傭兵上がりの高校生   作:小林輝昭

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こんにちは。
入学編二話目です。
それでは、どうぞ!!


NO.2

謙吾の周りの人間が呆然としている中、謙吾のクラスの女子生徒がまた、起動式を展開し始めた。だが、発動される事はなかった。

なぜなら、女子生徒のCADが展開中だった起動式が、サイオンの弾丸によって砕け散っていた。

「止めなさい! 自衛目的以外の魔法による対人攻撃は、校則違反である以前に、犯罪行為ですよ!」

起動式のみ破壊し術者本人には何のダメージも与えない精緻な照準と出力制御は、射手の並々ならぬ技量を示している。

声の主の姿を認めて、攻撃しようとしていた女子生徒は、魔法によるもの以外の衝撃で蒼白となった。よろめいたその女子生徒の背中を、別の女子生徒が抱き留めている。

 警告を発し、サイオン弾で魔法の発動を阻止したのは、生徒会長・七草真由美だった。

真由美の隣にいた、女子生徒が口を開いた。

「貴方たち、1ーAと1ーEの生徒ね。事情を聞きます。ついて来なさい」

冷たい、と評されても仕方のない、硬質な声でこう命じたのは、風紀委員長、渡辺摩利という名の三年生だ。

レオも、美月も、謙吾のクラスメイトも、言葉なく、硬直している。

謙吾は、既に森崎の拘束を止めており二人とも立っている状態だ。

他の者が、固まっている中謙吾は

(うわー、最悪。寄りにもよってこの二人かよ。完全にババくじやろ。さて、どうしたものか・・・・)

そんな事を考えていると、達也が摩利の前へ歩み出た。

「すみません、悪ふざけが過ぎました」

「悪ふざけ?」

唐突に思えるそのセリフに、摩利の眉が軽く顰められる。

「はい。森崎一門のクイックドロウは有名ですから、後学の為に見せてもらうだけのつもりだったんですが、あんまり真に迫っていたもので、思わず手が出てしまいました」

他の一年生も絶句していた。

「ではその後に1ーAの女子が攻撃性の魔法を発動しようとしていたのはどうしてだ?」

「驚いたんでしょう。条件反射で起動プロセスを実行できるとは、さすが一科生ですね」

真面目くさった表情で答えていたが、その声は何処と無く、白々しかった。

「君の友人は、魔法によって攻撃されそうになっていたわけだが、それでも悪ふざけだと主張するのかね?」

「攻撃といっても、彼女が発動しようと意図したのは目眩しの閃光魔法ですから。それも、失明したり視力障碍を起こしたりする程のレベルではありませんでしたし」

(オイオイ、それって起動式を読み取ることが出来るってことか?俺と同じ事が出来るのか〜、本当に何者だ?)

摩利も同じ事を思ったらしく、

「ほぅ・・・・どうやら君は、展開された起動式を読み取ることが出来るらしいな」

と、聞いていた。

対して、達也は

「実技は苦手ですが、分析は得意です」

事も無げに、「分析」の一言で片付けた。

「・・・誤魔化すのも得意なようだ」

値踏みするような、睨みつけるような、その中間の眼差し。

  矢面に立っていた兄を庇う様に、深雪が進み出る。

「兄の申したとおり、本当に、ちょっとした行き違いだったんです。先輩方のお手を煩わせてしまい、申し訳ありませんでした」

こちらは微塵の小細工もなく、真正面から深々と頭を下げられて、毒気を抜かれた表情で摩利は目を逸らした。

「摩利、もういいじゃない。達也くん、本当にただの見学だったのよね?」

真由美の言葉に、達也は頷いた。

「生徒同士で教え合うことが禁止されているわけではありませんが、魔法の行使には、起動するだけでも細かな制限があります。このことは一学期の内に授業で教わる内容です。魔法の発動を伴う自主活動は、それまで控えた方がいいでしょうね」

真由美の言葉に、慌てて姿勢を正し、一斉に謙吾達は頭を下げた。

(良かった〜、達也の異常性の方に目がいって俺の事については言及はないな)

と、思っていると真由美が何かを思い出しかのように

「それはそうと、謙吾くん。さっきのは何?」

と、微笑みながら聞いてきた。

「エッ?さっきのとは、何ですか?」

「ほら、さっき森崎くんの後ろに移動していたでしょ?」

謙吾は、内心舌打ちしたい気分だった。だが、何とか飲み込んで答えた。

「自己加速術式を起動しただけですよ」

「ふ〜ん、まぁ良いわ。そういうことにしといてあげる」

と、玩具を見つけたような悪い笑みを浮かべていた。

その後、摩利が形式を意識した言葉遣いで審判を下した。

「・・・会長がこう仰られていることでもあるし、今回は不問にします。以後このようなことのないように」

そう言った後、摩利は踵を返した。

が、一歩踏み出した所で足を止め、背中を向けたまま問いかけを発した。

「君達二人の名前は?」

「1年E組、司波達也です」

「1年A組、中津謙吾です」

「覚えておこう」

そう言って、摩利達は歩いて行った。

その後、また森崎が達也に、突っ掛かって行くというイベントがあったが無事に帰宅する事が出来た。

 

 

謙吾達の喧嘩?を止めた摩利達は校舎へ歩いていた。

「なぁ、真由美。あいつらどう思う?」

「二人ともかなり異質だわ。二人とも、ナンバーズですらない。これは、ちょっと注意しといた方が良いわね」

「同感だ。私の方でも、気に掛けておくよ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

次の日、最初の授業を受ける直前端末に、着信が入った。

見てみると、真由美からだった。しかも、ご丁寧に必読とすら書いてある。

読んでみると

[昼休み、生徒会室に来て下さい]

と、書いてあった。

とりあえず、

[わかりました。お伺いします]

と、返信しておいた。

 

昼休み呼ばれた通り生徒会室を訪ねた。

ノックをすると、インターホンのスピーカーから歓迎の辞が返された。

中に入ると

「えっ、達也と深雪?」

と、言うと

「謙吾も呼ばれたのか」

「こんにちは。中津くん」

達也と深雪が、返してきた。

すると、真由美から

「いらっしゃい、謙吾くん。達也くんの隣に座ってくれるかしら?」

「わかりました」

そう、座ると向かいにいる女子生徒が話しかけてきた。

「お肉とお魚と精進、どれがいいですか?」

驚くことに、自配機がありしかも、メニューも複数あるみたいだ。だが、弁当をいつも持参しているので断っておいた。

そして、真由美から生徒会の紹介があった。

「入学式でも、紹介しましたけど、念のためもう一度紹介しておきますね。私の隣が会計の市原鈴音、通称リンちゃん」

「・・・私のことをそう呼ぶのは会長だけです」

整ってはいるが顔の各パーツがきつめの印象で、背が高く手足も長い鈴音は、美少女というより美人と表現する方が相応しい容姿の女の子だ。

「その隣は知っていますね?風紀委員長の渡辺摩利」

会話が成り立っていないが、誰も気にしている様子がないのでいつものことなのだろう。

「それから書記の中条あずさ、通称あーちゃん」

「・・・会長、お願いですから下級生の前で『あーちゃん』は止めて下さい。私にも、立場というものがあります」

彼女は真由美よりさらに小柄な上童顔で、本人にそのつもりがなくても上目遣いの潤んだ瞳は、拗ねて今にも泣き出しそうな顔をしている。

「もう一人、副会長のはんぞーくんを加えたメンバーが、今期の生徒会役員です」

「私は違うがね」

「そうね、摩利は別だけど。あっ、準備ができたようです」

 

謙吾達と真由美たちの間に、共通の話題は無いに等しい。

だから、会話は自然と今食べている料理になる。

すると、深雪が

「中津くんのそのお弁当は、誰がお作りになったんですか?」

と、尋ねてきた。

「自分で作ったんだ。一人暮らしだから、食費節約する必要あるし」

と、言うと

「えっ、謙吾くん、凄いわね。男の子で家庭料理が其処まで出来る子は、希少価値よ」

と、真由美が感心していた。

「私たちも、明日からお弁当にいたしましょうか?」

「深雪の弁当は魅力的だが、食べる場所がね・・・」

「あっそうですね・・・それを探さなければ・・・」

二人の会話の空気は、年頃の異性の肉親同士にしては、少ししたしすぎるものに見える。

 「・・・まるで恋人同士の会話ですね」

 鈴音がにこりとも笑わず、爆弾発言を投下した。

 「そうですか?血のつながりがなければ恋人にしたい、と考えたことはありますが」

 達也の言葉に、深雪は目をきらきらさせ、あずさは顔を真っ赤にして、鈴音と摩利はばつがわるそうに目をそらし、真由美はほんのり頬を赤らめている。

 一方、謙吾は

 「そうか・・・、法律に喧嘩を売るか~。だが、達也!俺は、二人の恋を応援するぞ!!」

 そういうと、達也は

 「冗談だ。謙吾が、便乗するとややこしくなる。見てみろ、中条先輩の顔真っ赤じゃないか」

 あずさの顔を見ると確かにゆでダコのように真っ赤である。

 

 

 全員の食事が終わると、真由美がフォーマルな口調に戻し話し始めた。

 「そろそろ、本題にはいりましょうか」

 深雪、達也、謙吾が頷いた。

 「当校は生徒の自治を重視しており、生徒会は学内で大きな権限を与えられています。これは当校だけでなく、公立高校では一般的な傾向です。そして、当校の生徒会は伝統的に、生徒会長に権限が集められています。

  生徒会長は選挙で選ばれますが、他の役員は生徒会長が選任します。解任も生徒会長の一存に委ねられています。各委員会の委員長も一部を除いて会長に任命権があります」

 すると、摩利が口をひらいた。

 「私が、務める風紀委員長はその例外だ。生徒会、部活連、教職員会の三者が三名ずつ選任する風紀委員の互選で選ばれる」

 「さて、この仕組み上、生徒会長には任期が定められていますが、他の役員には任期の定めがありません。

  生徒会長の任期は十月一日から翌年九月三十日まで。その期間中、生徒会長は役員を自由に任命できます」 

 謙吾は

 (会長、前ふり長過ぎ!!早く本題はいってくださいよ~)

 と、内心毒づいていた。

 「深雪さん、私は、貴女が生徒会に入ってくださることを希望します。

  引き受けていただけますか?」

 一呼吸、深雪は手元にめを落とし、達也へと振り向いて眼差しで問いかけた。

 達也はその背中を押す意思を込めて、小さく頷いた。

 再び俯き、顔をあげた深雪は、なぜか、思いつめた瞳をしていた。

 「会長は、兄の成績をご存知ですか?」

 「っっっっっ!?」

 全く予想外の展開に達也は驚いていた。

 謙吾は

 (ほんとに、達也至上主義だなぁ)

 と、思いこれからの展開がどうなるか楽しみに見ていた。

 「ええ、知っていますよ。すごいですよねぇ・・・ 

  正直に言いますと、先生にこっそり答案を見せてもらった時は、自信をなくしました」 

 と、達也だけでなく謙吾のほうも向いて意味ありげに微笑んだ。

 「・・・成績優秀者、有能の人材を生徒会に迎え入れるのなら、わたしよりも兄の方がふさわしいと思います」

 深雪の瞳は、まっすぐ真由美を見ていた。 

 だが、口を開いたのは鈴音だった。

 「それは、できません。生徒会の役員は第一科の生徒から選ばれます。これは不文律ではなく、規則です。

  この規則は生徒会長に与えられた任命権に課せられる唯一の制限事項として、生徒会の制度が現在のものとなった時に定められたもので、これを覆す為には全校生徒の参加する生徒総会で制度の改定が決議される必要があります。決議に必要な票数は在校生徒数の三分の二以上ですから、一科生と二科生がほぼ同数の現状では、制度改定は事実上不可能です」

 淡々と、どちらかと言えばすまなさそうに、鈴音が告げる。

 「・・・申し訳ありませんでした。分を弁えぬ差し出口、お許しください」

 深雪は、深々と頭を下げた。

 「ええと、それでは、深雪さんには書記として、今期の生徒会に加わっていただくということでよろしいですね?」

 「はい、精一杯務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします」

 その言葉に真由美は満面の笑みで頷いた。

 「では、もし差し支えなければ、今日の放課後から来ていただいてもいいですか?」

 「分かりました。放課後は、こちらにうかがいましたらよろしいでしょうか?」

 「ええ、お待ちしていますよ。深雪さん」

 こうして、深雪の生徒会長入りが決まった。

 

 

 摩利が、謙吾の方を向いて口をひらいた。

 「中津きみには、生徒会選任枠、前年度卒業生の二枠のうちの一枠で入ってもらいたいと思っている。 

  君には、是非とも入ってほしいんだが、どうだ?」

 「具体的の仕事内容をお聞かせください」

 と、謙吾が言うと摩利は苦笑いを浮かべながら答えた。

 「すまん、すっかり失念していたよ。やはり、私はどうも人に説明することが苦手だ。

  じゃあ、説明するぞ。主な仕事は、魔法使用に関する校則違反者の摘発と、魔法を使用した争乱行為のとりしまりだ」

 説明にしては簡潔過ぎないか、と謙吾は思ったが流石に口に出すことはなかった。

 「わかりました。お受けします」

 「ありがとう。歓迎するよ」

 こうして、謙吾の風紀委員会入りがきまった。

 

 もう終わりかと誰もが思った時、謙吾が不意に口を開いた。

 「あの~会長いいですか?」

 「なんでしょう?」

 「生徒会役員で、一科生の縛りがあるのは、副会長、書記、会計だけですよね?」

 「ええ、そうよ。それがどうかした?」

 その言葉を聞いた謙吾は悪い笑みをうかべた。

 「いえ、確認したいことがあっただけです。

  なら、風紀委員の生徒会枠に、二科生を選んでも問題ないですよね?」

 達也は、しまった、と思ったがもうおそかった。

 「僭越ながら会長、私はここにいる司波達也くんをもう一人の風紀委員に推薦します!!」

 その言葉に、当初困惑していた真由美だったがだんだん悪い笑みお浮かべはじめ

 「摩利、生徒会は司波達也くんを風紀委員に指名します」

 いきなり過ぎる展開に達也は動転したが、一瞬だった。

 「ちょっと待ってください!俺の意思はどうなるんですか?」

 その言葉に、謙吾は

 「意思って達也ぁ・・・。大事な、大事な妹があんなに達也のことを生徒会に入れようとしてくれたんだから、

  兄として男として、せめて風紀委員に入ってもバチは当たらないんじゃないのか?」

 と、いたって真面目な顔でいっていたが、目は完全に笑っていた。

 深雪は、きらきらとした顔で達也をみている。

 この顔に、重度のシスコンな達也が逆らえるはずもなく

 「・・・わかりました。お受けします」

 と、力なく答えた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 その日の晩、ある家に電話が入った。

 「お久しぶりです」

 「あぁ、久しぶりだな。元気にしているか?」

 「ええ、御陰様でいい高校生活を送らせていただいています」

 その言葉に、画面の中の男は満足げに頷いた。

 「では、本題に入るとするか。正式に陸軍101旅団・独立魔装大隊に配属になった。だが、以前と任務内容はさほど変わらないので、いつもの部屋に来週出頭するように。そこで、一部の隊員の顔合わせしてもらう」

 と、画面の男は告げた。

 「分かりました。来週、出頭します」

 「では、よろしく頼む」

 画面の前の少年に、似つかわしくない話が行われていた。

  

 

 

 

 

 

 




連絡事項です。
当初ヒロインは、第一高校にいない、としていたんですが変更します。
原作の人間関係をできる限り壊さずに書きたいと思っているので、原作の展開に柔軟な対応できるようにするためです。
平にご容赦ください。

それでは、次回もお楽しみに。
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