東方四鬼館 ~青鬼の館が幻想入り~   作:ガルナイド.

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 投稿者のガルナイドと申します。
 一話は予告編という事で投稿しております。
 コンガラは台詞が無い旧作キャラなので、口調は想像で書きますのでご了承を。


一話 「……開かない?」

「何とも言えない所だねぇ。本当に出るのかい? ここは」

 

 突如魔法の森に出現した謎の館。

 ひびが入り所々黒ずんだ壁、伸び放題の雑草や(つた)。生活感の欠片も無いその館は見るだけで人を不安にさせる。その不気味さ故か、様々な噂が流れていた。

 夜な夜な子供の泣き声が聞こえる。とんでもない化け物が出る。はたまた、極上の酒や宝が眠っているなんて噂もあった。

 一連の噂話に興味を惹かれて度胸を試す輩や、宝を狙う賊などが館へと足を踏み入れた。しかし、その中の誰もが行方知れずとなった為、館の噂は一層広まっていった。人妖はその館を、神隠しの館と呼んだ。

 

「もし何も無かったら、さっさと帰るわよ」

 

 化け物がいる。極上の酒がある。不確かな噂を聞きつけて、ここへ足を踏み入れる者達がいた。

 彼女らは、山の四天王と呼ばれており、山の妖怪達に畏れられている。三鬼と一仏。この四人が揃っているという状況の存在感やオーラたるや、それは凄まじい物であり、その場にいるだけでも威厳や恐怖を感じさせる程であった。

 一人は子鬼。子供のような容姿だが、角が二本生えているれっきとした鬼だ。その容姿の反面堂々としており、酒の入った瓢箪(ひょうたん)を左腰に結び、顔を赤らめていた。名を伊吹萃香(いぶきすいか)と言った。

 一人は大柄な女性の鬼。額には大きな角が一つあり、大きな盃を背に縄で(くく)り付けている。その見た目にすら力があり、また、厳然としている。この館に入るよう、皆を誘い集めたのは彼女だった。名を星熊勇儀(ほしぐまゆうぎ)と言った。

 一人はいかにも女性的な鬼。ピンク色の特徴的な髪の上には二つのシニョンが乗っていた。姿には包容力が滲みだしているが、四人の中でこの企画に一番乗り気でなく、少々浮いていた。名を茨木華扇(いばらきかせん)と言った。

 一人は和装束の仏。額には鬼のような大きな角が生えていた。片手に(さや)に収められた刀を持ち、武士のように凜と構えている。名をコンガラと言った。

 並大抵の者程度では、近づく事もはばかられる集団。彼女らの事を知っている者であればなおさらだろう。

 

「…………」

「おいどうしたよ、コンガラ」

 

 黙って身動き一つしないコンガラに、勇儀が声をかけた。 

 

「うむ……ここは何かいるぞ」

「おお! やっぱりか。噂は間違いじゃないようだね。どの位のがいるんだい?」

 

 厳かに告げられたコンガラの一言に、勇儀が食いついた。その姿は目前の楽しみを待つ子供のようだ。

 しかし、すぐに帰りたいと思っていた華扇にとって、この知らせは嬉しい物ではない。勇儀は、皆でこの状況を楽しもうという気が強いのだろう。なるべく引き止められないように帰らなければならない。

 

「正確な数や正体までは分からない。ただ、複数いるのは確かだ」

「へぇ。さしずめ、化けもんの巣ってとこだね」

 

 萃香が実に楽しそうに呟いた。彼女もこの状況を楽しむ一人だった。

 

「さあて。探すべくは宝の酒と神隠しの化け物だ。早速行こうじゃ…………華扇、何してる」

 

 勇儀が(いぶか)しげに華扇へ尋ねる。当の華扇は、先程四人が入ってきた外へつながる扉の前で怪しい行動をしていた。

 

「なあ華扇。まさか帰ろうってのかい? 折角この四人で来たんだ。最後まで付き合ってくれりゃ——」

「この扉、開かないんだけど」

 

 全員がその事態を理解したのは少し経ってからだった。神隠しの館。そう呼ばれる由来の一つに、この現象が関わっているのだろうか。開かない? まさか。すでに自身でその扉の固さを確認した華扇以外の三人は、そのように思った。しかし、開かないのは事実。

 

「冗談じゃ…………ないんだろうね。あんたの言う事だ。力は?」

「全力。ビクともしないわ」

 

 勇儀は考え込んだ。その眉間にはしわが寄っている。

 

「取っ手は回したか?」

「もちろんよ」

「……押して開けるのかもしれないぞ?」

「そんなに馬鹿じゃない」

「自動で開く扉かもしれない」

「何よそれ」

「河童が話しているのを偶然聞いた。外の世界にあるらしい」

「なんにせよ自動で開かないんだから。それは無いわね」

「合言葉を唱えよ」

「は?」

「分かった。私に貸せ」

 

 にわかには信じがたい事だった。華扇の事を疑っている訳ではない。むしろ少しからかっていた位だ。しかし、勇儀は自分で確かめないと気が済まず、扉に近づいていった。

 しかし、勇儀は止まった。その道を、萃香が遮っていたのだ。

 

「意味無いよ勇儀。華扇がやっても駄目なんだ。きっと結界やら術式やらが掛かっているんだろうね。扉に使う力を今後に取って置きなよ。化け物が出るんだろう? しかも、私らは出られない。だから神隠しの館って訳だ。面倒な事が嫌いで、勇儀の企画したこの暇つぶしから抜け出そうとした華扇がそれを証明してくれた」

 

 先程までとは打って変わって、空気が重くなった。館を舐めてかかっていたのかもしれない。これでは度胸試しでここへ入り、そして消えていった輩と同類だ。しかし、後悔しては負けだという考えが華扇以外の三人にはあった。

 華扇は元から無関心であったため、そのような考えは無かった。どちらかと言うと、面倒なことに巻き込まれた死にたい、的な感じで落ち込んでいた。それに、一つの希望を見つけていたのだ。

 

「はぁ……ちょっとこれを見なさい」

 

 彼女のが指さしたのは扉だった。力づくで開ける事ができないのは分かりきっている。しかし、その扉には、やはり光明があった。

 

「…………鍵穴か」

 

 コンガラが呟いた。

 鍵が無ければ絶対に開かない扉。やる事は分かりきっていた。

 

「おお、そうかい。私らに鍵を見つけろってんだね。おもしろいじゃん。勇儀、やる事が増えたよ」

「よし分かった。目的は鍵と酒と化け物探しだ!」

 

 勇儀が皆に円陣を組むよう促す。「えぇ……」と華扇が嫌そうに声を漏らすが、腕を引っ張って無理やり陣に組み込んだ。

 

「音頭はコンガラの役だろう」

「ああ、分かっている……」

 

 静けさが漂った。天災の前は不思議と静かになる。まるでそのようだ。

 

「——誰も帰れぬ怪奇の館。我ら四天王の名と儀に掛けて。音頭の威勢の酔いある内に。未踏の出口へいざ向かわん!」

「っっしゃゃぁアア!」

「おおう!」

「…………おー」

 

 いつも通りの(つたな)い音頭。しかし、彼女らはこれ以上の物は無いと感じていた。

 重かった空気など初めから無かったかのようだ。明るい、熱い空気。これだから四人での集まりはやめられないのだ。これが終われば、見つけた酒で宴会だろう。華扇ですらも、それを密かに心待ちしているのだった。

 状況に憂えて立ち止まる事など、彼女らには到底あり得ない事だ。

 

「早速行こうか」

 

 館の捜索を始めようとしたその時——

 

「……今のは何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——何かの割れる音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 本編にあったように、地の文もボケるような軽い小説ですが、今後ともよろしくお願いいたします。
 
 ではでは。感想投稿は投稿者の幸せです。是非お願いします。
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