ディメント   作:もやしメンタル

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第41話《なすべき事》

「それで、これからどこへ?」

今のところ現れたモンスターはなんとか1人で倒し、ルルさんを守るように歩く。

そんな中、隣からそう彼女が尋ねてきた。

その問いに前を見る。

「多分ルーカス達は、あそこで止まっていてはくれないと思うんですよね、経験上から…」

「そ、そうなんですか」

「はい、だから…」

「あのサクさん!」

「?」

首をかしげてルルさんに視線を向けると、彼女はモジモジしていたが、やがて口を開いた。

「あの…。こんな状況で何言ってるんだって思うかもですけど…。敬語じゃなくていいですよ。あと名前も呼び捨てで…。その…な、仲間ですから…」

目を見開く。

確かに状況的に焦ってはいるが、今とても嬉しくなってしまった。

つい頬が緩んでしまう。

「さ、サクさん?」

「僕にも、みんなにもいいよっ」

ニカっと笑うサクをルルは見て、顔を赤らめた。

「はい…!」

そうして笑いあい、ルルはハッと我に帰る。

「すみま…じゃなくてごめん!まだ話の途中だったのに…っ」

「あ、うん。だから初めに向かってたさっきの道の奥の、大きなルームに行ってみようかなって。そこまではみんなにも説明してたし」

「なるほどっ」

大きく頷くルルに苦笑いしながら、サクは地図を見る。

「逆に道が多いのに救われたかも。近道がある。ルル、急げる?」

「うんっ」

目的地はそう遠くない。

急ごうと足を速めたその時だった。

 

ゴォオオオオオオオオンッッ!!

 

「「!?」」

あたりが大きく揺れた。パラパラと岩が僅かに崩れる。

「な、何!?」

「もしかして…っ」

 

中級…!

 

なぜか嫌な予感がする。

ルーカスっ、シルアさんっ。

「まずい…っ」

「な、サク!?」

バっとルルの手を掴み、サクは駆け出した。

 

* * *

 

「ま、まじか!?」

「逃げましょう…!」

広い空間に出た途端、あたりが激しく揺れた。

そう思ったのもつかの間、モンスターが現れる。

 

ランクDのモンスター

【シャドー・バレクス】

 

約5Mはある体は、ゆらゆらと影がうごめいている。

腕はカマになっており、恐ろしいことこの上ない。身長と同じくらいはありそうだ。

その姿を見た瞬間、シルアに腕を引かれる。

しかし

「ーっ、出口が!?」

相手の能力で、影に包まれてしまっている。

これでは近づけない。

反対側の出口は空いているが、それはモンスターが立ち塞がっている。

やるしかない

「く…っ、いくぞシルア!」

「はい…!」

同時に駆け出す

『ギィェエエエエッッ!!』

モンスターが両腕を振り下ろすと、ギュンッと影が伸びてきた。

「んなのありかよ!?」

「ーっ」

突っ込んできたまるで巨大な矢のような影を、それぞれ右と左に飛び込み回避する。

しかし

地面に突き刺さった影が、分裂した。

ルーカスとシルアに5本ずつ迫る。

「こんの…!」

ルーカスが足を止め、回し切りを叩き込む。

しかし、跳ね返される

「カッテ…!?」

再び駆け出し、回避する。

「なんとかしないと…!」

顔を歪めたシルアは、パッとある考えが浮かんだ。

成功する保証はないが…!

「ルーカスさん!合流しましょう!」

「な!?そんなことしたら…」

シルアの呼びかけに声を上げたルーカスは途中で黙り込み、彼女同様の答えに達した。

頷く。

「わかった!」

同時にグッと横に方向転換。

お互いに速度を緩めず、突っ込む。

お互いの距離が縮んで行く。

10M、5M、2M、1M…

「「今!!」」

一気に横に飛ぶ。

ほぼぶつかる寸前での方向転換。

それに影は曲がりきれずにお互いに衝突した。

1つに戻る。

「せぁあああああああっ!!」

「オラァアアアアアッッ!!」

同時に攻撃を叩き込む。

『ギィェエエエエッッ!?』

その衝撃に、影が引っ込んで行く。

それと同時、モンスターがカマを振り抜く。

水平切り

「「ーっ」」

それを思いっきりルーカスは跳び、シルアはしゃがむ。

すれすれで回避した直後、シルアが勢いに乗り、転がるように起き上がり、ルーカスは腰を落とし、空中で大剣を構える。

今まで共に戦ってきた仲間同士、動作は同時だった。

落ちてきたルーカスの足を、シルアが両手で支え

「はぁあああああああッッ!!」

ぶん投げる。

「オラァアアアッッ!!」

相手に突っ込むルーカスが、振り絞った大剣を振り抜く。

モンスターも反応し、カマで防いだ。

ぶつかり合う

「せぁあああああっ!!」

思いっきり地面が粉砕するほどに蹴りつけ、シルアが飛び込み、相手の懐に入った。

回し蹴り。

しかし

「ー!?」

その攻撃は入らなかった。

影のシールド

渾身の攻撃が敵わない

「なんちゅう硬さだよ…!」

その時

シールドが変形する

「ぐー!?」

「シルア!?」

勢いよく突き出してきた影に直撃し、シルアが吹き飛ぶ。

『ギィェエエエエッッ』

「おわ!?」

次には、相手がルーカスの隙をつき、カマを引く。

それに上体を崩したルーカスは目を見開く

「しまーっ」

振り下ろされる鋭利なカマ。

シルアが起き上がろうとするが、かなわない。

悲鳴に近い叫びをあげる。

その時、ルーカスは目を閉じた。

「…ったく」

 

 

 

炎が、捲き起こる。

 

 

 

 

「【フレイム・ウィンド】!!」

その炎は、相手のカマをそらせ、風によって飛び込んできたサクは、ルーカスと正面衝突し

「ぶふっ!?」

「ぐえっ!?」

地面に派手に突っ込んだ。

「ゴホッゴホッ。だ、大丈夫ルーカス?」

「お、お前…っ」

腰を押さえピクピクしながら、ルーカスは顔を上げた。

 

「来るのがおせー」

 

それに一瞬動きを止めたサクははにかんだ。

「ごめん」

しかしすぐにモンスターが動き出す。

いったんサク達は後方に下がった。

「サクさん!ルーカスさん!大丈夫ですか!?」

「うん」

「なんとかな」

「みんなぁ〜!」

ゼェゼェと息を切らしながら走ってきたルルは、遅れて合流する。

「1回道を間違えちゃって大変だったけど、よかった!」

「いや良くないだろそれ!?」

「あ。これからタメ口、呼び捨てになるからよろしく!」

「それ今する話か!?」

そんなこんなしていると、相手が攻撃してきた。

カマが振り下ろされる。

「僕が…!」

それをまだ炎を纏った状態のサクが迎え撃つ

激しく衝突し、あたりが揺れた。

持ち堪える

「あぁあああああああッッ!!」

サクは炎を使い切る。

受け止めたカマをそのまま押し切り跳ね返し、すぐに地を蹴る。

それと同時、サクは叫ぶ。

 

「ルル!!」

 

呼ばれたルルは目を見開き、杖をギュッと握る。

「うん!!」

その表情を見てシルアは微笑むがすぐに引き締める。

「ごめん、ディメント使いすぎた…っ。ルーカス、シルアさん!モンスターを…っ」

「おうよ!」

「はい!」

2人はサクの言葉に頷き、突っ込んで行く。

そんな中、ルルは詠唱を開始する。

杖を構え、目を閉じ、大きく息を吐く。

そしてパッと見開く。

瞬間、魔法円が光り輝く。

「【白き幻想よ】」

周りからの視線は、いつも怖くて、冷たくて。

こんな才能のない私には、失望の目しか向けられなかった。

でも、こんな私に、サクは言ってくれた。

一緒に行こうと。

初めて求められた、初めて1人じゃなくなった、初めて…

こんな気持ちになったんだ。

「【その光を持って我を導け】」

ずっと思ってた、自分は間違っているのではないかと。

派閥というのは、強く、勇ましい、選ばれた人のみの領域だと。

「【その風を持って我に従え】」

でも、やっと気づけたんだ、やっと見つけたんだ。

自分のなすべき事を。

どれだけ周りが否定しても、挫けてはいけないのだ。

才能を妬む暇があるのなら、少しでも届くように足掻いてみせる。

今も戦う仲間を見据え、ルルは歌う。

「【放たれる光、汝へと舞え】!」

何もできないままなのはもう十分だ。

みんなが信じてくれる。

だから自分は歌い続ける。

魔法円が金色に輝き拡大する。

あたりからは風が巻き起こる。

その姿はまさにー精霊。

「ルルっ!」

「っ!?」

広がる魔力にみんなが気付く。従って、今も攻撃を打ち放っていたモンスターも、強力な魔力の源へ振り返った。

「しまった!?」

モンスターがルルめがけ影の弾丸のようなものを打ち込んだ。

「ルルッッ!?」

それは直撃し、大爆発する。

それぞれが限界にまで目を見開いた。

そしてその先、その爆炎の先にルルは

 

立ち続けていた。

 

血反吐を吐こうとも。

骨が折れようとも。

ルルは歌を届ける。

そしてその唇が、魔法を紡いだ。

 

 

「【ゼフィロス・スペクトル】!!」

 

 

あたり一帯を埋め尽くすほどの光が発生し、風が吹き荒らす。

集中集中集中…!

今まで出したことがないほど、身体中の魔力を振り絞る。

普通の魔導師が一回に放つ魔法にはここまでしてやっと追いつくかどうかなパワーだが

問題はここから。

魔法を完璧にコントロールする。

この魔法が解ければ、力尽き、体を動かすことすらできなくなる状態となってしまうため、とてもモンスターと戦えなくなる。

私が決めるんだ!

こんな威力の魔法も精一杯な私でも、進まなきゃいけない。

仲間達のピンチを、一発の魔法で救い出す。

「それが魔導師だぁああッッ!!」

光を解き放つ。

しかし光はルルを無視して、上に上がった。

「ぐーっ!?」

集中集中集中…!

上昇してゆく光が壁に直撃する直前。

「ま…がれぇえええええっっ!!」

逆流する血を飲み下し、ルルは叫ぶ。

その瞬間

光はギュンッと方向転換する。

「よっしゃあ!」

「セネットさん!」

「ルル!!」

そこにはいる

私の仲間が。

そこにはある

私を呼ぶ声が。

だから私は…

 

「絶対諦めない!!」

 

魔法を、モンスターにぶつける。

光が瞬く。

『ギィェエエエエッッ!?』

直前にシールドを張ったことにより、光と影がぶつかり合う。

押し合いの中。先ほど食らった攻撃と、魔力の消耗によりルルは気力だけで意識を保っていた。

しかしその体が崩れる。

 

「ルル!」

 

だがその体は地面に落ちることはなかった。

サクが支える。

「1人じゃないから…!」

「ーっ」

目を合わせ言われた言葉に、ルルは息を飲む。

唇を噛み、大きく頷く。

泣きそうになる。

そう、私は…

「はぁあああああああああッッ!!」

 

1人じゃない!!

 

シールドが、破壊される。

その光は輝き続け、モンスターを飲み込んだ。

大爆発。

その光にみんなが顔を覆う。

ただ1人目を開いていたルルは

モンスターの宝玉が砕け散るのを、涙ぐんだ瞳で見つめ、次には意識を手放した。

 

 

 

 

 

「…ぁ」

目がさめると、ベットの上だった。

体には包帯やらで治療されている。

風車小屋の中のようなので、どうやらあれから、こんな所まで運んでもらったらしい。

ぼんやりする頭でそこまで理解し、起き上がろうとするが、上手くいかなった。

そんな時に気づく。

月明かりが照らす先に、ベットに顔を埋め、またはもたれかかるみんながすぐ隣にいた。

そんなことに驚くが、すぐに微笑む。

これからどんな道を行こうとも、絶対に逃げたりしない。

もっともっと強くなって、みんなを守れるようになりたい。

上級魔導師に、必ずなってみせるから…だから。

 

 

「私、頑張るよ」

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