クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード) 作:パタ百ハイ
「た……だ……今……」
「お帰り除夜君……て何その格好?」
家に帰ったばかりの俺を出迎えてくれたのは、栗色の巻き毛を、額に巻いた鉢巻で後ろに束ねている若々しい容姿の女。俺の義母にして、俺が住んでいるこの孤児院の院長。
『若々しい容姿』と言ったが、どちらかというと『幼い』が正しいのかも知れない。どうしてかは、この人の外見は、制服着て女子中学生と言えば知らない人なら信じてしまう(昔やらかした)程で、どうやってかは皆目見当がつかないが、昔からずっとその姿を保っている。
「格好って……」
俺自身を見渡してみると、俺が着ている制服はボロボロだった。
実はあの後もあの『スタンド』が途中途中襲ってきた。
平屋の前を通れば突然ガラスが内側から割られ、少し高い建物では瓦や外壁が落とされた。信号を待っていると後ろから突き飛ばされ、電線が切れてそれに触りかけたりした。
どれも際どく、回避はギリギリだった。だから制服がボロボロになっても不思議はないと納得出来た。
「ちょっと引っ掛けて破けたみたい」
「……嘘つかないの」
「『嘘』はついてませんぜお義母様」
『真実』を言ってないだけだ。
「制服脱いで。これから文房具買いに行ってくるから、ついでで仕立て屋に持って行く事にする」
「ここで?」
「脱衣所で。それと風呂沸いてるから、ちゃっちゃと入っちゃって」
「お言葉に甘える……それと今日晩飯いらない。疲れていてさっさと寝たい」
「今日色々あったんだね……ま、まあ、今日嫌な事がいっぱいあったんなら明日が楽しみだね。明日はきっといい事ばかりが起こるから」
お気楽な事を言うなこの妖怪(おばはん)は。
普通の時ならその気遣いに喜ぶ所だが、生憎今はその気にならない。でもそれは口にも表情にも出さないようにして適当な着替え取って脱衣所向かった。
★
体を洗った後、湯船に浸かって足を伸ばす。元々大勢が一度に使う事を想定して造られたから。浴場も浴槽もかなり広い。一人で入ると、銭湯を貸し切っている気分になる。
いつもなら気が大きくなって悩み事とか忘れてしまうが、今は『あのスタンド』の事が頭の片隅にしっかりとこびり付いていた。
「考えればそれだけ……不気味になってくる……」
感じた『違和感』は、今ははっきりしている。あのスタンドには、攻撃してくる「意思」が『無かった』。
琢磨と稲庭、そして俺の『スタンド』とは明白に違う。俺は『スタンド』を動かす時その動きを基本頭でイメージしている。あの二人のも戦闘では本体の「攻撃してくる意思」は伝わってきた。
だが、あいつに「それ」が感じられない。俺に攻撃を加える『プログラム』をインプットされ、ただその通りに動いているみたいで、言うなれば「ロボット」だ。そんな『スタンド』有り得るのか?
明日琢磨に聞いてみよう。
こう結論に至ると、引き戸が開く音がした。
浴室には引き戸はここと脱衣所を繋ぐそこしかない。多分誰かが帰ってきて風呂に入ろうとしてるんだろうと思って、首を動かすと
――脱衣所には手に「シェーバー(職員用にある)」を持った『あのスタンド』がいた。
そいつは桟を越えてこっちに入ると、シェーバーを持った手を掲げた。シェーバーのコードは延びていて、本体も動いている。何をするつもりかすぐに理解した。
「『プラネット……ぐっ!」
立ち上がって『能力』を使う前に空いた手で俺の首を掴んで湯船に押し付ける。外そうとしてもパワーだとこっちの方が負けていてどうしようもない。そのまま奴はシェーバーを投げ込んだ。
湯船に浸かる前に、それを『プラネット・ルビー』で払いのけた。
よく見えないが奴がタイルの方に手を伸ばしたからあっちに落ちたのは分かった。そして、その瞬間首にかかった力が緩んだのも。
この瞬間は逃さない。強引に振り払って『能力』を使って浴槽から脱出、脱衣所に飛び込んで急いで体拭いて服着て外に出た。
★
俺は今、自転車に乗って家から離れている。あいつが家にも現れると分かった以上、俺が留まればあいつの特性から間違い無く俺以外も危険が及ぶ。
あいつの攻撃は一見バラバラだが共通点がある。それは『事故として発生しうるもの』だという事。
つまり、あいつは俺を『事故に見せかけて殺す』為に動いている。多分、俺が死ぬまで追跡は止めない。
まずは比較的安全だと思える場所を探す事。やる事を決めるとペダルに乗せた足に力を込めた。
高校入学前日
「義母さん、何で女物の制服まで購入してるんだ?」
「除夜君の参観日にあたしが着るの」
「冗談でもやめてくれ!」