ディメント   作:もやしメンタル

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第45話《意地っ張り》

「おーいサク。大丈夫かー」

「全く心配そうに見えないですよルーカスさん。少しはセネットさんを見習ってください」

「だ、だだだ大丈夫サクッッ!?」

「…逆にルルくんは落ち着いたらどうだい?」

そうしてドタバタとするアマリア達の原因はというと、「うぅー…」と唸りながらオンボロソファーに寝転がり、両目に冷やしたタオルを被せてダウンしている。

それはつい先程のクエストでの事だ。

今回のクエストは、壁外にて薬草を取ってくるものだったのだが、 その薬草自体がモンスターであるということだった。

薬草だから当然草だったわけで、草のモンスター【リーフ・ザック】は、なかなかに素早く、しかも頑丈だった。

しかしサクの敏捷はその上をゆく。

ルーカスもシルアも、相手に劣ることなく、ジワジワとモンスターを追い詰めていき

「魔法いくよ!」

ルルの合図にそれぞれが反射的に【リーフ・ザック】から距離をとった。

「【ゼフィロス・スペクトル】!」

ルルの杖から放たれる光の光線。

日々努力し鍛えている魔法だが、やはりこんな短期間では劇的に上達するわけもない。しかしその命中率は5割ほどまで上がってきていた。

 

そして、今回は…

 

「うわぁっタンマぁあああっっ!?」

「ブフグっ!?」

 

見事に失敗…

「ご、こめんサクゥッ!?」

「…前から思っていたんですが、何故いつも魔法に当たるのはサクさんなんでしょう?」

「運が悪りぃんじゃねぇのか?それともよっぽど魔法に好かれてるか。それより、今は敵だぞ」

サクが、前々から練習していたというルルの回復魔法で治療してもらう中、当然モンスターは待ってくれない。

瞬間、【リーフ・ザック】が吠えた。

「「ーっ!?」」

それと同時に、一斉に鋭いリーフが放たれる。

「くーっ」

それを反射的に跳ね返すルーカスとシルア。

 

しかし1つだけ、葉を捌き損ねる。

 

その方向には、回復魔法で手一杯で攻撃に気づかないルルが。

「ーッ、セネットさん!」

「え?」

シルアの叫びに振り返るルル。しかし攻撃はそこまで迫っていて回避は不可能。

その時

 

「…ッルル!!」

 

ルルにサクが覆いかぶさり、地面に倒れ込む。

完全に回避はできなかったが、僅かに葉がサクの腕をかすっただけで済んだ。

そうして無事を確認した瞬間に、ルーカスとシルアは地を蹴りモンスターに突っ込んだ。

 

 

 

「プハァーっ。今日のは一段と大変だったな」

なんとかモンスターを倒したルーカスとシルアは、ヘトヘトになりながら踵を返し、サクとルルのもとへ歩き出す。

そうしてふとある違和感に気付いた。

あれからモンスターとはルーカスとシルアだけで応戦した。

そう、サクは復帰してこなかったのだ。

「ルルの魔法がそんなに応えたのか?」

「確かにセネットさんの魔法は上がりましたが、こんなにも…」

いくらなんでもランクDのサクが、ランクFのルルの魔法でこんなにへばるとは思えない。

そんなことを考えていると。

「サクッ、サク!?」

ルルが叫びながら、グッタリとし倒れているサクを揺すっていた。

 

 

 

 

「まさか【リーフ・ザック】は、”そのままの状態じゃただの毒草だった”なんてねぇ。まぁ大して強い毒じゃ無いみたいだけど」

そうしてアマリアは苦笑いを浮かべた。

解毒はしたので、1日経てばもう大丈夫になるのだということ。

それを知る前は大層ヒヤヒヤされられたものだ。

「うぅ〜、私が足を引っ張らなければ…」

「セネットさん。またネガティブが出ていますよ」

「ハ…!ご、ごめんっ」

「まぁまぁ。取り敢えずサクは無事みたいだし、みんな疲れているだろう。今日はもう休んでくれて構わないよ。サクのことは任せてくれ」

微笑みながらそう言うアマリアに、それぞれが苦笑いを浮かべる。

「ワリーな隊長」

「構わないさ。でも明日のクエストは、サク抜きになりそうだから気をつけてくれよ」

「そ、それは大分キツイね…」

アマリアの言葉に、そういえばと気づく3人は汗をながす。

そんな彼らにアマリアは手を叩いた。

「ほらっ、だからもう寝なきゃダメだよっ」

ルーカス達はもう一度苦笑いしてから、それぞれの寝床へと向かっていくのだった。

 

 

 

「じゃあ行ってくるぜ、隊長」

「行ってきます」

「こ、今度こそは頑張ります!」

「ああ、気をつけておくれよ」

太陽はすでにだいぶ登った昼前に、3人の後ろ姿に手を振る。今回のクエストはお昼からのものだったのだ。

そうしてやがて「よしっ」とアマリアは踵を返し、風車小屋へと入って行った。

今日はサクの事もあってバイトをお休みする事にしたので、予定は何も入っていない。考えてみれば、なかなか2人っきりになることが無かったので、アマリアはだらしなく「えへへ〜」と頬を緩めてしまう。

未だに寝ているサクのおデコに乗っているタオルを取り、もう一度水につけて冷やす。そうしておでこに戻すと、その冷たさでか、「う…ん?」とサクの瞼が震え、ゆっくりと開かれた。

「あ、起こしてしまったかい?」

「…アマリア?」

眠たそうな目のまま上体を起こすサクは、半目で辺りを見渡す。

「…あれ?みんなは?」

「ああ、ルーカス達なら今さっきクエストに行ったよ」

「へー、そうですか…」

アマリアがサクの額から落ちたタオルを拾う中、重い瞼でサクは頷き

 

「えぇえっ!?」

 

一気に意識が覚醒したように目を見開いた。

「な、なんで僕起こしてくれなかったんですか!?というか行かないと…ッ」

「あー待った待った!落ち着いてくれサクっ」

急いで支度をしようとするサクに、アマリアが制止をかけて再びソファーに座らせる。

「覚えてないかもだけど、君は昨日毒でへばっちゃったんだよ。だから今日は1日安静にしているんだ」

「え!?で、でも僕もう大丈夫で…」

「無茶して長続きしたらダメだろう?」

「う…っ」

そう言われて仕舞えば何も言えないサクに、アマリアはやれやれと苦笑いする。そうしてポンっとその頭に手を乗せた。

「副隊長だからって、あんまり気張りすぎるのは良く無いぜ?少しは肩の力を抜きなよサク」

「…はい」

まだ晴れない顔をするサクに「ホント頑固だなぁ」と呟く中、ピコーンとあるナイスアイデアが浮かび上がった。

「サク」

「ん?どうかしました?」

「体はもう平気なんだね?」

「ーっ、はい!だから僕もクエ…」

 

「だったら一緒にデートをしよう!!」

 

「…はい?」

サクの言葉を遮り、アマリアは体を乗り上げグッと親指を立てる、なぜかキラキラと輝く彼女に、サクはポカンと停止する。

「今、なんて…」

「そうと決まったらすぐに行こう!どこに行こうか…あそうだっ、メインストリートに行ってみようよ!ついこの間美味しいクレープ屋さんができたらしいんだよっ」

「え…あの」

「それじゃレッツゴーだよサク!!」

「え、まっ…うわぁ!?」

ぐいぐいと手を引っ張られ、サク達はデート(仮)に出かけるのだった。

 

* * *

 

「うわー!やっぱり人が一杯だねっ」

「あ、あのアマリア…」

「うん?」

お昼とだけあって人の賑わう街に、アマリアは目を輝かせる中、サクが汗を流しながら口を開く。

「その…、ルーカス達はクエストなのに、なんか悪い気が…」

「もー!そんなこと言ってたら一生遊べないぞサク!こんな時くらいいいんだよ!」

「で、でも…」

「いいんだ!!」

「は、ハイ…」

まだ納得のいかないというサクにアマリアはグイッと詰め寄り、強制的に頷かせる。

そして満足げに笑った彼女は、再び前を向き、拳を突き上げた。

「さー遊ぶぞー!」

そんな元気いっぱいのアマリアに、サクは苦笑いを浮かべるが、次には微笑みにへと変わる。

こんなに楽しそうなアマリアは、いつぶりに見ただろう。

相変わらず僕はされるがままなのは、初めて会った時と変わらないのだが、なんだかとても心が温かくなった。

「1日くらい、か…」

正直にただ遊びたかったと言えばいいのに。

アマリアに手を引かれながら、僕は口には出さず、そう呟いた。

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