IS インフィニット・ストラトス ~天翔ける蒼い炎~   作:若谷鶏之助

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更新が遅れて申し訳ありません。この一話を以て四章終了です。


闇は迫る、されど見えず

「ふうん、VTシステム作動ねえ……」

 

 一人の女が、パソコンのコンソールを見て呟く。顔の右半分を覆う仮面と、凶悪な眼差し。禍々しいそれらと艶やかな金髪がアンバランスな印象を与える。その女は、「なあ」とカタカタとキーボードを打つ長い黒髪の女へ声をかけた。黒髪が彩りを添える美貌の女は、何でしょうと返す。

 

「今回の一件も、またあんたの仕業なのかい?」

「まさか。あんな欠陥システム、私が使うはずないでしょう?」

 

 黒髪の女が両手を広げて言う。

 

「じゃあ、何であんなもんが仕込んであったんだ?」

「恐らくドイツの研究所あたりが仕込んだのでしょう。完成度の高い機体と、システムの負担に耐えうる強靭な肉体を持った人間があのシステムを使えばどうなるか調べたかったのではないでしょうかね」

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒはドイツが誇る戦士だ。その彼女なら、「ヴァルキリー」の能力を限定的にでも発揮できるはずだと踏んだのだろう。だが、所詮は模倣。本物には遠く及ばない。

 

「――私なら、『本物』を用意できますよ」

「……次の作戦みたいに、かい?」

 

 黒髪の女は無言で口角を上げた。仮面の女はけらけらと笑う。

 

「しっかしあんたも大盤振る舞いだねえ。無人機の実験とは言え貴重なISのコアを一個くれてやるなんてさ」

 

 以前IS学園を襲撃した無人機は、この黒髪の女性の差金だった。

 織斑を始めとするIS学園教師陣は、事件のあと無人機の解析を行い、それが無人機であること、またそのコアが今まで行方不明になっていたコアのうちの一つであることを突き止めていた。使用履歴は巧妙に削除されており、その出処を割り出すのは不可能なレベルであった。

 加えて、ISを無人で稼働させるという技術。前代未聞の技術を用いた機体は、IS学園に大きな楔を打ち込んだであろう。

 仮面の女の質問に、黒髪の女はにこりと余裕を見せる。

 

「ええ、構いません」

「そうかい?」

「はい、結局機体にならなければ意味がありませんし。それに――」

 

 ――いずれ、必要なくなりますから。

 

「……ふぅーん」

 

 食えないね、といった表情の仮面の女。

 この常に思慮深く、隙を見せない漆黒の瞳は、果たしてどこまで見通しているのか――。

 

「ふふ、これからが楽しみです。……ねえ、『幸せ狩りの魔女(フォーチュン・キラー)?』」

「……ああ、そうだね」

 

 にい、と仮面の女――「幸せ狩りの魔女(フォーチュン・キラー)」が嗤う。彼らの脳裏に浮かぶのは、ただ一人だった。

 

 ――天羽、翔。

 




五章は12月1日(火)投稿開始です。
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