クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

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今年最後の投稿です。


歓迎準備の後片付けで

 

「これはこっちでいいんだよな?」

「うん。それとこの玩具箱、あたしの部屋の適当な場所に置いてくれない?」

「……あればね」

 

『デスペラード』での会談の後、家に帰った俺は義母さんに言われて一緒に院内の片付けと広間の飾り付けを手伝う事になった。

 明後日から久し振りに新しい仲間がこの院に入ってくる事になったので、そいつを歓迎する為だ。

 そいつの経歴を簡単に聞いたが、両親が友人に騙されたか何かで財産失って、一家心中を計ったらしい。途中で発見されてそいつだけ助かったそうだ。

 因みにそいつの故郷は群馬だという。そっちじゃなくてわざわざ埼玉の施設に入居する事になるのは大抵そいつの身内が義母さんと縁がある(義母さんはかなり顔が広い)というパターンで、例に漏れず今回もそうだった。そいつの場合は母方の祖母(故)が友人で、そいつの両親は親族と疎遠だったので引き受けたという。

 

「それにしても……仲間が増えるのはいつも急だよな……」

「いなくなるのも結構唐突なんだけどね」

「うわっ!」

 

 後ろから声を掛けられた。いつの間にか義母さんがいた。

 

「除夜君遅いよ。玩具箱一つ部屋に置くだけでどれだけ時間掛けるつもりなの?」

「この空間に簡単に物が置けると?」

 

 素朴な質問を今いる部屋の主に投げ掛ける。この部屋を一言で表現する適切な言葉は、『汚い』で充分だろう。

 この人みんなが使う物や借り物とかは大切に扱うが、自分一人が使う物とかには大雑把な所がある。

 この部屋も、流石に食べこぼしとかそういうのは無いが、漫画やら衣類やらが足の踏み場もないまでに床を占領している。しかも整理『だけは』きちんとされているから下手に手を付けられない。昔一回見かねて勝手に掃除した事があるが、それで友達の結婚式のために用意していた祝儀が当日に見つからなくなって結果的に取り返しのつかない事になったので、もう了承を得ず手を付けないと心から誓った。以降義母さんもそういった類は別に保管するようになった。

 

「衣類しまうからそこに置いて」

「……」

 

 何か言いたかったが堪える事にし、言われた通り重ねられている古着を机の引き出しにしまった後に出来たスペースに玩具箱を置いた。

 

「いい加減新しい収納棚買えよ。学習机の引き出しに服を入れるな」

「買ってもいいんだけどこの部屋のスペースその分狭くなるんだよね。除夜君の部屋に洋服タンスとかを置かせてくれるんなら考えるけど」

「女物の、しかも義母の服詰まったタンスを自分の部屋に置く趣味はない。大体何で洋服タンスが真っ先に出るんだ」

「細かい事気にしていたら大物になれないZO☆」

「自分の歳考えてそういう事言ってくれ」

 

 外見年齢は違和感メチャクチャ無いけどな。

 

「じゃあ増改築したら? 新築より金掛かるみたいだけどあんたなら現金でポンと出せるだろ?」

 

 この人はかなりの資産を持ってる。詳しくは分からないが、春日部どころか埼玉全体でも五本の指に入るだろう。昔会社を経営していたとかは聞かないし、株の運営やギャンブルは嫌いと公言していて実際偶にパチンコ行く程度だからどうしてこれだけの大金を持っているのかは分からない(税金はきちんと納めている)。聞いた事があるが「秘密」の一点張りだった。たとえ家族でも立ち入られたくない領域があるのは理解していたのでそれっきり追及していない。

 

「よし、一休みしよっか。戻ってお菓子食べよう」

「分かった……ん?」

 

 ふと目にした、一冊の『アルバム』。分厚く、五百ページはあると思う。それだけでなく見ただけで年代物だと分かる程古ぼけた代物で、俺も見たのは初めてだ。所有者はこの部屋の主で間違い無いだろうが――

 

「ふーん、このアルバム興味あるの?」

「やっぱり義母さんのだったか。これどんな写真が載せてあるんだ?」

 

 別に中身に興味はないが、こんな風に尋ねないと鬱陶しいからなこの人。

 で、案の定この人はにこやかな笑顔を向けてきた。

 

「よくぞ聞いてくれました! これは君とあたしが運命の出会いをする前、つまり16年前までの写真を収録したアルバムなのでーす!」

「いつから?」

「中学時代から」

「ふーん」

「ちょっと除夜君! 何なのその淡白な反応は! この義母(はは)の全盛期で黄金期だった時代の姿に興味無いの?」

「『全盛期』で『黄金期』……ねえ」

「何その何か言いたくても何言えばいいか分からないって目は!」

 

 ……見るから黙っていてくれ。

 

 結論、写真は俺の想像通りの代物だった。

 背景は時代と場所の移り変わりを感じさせられるが、写っている被写体にはそれが全然感じられない。服装とか、装飾品とか、表情とか、髪型とかが違うだけで用意出来れば再現可能と断言出来る。更に背景のセットとカメラ(白黒写真もあるので)も用意すれば一人で写っているのなら同じような写真が撮れると思う。

 写真と見比べていると、被写体はハハハハと渇いた笑いをあげた。

 

「やだなぁそう写真(過去)と見比べないでよ。落ち込むじゃんか」

「……すいません。あんた過去を振り返るアルバム必要なんですか? 少なくともあんた個人の写真は意味無いと思われるのですが」

「何で突然敬語?」

「答えろ。必要あるのか?」

「あるよ当然。若かりし頃の自分の姿を見て、『ああ、自分にもこんな時代があったなぁ』って振り返るのに必要なの。時の流れは残酷なんだから」

「それには同意するがあんたはその『時の流れ』に取り残されているからその分のフィルム代とか現像代とか無駄だと思う」

「それどういう意味かな?」

「今の自分を鏡で見てこれらの写真とよく見比べてみろ。そうしたら言った事分かるだろうから」

 

 手鏡を取り出して写真に写ってる自分と鏡に映ってる自分を何度も見比べる。一分くらい経つと手鏡置いて溜息を吐いた。

 

「大違いじゃん。除夜君は一度眼科行って精密検査受けた方がいいよ」

 

 ……絶句した後、「今のセリフそのまま返す」と言い返した。

 うん、やっぱこの人地球人じゃない。それを今、更に強く認識出来た。

 

「昔を振り返るのはこれでおしまい。じゃ、一休みしようか。昨日カルピス買ってきたから飲もう。アルバムは机の上に置いといてね」

「さっきのは一休みじゃないのか?」

「小休止」

「……原液をコップ一杯注ぐのはやめてくれよ?」

「念押ししなくともあたしのと除夜君のは別で入れるって」

 

 念を押さないとあんたの好みで他の奴の分までこうなるから念を押すんだよ。という一言は敢えて口に出さず、言われた通り机の上に置こうとすると――

 

「うわっ!」

 

 体の向きを変える時に足を動かした際に積まれた漫画本に躓いてしまった。何とか机の際に手をついて転ぶのは避けられたが、その際アルバムを手離してしまった。アルバムは机の上に落ち、後の方のページを開いた。

 

 そこの写真は、今までと違った。

 このアルバムは、『三分の二』程までしか写真が載せていなかった。そこからは二ページ捲っても写真は無かったから、以降はもう無いだろうと思った。

 違った。これ等の写真は、「他のと違う思い出」だから分けていたんだ。

 開いているこのページの写真には『義母さんが写ってない』。代わりに、「二人の人物」の写真が一枚ずつある。

 一人は男。体格は胸から下は見えないが、かなり恵まれている事が一目で分かる。顔立ちや肌の色から日本人じゃないだろう。そして、写真からでも何か言葉では表せない「得体の知れない存在感」を感じる。そんな『金髪の男』。

 もう一人は老婆。こっちは全体が写っており、一見すると普通の小柄な老婆だ。だがよく見ると普通の人間には無い『特徴』がある。突然変異か別の要因か、左手が右手と同じ、言うなれば『両右手』だ。

 何なんだこの人達は? どうして義母さんはこの人達の写真を?

 好奇心が湧いた俺は、ページを捲ろうと端に指をかけ――

 

「除夜くーん、何してるの〜? 早く来ないとお菓子全部食べちゃうよ〜?」

 

 義母さんの呼び掛けで我を取り戻し、アルバムを閉じ、そちらに向かった。

 あの写真に関しての好奇心は抑える事にした。今まで一度も話さなかった事からして義母さんにとって簡単に踏み込んで貰いたくない事柄だと思うし、何も見なかった事にしてそのまま忘れてしまおう。

 そう思うと、自分の先程の行為が恥ずかしく思えた。

 

 

 

 

 時間は遡って昼過ぎの春日部駅。停車した下り列車から、外国人の少年が一人ホームへと降りた。

 

「ふわぁぁ〜……電車って、早くで時間通りに着くのがいい所だけど……カタコト揺れるから眠気誘うんだよねぇ……」

 

 欠伸をしながら駅員に切符を渡す。駅を出るとお茶を自販機で購入し、飲む。

 

「さて……まずは宿を探すとしますか……」

 

 飲み終わってペットボトルをゴミ箱に捨てると、トランクから地図を取り出した。

 




最後に出て来た少年の素性は次回以降に明らかになります。

それでは。
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