クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

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久々の更新です。


光が見せる悪夢を醒ませ! その②

 目を覚まして二人が消えているのに気付いたトオルは、まず他の五人を起こして簡単に説明する。話を終えると、あいは溜息をついた。

 

「須藤さんにしてやられましたわね……」

「どういう事?」

「『どんな結果になろうと納得する事』……彼が示した条件ですが、つまり、あい達が与り知らない所で解決したとしても文句は受け付けない。そういう事だったんです」

「要するに、須藤さんは最初から僕達をこの件に関わらせる気はなかったの?」

「ええ、あい達が車内で突然気を失ったのも須藤さんが何かやったからに違いありません。須藤さんがこの様な手を使ってくるとは思いませんでした」

「お言葉ですがお嬢様、彼は」

「分かっていますわ黒磯、危ない目に遭わせないようにしてくれたというのは。彼には感謝するべきで、見抜けなかったこちらの落ち度です」

「それより……僕達はどうするべきかな?」

 

 マサオのその発言にトオルが続く。

 

「僕達に出来る事は三つ」

「三つ?」

「うん。『警察を呼ぶ』『そのまま帰る』『公園に向かう』。普通は最初の『警察を呼ぶ』が正しい判断だろうけど……」

「警察では、どうする事も出来ない可能性がある」

 

 ボーの返事にトオルとあいが頷く。それに黒磯が続く。

 

「そもそも警察ではどうする事も出来ないと判断したから須藤さんはああ行動したのでしょう」

「そう、私達が取れる選択肢は実質二つ……いかがなさいます? 皆さん」

 

 

「おい兄ちゃん、怪我はないか?」

 

 中年の男は心配そうに琢磨に声を掛ける。彼の腹へ踏みつけた足の力を強めながら。

 このままでは圧死すると思った琢磨は『能力』で自身の胸部から下を『持っていく』。中年の男の足は地割れが起きるのではと思ってしまう程の轟音を立てて地面を踏みつけた。男が靴の形に3㎝は凹んだ足跡から足を上げると、膝から下が力なくぶら下がっている。地面を踏みつけた衝撃に耐えられなかったと理解した。

 大怪我を負ったにも関わらず男は痛がっている様子は無い。痛みを堪えているのでなく、『痛みを感じていない』ようで、表情を全く変える事なく腕で這う琢磨へと身体を向ける。能力を解除して立とうとすると、女性が殴りかかってきた。腕を『持っていく』事で避けるも、今度は右足を蹴り上げてくる。命中する寸前にそこを『持っていく』事で防いだが、直後に後ろから脇腹を蹴られ、横転する。蹴ったのは集まっていた内の一人だった。

 琢磨は柿枝の『ビウェア・オブ・ダークネス』を見る。あれが何かをやっている事は解ってはいるが、体の各部のライトはどこも点いていなかった。

 

(いや……)

 

 よく見たら薄らと照っている。日の入りくらいだったらすぐに気付けるだろうが、まだ十分明るいこの時間帯ならまず気付かないだろう明るさだ。あの程度で催眠に掛ける事が出来るのだろうかと思ったが、催眠術について門外漢である自分があれこれ考えても意味はないとそれについての考察は止めにした。それより問題は現状だ。催眠に掛かった人達は痛みを感じず攻撃してくる。長引けば死人が出てしまう事だって十分有り得る。助けるには速やかに柿枝を倒さないといけないが、それを妨害してくる。

 

(除夜君か稲庭さんを連れてくるべきでしたか……いや、今からでも連絡して……)

「琢磨お兄さん!」

「しんのすけ君! 大丈夫ですか?」

「おう! もう大丈夫だぞ!」

「なら除夜君に助けに……」

 

 携帯を取り出した所で妙だと思った。これまで操られている人達は自分『のみ』に攻撃しており、しんのすけへは一切手を出していなかった。先程まで悶えていて絶好の機会だったにも関わらず、だ。

『ハリケーン』の右手が琢磨の首を掴み、そのまま地面に叩き付けんと右腕を振り下ろした。琢磨は浮遊感を感じたと同時に『ハリケーン』の右手を『持っていき』逃れられ、『ハリケーン』は自分の右手首を地面に叩き付けていた。

 

「ちょっと、何やってんの! オラ右手痛いんだけど!」

『大した事ないだろうが文句を垂れるな!』

「しんのすけ君……今、何で……」

 

 自分のスタンドと言い争いをしているしんのすけに、恐る恐る訊ねる琢磨。

 

「え? 『敵』を倒そうとしただけだよ? それが何か?」

『おかしい事を訊くものだな』

 

 当たり前のように、いつもの感じで返答した。確信した。しんのすけは柿枝の術中に嵌まってしまったのだと。

 柿枝を睨み付けると、彼はほくそ笑んだ。

 

「俺を睨んで何か状況が変わる訳じゃないだろう? いいのか、余所見をしていて」

 

 後ろから琢磨の肩に手を置かれる。指は肩に食い込み、そのまま握り潰さんとばかりに力が込められる。すぐに肩を『持っていく』が、同時に別の人が体当たりをしてきた。回避が間に合わず直撃する。

 体勢を崩し今にも倒れそうな琢磨の顔面に、『ハリケーン』の拳が迫る。ギリギリの所で拳が通過するよう『持っていき』、その通りになるが、『ハリケーン』は軌道を変えて腕を琢磨へぶつけた。

 

(このままだとやられるのも時間の問題……一度撤退して……除夜君達に……いや……)

 

 ここまで考えて『それ』は取ってはならないと思った。確かに『ハーレム・シャッフル』の能力をフル活用すればこの場から逃げる事は出来るだろう。だがそれは「柿枝を逃がす事」にも繋がってしまう。救援を連れてくるまで奴が待っている理由は何処にもない。その間にしんのすけを含むここにいる人間を連れていって何処かで犯罪を犯させ、雲隠れし、そして同じ事を繰り返す。奴の身勝手による被害者が更に増える。だから何としてもこの場で倒さないといけない。

 

(自分一人でしんのすけ君を含めた操られている人達に対応しつつあいつを再起不能にする……)

 

 その為の策が思い浮かばない。集団への対応は勿論の事、柿枝自身も的ではなく『スタンド能力』という攻撃手段を持っている、一挙一動を警戒しなければならない難敵なのだ。

『ビウェア・オブ・ダークネス』が琢磨へと手を翳す。すぐに両目周りを『持っていく』が、顔面に『ハリケーン』の一撃が入って後ろへと吹っ飛ぶ。地面に落ちた感触を感じると同時に能力を解除すると、『ある物』が目に入る。

 

(『これ』と自分の能力があれば奴を倒す事は出来る……問題はすぐに察せられて妨害される事……)

「そんなに鼻血出して大丈夫か? ほら、ハンカチ貸すから拭けよ」

 

 操られている男の一人がハンカチを取り出し近寄ってきて、押し倒して鼻と口をそれで塞ぎ、押し付ける力も強める。鼻と口を塞ぐ手を『持っていく』が、すぐにもう片方の手で塞がれる。更にしんのすけを含む他の操られている者達が近付いてくる。しんのすけは刀にした『ハリケーン』を、他は折った木の枝やらを手に持って。

 

「どうした? お前の『能力』なら脱出しようと思えば出来るじゃないか。それでこの場から逃げたらどうだ? ああ……しんのすけって目上の人に敬語を話せない礼儀知らずなガキの仲間見捨てられないか……いやー大変だな……」

「礼儀知らず? それは単に貴方がそれに値しないと思ったからでは?」

 

 突然の予想してなかった声に目を見開く琢磨。顔を上げると、酢乙女あいがそこにいた。更にトオル達春日部防衛隊もいる。彼等の登場に全員が動きを止めると、その隙に黒磯が琢磨を抱えて移動させた。

 

「貴方達……どうして……」

「元々場所は解っていましたので。それより須藤さん」

 

 目をつり上げて、あいは柿枝へ指を差す。

 

「あの男が、お義父様や先生達を傷付けた犯人なのですか?」

「なあ……初対面の人に指差すって無礼なんじゃないか? 俺は礼儀知らずのガキとゴミのポイ捨てをするバカが大嫌いなんだ!」

 

 苛立ちを露にして叫ぶが、あいは全く動じず、琢磨は頷く。

 

「ねえみんな、ここは危ないから今すぐ逃げた方が……」

 

 しんのすけが慌てた様子で駆け寄り、ネネの服を掴んで殴りかかった。すぐにマサオとボーがしんのすけにしがみつき、トオルがしんのすけの手を振りほどいた。しんのすけは二人を強引に振りほどき、二人は背中を地面に打ち付ける。

 

「しんのすけがこんな事をする筈がない! あいつに何をされたんですか?」

「奴は催眠術師でしんのすけ君を含めたここにいる人達はその術中に嵌まってしまっているんです!」

「そうですか……では須藤さん、あの男を倒す為に私達は何をすれば良いのか申して下さい」

 

 あいのこの発言に琢磨は絶句した。

 

「何を言っているのか解っているんですか? 危険ですから今すぐ逃げて下さい! 奴は僕がどうにかします!」

「でもさっきやられそうだったじゃない」

 

 ネネの指摘に言葉が詰まる。奴を倒す『策』なら頭の中にある。しかしそれは自分一人では机上の空論、人手はいる。

 

「分かりました。お願いします」

 

 悩んでいる暇はないので了承した。




次回、決着です。
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