クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード) 作:パタ百ハイ
先端を僅かに血で濡らした鋏の取手を握る杉江は、「脇から血が溢れている程の傷を負った」しんのすけを抱えたロンディネへと顔を向ける。
「中々すばしっこいのね……」
『感心』と『煩わしさ』両方を込めて言う。
先程から行っているのは、スタンド力をコントロールしてのサイズの拡大縮小。スタンドの出し入れと違って変形を保てるという利点はあるが、数秒のタイムラグがどうしても出てしまう。それでも能力発現からこれまでの間の修業でかなり縮める事が出来たのだが。
(まだまだ修業不足か……にしても彼、明らかに『私が大きさを戻す前に動いてる』わね……)
これはもう繰り返しやっている以上、バレるのは承知の上だ。だがロンディネは間違いなく自分がどの様な攻撃をしてくるかを、初めから理解して動いていた。実際何をしてくるか解らない最初の時点で何の躊躇いもなく適切な動きをした。
(『先読み』じゃ出来ない……間違いなくあの左目の『スタンド』の能力……! 『読心』か『未来予知』か……それとも……)
「大丈夫か?」
「へーきへーき。ちょっと切っちゃった程度だぞ」
『戦闘の続行は充分可能だ。それよりあいつ、何か慎重になっている気がするぞ?』
「悪い? そもそも私はロンディネって子を痛め付けるのが目的なんだし、その子が能力使って且つそれが解らないんだったら慎重になるわよ」
「何でロンディネお兄さんを狙うの?」
「『パッショーネ』の構成員……違う?」
「『パッショーネ』って、『情熱』だったよね? こーせいいんって事は、そういう組織があって、お兄さんはその一員って事? どういう組織?」
「……悪いけどしんのすけの質問は後ででいいかな?」
「じゃあ私の質問には答えてくれるの?」
首を縦に振って応じた。杉江は取手をしっかりと握り、しんのすけも柄を握る手の力を強くする。
二人は同時に距離を詰める。互いの得物の射程距離に入ると、鋏は少しばかり広がり、刃が外側に向いた。
「しんのすけ! そいつ鋏を二本に分け……」
言葉を中断し横に跳ぶ。直後ロンディネのいた位置の後ろの塀に『片方』が深く突き刺さった。『もう片方』を今両手で握った彼女を見て、自分に向けて投げたんだと解った。
杉江は『もう片方』を地面に突き刺した。直後に後ろから「風切り音」が聞こえ、直感で身を低くする。頭上に何かが通り過ぎ、すぐに金属同士がぶつかる音が響く。『アイアン・バタフライ』は元の鋏に戻っていた。
『おい! それは本当に鋏に入れていい代物なのか?』
「何処からどう見ても鋏でしょ。『アイアン・バタフライ』はスタンドで、「これ」が『能力』なだけ。それより……ロンディネ君。大まかながら分かったわ。あんたの左目の『スタンド能力』がね」
地面から引き抜いてロンディネに刃先を向ける。しんのすけが「だから刃物の先を人に向けちゃダメなんだってば。聞いてるの?」と言ってきたが、互いに無視していた。
「『エネルギー感知』……でしょ? 『読心』『未来予知』も考えたけど、さっき『アイアン・バタフライ』を二つに分けたのは分かっても片方をあんたに投げる事、その後元に戻す事は分からなかったみたいだし、どちらかだったら事前に分かってより相応の対応が出来た筈。それが出来ないのはその場その時何をしているのかしか解らないからであり、ではそれはどういった能力なのか……そこまで考えれば、自然答えは出てこない?」
その体勢を保って己の推測を述べる。言い終えた後、ロンディネは拍手した。
「正解……僕の『サード・アイ・ブラインド』はエネルギーを捉える力。スタンドその物は勿論、能力の影響を受けた存在に込められたエネルギーを捉えられる。因みに単純なサーモグラフィーに機能を切り換える事も可能」
「『温度感知』も兼ねてるのか……随分な能力ね。でもスタンド自体は戦闘は出来ないみたい。その意味ではあの子が味方になってくれて良かったわね」
「……お姉さん。いいの? 喋るのに夢中になってて」
「うおりゃあああああああぁッ!」
刀を振り被ったしんのすけは背後から接近し、振るう。杉江はその場で後ろに向いて、鋏で受け止め、蹴り飛ばそうとする。それを屈んでかわし、左足を狙って突く。対してその体勢のまま跳ぶも、タイミングが遅れて掠ってしまった。
着地と同時に再度鋏を二つに分ける。
「どうやら皮一枚で済んだみたいね……もう少し遅かったら左足やられてたかな」
「皮一枚で何? オラの方が重傷なんだけど」
「その位は重傷とは言わないよ?」
左手の鋏が1センチあるかどうかまで縮まり、左手の方の取手を両手で握り、振り上げる。しんのすけは刀で受け止めるが、同時に鋏の刃が高速回転した事で、今度は間に合わず弾き飛ばされる。杉江はそのまま突こうとしたが、しんのすけは駆け出して懐に入ろうとする。相手の意図をすぐに理解し鋏の回転を止め、もう片方を懐刀サイズにして斬りかかる。しんのすけは『ハリケーン』を人型に戻して掴ませ、そのまま杉江を振り払う。杉江は尻餅をつき、それで持っていた方も手離した。
ロンディネはすぐにおかしいと感じた。確かに『近距離パワー型』の腕力は生身の人間のそれを遥かに凌ぐ。結果自体は順当と思うが、自分のスタンドが奪われそうになったにも関わらず、抵抗がまるでなかった。
何か狙いがあるのでは? そう思い『サード・アイ・ブラインド』を発現……する前に『アイアン・バタフライ』が何を出来たかを思い出した。しんのすけも同様ですぐに捨てさせようとしたが、手離された片方は既に『ハリケーン』が握ってる片方へ向かって飛んでいた。
ロンディネ君のスタンドの元ネタはアメリカのオルタナティブ・ロックバンドから。
次回で決着です。