クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード) 作:パタ百ハイ
「瀬上君どこ行くの?」
「パン買い」
「じゃあ一緒に行く」
「どれだけ食う気なんだよ!」
四限目も終わって、昼休みに入る。
それと同時に稲庭は弁当を包んだ風呂敷を持って教室の外に出た。サンタの袋みたいに大きいが、数日同じ光景を見ていれば慣れて特に何も思わなくなる。
俺はというと、今日は弁当を用意していなかったので、昼休みはじめに購買で売られる、近くのパン屋からの提供の、賞味期限ギリギリで一個50円のパンを十個程買って自分の席で食べていた。二つ目のあんパンを食べ終え、次のソーセージパンに手を伸ばす。
到達する前に、ソーセージパンが掠め取られた。顔を上げると、正面の椅子にはニコニコ笑顔の優太が自分の席でないのに座っていて、その俺から見て左隣には俺から奪ったソーセージパンを持っている宝来がいた。
「……何の用だよ」
「稲庭さんとの約束ほっぽりだしてのんびりパンを食べてる友人に少し文句を言いにね」
「優太もか?」
「傍観希望者」
聞こえはいいがただの野次馬だそれは。
溜息ついて説明する。
「……すぐに来いと言われてないからな。昼休みは長いから飯食ってから言っても充分間に合うだろ」
「話が長くなる可能性は?」
「もし飯代の立て替えだったらお前等の内のどっちかに回す」
「嫌! 高一で破産申告なんかしたくない!」
「僕も! お金あるけど先を見越して大切に遣いたい! 一気に十分の三くらい減るなんてやだ!」
即座に返してきた。うん、だよな。
それと優太、家族がお前に遺してくれた莫大な財産は稲庭の食事でも一回ならそんなに減らないからな。詳しくは把握してないが。
「……そうじゃないかも知れないから、早く行ってきなさい。女の子を待たせたら駄目」
「へーへー」
ソーセージパンを返してもらってそれをかじりながら屋上へと向かう。その際教室のドアを開けたと同時にはまってたガラスが落ちて思わず腕で弾き、ドアにぶつかって割れて破片が額に掠ったが、大した傷じゃないし優太達が任せろと言ってくれたのでそのまま足を運んだ。
★
「よっ稲庭。待たせたか?」
「ううん、あたしも今来たばかりだよ」
「……デートの定番のやり取りだな」
ずっと屋上にいたのは、隅に敷かれてあるブルーシートとその上に風呂敷越しに置かれてある幾つもの八段の重箱から確かだ。食べ終わって待とうと思ったのがつい今だったと考えれば稲庭のセリフは特に間違いでは無いだろう。
「ほえ? 額切ってるけど大丈夫?」
「大丈夫、昼休み終えてる頃には塞がってる。それより用件は何だ?」
「あたしにはそっちのが気になるよ! 何で絆創膏も張ってないの?」
「俺は傷の治り早いからこの程度はほっといても……」
「見てるこっちが痛々しく思うの! 手当てするから座って!」
「分かったよ手当て受けますよ」
渋々膝を曲げて高さを調節する。自分は気にしなくとも相手はどうしても気にしてしまう事ってあるんだな。気をつけよう。
そして稲庭は傷口に手を伸ばす。俺は稲庭にごく当たり前な質問をした。
「お前……絆創膏とか消毒液とかは?」
「あたしの手当てにそんなのいらないよ」
「じゃあどう治すんだよ? まさか魔法で治すなんて言わないよな?」
「安心して。あたし魔法使いじゃないから使えないよ」
「質問の答えになってない! お前の手当て受けるのは俺なんだから方法……くらい……は……」
稲庭の手から『粘膜に覆われた並んだ小さなイボのある腕』が伸びてきて、俺の傷口に押し付けられた。
「痛い」と思ったが、すぐに汚れを『拭き取る』ようにそのまま手が動く。俺から離れると額の痛みは無くなり、屋上のドアの窓ガラスで確認すると、傷は最初から無かったかのように『消えていた』。
「おい……『今の』は……まさか……」
「やっぱり……『見えるんだね』……『イザベラ』が……」
「さっきの腕だろ?」
コクリと頷く。
「この事でお話がしたかったけど……ダメ?」
スタンド名はジミ・ヘンドリックスの楽曲から。