クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

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発現したしんのすけの能力!


しんのすけの日曜参観 その④

 

 しんのすけから出て来た『スタンド』に俺は目を向けた。

 濃い緑色の短い体毛に全身を覆われていて、上半身は裸で下半身は戦国時代の武将が身に着けていたような甲冑を纏い、腰には一本の日本刀が差しているイノシシだった。異形を強く感じたのはその顔。顔自体は図鑑やテレビで見た事ある普通のそれだが、後ろの歯が左右三本ずつが上顎を突き破っていて尖った先端が空へと伸びている。

 

「お前……こんな『スタンド』を……」

「後悔したってもう手遅れだぞ! 行け、オラの『スタンド』! あいつを懲らしめてやれ!」

 

 威風堂々と、しんのすけは自分のスタンドに命令した。

 だが、スタンドは全く動かなかった。

 

「……あれ?」

 

 やっぱり目覚めたてで扱い方を理解しきって無いのか……。

 

「スタンドの動かし方は基本的に体を動かすのと同じだ……難しく考えるな……どう動かすか頭でイメージして……」

 

 喋れてはいる。だが聞こえてないみたいだ。声が小さ過ぎて届いてない。これでも精一杯大きな声を出してるんだが……。

 

「ねえちょっと! 聞いてる? あいつとっととやっつけちゃおうよ!」

『怖いからヤダ』

 

 はい?

 

 あのスタンド、自分の本体に顔向けて本体の命令を拒否しやがった。

 あれ? スタンドが喋った? いや、確か琢磨が言ってたな。本体と独立した意思を持ったスタンドはあるって。そんで、そういったスタンドは大抵喋れるって……。

 いや、でもあれ、露骨に本体に逆らったよね?

 

「何言ってるのお前! さっきは動いたじゃない!」

『あれはまだ私の出し入れするのすら自覚してないのにあいつに突っ込むなんてバカな真似をしたからだ。全く……何で戦いの時に私を覚醒させるんだ! 言っとくが私はこんなヤバい奴と戦わないからな。分かったらとっとと私をしまえ』

「お前……オラのスタンド……なんだよね?」

『その通り。お前が「矢」に刺された事でお前の精神から生まれたのが私だ。だが私は自意識を持っている、だから「怖い」という感情があってもお前に文句を言われる筋合いは無い!』

 

 ……………………。

 うん、正しいんだけどさ……違うよね。琢磨も「自我のあるスタンドは必ずしも思った通りに動く事は無い」って言ってたけど、あれは本体がピンチだって解らないのか?

 

「あっはっはっはっはっはっはっはっはっ!」

 

 今日聞いた中で一番の笑い声が響く。発生源は塩屋の口で、あいつはしんのすけのスタンドを指差して大爆笑している。

 

「何それ何それ何それ! スッゴいスタンドだね! 自我が強過ぎて本体が制御出来てないって!」

『……もしかして私、バカにされてるのか?』

 

 うん、バカにされてる。

 

「褒められてるんだよ。だって、『スッゴい』って言われたし」

「意味……違う……」

 

 塩屋は笑いを止めると、俺としんのすけから距離を置いた。多分十メートル以上。

 判断としては正しい。俺の『プラネット・ルビー』は『近距離パワー型』で、しんのすけのは人一人殴り飛ばせたから多分同じ。それくらい離れ、且つキープしていれば攻撃を食らう心配は殆どいらない。俺が能力を使えばその程度の距離はあって無いようなものだが、今俺はそんなコンディションじゃない。

 

『しんのすけ』

「何? ぶりぶりざえもん」

『何だそのふざけきった名前は! 私をなめているのか!』

「オラの考えた救いのヒーローのお名前」

『そんなカッコ悪い名前はイヤだ! 名前を付けるんならもっとカッコいい名前にしろ!』

「もー、わがままだなぁ。役に立たないんだからあれこれ文句言わないでよね」

『何……だと?』

 

 何か声色変わった。

 

「だってそうでしょ? さっき色々言ってたのだって、あいつはお前じゃどうする事も出来ないから、あれこれ言ってそれをごまかそうとしてたんでしょ?」

『何を言うか! ふざけるな! 私の能力ならあの程度の奴苦もなく倒せるわ!』

「嘘くさ〜い」

『論より証拠だ! 私が奴を圧倒出来る程の性能を持っている事を貴様の意識に焼き付けてやる!』

 

 プライド高っ!

 お前ついさっき『怖い』って言ってたよね? 全く逆の事口にしたよね?

 

「じゃやってよ」

『やってやる。だがこの姿では無理だ。「変える」必要がある』

「それって……トノサマ? アマ? ガマ? もしかして、ウシ?」

 

 何だそれ……ああ、「蛙」か。

 

『話を脱線させるな。いいか、「これ」での私の射程距離はせいぜい二メートル程度で奴には勝てない』

「お前今勝てるって言ったじゃないの」

『最後まで聞け。私の能力を発動させれば、この距離を保ったまま奴に攻撃出来、お前自身がトドメを刺せる』

「ホントに!」

『本当にだ』

「じゃやって!」

『『お願いします』は?』

「……言わないと、ダメ?」

『人に何かを頼む時は「お願いします」と言うのが礼儀だろうが!』

「……お願いします」

『分かった。それと忘れるなよ。救いの料一億万円。クレジットも可』

 

 ……俺のスタンド、自我なくて良かったよ。

 

 次の瞬間、俺は目を疑った。しんのすけのスタンドがミニマムサイズに、しかも数を爆発的に増やしたからだ。

 迫ってくるそれらに塩屋は『ストゥーピッド・ライク・ディス』で対応。何体かは潰されるも、対処しきれず本体への接近に成功し、十体程は爪先を持ち上げ、残りは胸元に集まって一斉に後ろに押した。結果、転倒。同時にミニマムサイズのスタンドは全て消えた。

 しんのすけに目を向ける。解除した理由が分からなかったからだ。琢磨からの話だとあれは間違い無く『群体型』。複数体で一つという計算で、パワーは無いが数で攻める事が出来、元々の数にもよるが多少破壊されてもダメージはそこまでないという、戦闘において有利なスタンドだ。

 確かにあのスタンドはしんのすけ自身にトドメを譲ると言っていたから、スタンドに押さえつけられた塩屋をしんのすけが殴るのかと思った。

 その考えは、しんのすけの姿を見て変わった。

 緑色の革ツナギに金属製の胸当て、肩当て、肘当て、膝当てを装備し、腰に金色で楕円形のバックルに紅い大きな宝玉が埋め込まれたベルトを巻いて、見るからに頑丈な膝近くまでの白い光沢のあるブーツを履き、頭に目を覆う水色のバイザーのついた、イノシシの頭部を象ったフルフェイスメットを被っている。それが今のしんのすけの姿だった。

 

「オラ、参上!」

 

 上半身を起こしている塩屋に、決めゼリフを言ってポーズを決めた。

 




しんのすけのスタンドは、自我のあるスタンドです。性格はほぼぶりぶりざえもん。色んな意味で規格外です。

次回、決着がつきます。
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