クレヨンしんちゃん&ジョジョの奇妙な冒険 ハリケーンを呼ぶ 綱玉の示す路(ロード) 作:パタ百ハイ
「やはりこれでやられてくれませんか……仕方無い。覚悟を決めるとしましょう……」
「やる気か?」
「話し合いで解決する事はこっちの立場上出来ませんし、顔を見られて本名も知られましたしね……」
「逃げる気は無いみたいで安心したよ。お前には聞きたい事がある」
「合意のようですね。では場所を変えましょう。僕の能力は人目を引きやすいし、何より横槍は入れられたくない……構いませんか?」
「いいよ」
寧ろ願ったりだ。俺の能力も人目につきやすい。
★
通学路から少し離れた公園に入る。平日で朝だから人はいない。
一応学校には遅刻すると連絡して、須藤と向き合い、『プラネット・ルビー』を発現する。
「さて、やるか……」
正直、俺は『プラネット・ルビー』を喧嘩で使った事は無い。だが、純粋な拳でそれなりの太さの木を折る事は出来るし、スピードは自信がある。
生身の拳を握り締めると、須藤は開いた掌を前に出した。
「何のつもりだ? 降参?」
「とんでもない。ただ、僕に何か尋ねたい事があるのですよね? それを今の内に聞いておかなくていいのですか?」
「それをお前を倒した後聞き出すつもりなんだが」
「『逆の結果になってしまったら』? または『その通りの結果になっても僕が喋る事が出来ない状態になってしまったら』?」
言いたい事は分かった。確かにそうなるかも知れない。そうなったらこいつからの情報は得られなくなる可能性大だ。確実なチャンスが目の前にあるならそれに手を伸ばした方がいい。
意図は分からないが、乗ってやろう。
「質問いいか?」
「……何なりと」
「じゃあ、お前がさっき言った『スタンド』って何だ?」
この質問をすると、奴はずっこけた。
「そのリアクションは何だよ!」
「信じられないからですよ! 君自分の『能力』自覚して長いんでしょ?」
「物心ついた時から」
「調べた事無かったんですか?」
「見える奴なら分別ついてきた小学生の頃捜した事あるんだけどいなかった。で、自分しか持ってないんだと結論付けた」
「……色々言いたい事はありますが不毛な言い争いになるのが目に見えてますのでやめておきます」
そんな事言って頭を抑え、溜息を吐いた。
そして咳払いして説明を始めてくれた。
「『スタンド』は、僕や君のような能力の総称を言います。『スタンド』はどういう存在なのか――言わば『精神力』、『生命エネルギー』そのもの。それを具現化し、使役する事の出来る者を『スタンド使い』と呼びます。スタンドを主とするなら『本体』という呼び方もありますが使う事が多いのは圧倒的に前者の方ですね。そして、精神力であるスタンドは基本的に『スタンド使い』にしか見えないという特徴があります」
「あー成程」
『プラネット・ルビー』が見える奴が昨日しんのすけに出会うまでいなかったのは、単純にそれまで会った人間に『スタンド使い』がいなかったからか。
終わったようなので一番気になった点を聞いた。
「何でお前は俺を『標的』にする? その写真は何処から手に入れたんだ?」
「……僕が『ある男』に出会った所からお話をした方が宜しいですかね」
その単語を聞いてしんのすけの話を思い出したが、それを口にするのは今は堪えた。
「もう5ヶ月以上前の事です。バイトを終えて家に帰るとその男がいましてね……僕は突然彼が持っていた『弓と矢』で攻撃されたんです。それで『スタンド』が身に付きました。僕の『スタンド』関連の知識はその際に彼から教わって、後は独力で調べた物です」
「…………」
「暫くは接触は無かったのですが、二週間前に突然電話が来て、電話で「瀬上除夜を倒して欲しい。生死は問わない」と依頼されました。依頼料は振込で20万、成功報酬一千万。写真は投函受けに入っていました」
「それで俺の事を調べて発見して偶然装って接触してこうしてきたと?」
「調べていたのは認めますが接触は偶然です」
「そいつに言われたから俺を襲うつもりだったのか? 何でか分からず金目当てで?」
「僕は仙人ではないのですから霞を食べて生きているのではありません。それに彼、『ここ最近起こる妙な事件の数々は瀬上除夜が元凶』『瀬上除夜をどうにか倒す為の仲間を作るべくこの行いをしている』と仰ってました。勿論鵜呑みにはしておりませんがこうして名指しな以上可能性はありますので。ご理解いただけましたでしょうか?」
「ああ」
沢山分かった。
俺を「生死問わず」――最悪殺す為にそいつはスタンド使いを生み出していて、しんのすけ達はそれに巻き込まれた事も。
春日部で起こる『妙な事件』が、『スタンド使い』による犯行だという事も、よーく分かった。
「それで……他に聞きたい事は?」
「『戦いは嫌だから退いてくれ』――と頼んでも了承してくれないよな?」
「ええ。君には暫く病院暮らしをして貰います。彼が仰った事が何処まで真実なのかは分かりませんが、依頼を承り、お金を受け取っている以上それは行わないとね」
「そうだな……それ聞いて少し安心したよ」
「安心? 何故です?」
「お前はこれから俺に対して明白な敵意を持って襲い掛かってくる訳だろ……だから、何の気兼ねも無くお前をぶちのめせると思うとな……」
「プ……ククククククク……」
俺のセリフに、須藤は吹き出し笑った。
「失敬……随分と面白い事を口になさったので堪えられず……貴方が僕をぶちのめす……自分の能力の事をろくに知らなかった貴方がね……」
須藤は自分の『スタンド』を出した。
眉間をくり抜きそこから埋め込まれた琥珀を露出させている巨大なシーラカンスの上顎骨を頭に被り、その上に耳の部分にアンモナイトが一つずつ取り付けられ、首には幾つものサメの歯を紐で通した首輪が掛けられ、背中には巨大な三葉虫、胸にはサンゴと、あちこちに化石を装備し、肘や膝には緑色のテープでテーピングされていて、目の部分からスタンドの黄色い目が覗き込んでいる、灰色を基調とした人型。それがあいつのスタンドだった。
何かする前に、俺は『プラネット・ルビー』でそのスタンドを掴もうとした。
――伸ばした右手が手首から消失した。さっきと同じ現象だ。しかも俺の手も同じ現象が起こっている。
奴の右足も膝から下が同じ様に『消えた』。直後、消えている右手から『踏みつけられたような感触と痛み』が伝わった。その後も踏み躙られているような痛みも伝わってくる。
「先程述べた通り、『スタンド』は精神力……生物の精神から生まれるものですからね。その姿形も能力も正に十人十色。実際に君の能力は僕の能力と異なるでしょう?」
自分の足と俺の手を戻す。俺の手には土が着いており、それを払った。
土――? そうか。
「お前のスタンド……もしかして、『専用の空間でも持っているのか』?」
「そう言う根拠は?」
「人間の身体が一部でも痛みとかなく消えたり現れたりする筈は無い。だが、別の場所に移動させるなら簡単だろ?」
「…………」
「つまりお前は、『専用の空間を持っていて、そこに空間の一部を持って行く能力』。さっきのお前の攻撃のタネは、持って行かれた俺の一部に、お前の一部が攻撃していた……ただそれだけの事だった」
そこまで言うと須藤は笑みを浮かべた。
「正解です。僕の『ハーレム・シャッフル』は能力射程にいる存在の一部を別空間に持って行く事が出来ます。因みに能力射程は自分を中心に半径50メートル。つまり、逃げようとしても仲間と連絡を付けようとしても容易く対処出来るという訳です」
それと――と言って続ける。
「先程君のスタンドの手首を持って行った時、君の手首も消えた事で驚いていたようですが、それはスタンドの特性によるものです。『スタンド』は『生命エネルギー』でもある。よってスタンドはスタンドでしか攻撃出来ず、スタンドが受けたダメージは本体にフィードバックし、同様のダメージが本体へ伝わるのです。つまりスタンドの死はスタンド使いの死を意味し、その逆、スタンド使いの死はスタンドの消滅を意味するのです」
「…………」
この『能力』の事を本当に何も知らなかったんだと実感出来た。
そして、こいつが『凄く親切な奴』だと分かった。
当たり障りの無い事とは言え聞いてもない事をペラペラ喋るし。さっき聞きたい事を聞いたのも、裏とか何もなくただの親切なんだろうなと、自分でもかなりズレていると自覚出来る事を思った。
元ネタはローリング・ストーンズの楽曲です。