隊長のサク・ティネルです」

「ルーカス・アルバネルだ。よろしくな」

「シルア・フェリクです。よろしくお願いします」

みんなのを聞いていた少女は、ピシッときおつけをした。

「わ、私はルル・セネットです!」

 

 

 

 

その日の晩ご飯は盛り上がった。

ルルさんも色々と話してくれて、思った通り魔導師なんだとか。

でもあまりにも才能がないのでどの派閥からもすぐに追い出され、これでなんと5回目だという。

そんなルルさんに、「私達のところは大丈夫だ!なんたって常に人数不足だからねっ」と笑うアマリアには顔を引きつらせるのだった。

そして翌日。

日が上がりだす早朝に、僕達は今日も壁外に向かう。

さっそく同行するルルさんは、緊張している様子だった。

「セネットさん、力を抜いてください」

シルアさんの言葉に「は、はい!スミマセン!」と頷くルルさん。うん、全然力入ってるな…

「で、でもクエストとかって、僕達より経験あります、よね?」

「え、えっと…ランクはFで、一年とちょっと経ちますっ」

1年とちょっとで派閥を5回クビになったという事か…などと思ってしまいすぐに消し去る。

「じゃあ俺らより先輩じゃんか。ルルはいくつなんだ?」

普通に聞けるルーカスに驚くが、どうやらルルさんは気にしていないらしい。

「17です」

「へぇ、15くらいかと思ってたな」

「私は納得です。セネットさん大人っぽい気もしますし」

…うん。確かに大人オーラがするような…しないような?

「ふーむ、確かに色気あるかもな。ホントうす〜くだけど。むしろシルアの方があるけど。まぁ胸はシルアよりも結構でか…」

「ルーカスさん?」

「す、スミマセン…」

そんな中3人からじーっと見られるルルさんは一気に顔を赤面させた。

「そ、そんなに見ないでください…!」

 

* * *

 

「はぁあああッ」

シルアの蹴りが入り吹き飛ぶツリー・バレクスはまだ反撃してきた。

最近では、クエストの難度が上がり、中級も相手取る。

ランクアップのおかげでなんとか戦えるし、ツリー・バレクスは中級の中では低レベルと言われる。このモンスターの進化は、大きさが巨大化するだけで決められ、ランクアップは殆どないかららしいが、正直きついことこの上ない。しかも今回は単独クエストだ。【フィルス派】のみんなはいない。

突進してきた相手にルーカスは大剣を構え、受け止める。

せば競り合いになったのを見て、サクは駆け出す。

しかし

「す、スミマセン!?」

「へ?」

視界が一気に明るくなった。

「あイダ!?」

直後一気に爆発した謎の光、ルルの魔法は、サクの顔面に命中…

そのまま大きくサクはずっこけた。

『ギィェエエエエッッ』

「うおっ、しまった!?」

「サクさん!」

一瞬のすきを見逃さずモンスターがルーカスと押し合いながら、体からツルを出す。

そのツルはサクに迫る。

「…っ、やば!?」

バッと起き上がりそれをなんとか回避し、短刀で断ち切る。

そしてすぐに現れたシルアがそのツルを掴み

「はぁあああ!」

思いっきり引っ張る。

「セネットさん!詠唱をっ」

「あ…はい!」

シルアの叫びに、アタフタしていたルルさんは2度目の詠唱を始める。

「し…【白き幻想よ】」

引っ張られ、約5Mはある体が高く宙に浮く。ちなみに初級は3Mほどだ。

「シルア!足借りるぞ!」

「はいっ」

「【その光を持って我を導け】」

ルーカスが飛ぶ。

「オラァアアッッ!!」

大きく振りかぶった大剣は、見事命中し、ズガガッと相手の表面を削った。

『ギィェエエッッ!?』

絶叫するモンスター。

「【その風を持って我に従え】」

サクが地を蹴る。

落下してくるモンスターに向かって、高速で駆け抜ける。

相手が地面に到達すると同時、敵は真正面。

ウルスラグナを左腰にグッとため

「フッッ」

勢いに乗った攻撃は相手の右の腕のような部分を粉砕した。

「【放たれる光、汝へと舞え】っ」

ルルの杖が光り輝く。足元には魔法円が広がっている。

未だ崩れ落ちないモンスターに3人は背を向ける。

ルルは杖を相手へと向けた。

「ぜっ【ゼフィロス・スペクトル】!」

ボンっと音が上がり、光は

その場で爆発した。

「る、ルルさん!?」

目を丸くし、サクが悲鳴に近い叫びをあげる。

立ち込める煙から、真っ黒になったルルが「ゴホッゴホッ」と咳き込んでいるのが見えた。

そしてもう1つ

まだ消えていない光が

「うわ!?ちょっ」

暴走しだす。

思いっきり上に上がったと思えば、今度は右へ左へ。

辺りはパニックになる。

『ギィェエエエエッッ』

「!?」

しかし待ってくれるわけもなく、サクにモンスターが迫る。

繰り出されたツルになんとか対応するが、相手は中級。仕掛けられれば押される一方だ。

「る、ルル!光をモンスターにぶつけろっ」

「え!?ひゃい!」

ルーカスが自分の方に来た光をしゃがんで避けながら叫ぶ。

それにアワアワしていたルルが変な声をあげ杖を構える。

「集中集中集中…っ」

光が、方向を変えた。

「やった!…って」

ボンっ!!

「ブグ!?」

再びサクの顔面に命中…

『ギィェエエエエッッ!』

動きが止まったサクめがけツリー・バレクスは突っ込み

「ー!?」

サクが吹き飛ぶ

「サク!?」

「サクさん…っ」

「なななな…!?」

3人とは逆へ吹き飛んだサクは、やがて岩に衝突した。

「くそ…っ、行くぞシルア!」

「はい…!」

迫るツルを擦りながらもなんとか避け、相手へと達する。

それと同時に飛び上がったシルアが飛び蹴りを繰り出す。

相手と衝突し、僅かに下がったモンスター。

間をおかずにルーカスが先ほど傷をつけた場所をまた攻撃する。

相手にも痛覚はあるようで、一瞬動きが止まった。

瞬間

背後が紅に光りだす。

ルーカスとシルアが横に飛ぶのと同時、一気に現れたサクは炎に包まれていた。

「【フレイム・ウィンド】!!」

燃え上がる。

洞窟にランクアップしたサクの炎が膨張する。

「あっぶね…!」

危うく巻き添えを食らいそうになりながらも回避した2人は、すぐに振り返り身構えた。

『ギィ…ギィェェ…っ』

煙が立ち込める中、響く声は力無く。

やがて、途絶える。

そしてズンッと、倒れる音が洞窟に広がった。

 

 

 

 

「大丈夫ですかサクさん!?」

「あ…あんま大丈夫じゃないかも…」

座り込んだサクにシルアが駆け寄り支えるが、どうやらもう動けそうにない。

「まぁ、クエスト終わったし。シルア、モンスター運んでくれ。ほらサク、おぶってやるよ」

「あ…ありがとう」

シルアは今回のクエスト、ツリー・バレクスを回収し、ルーカスがグッタリしているサクをおぶる。

動けないのも無理はない。

ランクが1番だからというのもあって、サクは人一倍動かなくてはならない。それに、魔法をもろに2度も当たったのだから…

「ほ、本当にスミマセン!!」

走り寄ってきたルルは先ほどの魔法で黒焦げになったままの顔は涙ぐんでいる。

「足を引っ張ってばかりで…また私…」

俯く彼女を眺めていたサクは、「あはは…」と力なく笑う。

「今回は初めてでしたし、仕方ないですよ」

「そうだぞ、元気出せ」

「それにセネットさん、怪我は大丈夫ですか?」

下を向き続けるルルは、シルアの問いに「はい…」と頷くのだった。

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