クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード) 作:パタ百ハイ
『橙色の液体』が放射される直前に力を振り絞って足を動かして半脱ぎの靴を放ってそれを『軸』にして工場の壁際まで移動する。地面に掛かった液体はそのまま『爆発』、俺は壁を殴って穴を二つ作り、一つに顔を突っ込んで外の空気を吸った。これで少しはガスは薄らいだだろう。
「よく足掻くね」
「大人しくやられてたまるか。というか俺を殺す気だっただろ」
「直に掛けるつもりは無かったよ。爆発衝撃でボロボロにするつもりだった」
充分殺意あるだろ。そう思ったが口には出さなかった。
管の口にさっき放った橙色の液体が滴として着いているのが見えた。それは重力に従ってそのまま落ちる。管から離れる直前に南別府もそれに気付き、慌てた様子でこの場から跳んだ。滞空中に地面に落ちて爆発し、煽りを受けて転倒した。
(待てよ……そう言えば……そうか……そうだったのか……)
靴を拾って南別府へ投げ付ける。南別府はすぐ反応し飛んでくる靴に橙色の液体を掛けて爆発させた。
「能力使って接近するつもりだったんだろうけど、そんな見え見えで何もしないと……」
「何もしないと思っていない。だから囮だよ」
接近はするつもりだったが「能力」でじゃない。「足」でだ。爆発する瞬間走って近付いた。そのまま南別府を押し倒し、スタンドで管を上向きで固定する。これでこいつは『薬品』を、少なくとも強酸や爆薬のような人体に直接被害が出るようなやつは出せなくなった筈だ。出して浴びたら自分もモロに被害を受けるからな。
こいつの能力は『薬品を保管する能力』。多分服の下にタンクみたいなのがあって、それに薬品を入れている。入れた薬品は普通なら慎重に扱わないといけないものでも入れただけで品質はそのまま保たれるが、外に出せばその時点で能力の影響から離れる。これはこいつの格好が正しい事を証明している。厚手の服もゴム手袋もガスマスクも薬品から自身を防護する為の装備なんだから。
「何? もしかして私乱暴される?」
「しません。こっちの要求は一つだ。降伏しろ。そうすればこっちも何もしない」
「もう勝った気でいるんだ……私はまだ……」
「今の状態で使ったら自分も『薬品』浴びるぞ」
「……私の能力見破ってるのね。確かに、今使えばそうなるね。でも私はそれへの防護がある、一方君にはそれがない。被害がどっちが大きいかは考えるまでもないよね」
管から『無色透明の液体』がシャワーで出てきた。俺はすぐに身体を起こして離れるが、まともに浴びた。南別府は直ぐ様起き上がる。
と同時に、『プラネット・ルビー』の振り上げた拳が顎に命中し、ガスマスクは衝撃で外れ、彼女の身体は後ろへ吹っ飛んだ。
単体では何ともない、若しくは被害が小さい薬品はまだあるだろうからそれを使ってくるとは思ってた。でも俺には何出してくるか分からない訳だから、流石に強酸や爆薬は使わなくとも、言った通り自分に害を被るのを承知で有害な薬品を使う可能性は否めないから『距離を取らざるを得ない』。だから離れた。立ち上がるまでの隙のある状況を作る為に。
浴びた液体が口の中に入る。しょっぱいのでどうやら塩水みたいだ。
「……振りじゃなくて本当に気絶してるみたいだな」
撒き散らしたのは彼女自身とはいえ薬品が散乱している場に放置するのはどうかと思い、外に連れ出して横において取り敢えず優太に連絡する事にした。
『もしもし除夜』
「優太、今花屋か?」
『うん』
「頼みがある。靴買って言う場所に来てくれないか? ちょっと靴駄目にして他の履き物も手近に無いんだよ」
『……今の靴買ってから一ヶ月も経ってない筈だよね?』
「駄目になったものは仕方無いだろ。頼むよ、代金は後で払うから。それと水、ペットボトルに入れて持ってきてくれると嬉しい。一本でいいから二リットルのやつを」
『何かやったの?』
「聞かないでくれると助かる」
危ない薬品かかったから洗い流したいなんて正直に言えないし。
『……分かった。水道水でいいなら貰ってくる。それと除夜が買った花、お店に戻るの面倒だから持ってくるね。ああ、僕はもう買ったから気にしないで』
「……本当にゴメン」
「謝らなくていいよ。それより場所は?」
★
「さて、公園に行きましょう」
「ねえ琢磨お兄さん。風間君達に何したの?」
場所は公園近くの駐車場。乗ってきた酢乙女家の車の外に出ているしんのすけは、車内で気を失っている六人を窓から見て、車から降りる琢磨へやや引きながら聞く。ここに車を停めてしんのすけがドアを開けた直後、二人以外が次々にこうなったのだった。
琢磨の右腕が『消えていた』ので彼の能力がどう言ったものか知っているしんのすけは琢磨が何かやったのかを察した。
「能力で彼等の首回りを『持っていって』、腕を回して絞めました」
「いいの?」
「だから事前に言ったでしょ? 『どんな結果になろうともそれで納得する事』と。何か解らず突然気絶して起きた時全てが終わっていようと僕達は文句言われる筋合いはありません」
「除夜のお兄さん、どうやってこの人に勝てたんだろう?」
「危ないから真似してはいけませんよ」
「誰に向かって言ってるの?」
「さて、向かいましょう。そろそろ時間です」
「お……おう」
琢磨とは喧嘩しないようにしようと思うしんのすけだった。
公園の近くまで足を進める。公園には既に二十人余りの人間が集まっていた。
「これ、みんなあのチラシ見て集まった人達なのかな?」
「何人かチラシ持ってるので、恐らく」
「みんな他にやる事無いのかな?」
「やる事済ませて来ているんでしょう」
「お宅もチラシを見てここに?」
「ええ、わざわざこんな手の込んだ事をする人がどんな事をしてくるのか興味が出て」
「何が起こるんだろね。楽しみだなー」
「最近変な事件がよく起こって外出控える傾向にあるから楽しみ減っちゃって退屈気味だったんだよね」
「分かるー」
「……多分」
「呑気だね。あの人達……」
「そんなものでしょ。取り敢えずあっちに行きましょう」
そう言って琢磨が指を指したのは入口から入ってすぐに植えてある低木だった。二人は気付かれないよう移動し、簡単に見付からないよう身を隠す。
その一分程後に、マウンテンバイクが一台公園入口に停まった。乗っていたのは五分分けした黒髪に黒縁眼鏡を掛け、黒いスーツに身を包み、赤というより紅と表した方が良さそうな色合いのネクタイを着けた男だった。寄り道ならいざ知らず公園に直で来るには違和感のある格好の男の登場に、公園にいる者達は一様にその男に注目する。それはしんのすけ達も例外で無かった。
「ねえ琢磨お兄さん、もしかしてあいつ……」
「恐らく、あのチラシを配ったのはあの男でしょうね……しかしあの男、何処かで見たような……」
注目を浴びている男は口角を上げながらマウンテンバイクから降り、公園の集団へと歩を進める。ある程度進むと足を止め、両手を挙げる。
「皆様、初めまして。私の稚拙な招待に貴重なお時間を割いてまで応じて頂き真に感謝致します」
この言葉で全員が確信した。あのチラシを送り付けたのはこの男だと。
「何のつもりでこんなチラシを配ったんだ?」
「よくぞ聞いて下さいました。これは、私の『能力』を皆様に体感していただきたいと思った為です」
『能力』。この単語に大部分が怪訝そうな顔をするが、しんのすけは思わず体を大きく動かした。琢磨が抑えようとしたが大きな音が立った。男の背後から『スタンド』が出てきたのはそれと同時だった。
腹部にスポットライトのような装置が組み込まれ、上顎の殆どを車のヘッドランプのような一つ目で占めた、ボディの大部分が剥き出しのアンドロイドのようなスタンドが出現し、それは両手を集団へと翳す。両掌にもライトが埋め込まれており、そこから強烈な光が発された。光を浴びた人々は次々と倒れていき、全員が倒れると発光が止んだ。
「さて……そこにいる姑息なネズミをどうにかするか……」
男は二人が隠れている低木へと身体を向けた。
南別府さんの能力、書いてる途中で気付いたけど無効化能力にはかなり強いです。
そしてしんのすけ達はどうするでしょうか?