クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

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非日常に関わっていても、日常を勤しむ以上日常は人に容赦しない。


ミスター・ブライトサイド その①

 

 翌日、つまりは月曜日。

 俺はいつも通り朝早くに家を出て、優太と合流して一緒に登校した。

 正直言うと、かったるい。週初めの登校は元々嫌いだし、昨日塩屋との戦いで身体を全体的に痛めた。そのままだったら休めただろうが、夜になったら粗方治っているから理由にならない。無論現在完治している。

 怪我がなくともあそこまでボロボロになったんだから気分的に優れないし、疲れは取れてないから眠くて堪らない。傷の治りの早いこの身体が恨めしい。

 だから午前中の授業はその眠気から自分の意識を保つのが精一杯で、授業内容なんかロクに頭に入らなかった。一応ノートは取っていたが、ぐちゃぐちゃで役に立たない。今日は体育とか無かったから、合間合間の休み時間を仮眠に当てる事でどうにか昼休みの中盤までには本調子に戻れたので、優太にノートを借りて残りを写すのに使った。当たり前だが一〜四限の授業内容を全て写すのは大変だし、五限目は移動教室だったのもあり(昼食は義母さんがこうなるのを見越していたのか偶然かサンドイッチだったから作業にそんな影響はなかった)昼休みに全部書き写す事が出来ず、結局放課後までかかってしまった。

 作業がラストスパートに差し掛かった所で、突然目の前が真っ暗になった。背中に柔らかい感触がある事からも、理由は明らかだ。

 

「だーれだ?」

「稲庭」

「正解」

「今俺ノート写しているんだよ邪魔しないでくれよ」

「一日中ボーっとしてたもんね。ねえ瀬上君、帰り一緒にマックに行こ。ね」

「却下」

「どして?」

「俺の義母さん寄り道厳しいし。それに今日はこの後部活動の見学に行く予定なの。だから却下」

「瀬上君部活してる余裕あるの? 『弓と矢』探しは?」

「時間が許す限りは普通の学生生活を送りたい」

「なら瀬上君が学校から出て来るまで待つ」

「俺以外を誘えよ」

「みんな冷たい。誘っても断られる」

 

 ……両サイドに同情した。こいつは誰かと仲良く食事をしたいだけ。誘われた側はこいつの大食いぶりで他人から奇異な目で見られたくない、または寄り道をしたくないだけ。

 

「優太や宝来は? あいつ等なら」

「沢登君はHR終わったらすぐ帰ってった」

「え? そうなのか?」

 

 これは珍しい。俺といる時は基本的に一緒に行動する優太が、俺に何も言わずに帰るなんて。

 

「何か急用が出来たらしいよ。HRが始まる前にそう言ってた」

「それ、何で俺に言わないんだ?」

「ノートの書き写しの邪魔にならないように終わるか合間見て伝えてって」

 

 そう頼まれた奴が妨害するな。いや、それを果たす為か? ならあいつが言ってた通り終わってからでいいだろ。

 

「宝来さんは生徒会。もう一つ、ノートは明日返してくれればいいって」

「ああ分かった」

「それで終わったら稲庭さんと食事してあげてだって」

「それはたった今捏造しただろ」

「あっ分かった?」

 

 可愛らしい仕草をした稲庭を無視して、俺は書き写し作業を再開した。

 

 

 

 

 在校生の俺が言うのも何だが、俺の通うこの星陵高校は胡散臭い学校だ。そう思う理由の一つが、『部活動』だ。

 まず数だ。運動、文化系問わず、部と同好会の数を正確に把握している関係者はいないのではないかと言われている程多い。統計を取れば県内はおろか全国でも下手したらベスト3以内に入るという噂も聞いた事がある。勿論俺も把握してない。

 それだけの数なんだから、当然その全てがどの学校でも普通にあるものの筈がない。他の学校では聞いた事も無いのも存在する。

『アイロン掛け部』とか『モップ掛け部』とか、『凧揚げ部』とか『レジ打ち部』とかを、一つ二つならまだしもそれら全部を認めている学校は、全国でもここ含めて3〜4校あればいい方だろう。

 風の噂を耳にしただけだが、『暗殺研究会』という、名前だけ聞いてもかなり物騒なのもあるらしい。いや、「あった」だ。俺達が入学する前に騒ぎを起こして廃部になったらしいから。他にも一部の部活が時折『真面目に行動した上で』問題を引き起こしているらしい。

 何で俺が知っているのかは、宝来以外にも生徒会役員の友人がいて、そいつから色々聞いたからだ。

 取り敢えずそういう訳の分からない部活には寄らない。高校では新しい事したいから、中学の頃入ってた陸上部と料理部は今んとこ候補から外す。ボール関係も苦手だから除外だとすると、文化部に絞り込まれてくる。何より活動内容が健全な所。これはどうしても外せない。てか何があろうと外さない。

 閑話休題。

 本日は美術部を見学する事にした。美術部の理由は、単に何にしようか迷ってた時、ふと目に入ったのが第四美術室だったからという自分でもしょうもないと思える理由からだ。何故数字が割り振られているかは、ウチの学校美術室や理科室やらが複数あるからだ。本当何なんだろうこの学校。

 

「失礼します」

『失礼するなら帰って下さい』

 

 無視して扉を開き、中に入った。

 

「いや、君……ずかずか入って来ないでくんない?」

「その事は謝りますけど俺はあんな使い古されたやり取りをしにここに来た訳じゃないので」

 

 いちいち構ってられるか。

 それはさて置き、第四美術室を見渡してみたが、このやり取りを行った、大きな石をのみで彫っている、ボタンではなくジッパーの着いている、ジャケットのように厚みのある学ランを着た、伸ばした茶髪をゴムで纏めて三角巾を被った男子生徒一人しかいなかった。

 

「君、見学?」

「あ、はい」

「そうか……悪いね。今日部活休みなの。僕がいるのは大会に出展する作品製作の為なんだ」

「そうですか……すみません、休み返上しているのにお邪魔して……」

「いいよ、見学は自由なんだし。それよりさ、ちょうど一休みしたいと思っていた所なんだ。良ければ付き合ってよ」

「俺部外者ですが……」

「部員の僕がいいって言ってるんだから遠慮しなくていいの。それに部員も顧問もみんなこんな細かい事気にしないから怒られはしないって」

 

 この人意外と押しの強いんだな。

 部の詳細や活動内容の事を知りたかったし、お言葉に甘える事にした。

 

「自己紹介まだだったね。僕は逢坂(おうさか)氷雨(ひさめ)。クラスは三年三組。美術部彫刻部門に所属しています」

「あ、俺は……」

「瀬上除夜君だよね。知ってるよ」

 

 その言葉に思わず首を傾げた。俺達一年は入学して間もないし、俺はそこから今まで同学年は勿論、違う学年にも名前が知れ渡るような事はしてないし、事件にも巻き込まれてない筈だ。

 

「僕の出身中学と君のそれ、一応同じだから」

 

 察してくれたのか、答えてくれた。一応と言った理由は、親の仕事の都合でその年の八月に宇都宮から春日部に越してきたからだという。

 それ聞いて納得した。中一の今頃の俺は、決して良い意味じゃない方で有名人だったから、それを少し過ぎた辺りからでも在籍してたなら人伝に耳にしていても何もおかしくない。

 

「大変だの……あっごめんごめん。聞いただけの僕でも思い出しただけで気分悪くなるんだから、当事者の君にとっては触れられたくない事柄だよね」

「腫物みたいに扱わなくていいですよ。気にしてない訳じゃないけどもう三年も前の事だし。それより部活についての質問、宜しいでしょうか?」

 

 当時の事はあまり触れられたくないので、聞きたかった事に話の焦点を持っていった。

 

「分かる範囲でなら何でも答えるよ。興味のある部活動の事詳しく知りたいのは当たり前だからね」

「先輩は『彫刻部門』って言いましたが、美術部ってどんなシステムなんです?」

「ああ、そんな難しい話じゃないよ? 美術って言っても様々な分野があるでしょ? 単にその分野ごとに部門があるってだけ。ウチだと他に『陶芸部門』とか『染織部門』とか、『アニメーション部門』もあるんだ。絵画館系になるともういっぱいある。新部門の創立は四人以上集まって許可を貰うと認められる。新年度が始まって一人もいない部門は無くなる。演劇部や新聞部、料理部その他も同じシステムを採用してる。分かった?」

「分かりました」

「じゃ、他に質問は?」

 

 何を聞こう。

 そんなに部門があって部室は足りているのかだろうか。それとも、そんな細分化するんなら最初から別々の部にした方が良いのではないのかだろうか。

 

 色々悩んでいる内に、ふと『ある疑問』が頭に浮かんだ。

 これは部活に関係無い。だが、何の迷いも無く、口から出た。

 

「何であんた……『俺が瀬上除夜だって分かったんだ』?」

 

 曲がりなりにも同じ中学なら俺の事を聞いて知ってたとしてもおかしくない。三年前に聞いた事を覚えていたとしても記憶力がいいで済む。

 だが、俺はこの人とこの時まで一切の接点は無かった。三年前に人伝に聞いたっきりの人間が何の前触れもなく現れて、その人物の名前を言い当てる事が普通出来るだろうか。

 更に言えば「大変だね」と言った。「大変だったね」ではない。この人は俺が今「大変な事」に関わっている事を知っている。それを知っているのは『関係者』だけだ。つまり、この人は――

 

 ここまで考えていると、逢坂の右肩から『スタンドの拳』が飛んできた。

『プラネット・ルビー』を出して瞬間移動――出来なかった。

 切り替えて両腕をクロスしてガード。それ自体は間に合ったが、重い一撃に体は吹き飛び、そのまま壁に衝突する。

 逢坂は己の『スタンド』を発現させ、俺に近付いてきた。

 




そして非日常は、日常の陰に常に潜んでいる。

普通の学生やろうとして、新しい戦いが勃発しちゃいました。
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