「あ!出てきたよセフィア!」
「うん」
中央にへと姿を現したのはまず長身の男だった。それにルシアが立ち上がる。
「ったく、ちゃんと座れ」
そんな彼女に何気に面倒見のいいカラムが注意をする。ルシアが「はーい」と言って座ると、カラムは今度セフィアに目を向けた。
「なんだかやけに興味津々じゃねーか。気になるやつでもいるのか?」
その質問に、他派閥のあの子との話をするわけにはいかないのでしらばっくれる。といっても汗をかきながら目をそらすしかできないのだったが。そんな様子に何かを悟ったカラムが溜息をつき「勝手にしろ」と、再度前方を見た。そこからは丁度、第二の人物が出てくるところだった。
「わーっ赤髪だー!」
「ていうかガキじゃねーか」
その姿を目にした二人、そして他の周りからも騒めきが聞こえる。全力で挙動不審になっている少年は、何度も深呼吸をして落ち着こうと頑張っている。
そんな中、それぞれが五M程離れた距離で止まる。数秒そのままでいた両者は、ほぼ同時に抜剣した。
セフィアは赤髪の少年を見つめ、呟いた。
「頑張って…」
* * *
実技の時以上に緊張しながら、ニールはサクを見つめていた。
「ホントに面倒ごとに巻き込まれやすいんだから…」
そんなことを呟き、両手を握りしめる。
サクに渡した短刀は、【アラゲメント】が決まってからニールが己にできることを考え続けた答えだった。ただ少年が無事でいてほしいということがニールの願いだ。
「勝ちなさい。【レックレス】」
真っ直ぐに少年を見つめ、ニールは呟いた。
* * *
現在アマリアは普通の客席に座っていた。特別席を用意されていたが断りを入れておいたのだ。
「失礼するよ」
「む…っ」
そんなアマリアの周りには人は寄りつかない。ずっと続いている差別から無理矢理目を背けていると、そんな隣に座る輩が…。
「なんだいヨダン。特別席には行かないのかい?」
「相変わらず冷たいなー。負けた後に逃げられちゃ堪らないからだよ」
「ふんっ、言ってろ!」
そう言い捨てたアマリアは、抜剣をし向き合うサクを見つめた。
* * *
相手のレスカルさんは、僕と同じ片手長剣だ。体を横に向け腰をかがめ、剣を構えている。僕も両手で持った剣を前に構える。
間合いはたった五M。合図は前回と同じく鐘の音だ。その音が鳴るまでが途方もなく長く感じる。しかしセフィアさんから学んだことを思い出す。
ー相手のいろいろな癖、仕草を見極める。これがモンスターと人との戦いの違いだよ。
次にどんな技が来るのか、相手の得意とするのは何か。それを戦いの中で見つける。そうしなければ、僕は勝てない。
「よくも逃げずに来たな」
そんな中、レスカルさんが口を開く。無表情での言葉に、僕は答えた。
「只々一週間遊んでたわけじゃないです」
瞬間
ゴーン、ゴーンと。鐘が鳴り響き、同時に観客が盛大に盛り上がった。
それと同時、初めに突っ込んだのはレスカルだった。
刻印によって強化された跳躍で、一気にサクへと迫る。右手から繰り出された突きに、サクは剣を弾かれる。
次々と降りってくる攻撃の雨に、サクは必死で食らいつく。しかし、その体はどんどん相手の獲物で切り裂かれていった。耐えきれず、距離を置こうとするが、それを許さないレスカル。剣術の間に入れられる体術に、サクはついに超激した。
そして吹き飛ぶ。
「ぐっっ!」
そんな中で足を地面に擦れ合わせながら、サクは痛みをこらえ、地を蹴った。
疾走する。渾身の力を向け、超高速の斬撃を放つ。
だが
「ー遅い」
「かは…っ!」
瞬間、腹の中央に痛みが走った。レスカルの蹴りに、一瞬意識が飛ぶ。それを許さずサクの肩を掴み、肘での強打。喉に命中したことにより呼吸が止まる。そしてレスカルは間髪開けずに、サクの頭に回し蹴りを叩き込んだ。
まともに食らったサクは地面を転がる。壁がない中転がり続け、やっと止まったサクはその場でうずくまった。腹や頭に走る激痛に悶える。呼吸がままならない中、必死で息を吸った。これがランクの違い。圧倒時な力を目の前に、サクは歯を食いしばった。
「サク…っ!」
地面に転がる己の眷属に目を見開く。獲物で斬られ、深いところは血にまみれている。観客の何人かは見ていられないと目を逸らしていた。
「どうやら決まりのようだな」
そんな光景にヨダンは目を細め笑った。
「まだだっ!」
瞬間アマリアは叫んでいた。
「あの子はまだやれる!!」
「サク君っ!!」
ニールは目を見開く。サクから流れる血に顔が青ざめる。
自分には、ただ祈ることしかできない…
その悔しさに歯をくいしばる。よりいっそう強く手を握り、願うように前を見据えた。
「あちゃーっ、これあまりにも酷くない?」
一方的な戦いに、ルシアが額を手で叩いた。隣のカラムも、眉間にしわを寄せ、少年を見つめている。
「気にくわねぇな」
その中で、未だ表情を変えないセフィアは、ただ静かにサクを見据えていた。
震える手で、なんとか地面に手をつく。痛みに顔を歪めながら、サクはふらつく足で踏ん張り立ち上がった。荒い呼吸の中、サクはなんとか握りしめていた剣を構える。
「まだやるか、小僧」
その姿を見て、口を開いたレスカルは。瞬間、地を蹴った。そして、右上に構えた剣を振り下ろした。それをサクは受け止め…
「ーっ!?」
「フッ!」
瞬間剣に伝わる信じられないほどの衝撃に、サクはそのまま吹き飛んだ。地面を何度も転がりながら、なんとか体制を立て直す。見下ろした手は、先程の衝撃に麻痺していた。
驚きを隠せないでいるサクに、レスカルは笑いながら歩き出す。
「今のは…ディメント、ですよね」
サクの言葉に一度動きを止めたが、レスカルは再び歩き出す。
「これは驚いた。今の一度で見抜くとは」
あっさり肯定した相手を見据え、思考を巡らせる。
あの瞬間、体を突き抜けた衝撃。あれは中級ディメンターとしての筋力を超えている。つまり…
「き、筋力を瞬間的に…引き上げる、ですか」
「動体視力は流石のものだな」
隠すつもりはないというように答えたレスカルに、サクは顔を歪ませた。
筋力を上げるということは、一撃一撃がとても大きな意味を持つ。まともに食らったら一発もあり得る。
ー誰のディメントにだって弱点はある
再びセフィアさんの言葉がよぎる。僕は一度荒くなった呼吸を整え、目を閉じた。
その行動に、レスカル以外の観客も驚く。
「【スコール】!!」
瞬間
僕は体に風を纏う。立ち込める風が、僕の周りから発生した。その光景に、レスカルは目を細める。
「それがお前のディメントか」
無言な僕に構わず、ハッと笑った彼は吐き捨てた。
「そんなもので何ー」
「余裕ですね」
「なーっ!?」
相手の言葉を遮り言葉を発したサクは、レスカルの目の前に現れた。その速度にレスカルが目を見開く。相手が剣を構えるのより早く、サクは振り抜いた。
凄まじい風の威力で砂が立ち込める。そんな中、攻撃を食らったレスカルは驚きを隠せなかった。
「ねぇ見た今の!」
「速い…」
ルシアが再度立ち上がり興奮する。下級ディメンターのランクを超えたスピードにカラムも声が漏れた。
これまでの一週間。ただ戦ってきたわけではない。ランクの違いがあるのなら、それはもうディメントが左右する。サクの属性を聞いてから、いろいろと試してきたのだ。今のもその中の一つである。あの速さならランクEのディメンターに通用する。問題は
「だがパワーが足りてねぇ」
カラムの言葉に頷く。ランク一つの差は伊達ではない。ただの攻撃ではいけない。
激しい、そして高速の攻防が繰り広げられる。
レスカルもランクEだけあり、対応している。
「ーっ、そんな攻撃効かんわ!」
そう言い放ち剣を払いのけた。
確かに、こんなパワーじゃダメだ。それなら…
「【エクレール】!!」
「ーっ!?」
体、主に剣に集めた雷を纏う。コロコロと変形するサクの能力に、レスカルは顔を歪めた。
「はぁあああっ!」
気合いとともに剣を振り抜く。それをとっさに受け止めたレスカルは、驚愕に目を開いた。その瞬間、再び衝撃で地面が揺れる。
「攻撃力が上がったぞ!?」
「なにあの子ーっ!?」
サクの戦いぶりに、観客が引き寄せられ始める。
これが今までやってきた成果、ディメントへの慣れだ。
気がつけば、サクを応援する人々が増えてきていた。
「そんな馬鹿なっ!?」
「よしっ」
絶叫するヨダンの隣でガッツポーズをするアマリア。レスカルを押し始めている状況に、周りもざわつき始めていた。
「調子にのるなぁああっ!!」
「く…っ!」
再び破壊力が圧倒的な攻撃を退ける。そんな中、サクは必死に相手の弱点を探していた。セフィアさんが言っていた教え、必ずあるはずだ。
そういえば、なぜレスカルさんはディメントを乱発しないのだろうか。体力温存のため、それは大切なことだと思う。でも、さっきの攻撃では、使ってもおかしくなかったのではないだろうか。
「多用できないのか…?」
サクのつぶやきに気づいたレスカルが目を見開く。その瞬間、全てを悟った。
相手のディメントは、筋肉を瞬間的に引き上げる力。つまり体に掛かる負担が大きいのだ。今までディメントを使っていたのが三回、おそらくあと使える回数は…
「【ーその誇りは一連の光となる】」
「ーっ!?」
瞬間、レスカルの発し出した言葉に、サクは目を見開いた。
「詠唱だと!?」
立ち上がったアマリアの隣でヨダンがまるで勝ち誇ったかのように笑う。
「レスカルのディメントも一つではないということだ」
その言葉に顔を歪めながら、アマリアは少年を見つめる。
「サク…っ!」
「【カナタの導きに従い、我は主従を誓う】」
「ーっ、ふ、【フレイムウィンド】!!」
つづ得られる詠唱を阻止するべく、サクが動いた。純白の剣に炎が宿る。
「【撃ち放つ、光線の矢ー】!」
「はぁああああっ!!」
サクの振り抜いた剣から炎が放たれる。燃え上がる攻撃がレスカルに炸裂した。
「〜〜〜〜〜〜っ!?」
爆炎が巻き起こる。
仰け反る長身の体。全身を焼き焦がし、己の服をボロボロにするレスカルは、しかし、耐え抜いた。歯を食いしばり体を起こすと、なおも言葉を紡ぐ。
「【ーきたれ、汝の力】!!」
目を見開くサク。
レスカルの瞳が再度炎を打ち放とうとするサクを射抜いた、一挙、魔法を発動させる。
「【ブライト・バーン】!!」
焼き尽くすような光の砲撃が放たれる。
「あぁあああっ!!」
一歩遅れてサクの炎が放たれる。
両者ぶつかるが、ディメントの炎を飛ばしたにすぎない力は魔法に弾き飛ばされた。
「っ!?」
炎が切り裂かれ、大量の火の粉をばら撒く。
決定的なまでの力負け。これが魔法、その恐ろしさを思い知る。
「ぐっっ!?」
そのまま突き進んできた光の矢を、サクはギリギリのところで回避しようとする、だが、今までの限界を超えるディメントの濫用によって体がうまく動かない。
「ーがっっ!?」
なんとか僅かに回避したものの、腕に命中した光は、そのまま大爆発を起こした。その衝撃に、少年の体が吹き飛んだ。
「サク君!!」
両手を握りしめるニールの張り裂けんばかりの悲鳴。
同様に見守るアマリアの呼吸も停止し、少年に声援を送る全てのものが動きを止めた。
爆煙を身に纏う体が地面の上を何度も跳ね、舞い、血を散らしながら転がっていく。その手に握られていた【ウルスラグナ】は離れ、カランッとこぼれ落ちた。
地面に倒れ伏したサクは、やがてなんとか立ち上がるが、ボロボロとなった左腕がピクリとも動かない。まるで関節が外れたかのようにダラリと垂れ下がっている。
「俺の勝ちだっ!!」
獲物を構え直したレスカルが地を蹴る。
凄まじい速度で迫り来る相手に、体のあちこちがガタガタのサクは動けない。
立ち尽くす彼に向かって、銀色に輝く己の獲物を突き出した。
サクの体感時間が極限まで引き延ばされる中、客席で。
アマリアの瞳が恐怖に染まる。
ヨダンの笑みが歓喜に変わる。
ニールが青ざめ、カラムは舌打ちをする。
そして、ルシアが息を押し殺す隣で、セフィアのサファイアの瞳は。
この一週間の光景、あの日をその目に映していた。
霧が深い森の中、結晶に囲まれ打ち続ける剣と鞘。
その時に私は言った。僕は聞いた。
ー自分が苦しいと思う時。
彼女が語り、少年が教えられた助言の内容。
ーその時こそ頭を冷静にして。
めぐる回想を、離れた場から共に共有する二つの心。
ー今ある自分の力は。なすべき事は何か。
毎日のように二人で眺めた太陽が、今、登る。
ー忘れないで。
忘れるものか。
僕は貫く。私は願う。
((ー勝つんだ))
押し迫るレスカルの突きの一撃、そんな中高速でサクは頭を働かせる。その時
カンッと、腰のものが手に当たった。
「っ!!」
ニールから貰った短剣。その鞘を掴み取る。
サクの手元に何もないと、体を構わず突き進めるレスカルに対して、サクは体重を後ろ、地面へとかける。
背中から倒れこんだサクは、重心を後方に傾け、後転。放ったレスカルの突きを回避する。
更に、そのまま足を振り上げる。突き出された相手の剣目掛け、叩き込む。
「ーっ!?」
空中に投げ出された片手長剣、武器を失い、硬直するレスカル。
腰で握っていた短剣を鞘から抜き放つ。
後転する勢いに逆らわず立ち上がり、その地を蹴り飛ばし、疾駆した。
「ふッッッ!!」
放たれる。
「そ、そんな馬鹿なぁああああっ!?」
相手の短剣の存在に気付き、レスカルは目を見開く。その凛々しい顔が、恐怖にへと歪む。
短剣が、レスカルにへと降り抜かれた。
「あぁあああああああっっ!!」
切り裂く。
「ーっっ!!」
血飛沫が舞う。斬られたというよりも殴られたような衝撃に、レスカルは吹き飛ぶ。
二十Mもの距離を転がり続け、レスカルは大空を仰いだ。
白目を抜く顔は恐怖のまま固まり、立ち上がる事はなかった。
あたりの歓声が、風が、何もかも止む。
決着の光景に、誰もがその目を見開いた。
「やり、やがった…」
誰とも知れない声が呟いた、瞬間。
『おぉおおおおおおおおっっ!!』
闘技場の上空に、大歓声が巻き起こった。
荒く呼吸を繰り返しながらも、サクはにしっと笑う。
そんな少年に、アマリアは手で口元を押さえ、瞳からは、涙が溢れていた。
「セフィアーっ!勝っちゃったよあの子!!」
「サク…」
周りが盛り上がる中、ルシアがセフィアに飛びつく。セフィアもその感情の乏しい顔から笑みがこぼれた。
「はぁああ…」
張り詰めていた糸が切れ、ニールは地面へとへたり込む。これまでサクを見守っていた彼女は、少年が無事なことに心から安堵していた。
『試合終了ーーーっ!!まさに前代未聞っ!!今回賭けにて、【ヨダン派】を打ち崩し【アラゲメント】の勝利したのは、【アマリア派】だーーーっっ!!!」
ステージの上、興奮に身を乗り出し真っ赤になって拡声器に叫び散らす司会者。
彼の声に、一層歓声が響き渡った。
その声を瞳を閉じ聞いていたサクは。
バタッと、その意識を手放し地面に倒れこんだ。
* * *
「…ク!サク!!」
意識が強制的に戻されていく。ゆっくりと開いた瞳に映ったのは、涙を流すアマリアだった。
「アマ、リア…?」
「ーっ!!」
瞬間、アマリアの瞳が見開かれる。そして
「よがっだーーっ!!」
「ぶふっ!痛いっ!痛いですからアマリア!!」
まるで幼児のように飛びついてきたアマリア。サクは傷に響く痛みに叫んだ。
あたりを見渡すと、病室のようだ。この様子からだと、関係者、つまり同じ派閥のものしか入れないのだろう。
そんなことを考え、サクは天井を見上げた。
室内にはアマリアの嗚咽だけが響く。自分の胸の中で泣くアマリアに、サクは微笑み、口を開いた。
「ただいま、隊長」
その言葉にビクッと体を震わせたアマリアは、やがって言った。
「…うん、お帰りサク」
あたりをとても暖かく、優しい空気が包んだ。
「アマリア」
その声に顔を上げたアマリアの顔は、涙でぐちゃぐちゃで鼻水まで出ている始末だ。そんな幼子のような彼女に微笑み、サクはポンっとその小さな頭に手を乗せ撫でた。
瞬間、アマリアの顔が赤くなる。
「ななな何をしているんだ君はっ!?」
「へっ?」
その言葉に我に帰ったサクは、己の手を見て目を見開く。
「ごごごごめんなさいっ!!つい…っ」
「ついって何だ!?くそぅ馬鹿にして!言っておくが私は君より年上だぞ!!」
「えぇえええええええっ!?」
まさかの衝撃発言に叫んでしまう。
「い、幾つなんですか…?」
「ふんっ、聞いて驚け!十五だ!!」
「え、同じですけど…?」
「誕生日が三ヶ月早いんだ!!」
なぜ僕の誕生日を…?ていうか年上っていうの?
その小さな胸で言い放ったアマリアの言葉にそんな感想を抱いているサクに気づいた彼女は、ビシッと指をさした。
「今。あ、そんなに離れてないんだ。とか思っただろ!!」
「すすすすすみません!!」
まさかの図星に、アマリアってそういうディメントがあるのか!?などと考えてしまう中、ギャーギャーと室内には騒がしい声が響き渡っていた。
「あ、あの。ヨダン様はどうなったんですか?」
少し経って、疑問に思っていたことをアマリアに尋ねる。
その質問にすっかり落ち着き、逆に何故か元気になったアマリアは腰に手を当て、言い放つ。
「ふっふーん!あいつなら追い出してやったさっ!賭けは君だったから派閥解散!とかはできなかったけどねー」
何気に恐ろしいことを言うアマリアに汗をかきながら、サクは「そうですか」と、ポーションによって回復した体を見下ろし、言った。そんなサクにアマリアは背を向け、わざとらしく咳払いをした。
「まー、今回はあのアドバイザーに助けられたわけだし、会ってきたらどうだい?」
「えっ?」
アマリア自らがそんなことを言うのに唖然としていると。「ほらっ!もう体は動くだろ!」とアマリアの言葉にお礼を言ってから部屋を出た。そして一人になったアマリアは、己の頭を両手で触り、顔を赤らめ、にへっと口元を緩ませるのだった。
* * *
「ニールさーん!」
「っ!サク君!」
倒れてしまったサクを心配していたニールは、同じ【マテリアル】で働く友人と別れ、落ち着きなく動きまわっていた。
少年がいつものように赤髪をピョンピョンと跳ねさせながら走ってくる光景を見た途端。心から安堵する。
目の前まで来たサクに、ニールは苦笑いを見せた。
「全くハラハラさせてー。何度か息止まったよ」
「す、すみません」
頭に手をやりペコペコと謝る少年の姿に微笑む。
「かっこよかったよ。サク君」
「えっ?」
その言葉にみるみるうちに少年の顔が赤くなっていく。そんなサクに吹き出すニールに、サクは「なっ!?」と動じまくるのだった。
「あの、ニールさん」
「?、何?」
しばらくして、サクがニールを見つめ、口を開く。それにニールは首を傾げた。
「短剣。ありがとうございました。おかげで助かりました」
そうして頭をさげるサクに、ニールは微笑む。
「サク君の役に立てただけで、サク君が無事なだけで。私は十分だよ」
最後に「無茶だけはダメだよ」と声をかけてから、二人は別れたのだった。
* * *
「あ…」
視界に映ったのは赤髪の少年。以前よりどこか逞しくなった彼に、セフィアは微笑んだ。
「なになにっ、セフィアどうしたのっ?」
滅多に見られないセフィアの微笑みにルシアが覗き込む。そんな彼女達に「お前ら早く来い」と告げるカラム。その言葉にセフィアは「なんでもないよ」とルシアに告げ、歩いて行った。
頭によぎるのは、少年の最後の一撃。正直体が震えた。興奮していると気づいた。
「強くなったね、サク…」
そう呟き、セフィアはルシアとともにカラムのところへと歩いて行くのだった。
* * *
アラゲメントが終了し、人のいなくなった闘技場に、彼女はいた。
彼女の瞳には、先ほどの一戦で戦っていた少年の姿。
美しい赤髪の持ち主。
「ふふっ、気に入ったわ」
その整った唇を綻ばせ、次にはその透き通るような白髪を翻し、出口にへと歩いていく。
彼は綺麗だった、透き通っていた。
「けど…」
何か、奥に、深く深く沈んだ場所に、何かあるのを、あの時、彼の姿を見た時に感じた。
もう一度、表情を綻ばせ「ふふっ」と微笑む。
大人びた、色気をふんだんに纏う彼女が、少女のように、とても愉快そうに。
「私を楽しませて?サク・ティネル」