それでは、どうぞ。
NO.1
胸元に八枚の花弁をデザインしたエンブレムをつけた
第一高校の真新しい制服に身を包み
まるで、昔の事を思い出すかのように、謙吾は、桜を見ながら歩いていた。
(桜なんて、見るの久しぶりだな、やっぱり入学式には、必要不可欠だよな)
なんて、呑気な事を考えていると校門に着いた。
時計を確認するとちょうど入学式の一時間前だ。
謙吾は、 来るのが早かったか? と思ったりもしたがそうでもなかったようだ。
同じ中学なのだろう、女子生徒同士が仲良く話していたり
両親と共に校舎を眺めながら歩いている男子生徒もいた。
だが、その中にチラホラ心無し肩身を狭そうに歩いている生徒もいた。
(ニ科生か・・・・・・)
魔法科高校には、二種類の生徒がいる。
一方は、一科生。胸元にエンブレムのついている制服を着ており、学年二百人中、上位百人が該当する。
もう一方は、ニ科生。胸元にエンブレムのついていない制服を着ており、学年二百人中、下位百人が該当する。
そして、このように外見で、ハッキリと優劣が分かると生じるのが差別だ。
建前としては、禁止されているが、半ば公然たる蔑称として、ニ科生の事を胸元にエンブレムがないため「雑草」
つまり「ウィード」と、呼んでいる。
対して、一科生は、胸元にあるエンブレムを意匠して、
「ブルーム」と、呼んでいる。
一度、定着した差別意識を取り除く事は、容易ではない。
そして、厄介なのは、差別されている側がその事を受け入れている事だ。
事実、ニ科生は、自らの事を 「スペア」 として受け入れている。差別意識が最も強いのは、差別を受けている側なのかもしれない。
そんなことに思いを巡らせながら、敷地内を散策していた。
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しばらく、するとベンチに腰掛けて端末を熱心に見ている男子生徒が目に留まった。
ニ科生であったが、謙吾は傭兵生活が長かったおかげで、魔法そのものに価値があるのではなく、様々な状況でどれほど使えるかという事に価値があると思っていたので
学校が勝手に決めた区分に価値を見出せなかった。
まぁ、こんな考え方は実戦経験のある者にしか分らないだろうが・・・・・・
「スクリーン型か、珍しいな」
謙吾は、その男子生徒と旧知の仲のような口調で話しかけた。
「読書には、仮想型は不向きだからな
長い間スクリーン型ばかり使っているから今更変えようとは、思わないんだ。」
男子生徒は、いきなり声をかけられのに驚く事もなく、返答した。
(こいつかなり出来るな 、普通の人間だったら気づかないぞ。訓練を受けているのは、明らかだな)
謙吾は、気軽な挨拶とは裏腹に、物騒な事を考えていた。
だが、それは声をかけられた男子生徒も同じだった。
(いくら、熱中してたとはいえあの距離でやっと気づくなんてナンバーズか?しかも、ブルームでありながらウィードに声をかけるなんて変わっているし 一体何者なんだ?)
互いにそんな事を考えていると、謙吾が先に話題を切り出した。
「自己紹介がまだだったな。俺の名前は、中津謙吾 っていうんだ、謙吾で良いぜ。よろしくな」
「司波達也だ。俺も、達也でいい。よろしく」
(ナンバーズではないのか。だとしたら、余計に怪しいな。俺と同じ偽名の可能性もあるな。師匠に、調べてもらうとするか)
達也は、そんな事を考えながらも、謙吾の質問に答えていた。
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世間話に花を咲かせていると、不意に女子生徒に声をかけられた。
「新入生ですね?開場の時間ですよ」
声をかけてきた女子生徒には、幅広のブレスレットタイプの最新型のCADが、左腕に巻かれていた。
達也は、直ぐに気が付いた。
(学内でCADを携帯出来るのは、生徒会の役員か、特定の委員会のメンバーだけだったはずだ)
一方謙吾は、
(こんな笑顔で、話しかけられたら勘違いする男子生徒いるんじゃないのか?)
と、人間観察していた。
「あっ、申し遅れました。私は第一高校の生徒会長を務めています、七草真由美です。ななくさ、と書いて、さえぐさ、と読みます。
よろしくね」
最後にウインクが添えられても不思議のない口調だった。
(この人絶対、素じゃないだろ。遊んでるなこれは
しかも、「七草」かよ。初日から大物に会ったな)
と、謙吾は会釈しながら考えていた。
「自分は、司波達也です」
達也が先に挨拶した。
「こちらこそ初めまして生徒会長。中津謙吾です」
続いて、謙吾が挨拶をした。
「司波達也くんに中津謙吾くんか・・・・・・
職員室で話題の二人に、会えるなんてラッキーね」
「司波くんは、入学試験で七強化平均、百点満点中九十六点の前代未聞の高得点。
中津くんは、実技試験で壊れているCADを動かした膨大なサイオン量を持っており筆記試験では、達也くんに次ぐ第二位。本当に、二人とも凄いわね」
「謙吾はともかく、自分はペーパーテストだけです。情報システムの中だけの話しですよ」
「いや、達也の点数も大概だと思うぞ!俺の実技試験だって動かしただけであまりたいしたことないぞ」
と二人で、言いあっていると
真由美が何かを思い出したかのように
「アッッ!、もうこんな時間、二人とも会場に急いで!」
二人は、真由美に背中を押されながら会場へと急いだ。
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会場に着くと、真由美は、じゃあここで、と言って別れた。
達也が、後ろに座ろうと歩いていくと謙吾も一緒にきた。
「謙吾、前に行かなくていいのか?」
「今更、前行っても目立つから止めとくわ」
達也は、わかった、と言ってちょうど二人分空いている席があったので達也が奥に、謙吾が通路側に座った。
すると、達也の隣の女子生徒が声をかけてきた。
「あたしは、千葉エリカっていうの、よろしくね」
「司波達也だ。こちらこそよろしく」
「中津謙吾です。どうぞよろしく」
と、二人も挨拶をした。
そして、三人でたわいない話しをしていると式が始まりそうだったため三人とも口を閉ざした。
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式は、無事終了し、クラス発表があり達也とエリカは、同じクラスになった。謙吾は、A組になった。
その後、新入生総代が達也の妹という驚きもあったが無事に、謙吾は高校生活初日を終えることが出来た。
(今日は、中々楽しかったぁ。明日以降も、楽しんでいこうっと)
謙吾は、軽い足取りで帰宅した。
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まだ、少し肌寒い早朝に、達也と深雪は何故か、寺にいた。
「師匠おはようございます」
そう達也が挨拶をすると深雪も続けて挨拶をした。
達也に、師匠と呼ばれた人物は、九重八雲、という「忍び」だ。一般的には、「忍術使い」と呼ばれている。
「達也くん、深雪くんおはよう。それが、第一高校の制服かい?二人とも、よく似合ってるよ。
特に、深雪くんは・・・いいねぇ」
と、感想を述べた。しばらくは、たわいない話しをしていたが、達也が本題を切り出した。
「師匠、中津謙吾、という人物をご存知ですか?」
「いや、知らないよ。誰なんだい?」
「お兄様、中津謙吾、といえば私と同じクラスで
お兄様と入学式の時に、一緒いた方ですよね?」
「そうだ、ナンバーズじゃないのにも関わらず、俺がベンチで端末に集中していたとはいえ、1メートル程近づいてきてやっと気が付いたんだ」
「ッッッ⁉︎」
達也の言葉に、深雪は息を飲まざるおえなかった。
達也は、特務兵ではあるが軍に所属し「忍者使い」九重八雲から教えを受けているのだから、ただの高校生ではない。そんな達也が、気がつかなかったのだから謙吾も、唯の高校生であるはずがない。
この達也の発言に九重八雲も目を細めた。
「確かに、それはかなり興味深いね。わかった、此方でも調べておくよ。達也くんの実家にも知らせるのかい?」
「はい、一応知らせておこうと思います。何かあってからでは、遅いので」
達也は、真剣な眼差しで言った。
その話の後は、学校もあるので達也たちは帰宅した。
(中津謙吾かぁ、まだ、確証はないけどひょっとするとひょっとするかもしれないねぇ)
八雲は、そんなことを思いながら、朝日に当てられた境内の桜を眺めていた。太陽が先程よりも高くなり太陽の光が当たっていなかった花びらを照らす様は、スポットライトの当たっている役者のようだった。
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登校したばかりの教室で、謙吾は端末を用いて学校の規則やイベント、カリキュラムを眺めていた。
そうしていると次第に席が埋まり始め授業の開始前には、全ての席が埋まった。
(流石に、初日から休む奴はいないか)
そんな当たり前の事を思いながら、人生で初めて授業を受け始めた。
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午前の授業が終わり何処で昼食を食べるか考えていると
端末に着信が入った。達也からだった。
[食堂で、昼食一緒に食べないか?]
謙吾は、直ぐに、了解、と返し食堂へと向かった。
食堂に向かうと、沢山の生徒でごった返していた。少し大きめのテーブルに、エリカとクラスメイトらしき二人と座っている達也を見つけた。
「ヨッ、達也とエリカ」
「来たか謙吾、こっちだ」
「アッ、中津くん入学式以来だね〜」
席に着きエリカと談笑していると、
「達也、紹介してくれよ」
「あっ、悪い悪い。謙吾とは、入学式の前に知り合ったんだ」
「中津謙吾です。エリカと達也しか知っている人いないから困ってたんだ。よろしくな」
「西条レオンハルトだ。こっちこそよろしくな」
「柴田美月です。よろしくお願いします」
互いに自己紹介を済ませると昼食を食べ始めた。しばらくすると、男子女子のクラスメイトに囲まれて食堂に到着した深雪が、達也を見つけて急ぎ足で寄ってきた。
そこで、一悶着あった。
空いている席が、一つしかないが深雪は迷わず座った。
しかし、深雪との相席を狙っていたクラスメイト、特に男子生徒は、当然、面白くなさそうな顔をした。
最初は、邪魔しちゃ悪いとかオブラートに包んだ表現だったが、段々イライラしてきたのか仕舞いには、
謙吾に矛先が向き、一科生なのだからニ科生と相席するのは相応しくないなど一科とニ科のケジメだの、
とんでもないことをべらべらと話す一科生に、呆れて物もいえず
達也達に目配せして、早々に食堂を後にした。
「みんな、本当にごめん。折角楽しい食事やったのに・・・・・・」
「気にするな、謙吾が責任を感じる必要はない」
「そうそう、同じ一科生だからって中津くんが謝ることなんて、ないない。中津くんは、そこらの一科生と違うって分かってるから」
「そうだぜ謙吾、あれにはかなり腹が立ったけど、謙吾が気にすることねぇよ」
「そうです。中津くん、気にすることありません」
「ありがとうみんな、じゃあ、また放課後」
謙吾は、そう言い彼らとは、違う方向へ歩いって行った。
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放課後、教師に呼ばれたせいで、遅れた謙吾は急いでいた。
(待たせてるんだから、急がないと)
そして、校門に近づいていくと喧嘩か何かわからないが言い争っている声が、聞こえてきた。
(あいつらじゃなかったらいいけど・・・)
そう思いながら急いだ。
だが、悪い予感が当たってしまった。
状況的には、美月と謙吾のクラスメイトが言い争っていた。周りには、徐々に野次馬が来つつある。
「いい加減諦めたらどうなんですか?深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挿むことじゃないでしょう?」
ヒートアップした美月は、更に言葉を続けた。
「別に深雪さんはあなたたちを邪魔者扱いしてないじゃないですか。一緒に帰りたかったらついて来ればいいんです。なんの権利があって二人の仲を引き裂こうとするんですか‼︎」
と、丁寧な物腰ながら、容赦なく正論を叩きつけた。
(仲を引き裂く、って何かズレていないか?もう、それは兄妹の仲じゃなくて恋人の仲だろ。まぁ、あの二人なら強ち間違いじゃないかもな)
と内心、謙吾は毒づいていた。
そうこうしている内に、ますますヒートアップしていた。
「僕たちは彼女に相談することがあるんだ!だから、邪魔するな‼︎」
その言葉に対してエリカが皮肉成分たっぷりの笑顔と口調で言い返す。
「相談だったら予め本人の同意をとってからにしたら?
深雪の意思を無視して相談も何もあったもんじゃないの。それが、ルールなの。高校生になって、そんなことも知らないの?」
エリカの言葉に、言い返せなかった男子生徒の一人が切れた。
「うるさい!ウィードごときが、僕たちブルームに口出しするな‼︎早く、ウィードはどっか行け‼︎」
その言葉に、その通りだ、と言わんばかりに謙吾のクラスメイトは頷いていた。
この暴言に真っ向から反応したのは、美月だった。
「同じ新入生じゃないですか。あなたたちブルームが、今の時点で一体どれほど優れているというんですかっ?」
美月の声は、決して大声で言ったわけでもないのに、響いた。
謙吾にとっては、今の美月の言葉が、学校に蔓延している何かを代弁しているように感じた。
そして、道理が美月にある。だからこそ、言われた側にしてみれば感情的に反発する以外、美月の言葉に反発しようがない。
「・・・・・ッッ‼︎、どれだけ優れているか教えてやるよ‼︎」
その言葉と同時に、男子生徒がCADを取り出した。
「特化型っ?」
特化型は、その性質上攻撃的な魔法の起動式が格納されている事が多い。だからこそ、同じ生徒に向けられるとなれば、非常事態だ。
(おいおい、流石に洒落にならんぞ!あれは、止めなきゃまずいな。下手したらあいつら全員罰則やぞ!
止めなあかんのは、分かってるけどこんなに人がいる所で使うわけにはいかんぞ、でもいざとなったら・・・)
特化型CADが、レオに突きつけられた。
だが、起動式が展開されることはなかった。
突如、背後に現れた人物に組み伏せられ、体が地面に押さえつけられているからである。
「オイ、森崎。オマエ、今の行動は犯罪とわかっていてやったんだよなァ?警備を仕事としている森崎家の人間が、自衛目的以外で魔法を行使すればどうなるか知らないわけじゃないだろう?」
「ッッッ‼︎」
謙吾の問いに森崎は、答えることが出来なかった。
謙吾の言葉は、まるで別人が話したかのように、冷たく重いものだった。
今、謙吾が用いたのは、瞳術の一種である。
[天手力]
これを用いて森崎の背後の空間と自分の空間を入れ替えたのだ。
ここで、六津家の話をしておこう。六津家では、一般的には知られていないが本当は古式魔法の家だ。大量のサイオン量を持つのは、瞳術の副産物だ。瞳術というのは、ある特定の割合でサイオンとプシオンを同時に扱うことで、使うことができる。だが、これがとても難しく扱うことが出来るには、才能に依存する部分が大きい。
だから、初代六津家当主は強力な瞳術を使うことが出来たがそれ以降は、それほど強力な瞳術を使うことが出来た者は殆どいない。
そして、現代。最早、魔法の存在が証明された今使いにくい瞳術は必要とされなくなった。
この事実は、六津家以外では極少数の人間しか知らない。
一方で達也は、驚愕の眼差しで謙吾を見ていた。なぜなら、自分が全く気がつかなかったのだ。
(これは、早急に調べる必要がありそうだな)
達也は、そう心に決めた。そして、明らかに高校生では出来ない目付きをしていた。
読んでいただきありがとうございます。
瞳術に関してはまた変えるかもしれません。
もし何かありましたら、お願いします。