クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

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追跡するはマイ・フレンド その④

 

「ここなら……電話するだけの時間取れるかな……?」

 

 サトーココノカ堂の屋上で、俺は携帯で学校に電話を掛ける。

 あれからもあのスタンドは執拗に襲撃してきた。店やビルの前を進めばガラスが割れて破片が降り注ぎ、電線の下を通れば電線を切られてそれに触りかけた。

 一番ヤバかったのは、このデパートの前の交差点だ。俺が渡っている最中に停まっていた車を一気に押してきた。

 迂闊な事に俺はここに向かうのに意識を傾け過ぎていて気付くのが遅れ、能力を使う間もなく追突された。

 おかげで自転車は再起不能(スクラップ)確定。俺も身体のあちこちが痛い。裂傷だけじゃなく、骨折とかまではいかないものの、骨や筋肉とかにもダメージを追っていて、病院行ったら医者は俺に安静にするよう言い放つだろう。行く余裕無いけど。

 数回のコール音の後、電話先は出てくれた。

 

『もしもし、埼玉県立星陵高等学校です』

「本校の生徒で一年の瀬上除夜といいます。すみません。大至急二、三年生で前髪を顔が隠れるようにしている髪型をした女子生徒の名前と住所を教えてくれませんか?」

『その生徒に何か』

「少しトラブルを起こしてそれで謝りに行きたいんです! 早く!」

 

 滅茶苦茶なのは承知だが、こんな事態で他人に納得させられるだけの嘘をつける程俺はアドリブに強くない。

 幸い向こう側は何か察してくれたのか、すぐに『彼女』の情報を出してくれた。その事情を訊かなかった辺り、少し不安になったが、目を瞑ろう。

『御厨山女(みくりや やまめ)』、在籍は二年四組、出身は長野県で現在は春日部のマンションに一人暮らし……。

 そのマンションが何処にあるかは知っている(ここに来る途中通り過ぎた)。問題は、『そこまでの距離』だ。

 別に遠くはない。ここから1キロもないんだから、近いといえば近い。

 そう、『1キロもない程の距離はある』という事なのだ。

 現在の時刻は7時20分を少し過ぎた所で、時間的に暗い。それに遠方に通勤通学している人達は帰宅している最中の人もいるだろう。

 

「……もういい。ウダウダ考えるのは時間の無駄だ」

 

 その時はその時だ。そう考えて階段へ向かう。階段の理由は「他と比べたら危険が少ない」から。エレベーターはワイヤーが切られたら洒落じゃ済まない。

 但し普段のようにではなく、『屈んで手摺をしっかり掴んだ上で』、だ。少し恥ずかしいが命には代えられん。

 やはりあのスタンドは途中で現れ、何度も足を引っ張られたり、背後から押されたりしたが、その度に少しバランスを崩しただけで『事故』には至っていない。他に階段を利用する人を突き飛ばして巻き添えを食らわせようとしてきたが、それは『プラネット・ルビー』で対処した。

 普段の何十倍もの時間をかけ、どうにかデパート内での最大の難関はクリア。後は多少のダメージは覚悟の上で出口までまっすぐ突っ切る――という真似はしない。

 辺りを見ながら一歩一歩慎重に歩いて、危険を感じたらそこから少しだけ走る。

 どう見ても挙動不審なので周りから視線を感じるが、こっちは命懸けなんだから気にしてられない。

 時間をかなり掛けてデパートから出た時には、時間は既に8時を過ぎていた。生きている事に感謝し、『本体』のいるマンションへと走り出す。

 

 

 

 

 1LDKのマンションの623号室。そこが、御厨山女が賃貸している部屋。

 リビングで、髪を後ろに括った彼女が、テーブルに置かれた一枚の『写真』を見ながらCDラジカセで流している音楽(魔法少女物のアニメのオープニング曲)を聴いていた。

 写真に写されているのは、中学時代の瀬上除夜。

 

「こんな偶然もあるのね……」

 

 カップに注いだミルクティーを飲み、HR前の事を思い出しつつ呟く。

 彼女は二ヶ月前、『謎の男』に『矢』で射抜かれ、それから暫くして『能力』に目覚めた。

 最初の発現は一ヶ月半程前で、一度目で『マイ・フレンド』と名付けた自身の能力の特性を粗方把握し、以降特に「条件」を満たすような事をした人物はいなかった。そして、今日それを満たした人間が現れ、その人物は『あの男』が言っていた相手だとすぐに分かった。

 

(という事は、「あれ」はやっぱり『あの男』の仕業かしら……?)

 

 そう考えている内にカップの中身を飲み干し、お代わりを注ごうとすると、閉じていたドア越しからでも聞こえる足音が耳に入った。

 

「来たか……」

 

 足音から相手は走っているのが分かる。こんな時間にここを走り回る変人はこのマンションにはいないし、音は徐々に大きくなっているので、間違い無くこっちに近付いてきている。そして彼女の知人にこんな時間に走って家に訪れるような人間はいない。

 以上の事から、『彼』がここに向かってきているのを確信した。

 

「せっかくここまで来てくれたんだし、お茶くらいおもてなししないとね」

 

 立ち上がって玄関へ向かった。

 




スタンド名はジミ・ヘンドリックスの楽曲から。

次回はマイ・フレンド戦決着!
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