クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード)   作:パタ百ハイ

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野原家に来訪した除夜が待つのは……?


瀬上除夜は普通の人 その④

 庭付きの二階建ての新居。それが野原家の家屋だった。

 しんのすけは自分の父は安月給とか道中で言っていたが、駅とかと近いこの物件を持ち家にしていて、家族四人に犬一頭が満足に生活出来てるんだから安月給どころか同年代のサラリーマンの平均年収よりは稼いでいると思う。

 庭には飼い犬という、白い綿飴みたいな子犬がいた。あの犬には見覚えがあった。たまに肉屋で客の呼び込みで芸をやってたり、捨てられた子犬や子猫の世話をしているのを見た。首輪が着いているから飼い犬だろうと思っていたが、まさかここの犬だったとは。世界の狭さに驚いた。名前はシロというらしかった。

 シロの頭を撫でた後、家に上がった。キッチンに入った時、置かれていた買い物袋について疑問を持った。

 

「すみませんみさえさん。今日親族辺りが泊まりに来るんですか?」

 

 買い物袋一杯に詰め込まれている大量の食材は、明らかに一般家庭が1日2日で使う量を越えていた。だからそうだと思ったし、それならアポ無しで突然訪れた自分は迷惑にならないかと心配になったからだ。

 それに答えてくれたのは、しんのすけだった。

 

「母ちゃんね。よく衝動買いすんの。今日スーパー格安の日だったからつい買っちゃったんだぞ」

「……安いからって消費しきれない程買ったら無駄になるだろ」

 

『よく』って事は結構やってるって事か。

 放置しておくと痛むので、俺は冷蔵庫の扉に手をかけた。その際しんのすけは危険とか言ってたようだが、特に気にとめず開いた。

 

 ――途端、冷蔵庫の中身が雪崩れ込み、俺を巻き込んだ。

 

「だから危険だって言ったのに」

「聞き流してすみません」

 

 家計が苦しいとか言ってたが、これだとどれだけ実りが良くても家計苦しくなるよね普通。

 結局冷蔵庫の中身を点検する事から始まり、結果、中に詰まっていた内の四分の三が処分決定となった。賞味期限が切れて数日経っているのはまだいい方で、中には原型が何なのか分からない物もあった。

 ……それ等を目撃した時、どうコメントしていいのか俺には分からなかった。

 

「ごめんなさいね色々……」

「冷蔵庫時々確認した方がいいですよ。電気代の無駄です」

 

 

 

 

 俺は今、しんのすけと一緒に風呂に入っており、しんのすけは俺の背中を流している。

 あの後みさえさんに風呂に入るよう言われ、それでしんのすけと話そうと思って連れて行った。この時間にある番組「カンタムロボ」が観たいと駄々をこねて揉めたが、録画したのを上がってから観る事で納得してくれた。

 ひまわりちゃんも一緒のがいいかと思ったが、やめた。だって布団の上で雑誌から切り取ったらしい美少年、美声年の写真うっとりした様子で眺めていたんですよ? 怖くて近寄ろうとも思えませんでした!

 それで今こうなってる。しんのすけの洗い方は思わず感心する程上手かった。

 

「お前洗うの上手なんだな。お父さん相手にやってるのか?」

「ううん。お義父様にテコを教えて貰ったから」

「『テク』だろ」

 

 話によると、こいつには女子大生の好きな人がいて(何か色々言ってたがその人にとっては弟辺りの認識だろう)、その人の父親はベストセラー作家さんで、娘を非常に可愛がっており、娘の事になると締切間近でも仕事放り出す程らしい。……担当さん大変だろうな。

 途中、しんのすけの手が止まった。

 

「どうした?」

「星? これ?」

 

 しんのすけは俺の左肩の「ある部分」に指を押し付ける。

 俺が他の人と違う『他数点』の一つ。まあ、そう大袈裟に言う程のものでもないが。

 左肩に『星型の痣』が一つある事。かなり鮮明で、且つ形も整っており、ボディペイントや刺青の類と勘違いされた事もある。義母さんによれば、俺が赤ん坊の頃からあったらしい。

 小さい頃は気にしていたが、体に害はないらしいのもあって今は気にしていない。そう伝えるとしんのすけは洗うのを再開した。

 お湯をかけて泡を洗い落として貰うと、今度は俺がしんのすけの背中を洗う番だ。途中途中変な喘ぎ声を出してくるのでその度に止めさせた。

 

「しんのすけ。俺の『プラネット・ルビー』なんだが……どうしてお前らは見る事が出来るんだ? 何かあったのか?」

 

 泡を洗い落とすと、今回この家に来る事を決めた理由である『俺の能力を題材としたしんのすけとの会話』を始めた。質問内容に大した探りは無い。ただの勘だ。

 しんのすけは唸った後、答える。

 

「風間君に怒られた」

「……風間君?」

「オラの大親友」

「それ何時?」

「今日」

 

 絶対きっかけじゃねえなこれ。

 

「他は?」

「ネネちゃんにおままごとをさせられた」

「他は?」

「マサオ君とブランコで遊んだ」

「他は?」

「ボーちゃんとモズの早贄ごっこやった」

「他は!」

 

 段々声が激しくなってきた。その遊びは気になるが、大体想像がつくし、それが知りたい訳じゃないからスルー。

 

「あいちゃんが風邪でお休みだった!」

「……ごめん、質問が足りなかった。今日俺に会うまでに何かおかしい事が起きたか? 何でもいいんだ」

「んーとねぇ……あっ! 一昨日風間君ち行った時……」

 

 しんのすけは少し間を開ける。俺は唾を飲み込む。

 そして、言う。

 

 

「風間君のママが、すっぴんで出て来た……あれ? 何でお兄さん肩に手を置く……痛い痛い痛い痛い痛い痛い! 爪! 爪立ってる! 爪食い込んでる!」

「俺の質問の仕方に問題があるの? 君の解釈の仕方に問題があるの? どっち?」

 

「離して離して離して離して! 昨日変な男が来てオラとひまがそいつの持っていた『弓と矢』で射抜かれた!」

 

 手を離した。

 

「痛かったぞ……」

「悪かった。その話詳しく聞かせてくれ」

「いいよー」

 

 話を聞くと、やはりとんでもない話だった。

 その『弓と矢』――正確には『矢』には特定の人物の超能力の素質を引き出す力を持っている事。『弓と矢』を持つ謎の男は何等かの目的でそれを使って能力者を作っている事。

 正直、自分が『プラネット・ルビー』の能力を持っていなければとても信じ切れない内容だった。実際、こいつも俺の能力を見るまで何か特別な事が出来るようになった訳ではなく、射られた際の傷痕もないのもあって夢を見たんじゃないかと思っていたようだ。

 

(今まで誰も見えなかった『プラネット・ルビー』が見えるって事は、その超能力は俺の能力と同類って事なのか?)

 

 同じ能力の持ち主なら見えたとしてもおかしくないが、まだそうだと言えない。

 そんな事より放置出来ない問題がある。

 

「そいつは能力者を現在進行形で作ってるみたいだが……その目的に心当たりはあるか?」

「そんなの分かる訳無いでしょ。何も教えてくれなかったんだから」

「だよな……」

 

 答えはそうだと分かっていても、やはり溜息は出るもんだ。

 顔を上げて、次の質問をする。

 

「そいつはまたお前の前に姿を現すって言ってたんだよな? もしその時が来たら、お前はそいつに手を貸すのか?」

「貸さないに決まってんじゃん!」

 

 即座にハッキリと、大真面目に答えた。

 

「そいつはオラだけじゃない! ひまも攻撃した! それも『確認』なんて理由で! そんな奴の目的がまともな筈がないぞ!」

 

 それだけじゃない! と言う。

 

「そいつが『弓と矢』でこうしてる今も誰かを射抜いているんなら、オラ達の大事な人達もその対象になるかも知れないぞ! そうなったら、オラとひまは生きてたけどもしかしたら死んじゃう人がその中から出て来るかも知れないんだぞ!」

 

 よし、決めたぞ! そして、その決意を言う。

 

「そいつを見つけて、目的を台無しにして、『弓と矢』を破壊するぞ! ここで会ったのも何かの縁! 除夜のお兄さん! 協力して!」

「…………」

 

 言葉の代わりに、俺は右手を差し出した。しんのすけは右手を伸ばし、そして握手を交わした。

 その時の俺達はまだ知らなかった。俺達の街に住む人の、そして俺達の身近にいる人の闇の存在を、まだ、分からなかった。

 

 

 

 

 二人が出会ったのと同時刻。

 路地裏で、一人の小柄でいかにも気弱そうな青年が、いかにもガラの悪そうな、そして明らかに堅気でない二人組に絡まれていた。

 堅気でないと分かるのは、片方が持っている白い粉の詰まった小さな袋。そう、麻薬だ。

 この二人は麻薬の売人。押せば楽に折れそうな奴を選び、やや強引に人目のつかない場所に引き込んだ後恐喝して、時として暴力を振るって買わせていた。

 人間は暴力に弱い。当たり前だ。特定の性癖の持ち主でない限り、好き好んで痛い想いをしたがるものか。そしてこの青年はそんな性癖の持ち主ではない。

 だから、今まで通り、今回もそうなると思っていた。

 

「買いませんよ。そんな大金持ってません」

 

 持ってたとしても買いませんが。と、真顔で口にした。それに腹を立てた男の一人は、青年の胸倉を掴み上げた。その手にはナイフが握られている。

 それでも青年は、表情を一切変えなかった。

 

「おい待てや兄ちゃん、こんな格安の栄養剤も買えないって、ちゃんと働いてるのか?」

「貴方達も真っ当な所に就職する事をお勧めします。こんな手段でしか売りつけられないなら貴方達は遅かれ早かれ冷たい鉄の檻に入れられますよ」

 

 それと――と続ける。

 

「これが本物の栄養剤だった場合、一袋十万円はどう考えてもぼったくりです」

 

 ごく常識的な事を顔を崩さず指摘した。それにより男はナイフを顔に振るった。殺すつもりは無い。傷付けて自分の今の状況を解らせる為だ。

 ナイフは振り切られた。だが、青年の顔に傷一つ付いていなかった。

 

 当然だ。ナイフの刃は『根元から消えていた』のだから。

 

 何がどうしてと思う事は無かった。青年の胸倉を掴み上げていた手が『消えた』。手首から綺麗にだ。

 支えていた物が無くなったので青年の体は地面に落ちる。青年が立ち上がると、消えていた手が何事も無いように『戻っていた』。痛みも何もない。錯覚ではなく、脈も体温もある、本物の自分の手首。

 青年は感情の無い笑顔を作り、言う。

 

「もう帰って宜しいでしょうか?」

 

 恐怖からか、矜持からかは分からないが、二人は青年に襲い掛かった。

 

 

 

 

 青年は歩きながら携帯電話を取り出し、電話を掛けた。

 

「もしもし、今言う所に重傷の方が二名いますので、救急車をお願いします」

 

 それと、と言って後ろを一瞥した。

 

「彼等麻薬の売人らしいので、警察もお願いしますね」

 

 あちこちに靴の跡があり、腕や足、肋骨が折れ、呻き声を上げて転がっている二人の売人が、そこにいた。

 

 伝え終えた後ポケットに入れ、何事も無かったかのように路地裏を出た。

 




遅れましたが、除夜の『プラネット・ルビー』に元ネタはありません。
スタンドの多くが洋楽から取られている事を知らなかった時期に命名したので。
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