クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

37 / 47
追っていた者達との面談

「それで? しんちゃんのパパ達は?」

「ひろしさん達含めて命に別状は無いって」

 

 ひろしさんと幼稚園の先生達は、居酒屋で飲んでいたところ(寄った店が偶々同じだったらしい)店内に五人の男が押し込んできて暴れ出し、それに巻き込まれてしまったという。怪我こそしたもののそこまで大したものではなく、一応検査の為に一日入院する事になった。それもあって幼稚園は臨時休園になり、しんのすけはロンディネに知り合いの麻薬取締課の刑事さんに会わせる事にしたようだ。

 

「暴れた人達はどういう人達だったの?」

「俺はしんのすけの同伴で、連れていったのはもう夜でみさえさんからも言われたからあんまり聞けなかった。だけど、聴取に来ていた刑事さん達が妙な話していたのを聞いたんだ」

「妙な話?」

「加害者達は、強い『暗示』をかけられていたらしいんだ」

「もしかして、催眠術?」

「ああ、しかも公表はしていないが似たような事件が二件起こっているらしい。暴れた連中はすぐに捕まったが、一様にどうしてあんな事をしたのか分からないと言ってるって」

「瀬上君……もしかして、ずっと立ち聞きしてた?」

 

 稲庭の指摘に無言で頷く俺。結局刑事さん達の話が終わるまで盗み聞きしていて、気付いたら時計の長い針が一周以上回っていて、帰ったら予定より遅くなって義母さんから怒られた事を話したら苦笑いを浮かべていた。

 

「もしかして……その催眠術師は……」

「『スタンド使い』……かもな。狙いは俺で能力のトレーニングかも知れないし、単なる遊び感覚かも知れない」

「……「そのどちらでもない」可能性は?」

「充分有り得る。そして一番あって欲しくない可能性だ」

「瀬上君、今大丈夫?」

 

 宝来が声をかけてきた。隣には優太もいる。

 

「あー……大丈夫、だよな?」

「うーん……もう少し話したかったけど後ででいいや。あたしどっか行こうか?」

「気を遣わなくていいよ。ただの買い物のお誘い。今日の放課後お花買うから、一緒に行こうって」

 

 優太のその誘いを聞いて、気が重くなった。そうだった。そろそろだったな。

 

「お花? 沢登君、華道が趣味なの?」

「そうじゃない。こいつの家族、三年前に皆亡くなってるんだ。命日が近いんだよ」

「そ、そうなんだ。ごめんなさい」

「いいよ別に。もう三年も前だし……どうかな?」

 

 少し考えてみた。俺も墓参りはしたい。こいつの家族は周りから疎まれていた俺を受け入れてくれた数少ない人達だった。だが……。

 

「一緒に行ってあげたら? 沢登君、瀬上君と最近遊べなくて寂しかったみたいだよ」

 

 宝来がそう言ってきた。ああ、最近『スタンド使い』関連で、こいつ等を知らない内に遠ざけていたな。

 

「いいぞ。花買いに行こう。いつもの店でいいんだな?」

「うん!」

「宝来もどうだ?」

「残念だけど(まゆ)ちゃん達とカラオケ行く約束してたんだ。あたしはあたしでお花買うから行ってきなよ」

 

 少し残念だが先約があるんなら仕方無いな。この友達との約束でふと思い出した。

 

「最近友達になった奴が土曜に知り合いのお姉さんの大学祭に行くんだよ。俺も一緒に行くんだけど、お前等もどうだ?」

「いいの?」

「いいの。あいつもお前等も大事な友達だし、紹介も兼ねてな」

 

 こいつ等といた方が俺も離れやすくなるだろうし、そうなったら俺もこいつ等と祭りを楽しもう。

 

「瀬上君の新しい友達か……しんちゃんってどんな子だろう」

「お前は知己だろうが。無理にこいつ等に合わせようとするな」

「須藤さんやロンディネ君も誘おうよ」

「誘ってはみるけど、あいつ等忙しいし、断られるかもな」

「そうなったらそうなっただよ。誘わなかったら悪いよ」

「おーい、除夜、稲庭さん」

「どうした?」

「二人だけで話盛り上がってて僕達おいてけぼりになってるんだけど……」

 

 苦笑いしながら優太が指摘してきた。宝来に至っては目に見えて不機嫌になってる。

 

「瀬上君、稲庭さんといつの間に凄く仲良くなってるんだ……」

「仲良くなったのは本当だが何でそれでそんなあからさまに不機嫌になるんだ?」

「あたしが知らない内に共通の友達も一杯出来たみたいだし……」

「それは……訳は話せないんだが……えっと……」

 

 優太達が苦笑しながら俺達を見てる。見物してないで助けてくれよ……宝来はすぐに笑顔になった。どうやらからかわれたみたいだ。

 

 

 タウン署。

 

「京さん。この前捕まえた売人が所持していた麻薬の分析結果が出たんですが……ただの澱粉だったようです」

「またか……」

「はい。売人も例によって雇われただけで金と薬のやり取り以外は公衆電話での会話のみ、直接のやり取りも顔は仮面を着けていて服もかなり着込んでいて体格もよく分からないと……」

「つまり今回も何の手掛かりも得られなかったと……」

「はい……クソ、『あいつ』は間違いなくこの春日部にいて、麻薬をばらまいているのが分かっているのにその尻尾を掴む事すら出来ないなんて……」

「皆気持ちは同じだ。だが焦るんじゃねえぞ。俺達の目を掻い潜って悪事をやってる奴が相手なんだ。冷静さと忍耐を忘れれば奴の思う壺だと思え!」

「にがりや刑事、汚田刑事。二人にお客様です」

 

 取調室。

 

「いやあ久し振りだねしんちゃん……お父さんと先生達、大変だったね」

「父ちゃんも先生達もお怪我は大した事なくて明日からでもお仕事出来るから、そんなでも無いぞ。もっと酷い目に遭っちゃった人もいるんだし……」

 

 昨夜の襲撃事件、ひろし達は大した怪我はしなかったが、骨を折った者や針を縫った者、中には長期の入院を余儀無くされた者もいる。それ以上が出なかったのは奇跡的だというのが警察の意見で、別の件では死者が何人も出ているのだ。

 

「それで? 僕達に何の用?」

「用があるのは私の方です。しんのすけ君から貴方達の事をお聞きしてお話を伺いたかったので」

「お前さんは?」

「申し遅れました。私、イタリアの麻薬捜査課のロンディネ・カルデローニと申します」

 

 しんのすけの横に座っていたロンディネは警察手帳を開いて二人に見せる。勿論これは偽造品だ。調査の際必要になるかもと組織が用意した物である。しんのすけにはそれを事前に言ってある。

『麻薬捜査課』という単語に、二人の刑事は反応する。

 

「にがりや京介、こっちは汚田急痔……単刀直入で聞くが、イタリアの警官が何故わざわざ春日部に?」

「『(ヌーヴォラ)』……我々はそう呼んでいる麻薬がイタリアで広まっており、やっとの事で大元が少なくともこの春日部の何処かにいる事が突き止められ……」

 

 ここまで話すと汚田が勢いよく立ち上がり、座っていた椅子が倒れた。

 

「その『雲』って、分析しても澱粉とか、小麦粉とかしか思えないやつ?」

「はい……それが麻薬である事は解っていても普通の分析では麻薬ではないありふれた物、ある事は分かっていても流通を止める術が無い。それが呼称の由来です」

「京さん、すぐにこれを上の方に報告しましょう!」

「待て汚田。確かに重大な情報だが、この兄ちゃんの話はまだ終わりじゃねえ。取り敢えず、お宅が大元の事をどれだけ把握しているのか確認したいんだが……そのつもりで来たんだろ?」

「話が早くて助かります。我々が奴ーー西高須章雄について把握しているのは、お二方のご活躍により現在壊滅している麻薬組織『モルヒーネファミリー』のNo.2だった男で、一度は逮捕されたが逃亡し、潜伏中『雲』の製法を発見、製造し売り捌いている……ここまでです」

「間違いはねえな」

「宜しければ、奴についての情報を教えていただきたいのですが……」

「その前に確認がある。奴の麻薬がお宅の国にも流れている以上、お宅等が動くのは当然だ。だが俺達は何も聞いていない。聞かせてくれ。お前さん達の任務は何処までだ?」

 

 にがりやのこの質問は当然だとロンディネは思っている。いくら自分の縄張りで悪事を働いている奴がいても、そいつが他所にいればこっちがそこで好き勝手していい訳じゃない。最低限の道理は通そうとしなければ心境は悪くなる。

 

「来たのは私一人です。私の任務は奴の隠れ家やいるだろう協力者等の調査であり逮捕は入っていません。そちらに話が行っていないのは、この任務がウチのボスの独断だからです。ボスは新人の頃世話になった先輩が麻薬絡みで家族を失っていて、更にその先輩も麻薬を扱う組織のトップを捕らえる際に目の前で殉職なされたと聞いています。その為か麻薬を扱う者を相手取る時はかなりなりふり構わない判断を取る事もありまして。今回も「手順を踏んで行動していたら察せられて逃げられる可能性が高い。だから迅速で大胆な決断を取らないといけない。起こる問題の責任は全て自分が持つ」と」

 

 何も『嘘』は言ってはいない。自分の任務もボスの姿勢も全て『真実』だ。

 

「随分と過激な人なんだね……」

「そりゃギャングのボ……」

 

 余計な事を口走りそうになったしんのすけの口に思いっ切り平手打ちをかました。

 

「ギャング……?」

「いえ、ボスはギャングの潜入捜査で下っ端として入っていた事があって。しんのすけ君にはボスの事を話しているのでその事を言ったんですよ」

「しんちゃんには話しているみたいだけど、どうして?」

「私の勘違いがもとで知り合って、それで巻き込んでしまったので敢えて全てをお話したんです」

「そして俺達まで……という事か。分かった。仕事上の事は話さないが、奴の経歴や人間性といったものなら」

「ありがとうございます」

 

 

 聞き込みを終えての帰り道、しんのすけはロイヤルプレシデントチョコビを食べながら横のロンディネをジト目で見ていた。

 

「思い切り叩く事無かったんじゃない? 歯が折れるかと思ったぞ」

「だからお詫びにチョコビ(それ)買ってあげたじゃん……」

「まあ許してあげる。うだつな事を言ったオラが悪いし」

「『迂闊』ね」

「で、役に立った? 刑事さん達からの情報」

 

 無言で頷くロンディネ。彼が得れたのは対象がどんな人物なのかという情報だけではあったが、嘗て直に追っていただけはあり、こっちが持っている以上を持っていた。

 

「こっちが把握、予想している以上にヤバい奴だってよく分かった。すぐにボスに知らせる必要がある。僕はこれからホテルに戻るけど、しんのすけは?」

「オラ、これからかすかべ防衛隊の集まりあるから」

「かすかべ防衛隊? 自警団みたいな組織?」

「自警団って何? かすかべ防衛隊は、春日部の愛と平和を守ってるんだぞ!」

「主な仕事はみかじめか……だけど五歳児が入れるってウチよりヤバいんじゃ……」

 

 しんのすけに聞こえない小声で独り言を言うロンディネ。ごっこ遊びの可能性は頭の中に無い模様である。

 

「ロンディネお兄さん、ホテルに帰らなくていいの?」

「あ……じゃ、何かあったら連絡くれ」

「オラ達なるだけ手伝うから無茶しないでね」

「そっちもな」

『しんのすけ、さっさと行かないと風間がうるさいぞ』

「分かってるよ『ハリケーン』、すぐ行くぞ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。