クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード) 作:パタ百ハイ
俺は『プラネット・ルビー』で『イザベラ』の首を掴んで持ち上げた。『イザベラ』の足は地面から離れ、体はブラブラと揺れていて動けないでいる。
空いている手を握り締める。こんな状態の相手に攻撃するのは気が引けるが、相手は『スタンド』ならそう言ってもいられない。
これから少し腫れる程度に数発叩き込む。挑んできたのは稲庭の方なんだから、その程度なら承知の上だろう。
「瀬上君優しいね。『拳を解いてくれる』なんて」
「!」
稲庭の言葉に俺は拳を作っていた手を見た。
――言われた通り、手は「グー」ではなく、「パー」になっていた。
もう一度握り締めた。しかし、すぐに解いた。
(少し信じられないが……間違い無い。俺の「攻撃する意思」が『無くなっている』!)
動揺するが、深呼吸して気持ちを落ち着かせる。まず分析だ。
こいつは間違い無く俺から『攻撃の意思』を奪っている。じゃあ『意思を奪う能力』なのか? いや、傷治したよな? 能力は『一人一つ』の筈だから……
「!」
一瞬アホらしい予想が浮かんだ。だが、それが当たっているか外れているかの検証はする価値はある。
もう一度『イザベラ』を見る。『プラネット・ルビー』に掴み上げられて、その手は俺のスタンドの『手首に当てていて』……
稲庭が俺の傷を治した時、傷口に掌を押し付けて……
確認の為こいつを凝視しながらもう一度攻撃してみる事にした。今までと違って本気の攻撃。拳を作り、振り上げる。ここまでで「攻撃の意思」は消えていない。
そして振り下ろす。同時に『イザベラ』も行動を起こした。
『プラネット・ルビー』の手首に当てていた手を、「そのまま左右に動かした」。それだけで俺は腕を下ろした。『攻撃の意思』も消えていた。
「瀬上君何がしたいのさ! やる気あるの?」
「白々しい……」
稲庭の発言は他にも言いたい事があったが、取り敢えず堪えて『イザベラ』を突き付けた。
「お前のスタンド能力……『拭き取るんだろ』? 傷も、意思も。ついでに服とかのシミも」
思い出してみると朝制服に着いたアイスクリームのシミが消えていたから、本来の能力がこれで、傷や意思を『拭き取る』のはこれの応用と言った所だろうか。
『滲み出ている想いを拭き取る』……前後を揃えれば笑えるかも知れないが、これは色々と笑えないな。
よし、「逃げよう」。この勝負、逃げ切れば『俺の勝ち』だ。
上着のボタンを一つ外し、自分の背後に投げてそれを『軸』にして瞬間移動した。『イザベラ』の射程距離はかなり短いようで、掴んでいた手から消え、稲庭の傍に戻っていた。
「あら?」
「射程距離……この場合スタンドが本体から離れて行動出来る範囲だが、『イザベラ』はそこからここまで来れないみたいだな」
「じゃあ近付けばいい話だよ!」
「無駄」
俺を『軸』にしてボタンを少しだけ動かして、更にそれをまた『軸』にして移動。稲庭は腕を振り回して追い掛けてくるが、「鬼ごっこ」は瞬間移動の能力のある俺に分がある。一定の距離を置きながら逃げ回るなんて簡単だ。
案の定暫くすると稲庭は疲労で止まった。俺も瞬間移動を止める。
「もう分かっただろ? 能力には驚いたけど、今のお前じゃ俺に勝てねぇよ」
「じゃあ後になったら瀬上君に勝てるようになると?」
「……趣旨変わってますよ。学級委員長さん」
素直に言うと、俺がこいつにこう言えるの、相性もあるけど何よりこいつのスタンド能力が目覚めたばかりで経験が不足してたのが大きいし。
そう言うと悔しそうに頬を膨らました。
「可愛いなお前」
「そんなのどうでもいいよ! あたしの『イザベラ』にはまだ出来る事があるよ!」
コイツ……結構負けず嫌いなのか? うんざりした俺は溜息を吐いて顔を上げる。
――俺は目を見開いた。稲庭のその表情は、先程の膨れ面ではなく、自信に満ちた笑顔だった。
「鬼ごっこ」が終わった時互いに引っ込めたスタンドを発現させる。先に行動を起こしたのは『イザベラ』で、俺はその行動に『プラネット・ルビー』の操作を止めてしまった。
『イザベラ』は自分の右腕を左手で『切り離した』のだ。付け根から切り離された腕は当然落下する。落ちる前に肘の所に手を振るって更に『切り分けた』。
「何を考えているんだ」と稲庭に言いたくなって顔を上げたが、稲庭は『五体満足』だった。よく分からない。『スタンド』と「本体」は繋がっている。互いのダメージが互いに影響する筈なんだ。
少ない知識であれこれ考えても時間の無駄と強引に思考を終わらせて視線を下げると、二つに切り分けられた『右腕』から足や頭、尻尾が生えてきて、『サンショウウオ』が二匹生まれた。
「『プラナリア』かよ」
「行け!」
その指示に応じ、サンショウウオは近付いてきた。分裂する前より射程距離が長くなってる。引っ付かれたらマズい。
『プラネット・ルビー』で捕まえようとしたが、すばしっこくて捕まえる事が出来ず、二匹は『プラネット・ルビー』の右足にしがみついて一匹はそのままで、もう一匹は登ってくる。取ろうとしても足にしがみついてるのがその意思を拭き取ってどうする事も出来ない。首の所まで登るとそこで止まり、前足を押し付けた。
直後に痛みがそこから感じて、出血した。
「『拭き取った』って事は「消えた」んじゃなくて「『イザベラ』に移した」って事だよ? 雑巾に移した床の汚れは水洗いすれば水に『移る』でしょ?」
自信に満ちた笑みのまま説明する稲庭。
甘く見てた……こいつの『スタンド』……恐ろしい能力だ……
これでもう俺はこっちから攻撃出来ないし攻撃してきたら防御も回避も出来なくなった。射程距離から離れようとも何処までか分からない……そもそもさせてくれないだろうし……
どうしたら……
「あー!」
稲庭が何か驚くと顔の向きを変えた。何かと思ってそっちを向くと、そこに「蝶」が止まっていた。
『スタンド』を引っ込めてる。首に感触もないし、足にもいない。
「見てよ瀬上君! このチョウチョ『アサギマダラ』だよ! スゴい! あたし生きてるのを生で見たの初めてだよーっ!」
「ああ……そうか……」
普段の感じに戻ったこいつを見て、もう戦意はないと分かった。
はしゃぐ稲庭に呆れていたが、チャイムが鳴った。腕時計を見ると、その針は五限目の開始時間を指していた。
これが示す確かな事実は、俺達は五限目は遅刻という事だった。
瀬上除夜――傷を『イザベラ』に拭き取って貰って稲庭と共に教室に戻った。次の休み時間に何があったのかと聞かれたが、適当に誤魔化した。
稲庭早良――次の休み時間に改めて『矢』の所有者の目的を聞かされ、除夜に協力を表明した。空腹を訴えたので除夜から残りのパンを全部貰った。
To Be Continued…
稲庭が戦意あっけなくなくしましたが、元々除夜に敵意がなかったのも大きいです。じゃなかったらやられてました。