クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード) 作:パタ百ハイ
『スタンド』は一人一体、能力は一体につき一つ。これは原則だ。塩屋のように一体のスタンドで複数の異なる現象を起こす事が出来るのは、起こした現象に何らかの『共通点』があり、それが『能力』であるからだ。
しんのすけの場合もそれだ。最初出て来た時は『近距離パワー型』でさっきは『群体型』、今度はあいつの格好が変わってスタンドが傍にいない事からスタンドを「身に纏う」『装着型』。そして、それらの共通点は『型(タイプ)』。すなわち――
(『「型」を変える能力』……)
随分とぶっ飛んでる能力だな……まあ、「一能力」である以上直接殴る蹴るしか出来ないけど……。
「ぶりぶりざえもん。お前を纏ったのはいいけどこれでどうすればいいの?」
『だから私をそんな名前で呼ぶな!』
「分かった分かった。んで、どうすればいいの?」
『この形態でのみ使える私の唯一の必殺技を教えよう。それを奴にぶちかませ』
立ち上がる塩屋に向かって空高くジャンプ。そして右足を前に伸ばし、左足を曲げる。
そう、『跳び蹴り』だ。
「『ワイルドボアキック』!」
塩屋は『ストゥーピッド・ライク・ディス』で対処しようとするもパワー差でその腕が弾かれ、腹部に命中する。その体は吹き飛んで壁に激突した。確かにあのスタンド、本体にトドメを譲ったよ……。
奴が動かない事を確かめると、しんのすけの身体に纏われていた『スタンド』は消えた。消え際に『今回は初回限定サービスで十億万円にまけてやる』と言い残して。……一桁増えてるぞ。
「お兄さん大丈夫? 救急車呼ぼっか?」
「いや……平気……なんだけど……30分でいいから、じっとさせてくれ……多分それで立って歩く程度は回復する筈だから……」
★
「ねぇ除夜のお兄さん、ホントのホントに大丈夫なの? やせ我慢は体によくないよ?」
「やせ我慢とかじゃなく本当に大丈夫だって何度言えば分かるんだよ……」
さっきからこのやり取りを何度も繰り返している。気持ちは分かるが正直少し鬱陶しい。
あの後、普通に動いて平気な程まで回復した後、説明して園にいた人達を誤魔化す事に成功(起こった異常事態がなくなった安心感が大きかったみたいで俺の事をそんなに気に留めてなかったようだが)。塩屋は気絶していて尋問は出来ず、救急車で病院に搬送された。それで今俺達は帰路についている。
「俺は傷の治りが早いんだって。確かにまだ所々痛むけど明日までには完治するから大丈夫だって」
「うーん……ホントならいいけどね」
「信じられない気持ちは分かる。俺の治りの速さは初見の人間は一様に驚くから」
「それにしても……こんなにハーブな参観日は生まれて初めてだぞ」
「『ハード』な。それだとミントやラベンダーとかだぞ」
「鳥を英語で」
「『バード』」
「あら、しんのすけ」
「ななこおねいさん!」
前の交差路から、長い髪の俺より少し年上と思わしき女の人が手を振っている。しんのすけは目を輝かせ、嬉しそうに彼女へと駆け寄る。
その様子からすぐ思い出した。こいつが時々話していた、大好きな女の人の事を。
「な、何でななこおねいさんがここに? も、もしかして、オラに会いに……」
「うん。だからしんのすけの家に寄ろうと……あれ? そちらの方は?」
「オラの新しいお友達の――」
「初めまして、瀬上除夜と申します」
「こちらこそ初めまして、大原(おおはら)ななこといいます」
こんな月並みな挨拶を交わした後、一緒に野原家に行く事になった。道中のしんのすけとななこさんの二人の会話には、俺は時々相槌を打つ程度しか参加しなかった。彼女と話している時のいつもと違うしんのすけを見て、話に入るのに気が引けたからだ。
それで今、俺達はそれを維持したまま野原家でお茶している。ななこさんが持ってきたクッキーをお茶請けにして。
「参観日か……楽しかった?」
「ううん疲れた。せっかくの日曜なんだから家でゴロゴロしていたかったのに幼稚園に行かないといけないなんて……」
「お父さんの愚痴だぞそれ」
「クス……そう。ねえしんのすけ。今度の土曜日にウチの大学で学祭があるの」
「学祭? こんな時期に?」
俺は大学知らないが、今は四月の半ばだ。学祭なんて学校あげてのイベント、早過ぎるんじゃないか?
そんな俺の疑問にななこさんは答えてくれた。
「それなんだけど……ホラ、最近春日部で変な事件が結構な頻度で発生しているでしょ? ウチの学校の生徒にも被害者がいて、それで学校が少し暗い雰囲気になっちゃって、それでって訳」
成程。学校ぐるみのイベントを開催して暗い雰囲気を吹っ飛ばそうってハラか。
「けれど、開催日を考えて急に決めたイベントでしょ? それだと大した事出来ないんじゃ……」
「まあね……普通のに比べたらこぢんまりしているわね……一番の目玉は女子プロレス部の公開試合でね、今から楽しみにしている子もたくさんいるの」
「女子プロレス……忍(しのぶ)ちゃんも?」
「うん。忍ったらもうスッゴくはりきっててね。無様な姿は見せられないって今トレーニングやってるの。しんのすけも観てくれるのなら喜ぶと思うわよ」
「で、どうするんだ? 行くのか?」
「ふっ、グドンだね除夜のお兄さん」
「『愚問』な」
「行くに決まってるでしょ! 一体何年の付き合いなの?」
「まだ一週間」
「という訳で行くからね! 例え当日に幼稚園があろうとも!」
「幼稚園に行けよ」
「何言ってるの除夜のお兄さん! 愛は全てにおいて優先させなきゃだぞ!」
「幼稚園行かなくていいという選択は間違い無く意味を履き違えてる」
「除夜君の言う通りよ。幼稚園あるのならそっちに行かないとね」
「そんな〜……」
「『例え』って言ってたんだから実際は無いんだろ?」
「うん」
「ならそんなオーバーなリアクションしなくとも……」
「友達にオラの愛を否定されたらショックに決まってるでしょ! ちっともオーバーなんかじゃないぞ!」
「愛愛連呼するな気色悪いから」
こいつ、『色』が絡んだらこんなにもおかしくなるのか……。
負傷に加えこいつの変なテンションに当てられた俺は、凄く気が滅入った。そしてしんのすけはそんな俺の心境など構わず、ななこさんとの会話を楽しんでいた。
耐えられなかった俺は、お茶を飲んだ後帰宅した。
To Be Continued…
日曜参観での戦いはこれで終わりです。
忘れてましたが、塩屋のスタンドの名前の元ネタはダニエル・パウターの楽曲です。