クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

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ゼブラヘッド その①

「ちょ……一体何?」

 

 一葉の放った言葉からの、場の空気の変容を感じた斜森が言う。そんな彼女にしんのすけ達は構わず、一葉の手に出現した『ギター』を見詰める。

 メタリックな色合いの緑のボディに動物の背骨のネックに手の甲にビスを刺してペグにしている人間の手首(爪に赤のマニキュアが塗ってある)を突き刺してヘッドにしているというとんでもないデザインで、一葉が弦を動かすと連動して手首から血が滴る。しんのすけも稲庭も楽器に詳しくないし琢磨も多少知識がある程度だが、こんな悪趣味なギター何処も作っても扱ってもないのは分かる。というかギターに入れていいとも思えない。

 何より、彼女の身体から出てきてよく見たら透けている。間違いなく『スタンド』だ。

 

「まさかこんな所でもスタンド使いと出会すなんて……」

「何者かがスタンド使いを生み出している事を考えれば意外でも何でもないですよ」

「そりゃそうだけど空気は読んで欲しいぞ。ななこおねいさんとの折角のデートだったのに……」

 

 不貞腐れてしまうしんのすけ。頭では解っていても水を差されてその事での不機嫌が抑えられないのだろう。それに琢磨は思わず微笑むが、周囲が騒ぎ立て、その言動に現実に意識を切り換えた。

 

「何なんだよ……エアギターって……盛り下がるっての」

「は? 待ちなさいよ。あの悪趣味なギター見てそんな事言ってんの? 病院行って目の検査してきなさいよあんた!」

「ギターって何処にあんだよ! お前の目がどうかなったんじゃねえか?」

「あいつの手の中よ!」

 

「どうやって出したんだあのギター……手品かなんかか?」

「変な事を言うのは止めなさい。ギターなんて何処にもないわ」

「変な事を言ってるのはお母さんの方だよ! 見えてないの?」

「お兄ちゃんに乗っからない!」

 

「なあ……あのギター、オーダーメイドかな? よく作ってくれたよな……」

「お前変な冗談言う奴だったか?」

「そっちこそ冗談はよせよ」

 

(間違いなく『見えてます』ね……あの人達……)

 

 混乱が起こっている観客席を見渡し琢磨は思う。十中八九彼等は『これ』に関係はない。関係していたら違う行動を取ろうとするだろう。恐らく能力自体無自覚で、この場にいるのは単に引き寄せられただけだ。

 琢磨が気になったのは『人数』だ。スタンドの出現に反応し騒ぎ立てているだけで十数人。口にしなくとも狼狽えているのが分かる者も同程度はいる。まず間違いなく彼等が能力を有したのは自分達と同様『矢』によってだ。所有者の『活動』は、思っているより積極的なのかも知れない。

 

(……それは今考える事ではありませんね。問題は彼女だ)

 

 気を取り直して一葉に目を向ける。一葉はピックを持ち、弦に近付けた。

 

「耳を塞いで! 急いで!」

 

 両手で耳を塞ぎながら大声で指示する。周りの観客達が琢磨に注視するが、気に掛けていない。宝来達は困惑しつつも従った。

 

(あいつ……『ホット・シング』が見えていて……スタンドの事も理解しているわね……他の連中は外にいる筈だから同類じゃない……瀬上除夜の仲間? それとも引き合っただけのスタンド使い?)

 

 手の動きを止め、琢磨へと視線を向け、思考を巡らす一葉。

 

(まあいいか……障害になりかねない奴なのは間違いないし、悪いけど潰しておこ)

 

 そう結論を出して演奏を開始する。ギター、『ホット・シング』から奏でられる音は会場中に響き渡り、観客達は一葉に視線を送る形で落ち着きだした。

 

「分かったでしょ? ちゃんと音も出てる!」

「どっかにラジオでも隠しててそれを動かしてテープ流してんだろ」

「何でそうなるのよ!」

 

(音はスタンド使い以外にも聞こえるみたいですね……そして音を聴いてすぐにどうかなるものじゃない……)

 

 観客達のやり取りを唇の動きでおおよそ理解し、分析する琢磨。今はどうにもなっていないだけで、ここが危険なのは変わらない。ここから脱出、少なくとも宝来達を逃がさないといけない。それは効果が出ていない今しかチャンスはない。本当だったら観客達にも避難を呼び掛けるべきだろうが、直接的な危機が迫っている訳ではないので手短には言えないし、一から説明してる時間は無いし下手したら暴動さえ起こる可能性もある。

 ジェスチャーで逃げるよう指示をしようとするとーー

 

(何だ? この感触は……)

 

 足にまるで水を張った田んぼに入ったかのような抵抗感を感じた。足元を良く見ると、うっすらと白い『蒸気』が上から下へと流れていた。

 

(『三人』……学祭(ここ)に来た害意のあるスタンド使いは、少なくとも『三人』……)

 

 

 

 

 全面に火傷を負った左手の甲を押さえ、俺は奴を見る。奴が引き金を引いたと同時に俺は能力で後ろに回ったが、左腕を後ろに回して発砲してきた。咄嗟に『プラネット・ルビー』で弾いた途端、弾丸が炸裂した。

 

「言っておくが今のは『スタンド能力』じゃない……ただの炸裂弾だ。俺の『ゼブラヘッド』もだが近距離パワー型は銃弾を能力使わずとも容易く対処出来る奴は珍しくないって聞いたからそれを逆手に取って……てところだ」

 

 成程。スタンドは原則スタンドでしかダメージを与えられないが例外はある。自分から接触した場合の反作用だ。そしてスタンドのダメージはその本体にフィードバックする。

 

「まあ、俺はスタンド使いと戦う事自体が初めてだし、生身の人間の腕が吹っ飛ぶ程度の威力で十分と思って作ったが……見込みが甘かったか……」

「充分人を殺せる威力だよそれは……」

「だがお前の左手そのものは無事なんだろ?」

 

 その問いに俺は頷いた。火傷と衝撃でかなり痛いが、それだけだ。それで済んだのは俺の体質ありきでもあるだろうが、近距離パワー型に大きな損傷を与えるには火力が足りなかった証左でもあるだろう。

 

「解ると思うが炸裂弾はそんなに持ってきてないぞ。作るのに手間が掛かるから数を用意できるものじゃないからな。ここに持ってきてるのは大半が普通の弾丸だ」

 

 言っている事は本当だろうが、何一つ安心出来る情報じゃない。まだ銃器を隠し持っているのは確かだし、そのどれかに炸裂弾が込められている可能性は充分ある。

 炸裂弾はもう無いのでミスリードを誘っている可能性もあるが、憶測でしかないから迂闊に防御するのは危険だな。虚を突いて一旦逃げてしんのすけ達と合流して……

 

「言っておくが、俺から離れたら無差別に銃を乱射するよ? 銃声が俺の居場所を知らせてくれるから捜す手間は省けるだろうけど、再び対面するまでには大学に死体がどれだけ転がっているんだろうねぇ~? まあ武器は有限でその間消耗するからお前にとってはこれはこれでいい手かも知れないねぇ~? 強制はしないから判断は御自由に」

 

 考えを見透かされこんな事言い出してきた。冗談のような口振りだがもし逃げたら本当に実行するだろう。

 甘い考えだった。こいつは今ここで倒さなければいけない相手だ。でないと……

 

「悠長に物を考えている余裕あるかな?」

 

 奴のスタンドがその手に握ってる銃器の銃口を向けてきた。多分サブマシンガン。漫画や映画とかで見た事はあるが、実物目にしたのは初めてだ。

 撃たせる前に奪えばいい。そう思い立って引き金を引く前に蹴り飛ばした。片足を上げきった所で左手にいつの間にか握られていたナイフが襲ってくる。瞬間移動で奴の後ろに回ると、銃声が辺りに響いた。

 

「外したか……」

 

 右手に握られていた拳銃から硝煙が立ち上っていた。銃弾が命中していたのは俺から見て左側の壁だった。俺が目の前から消えた瞬間、銃口をそっちに向けて発砲したんだ。間違いなく適当、『下手な鉄砲数撃ちゃ当たる』を実践したのか。

 かなりシンプルだが故にかなり有効かも知れない。今だって当たらなかったのはただ運が良かっただけだ。

 

「これを続けて疲労を蓄積させるのも悪くないが、弾丸は勿論体力も無尽蔵じゃないし、何より気が長い方でもないからな……一番手っ取り早い手段を取らせて貰う」

 

 そう言って新しく取り出した代物を見てギョッとした。導火線が頭に付いた筒。俺が知る限り花火を除けば日本で恐らく最も身近で最も知名度の高い爆弾「ダイナマイト」。しかも束で。

 更に空いている手にライターを出し、着火し、一切の躊躇もなく導火線に火を近付け、火を着けた。

 奪う……いや手遅れだ。つまり俺が取らないといけないのは……。

 

「生き残れるならやってみろよ」

 

 導火線が尽きると共に、爆音が鳴り響いた。





久々の投稿になってしまいました。

悪趣味なギターのスタンド、『ホット・シング』。元ネタはプリンスの楽曲です。
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