クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

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今回はクレしんでお馴染みの居酒屋での食事です。


瀬上除夜の推測

 

 午後六時半、焼鳥屋『デスペラード』。

 この店の隅っこに位置するお座敷に、俺としんのすけ、琢磨と稲庭の四人が卓を囲んで大皿に乗せられた焼き鳥や並べられた料理を頬張っている(主に稲庭)。

 どちらかと言えば仕事帰りのサラリーマンとかが飲む為に来るような所謂居酒屋で、薄暗い時間に高校生二人、フリーター、幼稚園児という組み合わせが来るような店じゃないだろう。まあ、そんな組み合わせ滅多にないだろうけど。ちゃんとみさえさんに(当然要所ははぐらかしているけど)話したからしんのすけがいるのは問題無い。

 ここに集まったのは、逢坂先輩との戦いが終わって彼から詳細を聞いた直後まで遡る。早急にみんなに伝えなければならないと思い、召集を掛けた。

 

 ……笑える話、召集を掛けた後で場所探しに難航した。昔からよく行ってたお好み焼き屋に予約入れようとしたが、満席で無理だという返事が返ってきた。普段はそんなに客来ないのに。それで三人に「出来るだけ人が少なくて、この時間帯で学生とかが来ても特に何も言われない場所」の心当たりを尋ねた。

 稲庭は「無い」と即答し、琢磨はバイト先の一つであるカラオケ店に電話してみたが、同じ理由で無理だった。しんのすけがこの店をあげ、ここに来た。しんのすけ曰く、「お客さんあんましいないけど美味しい焼鳥屋さん」らしい。確かに客はあまりおらず、閑古鳥とまではいかずともガラガラではあった。そしてマスター(しんのすけが店長をそう呼んでいるのでそれに倣う)に幾つか注文して今に至る。

 因みに御厨先輩は苦手科目で「難易度が高い宿題が出たから来れない」と返事が来て、塩屋は入院中。まあ、明日知らせればいいだけだ。

 

「早速ですが本題に入りましょう。除夜君、僕達は君からの突然召集の電話でここに集まった訳ですが……何があったんですか?」

 

 レバ刺しを呑み込んで理由を訊いてくる琢磨。しんのすけはサイダーを淹れたジョッキを置く。稲庭は……ほっとこ。

 

「今日の放課後、俺は学校で『スタンド使いになったばかりの男』と遭遇し、戦った」

「え? 瀬上君大丈夫なの?」

「大丈夫だからこうして飯食ってんだろ」

 

 心配してくれてるのは嬉しいが食べながら喋るな飛び散るだろ。

 

「お兄さん生きてる?」

「そうでなかったら今ここにいる俺は何なんだ?」

「何故『スタンド使い』と戦ったとそのまま仰らず『なったばかり』という接続詞を付けたのですか?」

 

……話を戻してくれるのは有り難いけど唐突過ぎる。

「重要な話なのでしょう? ならサクサクと進んで欲しいのですが」

「うん、そうだね……」

 

 俺が同じ立場でもそう思うな。

 一息つく為に茶を飲んだ。

 

「戦闘は辛うじて俺の勝ち。その後詳細を尋ねた。結果そいつから得た情報は、『弓と矢』の保持者を絞り込めると判断出来る物があった」

「その『情報』とは?」

「能力を得た時間帯。そいつは『今日の朝』に射抜かれたと言った」

「何でそれが『矢』を持ってるのが誰か絞り込める情報になると思ったの?」

「すまん。詳しく説明するべきだった。そいつは大会に出展する作品を作る為にここ数日一人朝早くから登校していたんだと。で、今日突然『矢』で射られたと証言したんだ」

 

 そこまで聞いて琢磨と稲庭が納得いった顔をした。

 

「成程……」

「そっか……確かにそうなるよね……」

「え? 二人共何が分かったの? 除夜のお兄さんは何が言いたいの?」

「疑問の順序逆。なあしんのすけ……一つ訊くが、お前の通う幼稚園と何の関係もない奴が、人のいる中誰にも怪しまれずに園内に入り、園内を歩き回る事が出来ると思うか?」

「そんなの……そゆ事?」

「理解したみたいだな」

 

 そう、部外者がウロウロしていたら少なからず騒ぎになる筈だ。

 逢坂先輩から聞いた時間は確かに早いが特別にそうかと問われたらそうじゃない。彼のように個人的な用件で登校する生徒もいれば、部活の朝練で来る生徒がいても違和感がない時間帯だ。実際登校した時はそれなりの人数がいたと言ってたし。

 それだけじゃない。学校を開ける用務員の人だっているし教師だって来てる人は来てるだろう。そんな中部外者が全ての目を潜り抜けて一人でいる人間の元まで来れるのか? 現実味が薄過ぎるだろ。

 

「でも、『弓と矢』は? 実物見てるけど、あれ学校の鞄とかに入れられるようなサイズじゃないよ?」

「十中八九そいつもスタンド使いだろうから何等かの能力を用いてその問題をどうにかしたんだろうな。それで、射抜いた後は一度帰宅し家に置いてから改めて登校した」

「何でそんな手間かけるの? そんな能力あるんなら学校の何処かに隠しておけばいいんじゃない?」

「考えられるのは二つ。一つは単純にそいつの能力ではそんな事は出来ない。もう一つは万が一発見される可能性を恐れてそれをしない」

「一つ目は分かるけど、もう一つは? 仮に見つかったとしても、ごまかせそうな所、一つや二つは探せばあると思うけど」

「見つけたのが除夜君だったらどう対処するんです? 実物を見ていなくともどんな物なのかは大まかながら分かっているから誤魔化すのは難しいでしょう。それに稲庭さんや除夜君が遭遇したその人がそうだったように、学校内に射抜かれスタンド能力を得た人間が他にもいても不思議ではない。その中に『弓と矢』を欲しがる者が出て来たとしてもね。僕が『矢』の所有者だとしたらそんな場所に置きませんよ」

 

 ごもっともな疑問を、俺が答える前に琢磨が言った。俺が言いたかった事と寸分の違いもない。

 

「それらを踏まえると、『学校からそう離れていない所に住んでいる学校関係者』で、『学校ある日は基本的に登校、または出勤している人間』……そこまで限定出来るな」

「へ? 学校関係者はともかく、どうしてそこまで?」

「それはお前にある」

 

 そう言って俺は稲庭に指差す。

 

「あたし?」

「正確にはしんのすけ達も含む」

「オラ達も?」

「そこは分かりませんね。説明をお願いします」

「稲庭は風邪で休んだ日の夜に射抜かれた……だったよな?」

「うん」

「何で『夜』なんだ? 朝や昼でも問題無いだろ? いや、寧ろ夜だと夜勤とかでない限り大抵みんな家に帰ってる、つまり射抜く対象以外の人間に見つかる可能性高くなるだろ? 一人や二人なら対処出来るとしても、それ以上だったらどんな能力を持っていたとしても難しくなる。最悪近所から人が集まったりするだろうからな。そんなあからさまなリスク冒す理由は余程の考えなしかバカな目立ちたがり屋でもない限り「その時にしか動けない。どうしてかは何かやっていて時間を割く事が出来ないから」。そう考えるだろ?」

「オラとひまは昼間に射抜かれたけど」

「日曜だっただろ? 大抵休日なんだから部活とか、何かのイベントとか、そういったのがない限りは行く理由は無い。琢磨は?」

「土曜日の朝、バイトからの帰りの途中に」

「今は大抵の学校は休みだな。因みに御厨先輩は下校中、塩屋に至っては春休みだ。今の所だが授業のある日の時間帯に射られた奴はいないんだよ」

『分からんな。何故学校に時間を割いている? 行かずにスタンド使いを生み出す事に精を出していればそんなリスクをわざわざ冒す必要など無いではないのか?』

「平日の授業ある時間帯に射抜かれた奴が何人も出て来たら誰だって学校行かない奴を疑うわ。怪しまれない為には出来るだけ『普通』を心掛けてた方がいいんだよ」

「騒動の種を播いてる奴が周りと溶け込んでオラ達の身近に暮らしてるのか……なんか怖い」

「まあ一応これは全部『能力』とか、そういった要素取っ払って常識的に考えて出した推測でしかないけどな。何等かの『スタンド能力』を使って学校への侵入を果たした可能性も、別の意図があって行動時間を限定している可能性も充分ある」

「しかし……確かな根拠に基づいた、頭に入れておくべき推測ではありますね」

「そう思ったから伝えたかったんだが……何でお前いるんだよ!」

 

 しんのすけの隣に座って焼き鳥を頬張っている緑色の体毛の猪を指差した。

 

『食事中に大声を出すな。お前はマナーを知らんのか』

「喧しい! 俺の質問に答えろ!」

『全く……私はしんのすけのスタンドだぞ? しんのすけのいる所に私がいて何がおかしいんだ?』

「答えになってねえ! しんのすけ、お前いつの間にこいつを発現させたんだ?」

「オラ出してないぞ。ていうかこいつ時々勝手に出て来てご飯食べたり新聞読んだりしてるの」

『漢字はほぼ読めないのもあって何書いてるかチンプンカンプンだがな』

「だったら読むな!」

「凄くルール無用なスタンドですね……」

 

 俺もそう思う……あ。

 こいつにピッタリだと思う名前思い付いた。一応本体に確認は取っておこう。

 

「しんのすけ。お前、こいつに名前付けたか?」

「ううん、まだ」

「俺が名付けていい?」

「アイデアあるの?」

「ああ。『ハリケーン』だ!」

 

 この発現の直後静かになった。

 

『ハッハッハッハッハッハッハッハッ』

 

 猪はその静寂を己の高笑いで打ち破った。

 

「どうしたの?」

『いや、「ハリケーン」か……気に入った、実に気に入ったぞ! 除夜よ。お前は中々のセンスをしているな。私の手にキスしてもいいぞ』

「断る」

 

 ま、気に入ってくれて何よりだが。

 

「名前決まって良かったなぶりぶりざえもん!」

『私をその名で呼ぶなと何度言えば分かるんだ! 私の名前は『ハリケーン』だ!』

「えっと……もう用は済みました?」

「ああ。ありがとな、急な呼び出しにわざわざ来てくれて」

「ねえねえ瀬上君、焼き鳥大皿で注文していい? 二十皿までにしとくから」

「そんな量普通は「まで」じゃ……いやいい」

 

 

 

 

 時間は遡って瀬上除夜と逢坂氷雨が屋上での戦闘を開始したのとほぼ同時刻。場所は郊外の畑。

 一人の女性が鋏を片手に、実っているグリーンピースを、鼻歌交じりに収穫していた。

 

「今日はこのくらいか……四分の三は店とかに卸して、自分が食べる分以外は御近所さんに分けて――」

 

 コンテナの中の収穫物を見下ろしている所に、メロディーが流れる。彼女は手袋を脱ぎ、発生源である自分の携帯電話をポケットから取り出し、通話ボタンを押した。

 

「もしもし」

『4ヶ月ぶりですね』

 

 電話から聞こえたのは、彼女にとって忘れ難い人物のものだった。

 

「あんたか……もしかしてあの件? もう何人かスタンド使いを差し向けたらしいけど」

『いえ、別件です。実は……』

「ちょっと待って」

 

 電話の向こう側の話を制止させ、グリーンピースの収穫前に種を播いた一角を見る。

 そちらには、種をほじくり出して啄んでいる鳩の群れがあった。

 

『という訳なんです。まあ「彼等」が動いた理由は大体見当がつきます。「彼」のしている事は僕は関与していませんが、僕が播いた種ではありますし。万が一「彼等」に僕の存在が発覚してしまったら多少面倒な事になるでしょうね』

「『多少』じゃ済まない事態になるでしょうね。春日部が」

『そうならない為にこの仕事を依頼しているんです。僕の目的はあくまで「瀬上除夜を倒す事」であり春日部を混乱させたい訳ではないので』

「あんたニュースや新聞読んでる? 言っとくけど説得力無いわよ」

『依頼料は少し色を付けて百万……既に振り込んでおきました。成功報酬は三百万。因みに途中瀬上除夜と遭遇し彼を倒した場合、その分の金額は別で振り込みます』

「了解……」

 

 通話を終えた携帯をしまって、コンテナを移動手段である軽トラの荷台に乗せ、畑に戻る。

 バラバラに切り刻まれた鳩を鋏で首と脚を切り、別のコンテナに詰める。そしてそれを荷台に乗せ、畑を後にした。

 畑の一角は、カラスが掃除するまで切り取られた頭と脚が積まれていた。

 




遂に決まりましたしんのすけのスタンド名。
元ネタはボブ・ディランの楽曲。

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