クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

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2020年初投稿です。


南別府碧のボトル その①

「……何をするの?」

「それはこっちのセリフだ」

 

 何かをする前に『プラネット・ルビー』でこいつの右手首を掴んで店の出入口の方へと引っ張ってる。こいつの視線ははっきりと『プラネット・ルビー』へと向けられているし、持っている管やそれから伸びているチューブもよく見たら透けている。間違いなく『スタンド使い』だ。

 

「……離してくれない?」

 

 顔をしかめながら言う。力は込めてるし痛いだろうな。だがここで能力を使わせる訳にはいかないから却下だ。

 

「……聞いて。場所を変えようって言いたいの。店に迷惑はかけたくないし」

「説得力があると思っているのか?」

「無いのは承知。でもそれは貴方も同じでしょ?」

 

 ……本気で言ってるようだな。なら俺としても断る理由は無い。

 

「花の会計済ませていいか?」

「どうぞ」

 

 

「優太、今何処だ?」

『買い物終わって袋詰んでる。もう少ししたら向かうよ』

「俺は少し花屋を離れてる! 着いても俺がいないかも知れないがその時は店でじっとしてろ! 寄り道せずに花屋に行って待ってろよ! いいな!」

 

 返事を待たず電話を切る。携帯をポケットに入れると待ってくれていた女の方へ体を向ける。

 今俺達がいるのは花屋から少し離れた廃工場。会計を終えて店長に花卉を預かって貰って、この女に案内された。

 

「連絡は終わり?」

「ああ、待っていてくれて感謝するよ……で、分かりきった事を訊くが、何者だ、あんた」

「私は南別府(なんびゅう)(あおい)、星陵高校二年生で所属は園芸部化成部門」

「化成部門?」

「主に農薬や化成肥料の研究、製造、開発を行う部門」

「化学部じゃ駄目だったのか?」

「ガーデニング好きだから園芸部に入部したの。あ、ウチの学校化学部ちゃんとあるよ」

「凄いどうでもいいよ!」

 

 もしかして、トラクターとか造ったり修理したりする農機部門とかあるのか?

 

「三週間程前に『矢』に射抜かれて『スタンド使い』になった……そんな私が貴方の前に現れたのは……言わずもがなだよね? 瀬上除夜君」

 

 分かってるよ。刺客だろ? それは口に出さず頷いた。南別府は手早くゴム手袋を嵌め、フードとガスマスクを被って管を俺へと向ける。管から赤い液体が噴き出してきた。南別府を『軸』にして避ける。液体は俺の後ろにあった放置されているフォークリフトに掛かり、その部分を腐食させた。

 

(まともに浴びたら病院行きは免れんな……)

「余所見は感心しないな」

 

 赤い液体を噴き掛けてきた。瞬間移動で避ける。それを何度も繰り返す。

 やり取りして分かったのは液体を出す管は右手の一本だけ。そして出来るのは『出すだけ』。出した液体を操作する事は出来ない。

 攻撃も直線で南別府の動きもそんなに速くない。管の動きに注意して距離を詰めて叩き込む。これで行こう。

 決断して駆け出すと管を向けてきて赤い液体を放つ。それを避けると、管を斜め上に向けて、シャワーのように『散布』してきた。能力で回避しようとしたが、南別府がそのままターンして一回転し、周りに振り撒く。地面を蹴って後ろに跳んだので靴に少し掛かる程度で済んだ。

 

「何を思ったか当ててみせようか? 『管は一本だけで出来るのは出すだけ。攻撃も直線で私の動きも速くはない。管の動きに気を付けて距離を詰めて叩き込もう』……少し違うかも知れないけど、特に間違ってないでしょ? 初めの方と私の動きは合ってるけど、『攻撃が直線』という点は少し違う……」

 

 今度は『噴霧』してきた。直撃は避けたものの霧状のものを、しかも動かしたので広範囲に広まった為に避けきる事は出来ず、顔や服に幾らか浴びてしまった。

 

「とまあこの様に散水ノズルみたいに水形を変えられるんだ」

「……何で最初からそれを使わなかったんだ?」

「理由としては一回で浴びせられる量がどうしても少なくなってしまうから。このスタンド『ザ・ボトル』は戦闘に向いた能力じゃないし、私自身戦える訳じゃない。ダメージを無視して突っ込まれたらすぐにやられてしまうだろうと思って」

 

 言い分に納得する。今自分が受けたダメージは大したものじゃない。掛かった所は早目に洗わないといけないが、夜までには治るだろう。確かに初めからシャワーや噴霧を使っていたら言った通りにしていただろうな。

 

「納得した? なら再開するよ」

 

 再度管を俺に向けてきた。赤い液体が放たれる。

 

 ほんの少量だけ。ちょっとストローで飲み物吸い出して吹き掛けるのを思い出した。唖然として瞬間移動するのを忘れたが、俺に全然届かなかった。

 

「使い過ぎちゃった……」

 

『使い過ぎ』? 何等かの制限があってそれに引っ掛かったのか? 一度に使える量とか。

 どうでもいい。あの様子だと嘘じゃないようだし、攻撃が出来ないなら好都合だ。さっさと終わらせる。そう考えて接近する俺に管を向ける。こけおどしだと思い、足を止めなかった。

 

 管から『緑色の液体』が噴射された。

 

「……素早いね。偶々ながら上手く隙を作れたと思ったのに」

「一応『瞬間』移動が能力だからな」

 

 まともに浴びる前に能力で避ける事が出来た。完全に咄嗟でただ運が良かっただけだ。飛沫は掛かってしまっている。

 掛かった部分は何ともなってない。今の液体はさっきのと別のやつという事だろうか。

 

「考える余裕はあるのかな?」

 

 チャッカマンを取り出して管の口へと近付ける。火を着けると同時に『火炎放射』が放たれた。靴を脱いで後ろに蹴って、それを『軸』にして攻撃の射程から離れる。南別府はすぐに攻撃を止めて、先程放った緑色の液体へと管を向けた。

 何かをするのは解っていたので止めようと、もう片方の靴を半脱ぎして蹴り上げようとしたが、その前に管から『紫色の液体』が放出され、水溜まりに掛かると音を立て出した。そして目眩と頭痛、吐き気が同時に襲ってきた。

『ガス』を発生させたと気付いて袖口を鼻と口に当てたが、気休めにもならず、酷くなる一方だった。

 

「もう立つのも辛そうだね……重態で済ませてあげるし、救急車も呼んであげるからこのまま大人しくしててね」

 

 俺に管を向ける。『橙色の液体』が放射された。

 




能力名はアメリカのパンクロックバンド、ランシドの楽曲から。

次回決着。

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