傭兵上がりの高校生   作:小林輝昭

4 / 8
皆さまどうお過ごしでしょうか?
体調にはお気をつけください。
では、どうぞ。



NO.3

第一高校にも、クラブ活動はある。

 ただ、魔法と密接なかかわりを持つ、魔法科高校ならではのクラブ活動も多い。

 メジャーな魔法競技では、第一から第九まである国立魔法大学の付属高校の間で対抗戦も行われ、その成績が各校間の評価の高低にも反映される傾向にある。九校戦と呼ばれるこの対抗戦に優秀な成績を収めたクラブには、クラブの予算からそこに所属する生徒個人の評価に至るまで、様々な便宜が与えられている。

 有力な新入部員の獲得競争は、各部の勢力図に直接影響をもたらす重要課題であり、学校もそれを公認、いや、むしろ後押ししている感もある。

 かくして、この時期、各クラブの新人部員獲得合戦は、熾烈を極める。

 

 「・・・というわけで、この時期は各部間のトラブルが多発するんだよ」

 場所は生徒会室。

 謙吾は、生徒会室で食べている。

 クラスメイトと食堂で食べようと思っていたのだが、達也に強制的に連れて行かれたのだ。

 深雪と共に生徒会室で食べるように言われたらしいのだが、メンバーが摩利、真由美だったため流石に男一人では居づらいので謙吾を連れてきたわけだ。

 さきほどから、風紀委員の仕事の大変さを摩利が説明していた。

 「勧誘が激しすぎて授業に支障をきたすことも。それで、新入生勧誘活動には一定期間、具体的には今日から一週間という期間を設けているの」

 と、摩利の隣に座っている真由美が言った。

 鈴音とあずさはいない。先日は真由美が声をかけていたからで、あの二人は普段、クラスメイトとお昼を食べているらしい。

 なお、摩利と謙吾は相変わらず自作弁当。司波兄妹も、深雪の作った弁当だ。一人だけダイニングサーバーの機械調理メニューを食べることになった真由美はかなりへそを曲げていたが、ようやく機嫌が直ったらしい。明日からは、自分もお弁当を作ってくる、と張り切っていた。

 「この期間は各部が一斉に勧誘のテントを出すからな。ちょっとしたどころじゃないお祭り騒ぎだ。

  密かに出回っている入試成績リストの上位者や、競技実績のある新入生は各部で取り合いにある。

  無論、表向きはルールがあるし、違反したクラブには部員連帯責任の罰則もあるが、蔭では殴り合いや魔法の打ち合いや魔法の打ち合いになることも、残念ながら珍しくない」

「そんなに危なくなるなら、どうして学校は期間中のCADの携行を禁止しないんですか?」

謙吾は、何故学校がこのような事を放置しているか分からなかった。その質問に真由美が苦笑いを浮かべながら答えた。

「う〜んとね、言い難いんだけど・・・、学校としても九校戦の成績を上げて貰いたいから、新入生の入部率を上げる為か、多少のルール破りは黙認しているのよ」

「そうなんですか。まぁ、学校側も黙認しているなら仕方ないですね。でも、そのしわ寄せが風紀委員にくるんですよね・・・」

俺が言うと、摩利が嬉しそうに

「そうなんだよ。本当に今年は幸運だ。なんせ欠員補充が間に合ったんだからな!」

謙吾は今更ながらに、入らなければ良かったと思った。

 

 

午後の授業が終わり放課後になった。放課後は、昼休み摩利から風紀委員会本部に来るように言われている。道中で達也と会ったので談笑しながら本部へ向かった。

本部に入ると来るのが早かったのか来ているのは、少なかった。摩利に言われた席に座って待っていると入ってきた少年が、急に大きな声を上げた。

「なんで、お前がいるんだぁ!」

森崎だった。達也に向かって噛み付かんばかりの勢いだ。

達也は心底面倒くさうに

「風紀委員だからだ」

投げやり気味に答えた。

「二科のお前が出来るわけないだろ!」

と森崎一人が、ヒートアップしていると

「やかましい、新入り。ここは、風紀委員会本部だ。なら、ここに居るのは風紀委員だけだろ」

摩利の一喝に、森崎は慌てて口を噤み、更に、直立姿勢で固まった。

「申し訳ありません!」

かわいそうに森崎の顔は、緊張と恐怖感に引きつっていた。

 生徒会長、部活連会頭と並ぶ実力者の叱責は新入生には、荷が重い。生真面目な人間ほど、特に。

 「もういい、座れ」

 血の気を失い立ち尽くす一年生を前に対して、摩利は気まずい表情で着席を命じた。

 「全員揃ったな?」

 その後、二人の三年生が次々に入ってきて、室内の人数が九人になったところで、摩利が立ち上がった。

 「そのままで聞いてくれ。

  今年もまた、あのバカ騒ぎの一週間がやってきた。

  風紀委員会にとっては新年度最初の山場となる。

  この中には去年、調子に乗って大騒ぎした者も、それを鎮めようとして更に騒ぎを大きくしてくれた者もいるが、今年こそは処分者を出さずとも済むよう、気を引き締めて当たってもらいたい。

  いいか、くれぐれも風紀委員が率先して騒ぎを起こすような真似はするなよ」

 何人かがばつが悪そうにしていた。

 「幸い今年は、欠員補充が間に合った。紹介しよう。

  1ーAの森崎駿と中津謙吾、1ーEの司波達也だ。今日から早速、パトロールに加わってもらう」

 ざわめきが生じたのは、達也のクラス名を聞いたからだろう。

 「前回も説明した通り、部員争奪週間は各自単独で巡回する。 

  新入りであっても例外じゃない」

 「役に立つんですか」

 と、岡田という生徒が口を開いた。

 形式上、その言葉は謙吾達三人に向けられたものだが、達也の左胸に向けられた目線が彼の本音を語っていた。

 摩利は岡田を、うんざりした顔で見ていた

「ああ、心配するな。三人とも使えるやつだ。

  不安ならお前がついてやれ」

「やめておきます」

 嫌味な口調で岡田は返した。

 「これより、最終打ち合わせを行う。巡回要領については、前回までの打ち合わせの通り。今更反対意見はないと思うが?」

 異議なし、という雰囲気でもなかったが、積極的に反対意見をだすものもいない。

 「よろしい。では早速行動に移ってくれ。レコーダーを忘れるなよ。

  中津、司波、森崎については私から説明する。

  他の者は出動!」

 

 

「僕は、お前らとは違う。一昨日は不意をつかれたが、次はもう油断しない。お前らと僕たちの、格の違いをみせてやる」

 謙吾と達也は、そんな捨て台詞をはいて立ち去る森崎の背中を眺めていた。

 「達也も随分と好かれたものだな。あんな台詞は二次元の中だけだと思ってたよ。

  良かったな、好敵手登場おめでとう!」

 と達也をからかうと

 「ハァー、面白そうにしてるけど恐らく謙吾も入ってるぞ」

 「それはないだろ、だって彼は、一科生至上主義の人間。しかも、教室で深雪に熱い眼差し送ってるし。

  隠してるつもりやろうけどバレバレ。オモイビトのお兄さんが貴方やから余計に目障りなんだろう。

  どうする?『深雪さんを下さい』て言われたら」

 「笑えない冗談は止めろ。もう、俺は行く」

 達也は本気で嫌だったのか、強引に話を切って歩いていった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

校庭を埋め尽くすテントとテントの間に、人垣が築かれている。謙吾は、摩利の話を大袈裟な事だと思っていたが強ち間違ってなさそうだ。まだ、見回りを始めてそれほど経っていないのにもかかわらず、何件も揉め事が謙吾の周りで起きている。

謙吾は、疲れた体を休める為に体育館へ演武を見に行くことにした。すると、そこには

「達也とエリカじゃないか」

「あっ、中津くん。久しぶり〜」

エリカが手を振ってくる。

「謙吾、お前ここ担当じゃないだろ?委員長に見つかったら大変だぞ」

と、達也は呆れたように言う。

「気にするな。バレなきゃ大丈夫」

謙吾は、何の悪びれもなく堂々とサボタージュ宣言をした。

すると演武を披露している筈の場所から言い争いが聞こえてきた。

またかよ、と謙吾は思ったが目の前で起きていることを流石に無視するわけにはいかず達也とエリカと共に騒動の真っ直中へ近づいていった。

 

 

人混みを掻き分けるとそこには、対峙する男女の剣士がいた。

エリカいわく女子の方は、壬生紗耶香といい一昨年の中等部剣道大会女子の部第二位らしい。

男子の方は、一昨年の関東剣術大会中等部のチャンピオンみたいだ。どちらも実力者だ。

 「おっと、そろそろ始まるみたい」

謙吾は、レコードのスイッチを入れた。

達也はポケットに入れていた風紀委員の腕章をつけた。

桐原が口を開いた。

「心配するなよ、壬生。剣道部のデモだ、魔法は使わないでおいてやるよ」

「剣技だけであたしに敵うと思っているの?魔法に頼り切りの剣術部の桐原君が、ただ剣技のみに磨きをかける剣道部の、このあたしに」

「大きくでたな、壬生。

だったら見せてやるよ。

身体能力の限界を超えた次元で競い合う、剣術の剣技をな!」

それが、開始の合図になった。

竹刀と竹刀が激しく打ち鳴らされる。

竹と竹が打ち鳴らされる音、時折金属的な響きすら帯びる音響の暴威から、二人が交える剣撃の激しさを想像するのみ。

ー少数を除いて。

「おおおぉぉぉ」

初めて、雄叫びを上げて桐原が突進した。

両者、真っ向からの打ち下ろし。

「相打ち?」

「いや、違うね。壬生先輩の勝ちだ」

エリカの問いに、謙吾が答えた。

謙吾の言う通り、桐原の竹刀は紗耶香の左上腕を捉え、

紗耶香の竹刀は桐原の右肩に食い込んでいる。

剣道部の面々は安堵の表情を浮かべている。

いつの間にかギャラリーの最前列に来ていた、剣術部の部員たちは、苦虫を噛み潰している。

「真剣なら致命傷よ。あたしの方は骨に届いていない。素直に負けを認めなさい」

凛とした表情で勝利を宣言する紗耶香。

その言葉に、桐原は顔を歪めたが反論することはなかった。

「は、ははは・・・」

突如、桐原が虚ろな笑い声を漏らした。

「真剣なら?

壬生、真剣勝負が望みか?

だったら・・・・お望み通り、真剣で相手してやるよ」

桐原がCADを起動させ一足飛びで間合いを詰め、左手一本で竹刀を振り下ろす桐原。

紗耶香は、その一撃を受けようとはせず、大きく後方へ飛び退った。

せいぜい、かすめただけだ。

それなのに、紗耶香の胴に、細い線が走っている。

竹刀に真剣の切れ味を与えているのは、振動系・近接戦闘魔法『高周波ブレード』。

謙吾は、止めに入ろうかと思ったが達也がCADを準備し始めたので任すことにした。

再び紗耶香に向かって振り下ろされる片手剣。

その直前に、達也が割り込んだ。

CADが起動式を出力し魔法を無効化した。

見物人の中には乗り物酔いに似た症状が続出している。

そして、桐原は達也に組み伏せられていた。

 

 

剣術部が、達也に文句を言っている。「ウィードが出しゃばるな」など「壬生も同罪だろ」出るわ出るわ悪口の数々。よっぽど、二科生が風紀委員になるのが嫌なんだろう。だが、それを達也は意に介していない。

達也の淡々とした口調が癪に触るのか、遂に逆上した剣術部が後ろから急に殴りかかった。

「危ない!」

見物人の中から誰かが叫んだ。だが、達也が殴られることはなかった。

「先輩方、風紀委員の俺達が桐原先輩を黒と言ったんだ。

そして、それが正しいかを判断するのはあんたらじゃない。その辺を履き違えるなよ。俺らに喧嘩売るということは、それなりに覚悟してもらいますよ」

謙吾が、威圧しながら殴ろうとした男子生徒の腕を掴んでいたのだ。

謙吾の威圧に、身がすくんだのか威勢の良かった剣術部は沈黙してしまった。




連絡事項
諸事情により最大十一月末まで更新が遅れます。
楽しみにしていただいている方申し訳ありません。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。