クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード) 作:パタ百ハイ
春日部にある公園のベンチの周りに、しんのすけ以外のかすかべ防衛隊が集まっていた。
「全くしんのすけの奴……時間にルーズなのいつ治るんだ」
「まあまあ落ち着こうよ。しんちゃん、用事があるって言ってたじゃない」
「それが思っていたより長引いているかも知れない」
集合時間を過ぎても現れないしんのすけに苛立つトオル。詳細は教えられてないものの用事がある事は聞いていたのもあってマサオとボーちゃんは彼を宥める。
「ごめんごめん遅くなっちゃった。お話長引いちゃって」
「もう二十分も過ぎてるぞ!」
「ホントごめん……で、今日何するの?」
マサオは一枚の紙を見せてきた。メモ用紙大の大きさに切られたチラシで、裏面に今日の日付とこことは別の公園の名前、そして
『午後五時半、面白い事が起きます。興味を抱いた方は是非いらして下さい』
と、一文が書かれてあった。しかも丁寧に漢字には振り仮名が振ってある。これを見てしんのすけはーー
「これ書いた人、字お下手だね」
と思い口にした。四人は一斉にズッコケた。
「真っ先に思うのがそれか!」
「思わず気になっちゃって……これ、どうしたの?」
「今朝僕の家の郵便受けの中に入っていたってママが……悪戯だろうってママ言ってたけど、気になってネネちゃんに話したんだ。そしたら」
「ネネの家にも、同じのが……」
そう言ってネネが見せたのは、同じ様に今日の日付と同じ公園の名前、そして同じ一文が同じ筆跡で書かれたメモ用紙大に切られたチラシだった。
「書いたのは間違いなく同じ人。その時間、その公園で、何かが起こるのは間違いない思う」
二枚を見比べて意見を述べるボーちゃん。それは他の四人も同意見だ。こんな事をただの悪戯でやる暇人はそういないだろう。そしてしんのすけは、更に別の可能性が頭に浮かんでいた。
「おや? しんのすけ君?」
通り掛かった琢磨がしんのすけに声をかけた。
「琢磨お兄さん! どうしたの?」
「バイトが終わったのでその帰りです」
「ねえしんちゃん、この人は?」
「申し遅れました。僕は須藤琢磨と申します。しんのすけ君とはふとした切っ掛けから友人になりました」
深々と頭を下げる琢磨。続いて、かすかべ防衛隊も自己紹介を行う。
「あら、しん様ではありませんか」
公園の入口に黒い車が停まり、そこからあいが降りてきた。続いて黒磯も降りてくる。琢磨は二人の姿を見ると、目を丸くした。
「あいちゃんどうしたの?」
「お義父様と先生方のお見舞いの帰りでしたの。大した事無さそうで何より……あら?」
あいの方も琢磨に気付き、彼へと顔を向ける。琢磨はしんのすけに顔を寄せて小声で話す。
「しんのすけ君、どうして酢乙女家の令嬢がこんな所に?」
「オラと同じ幼稚園で同じひまわり組で、オラのお友達だぞ。琢磨お兄さんも、あいちゃんとお知り合い?」
「顔見知り程度ですが……」
「貴方、須藤琢磨さんですわよね?」
「貴女はどちら様でしょうか? 私のフルネームは確かに須藤琢磨ですが、同姓同名の人違いではないでしょうか?」
思いっ切り目を泳がせながらしらばっくれようとする。あからさま過ぎてしんのすけ達は呆れてしまっていた。琢磨の様子に溜息をつくあい。
「同一人物か人違いかは『須藤琢磨』さんの御家族、御友人の方々に判別していただく事にしましょう。黒磯、連絡を」
「かしこまりました」
「待った待った待った待った待った待った待った待ったぁっ! はいそうですよ僕はその須藤ですよ! 認めますから『あの人達』に言うのは止めて下さい!」
「そうは言われましても、私達見つけたら連絡するよう頼まれているのですが……」
「くっ……(どうすればいいでしょうか? これについては僕に非があるから強く言えません。どうにかして口止めしなければ……何か……! そう言えば……)」
しんのすけに一瞬視線を向けるとすぐに黒磯へと顔を向けた。
「黒磯さん。先程あいさんはしんのすけ君の事を『しん様』と呼びましたが、もしかして……」
「御察しの通りです。お嬢様はしんのすけ様に好意をお寄せしております」
「(やはり……つまり先程の『おとうさま』もひろしさんの事でしょうね……なら……)黙っていてくれたらしんのすけ君と一日デートを」
「それなら宜しいですわ」
「え? 何勝手に」
「お願いしますしんのすけ君! 訳はいつか話します! 身勝手は百も承知ですがどうか!」
土下座して必死に頼み込む琢磨に、しんのすけは唸り声をあげた。
「どうしました?」
「明日から一週間サトーココノカ堂でチョコビ関連が一割引になるのを思い出して……デラックスロイヤルチョコビ……」
「……分かりました。一日一個で宜しいですよね?」
「え? 買ってくれるの?」
「買いますよ。いえ、買わせて下さい」
このやり取りを見ていたかすかべ防衛隊と黒磯は言葉も出なかった。
「ところで皆さんは本日はどんな事を?」
「これが僕やネネちゃんの郵便受けの中に入っていたんだ」
そう言ってマサオはチラシをあいに見せる。書いてある一文を目で読むと、途端に機嫌を悪くする。
「……これが二人の家に?」
「知ってるの?」
「それについては私が説明いたします」
黒磯はひろしや先生達が巻き込まれた暴行事件について酢乙女グループが調査を行った事を初めに言って、事件の特徴に既に複数同じ様な事件が発生している事、そして殆どの加害者達の自宅には同じ様な一文が書かれたメモ用紙大に切られた折込チラシがあった事を説明する。
「勿論警察もそれを調べていますが、一枚に幾つもの指紋がーー恐らく資源ゴミとして出されたものを回収して使用していると……私見ですが、これで黒幕に行き着くのは困難と……」
仮に行き着いたとしても捕まえる事は出来ないとしんのすけと琢磨は思っている。黒幕は間違いなくスタンド使いだ。今の警察に捕らえる事は出来ない。
「これが、先生達を怪我させた黒幕に行き着く、手掛かり」
ボーちゃんは力強く言う。
「今日のかすかべ防衛隊の活動は決まりね!」
「この手紙に書かれた場所まで言って、黒幕を見つけよう!」
「あの……それは……」
話の流れがまずい方に行ってると思った琢磨は口出ししようとする。気持ちは分かるが危険過ぎる。
「そんなの駄目! 危ないぞ!」
しんのすけが大声で叫んだ。全員がしんのすけへと顔を向ける。
「黒幕がヤバい奴だって解るでしょ? そんなちょっかい出して、怪我したらどうするの? ううん、死んじゃうかも知れないんだよ!」
「勿論黒幕と直接戦うとか、そんな無謀な真似はするつもりはないよ。顔を見たらすぐに警察に……」
「駄目! こういうのは警察のお仕事でオラ達のやる事はそれを警察に届ける事! だから今すぐ……」
「しんちゃん」
「何? ボーちゃん」
「何か知ってる?」
その指摘でしんのすけは固まる。
「ななななな何の事? おおおオラは天使でいいい一般論を言っただけでみんなに隠し事なんか……」
「『あくまで』でしょ?」
(アドリブが下手過ぎる……)
あからさまに動揺しているしんのすけに呆れる琢磨。ボーちゃんは続ける。
「最近こんな噂が密やかに囁かれているの、知ってる? 春日部で超能力者が発生していて、近頃起こる変な事件は全て彼等が犯人だっていう噂。もっとも、犯人を捕まえられない警察を皮肉って誰かが言い出したものだって見方をしているのが大半で、本気にしてる人はそういないみたいだけど」
「お巡りさんも一生懸命頑張ってるのに不謹慎な奴もいたもんだね。ボーちゃんはそんな噂信じてるの?」
「日曜参観。その時来たしんちゃんのお友達の除夜さん、あの時起きた現象、何か知ってたみたいだった。あの人が外に出た後、しんちゃんも外に出た。そして『何が起こっているのか』知ってるって言った」
「それがどうしたの? 何の関係があるの?」
「今回の事件とあの時の現象は、『同じもの』が関わっていて、除夜さんはそれにかなり近い位置にいて、しんちゃんはそれを知ってる。でしょ?」
「しんちゃん、ボーちゃんが言ってる事本当? 一体何が起こってるの?」
「教えてよしんちゃん!」
友達の追求に何も言えないしんのすけ。傍から見ている琢磨も何も言えなかった。大まかではあるがほぼ真実に行き着いているボーちゃんの勘の良さなら、下手に口を出せば更にややこしくなるだろう事は想像に難くない。
助け船は思わぬ所から出た。
「みんなよせよ。しんのすけが困ってるじゃないか」
見かねたトオルが口を挟んできた。
「でも風間君」
「みんなの気持ちは分かるさ。僕だって同じ気持ちだよ。だけどしんのすけはお父さんも巻き込まれているんだ。黒幕への怒りは僕達以上の筈だ。第一話さないのは意地悪でじゃなくて僕達の事を考えてだろ? 感情的になって強要するのはどうかと思うよ?」
「風間くーん!」
感極まったしんのすけはトオルに抱き着いた。
「やっぱり、オラと風間君の間には、切れない愛の絆があるんだね!」
「気持ち悪い事を言うな! 離れろ!」
「えっと……」
「いつもの事です」
若干引きながら戸惑う琢磨に、ネネはバッサリと言い切った。
「しん様と須藤さんが友人となった経緯は同じ『もの』関わっているから……と?」
「察していただきたい……とだけ言っておきます」
「ではしん様、しん様は『これ』について何をなさるつもりですか?」
「え?」
「しん様達が言いたくないのであればあいも言及はしません。しかししん様は先程「警察のお仕事」と申されましたし、あいもそうだと思います。ならあいも『警察でない』しん様がこの件に関与するつもりであるなら止めなければならなくなります。勿論『余程の事』があればその限りではありませんが」
何一つ言い返す事が出来なかった。溜息を吐いて琢磨が言う。
「……行きましょうそこに。皆さんで」
「ちょっと、何考えてるの琢磨お兄さん!」
発言内容に一番驚いたのはしんのすけだった。反応は予想していた琢磨は寄ってきたしんのすけの耳元に顔を寄せて小声で喋る。
「無理に帰したりしても納得いくとは思えません。この勢いだと僕達に反発して紙に書いてある場所に向かってしまうのも有り得ると……」
「否定出来ないけど、やっぱり……」
「勿論これがベストだなんて思っていませんよ。僕の能力を使えば巻き込まれずに済むと思いますが……」
「ちょっと、何話してるのよ」
ネネに言われて振り返る二人。
「約束してほしい事が二つ。どんな結果になろうともそれで納得する事、危険な行為は決して取らない事。黒幕の前に姿を見せるとか言語道断です。これを、特に前者を守れないなら連れて行きません」
「お待ち下さい須藤さん。お嬢様達の身に危険が及ぶ事は、たとえお嬢様のお望みでも看過する訳には」
「分かっています黒磯さん。皆さんを危険な目に遭わせるつもりは一切ありません。考えています」
黒磯は少し考えて返答した。
「分かりました。その言葉を信じましょう」
「ありがとうございます。では皆さん、約束出来ますか?」
★
放課後。花屋にて、俺は墓参りの為の花を選んでいた。優太は、石鹸等の日用品を買いに雑貨屋に向かった為別行動だ。一緒に行くかと誘われたが、雑貨屋で買いたい物は無かったし、買う物を聞いて荷物持ちは必要ないだろうと判断して先に行った。
「……小父さん薔薇好きだったし、一本買っておくか」
「お邪魔します」
「いらっしゃいませ」
一人来店してきた。青みを帯びた黒髪のミディアムヘアに、襟をタートルネックにした制服の上にフードがついた白衣を重ね着し袖を縫っていて、スカートの下に厚手の作業ズボンを履いているといった格好の女子だ。制服からしてウチの生徒。彼女は俺の持っている花卉に目を向け、俺に近寄ってきた。
「今日は」
「今日は。何の用ですか?」
「いえ、手に持っているお花を見て、少し気になって……」
俺が持っているのは白い菊に榊、竜胆、カーネーション、そして赤い薔薇が一本。彼女の視線は薔薇に向けられている。
「お墓にお供えする花です。友人の家族の命日が近いので」
「供花に薔薇……」
「確かに薔薇は仏花(お墓にお供えする花)には不適切ですが、故人が生前好きだったお花であるならその限りではないんですよ」
呆れた女子に対して説明をし出したのはここの店長だ。
「薔薇だけではなく仏花に不適切とされる花は幾つかありますが、仏花はお墓に眠る故人を供養する為のものでもあります。故人への気持ちが何より重要なのでしきたりに拘らなければ大丈夫なのですよ」
店長の簡単な説明が終わると、深々と頭を下げてきた。
「すみません。私が不勉強でした」
「いや、謝らないで下さいよこんな事で。それより用を済ませなくていいんですか? 何か用があって来店したんでしょ」
「はい。用はありますよ」
ーー但しこの店にではなく、貴方にね。
白衣の右袖から『管』が出てきて、それを掴むと俺の方に向けてきた。