ディメント   作:もやしメンタル

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第46話《家族》

「おぉ!あそこみたいだねっ」

「あそこって…あぁ、そういえば美味しいクレープがどうとかって言ってましたね」

「うん!この前クレアから聞いたんだ〜っ」

噂のクレープ屋さんに辿り着くと、甘〜い匂いが嗅覚を刺激する。

そうして店に並ぶクレープをキラキラと目を輝かせながらアマリアは見つめ、パッと手を挙げた。

「おばさん!このイチゴクリームのとチョコクリームのクレープをおくれ!」

「はいまいど〜。ふふっ、彼氏さんとデートかい?」

「そうなんだよー!」

「 ブッッ」

いきなりの言葉に、サクが噴き出す中、アマリアは「いや〜っ」と心底嬉しそうに答える。

「な、なんで嘘つくんですかアマリア!?」

「むっ。言ったはずだぜ?『デートをしよう』って」

「ぅな…!?」

「まさか聞いてなかったのかサク!?」

「いいいいえそんな事は!なぃ…デス…」

すっかり真っ赤になってしまったサクだったが、その時になって

「はいお待ちっ」

「「!!」」

出来上がったクレープの登場に、2人はぱたっと動きを止める。

そして

「「わぁああっ!」」

手渡しされたクレープに一気に心を奪われてしまう、幼い2人であった。

 

 

「ぼ、僕クレープ食べるの初めてです…!」

「私もだよ!な、なんだか緊張するね…っ」

広場のベンチに腰を下ろしたアマリアとサクは、まじまじとクレープを眺める。

そうしてやがて、意を決したように、2人同時に「はむっ」っとかぶりついた。

瞬間、カッと目を見開くアマリアとサク。

「う…!」

「うまーーい!!」

あまりの美味しさにプルプルと体を震えさせる。

「イチゴとクリームの甘みを外から包み込むキジがさらに引き立てている!こんな食べ物がこの世にあったのか!」

「チョコと言っても甘すぎず決してクドくならないナイスなバランス!ぼ、僕今感激してます…っ」

それから再び一口二口と食べる中、これまた同時にその動きを止め

お互いに顔を向き合わせる。

一緒のタイミングで見つめあってしまった事に、つい視線をそらしてしまう中、おずおずと視線を戻し、今度は互いのクレープへと目線を送る。

「ど、どうしたんだいサク。もしかして、私の方のクレープも食べたいのかな?」

願うように尋ねるアマリアに、サクは直ぐさま顔を赤らめる。

「そ、そんなことはっ…ない…わけじゃ、ないですけど…」

後半は俯いてボソボソと言うサクに、アマリアは一度クレープを見つめ、「よしっ」と意を決したように顔を上げた。

「ほらサク!あーんっ」

「へっ?あ、アマリア!?」

「ん、なんだい?食べたいんだろ?」

「そ、そうですけど…」

「じゃあほら!あーんっ」

口にクレープを近づけられ、「うむむ…」と顔色を変えまくっていたサクはやがて

「あ、ぁーん…」

頭から湯気を出しながら、小さく一口クレープを食べる。

そんな控えめなサクはまるで小動物のようで、アマリアはその後にプルプルと悶えまくったのだった。

 

 

「はーっ、おいしかったねー!今度は違う味も試したいものだよっ」

「そうですね。他にもたくさんありましたし」

2人とも大満足でメインストリートを歩く中、今も人で賑わっているのもあり、以外と歩くのに一苦労だ。

そんな中、アマリアはピコーンと何かを思いつく。

「サク!手を繋ごうよ!」

「へぁ!?」

「この人混みだ!はぐれたら大変だろうっ」

「そ、そうですけど…って、あれ?」

「ん?どうしたんだい?」

急に足を止めたサクにアマリアは首をかしげ、彼の向く方向へ視線を向けた。

 

「…男の子?」

 

「ですね」

そこには道端で座り込み泣いている男の子がいた。1人でいるところを見ると迷子だろうか。

そこまで考えたアマリアは、すぐに少年の考えが分かった。

彼の手を握る。

「えっ、アマリアっ?」

「行こうぜサク。あの子を助けたいんだろう?」

彼女の言葉に驚くサクは、やがてこくりと頷いた。

やがて男の子のところまで辿り着き、アマリアはしゃがみ込む。

「ねぇ僕。どうしたんだい?」

その言葉に顔を上げた少年は涙でグッショリになっていた。

そんな少年にサクは頭を撫でて優しく微笑む。

「迷子かな?」

やがて男の子は2人に安心したのか、問いに「うん」と頷いた。

「うぐっ…お母さんが、いないんだ」

「そっか…」

再び頭を撫で微笑むサク。

しかしその表情にどこか悲しさを感じた気がした。

「サク…?」

「ん、なんですか?」

微笑みながらこちらを向くサク。

そんな彼に、アマリアは少し胸がチクっとした。

サクには家族がいない。そのことは前から知っている。

きっと家族を失うことと同じくらい。初めから存在していないことは辛いんだと、そう思った。

そこまで考えたアマリアは、なおもこちらを見るサクに笑い返す。

「いや、なんでもないよ。じゃあお母さんを探そうか!」

バッと立ち上がるアマリアは、次には「うーん」と考えこんだ。

「でもこの人混みだしなぁ。どうしたもんか…」

「そうですね。マテリアルに行ってみますか?」

「うん。たぶんそれが1番だね」

そんな事を話している中、いきなり男の子が立ち上がった。

「?、どうしたの?」

 

「僕、早くお母さんを助けたいんだ!」

 

「「え?」」

少年の言葉に2人は目を点にする。

わずかな沈黙の後、恐る恐るアマリアが尋ねる。

「え、えーと。どういう事かな?」

 

 

「お母さんは、連れてかれたんだよ!」

 

 

時が、停止する。

やがて

「なぁああああああああっ!?」

「連れてかれたって、誰に!?」

一気に慌て出す2人だが、そんな中、慌てていたサクは、あるものが目に入り、ピタリと動きを止める。それにアマリアも停止し、首をかしげた。

「どうしたんだサク?」

「…アマリア。この刻印、どこのか分かりますか?」

「へ?」

言いながらサクは、地面に落ちていた紙切れを拾う。

それは確かに派閥の刻印だった。

子供が母親らしき女性に包まれている、じつに神秘的なもので、サクには到底知る由も無い刻印だ。

そんな刻印を見たアマリアは、次にはポツリと呟いた。

「もしかして…。この刻印の派閥が少年の母親を…?」

「わかりません。でも、ここに落ちてたってことは…」

そうしてマジマジと見つめるアマリアは、次には首をかしげる。

「うーん、私も分からないね…。マテリアルで聞いてみようか」

「そうですね。ニールさんなら教えてくれるはずですし」

アマリアの提案にサクは頷き、目をはらす男の子に再度微笑みかける。

「僕、名前は?」

「…ペルサ」

「そっか。大丈夫だよペルサ。君のお母さんは絶対見つけてあげるから」

「…うん」

そうして男の子、ペルサをオンブし、サク達はマテリアルにへと向かった。

 

* * *

 

「んーと、確かこれは…」

そうして資料をめくるニールは、やがて手を止め声を上げた。

「あった。この刻印は【ナニス派】のものね」

彼女の言葉に、アマリアは一度考え首を捻った。

「ナニス?うーん聞いたことないな…」

「えーと、壁外での活動は殆どなくて、たいして目立った派閥じゃないみたいです。悪い噂も聞いたことはありませんが…」

「じゃあ何でこんな事を…」

「さぁ。それは分かりませんね…」

再び考え込んでしまう中、膝にペルサを座らせるサクは口を開く。

「ニールさん。そのナニス派のアジトはどこにあるんですか?」

「ん?えーっと…、この近くみたいだよ。あっ、じゃあ地図を渡すねっ」

「はい。ありがとうございます」

ニールから地図を貰い、頭をさげると、サクはペルサを抱き上げ立ち上がる。

「とりあえず、派閥のアジトに行ってみましょうアマリア」

「うん…、そうだね。手がかりはそこしかないし、ここで考えてもしょうがない。直接聞くとするかっ」

サクの提案に頷き立ち上がったアマリアは、ニールに頭を下げる。

「ありがとうアドバイザー。助かったよ」

「いえいえ。そんな大層なことじゃないですし。…それから、いくら壁外じゃないとしても、気をつけてくださいね」

「ああ」

「分かりました」

そうしてアマリアとサクはマテリアルをあとにする。

そんな彼らに手を振っていたニールは、次にはフッと微笑んだ。

「本当に人がいいんだから」

「頑張れ」と最後に呟き、ニールは再び仕事に戻るのだった。

 

 

 

 

「それで場所はどこだい?」

「えーっと…、本当にすぐ近くです。ここの角を曲がって……って、あれ?」

少年をオンブするサクは、地図と睨めっこしていた顔を上げると、ピタリと動きを止める。

そんな彼にアマリアは首を傾げた。

「どうしたんだいサク?」

「あの人達…」

「へ?」

目線を移したアマリアは、次には目を見開く。

そこには女性と、その女性の腕を掴む男性がお互い引っ張り合いっこをしている姿があった。

その光景に停止してしまっていると、同じく気付いたペルサがグイッとサクの頭に上体を乗り上げる。

 

 

「あ!お母さん!!」

 

 

「「えぇ!?」」

あまりの展開に思いっきり驚いてしまうが、次にはアマリアがサクを見る。

「い、いくよサク!」

「は、はい…!」

そして走り出す。

だんだん近づくとともに、その2人の姿が鮮明になってきた。

女性は茶色の髪をポニーテールにしていて、まだだいぶ若く見える。男性の方も若いだろう。シルバーの髪はうねっており、前髪は目にかかる程度まで伸びている。

そして男性の服に先ほどの刻印が刻まれているのが見えた。

「ペルサのお母さんを攫った派閥…!」

「サクは先に行ってくれ!」

「は、はい!」

アマリアの言葉に1人速度を上げ前に出る。

あと5M。サクは男を女性から引き剥がそうと腕を伸ばした。

その時

 

 

「ちょっといい加減にしなさいよ!」

「ご、ごめんよ!でももう一度考えてクレェ〜!」

 

 

 

「…へ?」

あまりに予想外の会話に体が停止する。

そんなサクには気付かず、目の前の2人はなおも口論を続ける。

「もう何回も考えたわよ!でももう散々!もっとマシな男になって出直してきなさいってのよ!!」

「な、なる!なるよ!だから捨てないでくれマーシャ!!」

「ちょ…!もうベタベタくっ付かないでよ暑苦しい!!」

 

「…え、えっと」

目を点にさせ唖然とするサクへ追いついたアマリアも、その光景に気づき「ふぇ?」と間抜けな声を上げる。

「ど、どういうことだ…?」

「さ、さぁ…」

見つめることしかできない2人だったが、次にはペルサが再び上体を乗り上げた。

 

 

「あ!お父さん!!」

 

 

「「うぇえええええええ!?」」

何度目かの声を上げると、その時になってバタバタしていた男性と女性がこちらに顔を向ける。

その若さからまだカップルにも見える2人は、次の瞬間目を見開くのだった。

 

 

 

「えーっと、つまりは…」

正座をして項垂れるペルサの両親に、サクとアマリアはピクピクっと顔を引きつらせる。

話によれば、2人は今別れる寸前まできているのだという。

なぜかといえば、初めはペルサの誕生日に父親ダルクが参加できなかったことからだったらしい。

最近は派閥のクエスト続きで全く家族に構うことができず、殆ど会うことがなかったようで、やがて母親マーシャが「少しでも家族との時間を作れないのか」と問うたところ、言葉を濁したダルクに痺れを切らしたのだという。

その後もダルクは何度もマーシャに許しを請うたが、言ってしまってはあとには引けないマーシャはそれを突っぱねて…

「それでこのザマってことかい」

「「はい…」」

「じゃあストリートにあった刻印の紙は…」

「あ、あれは構成員募集のビラの作りかけです…。ホントすみません…」

申し訳ないと縮こまる夫婦に、アマリアは溜息をつき、サクは苦笑いするのだった。

その時

 

「お父さん!お母さん!」

 

「なっ!?」

「ペルサ!?」

今までサクにおぶってもらっていたペルサが、ダルクとマーシャに飛びつく。

それに両親は目を見開いていると、ペルサは満面の笑みを浮かべた。

 

 

「僕、お父さんもお母さんもだーい好きだからっ、ケンカしたらダメなんだよ!」

 

 

「「ーっ」」

その言葉に息を飲んだ両親2人は動きを止めた。

そして

 

「「ぷ…っ」」

 

次には吹き出していた。

「そうねっ、ごめんペルサ。私達ダメな子だったみたい」

「ああ、これからは仲良くするって約束するよ。それから…」

そこまで言うと、ダルクはペルサとマーシャを包み込む。

「家族の時間、作れなくてごめんな。これからは努力するよ。2人とも、愛してる」

 

* * *

 

あれからペルサ達と別れ、すっかり夕焼けの空を見上げながら、帰り道を歩いていた。

「はーっ、一時はどうなるかと思ったけど、一件落着できて何よりだったね」

「…そうですね」

そう言うとサクは、微笑んだまま足を止める。

そんな彼にアマリアも足を止めて振り返った。

「サク?」

彼女の声に顔を向けたサクは、微笑んだまま口を開く。

「…僕、家族とかよく分からないですけど、あの3人を見てたら、なんか凄い良いなって思いました。家族って、とてもあったかいんですね」

「…っ」

サクの言葉を聞き、只々サクと目線を合わせるアマリアは、やがて優しく微笑んだ。

「…ああ、家族は掛け替えのないものさ。……でもね」

そうしてサクに歩み寄って行く。

やがてすぐ目の前まで来たアマリアは、優しくサクの頬を手のひらで包んだ。

 

 

「私達だって、もう家族だぜ?」

 

 

「ーっ」

「君はちゃんと分かってるよ。君にはちゃんと、家族はいるよ。今まで散々弱みを見せ合って、戦ってきたじゃないか」

「アマリア…」

なぜだか目の奥がジンとした。心が熱くなる。

サクはやがて、そっとアマリアの手を自分の手で包み込んだ。

 

 

「ありがとうございます、アマリア。…僕、アマリアが大好きです」

 

 

 

気づけばそう言っていた。

瞬間

「なななななな…!?」

みるみるアマリアの顔が真っ赤になってゆく。それにサクはキョトンと首を傾げた。

「どうしました?」

「さささサク!!」

「は、はい!?」

グイッといきなり詰め寄ってきたアマリアに、サクは仰天する。

そんな中、荒い呼吸を繰り返すアマリアは、やがてプイッと方向転換し早足で歩き出してしまった。

「そういうことはもっとよく考えて使ってくれ!!」

「え、そういうことってなんですか………って、ぁあああっ!?」

やっと理解したサクは途端に真っ赤っかになり、アワアワとアマリアを追いかけて行った。

「ち、違うんです!今のはその…!」

「否定もするなーーーー!!!!」

その光景はどう見ても、先ほどのダルクとマーシャの喧嘩と同じにしか見えないのだった。

 

 

 

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