「ヒナタ、何かお願いした?」
ナルトくんの問いに私はうそをつく。
「ううん、まだ考えてるところ。ナルトくんは?」
私の問いにナルトくんは上を向いたまま答える。
「卒業しても皆と仲良くいられますようにってお願いしたってばよ」
ナルトくんのそのお願いの仲に私は入ってる?
そう聞ければどれだけ楽なことか。私には聞く勇気が無かった。
「そっか、いいお願いだね。私も早く願い事考えないとなぁ」
呟いて見せるが他のお願いなんてできない。私の願いはひとつだけ。
「ヒナタ、あれ、あの星が白鳥座のデネブ、そこから横に言ったとこにあるのがわし座のアルタイル、そっから左斜め上にいったとこにあるのがこと座のベガ。夏の大三角形だってばよ」
ナルトくんが指さしたところを自分も指差しながら探してみる。
「あ、あれが織姫様なんだね、彦星様はどこ?」
はくちょう座のデネブと、こと座のベガは見つけたがわし座のアルタイルはなかなか見つけられなかった。
これじゃぁ織姫様は彦星様に会えなくて独りぼっちになっちゃう。
「彦星はあれだってばよ」
ナルトくんは私の目線の前で指差してくれる。そしてその指先に彦星様を見つけられた。
よかった。これで二人は会えるね。
ひとしきり星を眺めたあと私はなると訓の自転車の荷台に揺られながら家に送って帰ってもらった。
話は尽きることは無く、今日の星を見た感想をお互いに言い合った。
そしてまた一緒に以降と約束も取り付けることができた。
そして家に送ってもらいナルトくんが角を曲がるまで私は手を振り続けていた。
「ありがとう、ナルトくん。大好き」
この声は届くことなく夜の闇に飲まれていった。
その次の日、部室の扉を開けるとナルトくんは部室で皆とおしゃべりしていた。そしてその隣にはいつものようにサクラさんがいた。
「ナルト、昨日はごめんね!埋め合わせに今日どこか遊びに行きましょうよ!2人で」
サクラさんの言葉にうれしそうに立ち上がりサクラさんの手をとると走り出した。2人分のかばんを肩にかけて。
「おう、ヒナタお疲れ!今日はもう帰るからまたな」
「ヒナタ、お疲れ様!またね」
二人は部室から出て行った。その様子を皆も笑顔で見送っていた。私は複雑な心境で窓際に座る。
すると2人が自転車に二人乗りしていく姿が目に入る。昨日の私と同じようにサクラさんが荷台に座る。
そしてそのまま見えなくなるまで私は2人の姿をじっと見ていた。
「ヒナタ、どうしたんだ?怖い顔して」
シカマル君が机をはさんで正面の椅子に腰掛けながら話しかけてくる。
「ううん、なんでもないの。今日の部活は何の絵を描こうか?」
シカマル君に心配をかけないように笑顔で問いかけるとシカマル君はにこりと笑い答える。
昨日ナルトが取ってきた星空。ケータイに写メが送られてきたからそれを何枚かプリントアウトしてきた。それを題材に描くぜ」
シカマル君は私に何枚かの写真を渡してきた。それを他の部員にも配っていった。
私はそれを見つめ1枚の写真を選んだ。夏の大三角がきれいに写った写真を。
そう、ナルトくんが彦星だとしたら織姫は私じゃない。サクラさんだ。本当はもうわかっていた。ナルトくんに今はこの想いが届かないことを。
いくら隣にいたってナルトくんの気持ちが変わらないことを。ナルトくんに手が届かないことを。
そう考えると涙が流れそうになる。でもだめだ。泣いちゃだめ、泣いちゃだめ。
そう自分に言い聞かせた。
そんなある日夕飯の買い物の帰り道、家までの道を歩いていると駄菓子屋から出てくる見慣れた二人。ナルトくんとサクラさん。
ナルトくんはひとつのアイスを真ん中から半分に割り片方をサクラさんに渡していた。それをサクラさんはうれしそうに受け取り口にはこんだ。
そのままナルトくんは空いている手でサクラさんの手をとりこちらに歩いてきた。
「あれ、ヒナタじゃない!買い物の帰り!?」
サクラさんがアイスを持つ手を振りながら問いかけてくる。
「うん、今日お母さんもお父さんも用事で出かけてて妹の世話を頼まれてるの」
いやな表情を出さないように笑顔で答える。
「そっか、ヒナタってばえらいってばよ。俺達今から星を見に行ってくるつもりなんだ。すぐそこの丘の上だけどな」
ナルトくんはうれしそうに私に笑いかける。
「私早く帰らないとだから!2人とも楽しんできて!」
2人の邪魔をしたいけどしてはいけない。そう思った私は二人に告げ足早に去っていった。
そして2人が見えなくなったころ、足は重くなり瞳からは涙があふれてきた。
我慢していたものが一気に流れ出してきた。