友人にギルティクラウンのblu-rayを貸して貰って改めて見たのですがハレの死ぬシーンがとっても悲しかった。
ハレには生きてて欲しかった...
それではどうぞ。
昼休みの件から一週間程過ぎた。
新入部員勧誘週間が終わり新入生も学校生活に慣れて、慌ただしかった学校の雰囲気も落ち着きを取り戻した。謙吾の風紀委員会の見回りも平和そのもので特に何か起こるわけでもなかった。むしろ見回り後が問題だった。
風紀委員は基本的に実技が得意な生徒の集まりだ。そうなると委員長からもわかるように事務作業が苦手という生徒が増える。その結果、活動記録などの書類はどんどん溜まっていき積極的に処理しようなどという生徒はいなくなる。そして、引き継ぎの時に新しい委員長が四苦八苦しながら整理する。これが例年、毎年のように繰り返されてきた。
だが、
「ふ〜、やっと終わった〜」
「お疲れ様、中津がいて本当に助かるよ。 これ差し入れだ」
「あっ、どうも」
いつものように作業の終わらした謙吾に摩利がコーヒーを持ってきた。委員長としての責務なのか摩利は、謙吾の作業が終わるまでは必ず本部にいる。だが、差し入れをしたのは初めてだ。何かあるのではないかと邪推してしまうが、人の好意を無下にするわけにもいかないので甘えることにした。
しばらく無言の時間が続いた後、摩利がコーヒーカップを両手で包んで思い悩んだ事を静かに吐き出すように話し始める。
「なぁ、この学校はこのままでいいと思うか?」
「き、急にどうしたんですか!?」
いつもの凛々しい摩利からは見られない雰囲気に戸惑いを隠せない謙吾。
「先日、司波に壬生の話を聞かされただろう? 話を聞いた時は特に何も思わなかったんだが後日、真由美と話をしている時にあいつが「今度の生徒総会で『生徒会長以外の役員は一科生のみ』っていう制限を変える」といいだしてな」
摩利は、その時のことが面白かったのか少し口の端があがっている。
「確かに真由美の言う通りその制度が変われば二科の連中の考え方が反映される機会が増えるだろう。だが、一科の中には必ず反対するやつがいるだろう。そして、更に一科と二科の溝を広げるかもしれない。それならば現状維持でもいいんではないかと。
私も差別意識を生徒会から変えていくことはとても良いことだと思っているんだが、心のどこかで真由美のやろうとしていることは、私達一科が上から目線で行う偽善ではないかと邪推してしまうんだ」
目線をカップに固定したまま唇を噛みしめている。
ようするに彼女は友人のことが心配なのだ。
もし、真由美の行ったことが悪い方向へいってしまったら責任を感じて傷ついてしまうかもしれない。
だから、その事態を避ける為に考えてしまうどうしようもないことまで。
謙吾は、なんだかんだ言いながら友達思いな摩利が微笑ましくつい、にやけてしまった。
何も言わない謙吾を不信に思い顔をあげた摩利にその表情を見られてしまった。
不満げな顔をする摩利。
「何がおかしい、中津」
「話の内容で笑ったわけではありません」
誤解を生む前にすぐにフォローいれる。
「それではなんだというんだ?」
「まず最初の質問からお答えします。
答えはもちろん否です。二科生のためではなく一科生のためを思ってですが......」
いぶかしがる摩利。
「確かに
「司波か......」
達也が桐原を取り押さえた後の報復行為の根底にあった感情は、『怒り』ではなく『焦り』だろう。魔法競技のレギュラーでしかも
彼らはさぞ焦ったことだろう。今まで信じて疑わなかったことに対する疑念が顔を覗かせてきたのだから。そして、改めてそれを確固たるモノにするために行動した。だが結果は、言わずもがな。
「しかし、これは生徒だけの問題ばかりではないので仕方のないことです。魔法が正確に確立されて一世紀も経っていませんからね。しかも教師がそういったことを増長している節もありますから。
最後に生徒会長の案に対することですがやってみないと分かりません」
「...やってみないとわからないって......」
摩利は、謙吾の身も蓋もない言葉に苦笑いを浮かべる。
「そもそも、先輩は考えすぎなんですよ。まず、多かれ少なかれ人間の言葉や行動に主観的な意思が入ってしまうのは仕方のないことですからきりがないですよ。それをどうとるかは、各個人の裁量の範囲によって決まるもんです。だから、神経質にならなくてもいいと思いますが...。
生徒会長が先輩にとって大事な大事な友人なのは分かりますが少々、過保護すぎやしませんか? 生徒会長も罪作りな人だ。
憐れむように目を閉じ顔を横にふりながら小さくため息を吐く。
謙吾の言葉にどんどん赤くなっていく摩利。
「う、うるさい!」
急に立ち上がりドアの方へと歩いていき後ろを振り返り
「さっさと帰る準備をしろ。言われずともしとくのが普通だぞ。
これだから一年は......」
さも上級生が下級生を叱っている雰囲気を出しているが顔が赤いままなのでぶち壊しになっている。
それを言うと藪へびになるので謙吾は笑いを押し込めながらしずしずと帰り支度をするのだった。
***************
授業が終わった直後、放課後の冒頭。
これからクラブ活動の生徒はロッカーへ着替えや荷物の入ったバッグを取りに、タブレットや紙のノートを持ち込んでいる生徒は机の横に懸かる鞄を手に、そのどちらでもない生徒はそのまま身軽に、各々がそれぞれの帰り支度を始めようとしたまさにその時、
『全校生徒の皆さん!』
ハウリング寸前の大音声が、スピーカーから飛び出した。
突然のことに驚き、教室にいる生徒全員が「何事か」とスピーカーを凝視している。
「誰だ? イタズラした奴は。やるならちゃんとしろよ」
少しおどけたように言う謙吾。
深雪は、謙吾の言葉に引っかかった。以前から達也に注意しろと言われていたせいで神経質になっているのだろうか。まるで知っていたように聞こえたのだ。普通なら気にもしないありきたりな言葉だが......。
謙吾の表情を伺う深雪。
『--失礼しました。全校生徒の皆さん!』
スピーカーからもう一度、今度は少し決まり悪げに、同じセリフが流れでた。
『僕たちは、学内の差別撤廃を目指す有志同盟です』
教室内では、ちらほらと「差別なんてあるの?」「どうせ一部のウィードが騒いでいるだけだろ」などと好意的ではない意見が聞こえてくる。
『僕たちは生徒会と部活連に対し、対等な立場における交渉を要求します』
ほのかが心配そうに呟く。
「...こんなことしても大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫だよ、ほのか。一大事になるようなことにはならないよ」
ほのかを安心させるよにうに頭に手をおく雫。本当の姉妹のようだ。
その行動は謙吾の郷愁を誘った。
今は亡き母に褒める時によくしてもらったのだ。
微笑みながら「頑張ったね」と。
その言葉が照れくさくもあったが嬉しかった。
こんな日々がずっと続くと思ってた......。
「・・・くん。中津くん!」
「うん?」
「大丈夫ですか?」
謙吾の目には少し涙が溜まっている。
「深雪、どうかした?」
目を慌てて手で拭い、ぎこちない笑みを浮かべる謙吾。
深雪も謙吾とはさほど親しい間柄ではないため深入りはしない。
「中津くん、端末に連絡入ってませんか?」
明らかに不正行為なのは確かだから謙吾たち風紀委員の出番だろう。案の定、携帯端末にメールが入っていた。
「連絡あったよ。深雪は?」
「私もです」
「じゃあ、一緒にいこう」
深雪は、肯定の意味で頷く。
ほのかと雫に軽く挨拶して二人は放送室へ向かった。
途中で達也と合流し、三人で放送室へ向かった。
放送室の前には、既に摩利、克人、鈴音、そして風紀委員と部活連の実行部隊が顔を揃えていた。
何もしていない所を見ると、恐らく強引にでも引きずり出すかそれとも時間をかけてでも向こうから自発的に出てもらうかのどちらかで迷っているのだろう。
最悪、謙吾だけならなんなく中へ入れるのだが切り札をこんな学生ごときに使うつもりなどさらさらない。先輩方に任している方が一年である自分が出しゃばるより何かと都合がいいと考えていたので端の方で状況を伺っていた。流石達也と言うべきか一年生ながらもあの三人に臆することなく堂々と意見を述べている。若干、浮き気味であるが。
真由美がここにいないのを不思議に思ったが彼女のことだから何らかの根回しをやっているだろう。掴みどころのないふわふわした印象のある彼女だがやるべきことはしっかりとするしたたかなタイプだから問題はない。だから達也、鈴音、摩利、克人の会話を中断さしてまで聞くようなことでもないし自分がいてもいなくても同じだと考えいつものように見回りに行くためにこの場を去った。
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謙吾が下校するころには太陽が沈みかかっておりきれいな夕焼けが見えていた。楽しそうに談笑しながら下校している生徒がちらほらいる。
見回りを終えたのは随分と前だったのだが抜け出したことについて絞られたおかげでここまで遅くなった。
いつもと変わらぬ風景に見える。常人ならそう見えるだろう。だが、気を読み取ることができる謙吾にとっては違うように見えている。校門の出たとこ直ぐに人型の黒い影が立っている。謙吾が出ると近寄ってくる。そして、ぜんまい仕掛けのブリキ人形のように歩き帽子を取る仕草をする。口を三日月にして笑う。対して謙吾の顔には何の表情も浮かんでいない。
「なんのようだ」
耳慣れない言葉を発する謙吾。
「そんなに怒るなヨ、久しぶりの再会じゃないか。というかなんで学生なんてやってるんダ? 俺も初めて聞いたときは耳を疑ったよ」
影は久しぶりに旧友にあったかのような口調で話す。先ほどから何人か謙吾の横を通っているが気にした生徒はいない。
「お前には関係ないことだ。さっさと消えろ」
「ハァー、相変わらず連れない奴ダ。そんなじゃあ、女から好かれんゾ。まぁ、いいや。
俺の...いや、俺
そう言って手を差し出す。
「断る。誰があいつの下につくか。伝えておけ。次会ったら殺すと」
その言葉に愉快そうに笑う。
「ククククク、そうだと思ったヨ。オットもう少し話していたかったが気付かれたようだ。日本の学生は優秀ダナ。では、退散するとするか。
一つ忠告だ。
ちょっとでも気を抜けばまた失うゾ。大切な人を。
じゃあまた会おう」
そう言い残して影は消えた。直ぐにその場を離れ駅に向かった。
先程まで見えていた夕焼けは見えなくなり変わりにあたりは薄暗くなり四月にしては寒い風が吹き抜け静寂が支配していた。