クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

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光が見せる悪夢を醒ませ! その①

 男が足を動かす前に、しんのすけと琢磨は姿を現す。二人共既に自分のスタンドは出していた。

 

「『スタンド使い』か……射抜かれたのは俺だけじゃないとは思っていたし、何れは『引かれ合う』だろうと思っていたが……聞かせてくれ。君達は俺の敵か? 味方か?」

「昨日オラの父ちゃんや先生達を襲わせたのはお前か!」

 

 しんのすけの怒気のこもった問い掛けに男は眉をひそめる。

 

「見たところ幼稚園児のようだが、最近の幼稚園は質問に対して質問で答えなさいと教えているのか?」

『味方だと私に何のメリットがある?』

 

『ハリケーン』が割り込んできた。このままでは埒が明かない。そう判断した琢磨はしんのすけと男の間に入って男の方へ体を向ける。

 

「質問の答えですが、敵か味方か。どちらかと言えば敵ですね。僕達は貴方を倒す為にここに出向いた訳ですから」

「成程……その考えを改める気は?」

「有り得ないと思いますが、貴方の『目的』で変わるかも知れません。だからそれを教えて頂けないでしょうか? 柿枝(かきえだ)辰男(たつお)さん……ですよね?」

「知ってるの?」

「思い出しました。三年前に当時在籍していた大学の学祭である実験を行い殺し合いを誘発させ、結果六十七人の死者を出す惨事を引き起こした男です。かなりニュースになってました」

「オラ知らないぞそんな事!」

「君は当時二歳ですし覚えていなくともおかしくないですよ」

『どんな事をしたらそんな惨事を引き起こす事が出来るのだ?』

「『光を用いた暗示による心のリミッターの解除』……簡単に言えば催眠術で『理性』を外す事が出来るのか。それがこの柿枝辰男の研究だ」

 

『ハリケーン』の疑問へ返答を含めて発言した。

 

「どゆ事?」

「しんのすけ君は好物のチョコビがお店に並んでいても普通はそれを食べたいからとその場で買わずに封を開けて食べようとはしないでしょう?」

「何を当たり前な事聞いてるの? そんなの駄目に決まってるじゃない!」

「どうして駄目なのですか?」

「悪い事だもん。そんな事したら母ちゃん達から怒られちゃうし、迷惑かけちゃうよ」

 

 しんのすけから返された言葉に琢磨は頷く。

 

「そう、『やってはいけない』。それが『理性』、それが『良心』、それが『心のブレーキ』。それは程度や方向性の違いはあれど誰もが持っている筈のもの。人格に難のある人間性の持ち主の多い『スタンド使い』ですら大概持っていて、そしてそれは余程切羽詰まっている時でない限りは外れる事は無い」

「オラ達人格に難がある?」

「他人から見れば大抵の人間は大なり小なり人格に難はあると思われますよ」

「もし仮に『心のブレーキ』のない人間がスタンドを発現させたら?」

「途轍もなくおぞましい能力になるでしょうね、そいつのスタンド。想像したくもありませんが……話を戻しますね。この男は事件当日、つまり学祭に自分の研究成果である装置を敷地内のあちこちに無断で設置し、人が多く集まった時に作動させたんです」

「データは多く取りたかったからな。老若男女の集まる祭は打ってつけだったよ」

「その結果が、さっき言った惨状です。この男の実験は成功したと言えるでしょうね」

「成功はしてないぞ? 当時人間相手に行ったのはその一回限りだ。あくまで『成果』を出しただけ。『次』に向けて問題点を見出だそうとしたが、翌日俺は警察に突き出される形で大学を追い出された。どいつもこいつも俺を汚い犯罪者を見るような目で見ていたよ」

「実際犯罪者(そう)じゃない?」

「五月蝿い! 分かったように言うな! そもそも最初はちゃんと被験者を募ったんだ! 報酬もちゃんと出すつもりだった! だがどいつもこいつも報酬目的で乗り気だったのに俺の研究を知った途端逃げ出した! 時には異常者呼ばわりもされた! 被験者が必要なのに誰も手を貸してくれない以上ああするしかないだろう!」

「ねえ、あいつの言ってる事、オラ全然理解出来ないんだけど……」

「僕も全然理解出来ません。と言うよりしたいとも思えません」

 

 しんのすけと琢磨は完全に引いていた。

 

「それで……貴方は何をしたいんですか? 自分を追い出した大学への復讐でも?」

「それもしたいがまずは己の研究の完成……春日部に流れ着いて手に入れたこの『ビウェア・オブ・ダークネス』を活用しそれを成し遂げる。ここに集まった連中やこれまで『使った』連中や運悪く死傷した奴等はその為の礎だ!」

「つまり、昨夜の居酒屋の襲撃事件も、貴方の『実験』と?」

「察しが悪いな。その通りだよ」

「最後に……貴方の研究によって命を奪われたり心身に傷を負った人達……彼等彼女等に対して、貴方はどう思っているのですか?」

「……何か思わないといけないのか?」

 

 冷淡に言い放った。

 

「ああ、ポーズは取っておくべきだったか。今さっきの言葉は撤回するよ。『御愁傷様』。このくらいは言っておいてやるべきだった。さて、俺の目的を言ったぞ。聞かせてくれ。お前等は俺にとって『敵』か? 『味か……」

 

 言葉の途中で『ハリケーン』の拳が柿枝の顔にぶち込まれた。

 

「し……しんのすけ……君?」

「『敵』か『味方』か? そんな事でオラの父ちゃんや先生達を傷付けたお前に、オラが『味方』になると思っているのか! お前はオラの『敵』だ!」

 

 唐突なしんのすけの攻撃、続いて怒りの込めて放った言葉と、急展開に頭がついていけず呆然となる琢磨だったが、すぐに意識を現実へと戻す。

 

「僕もしんのすけ君と同じ気持ちです。お前の研究は、今日ここで終わらせます」

「ウグググ……そうか、そうか……なら、俺にとっても、お前等は『敵』だ……後悔しろ……軽率に俺を『敵』に回した事をな……」

 

 鼻血を出している鼻を押さえながら、涙目になりながらも敵意を向ける柿枝。スタンドも出している。『ハリケーン』は接近して柿枝へと拳を振り下ろす。柿枝のスタンドはその顔を『ハリケーン』の顔へと向ける。

 

「しんのすけ君! 目をガードして下さい!」

 

 先程あのスタンドが行った事を思い出して大声を挙げる琢磨。しかし、遅かった。

 上顎の大部分を占めるライトから、辺り一面の色を掻き消すかのような、先程とは段違いに強烈な閃光が焚かれた。

 

「く……うう……」

 

 ふらつきながらゆっくり目を開ける琢磨。

 ライトが光る直前に目を閉じるも、瞼越しでも強烈な閃光は充分届いたので目とその周りを『持っていった』。数秒開けて解除してみて暗かったので瞼を開いた。その琢磨の視界に真っ先に入ったのは、悶え苦しんでいるしんのすけ、そしてそのしんのすけを踏みつけようと右足をあげている柿枝の姿だった。

 

「『ハーレム・シャッフル』!」

 

 柿枝の右足を『持っていき』、琢磨は彼の腹部目掛けて体当たりを食らわす。バランスを崩した柿枝の身体はそのまま倒れた。

 

「大丈夫ですか?」

「琢磨……お兄さん? そこに、いるの……?」

 

 琢磨の顔が自分の顔の真上にあるにも関わらず、しんのすけはそれが分かってないようだった。

 攻撃の為に接近していて、琢磨も本当に咄嗟だったのでしんのすけまで『能力』を掛ける事が出来なかったのでダメージが大きかったのだろう。

 

「どうせもう分かっただろうし俺の能力教えてやるよ。非常にシンプルに『光を照らす能力』だ。電池が切れかけた懐中電灯程度も今みたいな強烈なのも俺の意思で自由自在。まあ光が強ければエネルギーはその分使うから今みたいなのはすぐに消えるけどな」

(見た目通りの『能力』か……スタンドについているランプ一つ一つを別個に同じ様に燈せると考えた方がいいか……)

 

 琢磨は考える。自分のこの考えは間違いないだろうと。そして自分は彼の『能力』相手では相性が悪いと。『ハーレム・シャッフル』の制限は『一つにつき一ヶ所』、出してくるのが光では対処は限られてくる。避ける事なんか出来ないし、先程行った対応もまた上手くいくとは限らない。戦闘中とずっと視界を封じるなんて論外だ。

 一番簡単なのはライトを全て潰す事だが、自分がやると一個一個潰していかないといけなくなる。全部潰すまで待ってくれる訳はないし、すぐに反撃食らってやられるのがオチだ。『ハリケーン』が『群生型』になれば全部を同時に潰せるだろうが、本体のしんのすけがこれでは無理だ。

 

「う……うー……」

 

 声がした方向へ顔を向ける。ここに集まった人達の内の一人である二十代前半程の女性が目覚めて起き上がろうとしていた。他の人達も次々と目を覚ましていく。

 

「一体何が……」

「何も聞かずにここから離れて下さい! 危険です!」

 

 大声で勧告する琢磨。女性は琢磨に近付いてきた。どうやら困惑しているようだった。(彼女等からすれば)突然現れた見知らぬ男から唐突にそんな事を言われれば当たり前だろう。

 

「ちょっと……君は何者? どうしてここが危険なの?」

「いいから早く!」

 

 事情を知らない者からすれば当然の疑問だが、『見えない人間』に上手く理解させる為に丁重に説明している余裕は無い。対して女性は琢磨への接近を続けーー

 

 琢磨の横っ面を、力一杯ぶん殴った。

 

 唐突だったのもあって反応が出来ず直撃し、転げてしまう。

 

「おいおい何やってるんだよ。いきなり殴るなんて……」

 

 恰幅の良い中年の男がその行為を見咎める。

 

「ぐえっ!」

 

 琢磨の腹を思いっ切り踏みつけてーー。

 その様子を見て、柿枝は愉悦そうに口元を歪めていた。

 

 

 

 

「あれ? 僕何時の間に眠って……て、え? 皆も? 一体何が……」

 

 いち早く目を覚ましたトオルは、まだ目を覚ましていない友人達と運転手を見て動転するが、すぐに『異変』に気付いた。

 

「しんのすけと須藤さんが……消えた?」

 

 





男のスタンド名はジョージ・ハリスの楽曲からです。
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