本編スタート
上空に轟くエンジン音。
工作部隊の上空には無数の敵機による反復攻撃が行われていた。上空には味方機はほとんど撃ち落されていた。大破で炎上する龍驤、三隈、皐月、長月、菊月、被弾しながらも対空射撃で抵抗する最上、三日月、望月。
本来の目的であった基地作成用に上陸させていた資材こそ無事ではあったが、護衛の艦隊がこのありさまでは破壊されるのも時間の問題であろう。ひとまず、最上達は、大破した艦をかばいつつ岩場へと姿を潜めることにした。炎上している煙をたどられたらおしまいなのだが、遠くにも逃げることはできない為、苦肉の策と言えた。幸いも第一波の攻撃機を確認して時点で鎮守府には増援を要請している。そして、すぐに二航戦、五航戦の空母機動部隊がこちら全速力で向かってきてくれているとのことだった。出来るだけ早く到着を祈りながら束の間の休息を取るのであった。
さて、工作部隊が奇襲を受け、二、五航戦が出撃したころ大和は工廠にいた。先日の戦いで傷付いたバルジの修理とともにあることをお願いしていたのでそれが終わったと工作艦明石より伝言があったので、確かめに来ているのだ。
「失礼します。」
大和は礼儀正しく工廠の扉を開けて中を覗いた。
「お、待ってましたよ、注文の品はばっちですよ。」
とやりきった感丸出しの明石が出迎えてくれた。
「無理な注文をしてすいません。どんな感じになりましたか?」
申し訳ないとは思っていたが、自分の装備がどう変化したのかとても楽しみでもあった。
「はい、まずは魚雷で傷ついた装甲ですが、自分が思っていた以上に被害が小さかったので、修理はすぐに終わりましたよ、これで問題にあかと思います。でも、どんなに丈夫な装甲でも集中攻撃などにはさすがに耐えきれませんので過信と無理はしないでくださいね。」
としっかり釘を刺されてしまった。
「そして、例の件ですが…」
そう、明石に頼んだもうひとつの案件、それは巨体を動かす上でどうしても燃費の問題が出てくる。基本艦娘は海の上に浮いて操行する。人型しているものの動力源は脚に装着しているスラスターが主になっているが、大和はそれに目を付けてちょっといじってもらうことにしたのである。
「スラスタ―自体元々最新鋭の戦艦ですし、かなりの技術の結晶です。私がいじれる限界の範囲で改装させて頂きました。燃費は7%向上、速力は見立てではありますが、2ノット前後は速くなるかと思います。」
十分だと思った。もともと巨体であるため起動力を求めたらと思われがちではあるが、大和自身先の戦闘において航空機の恐ろしさは実感していた。空母が中心の戦いにおいて自分が考える限りできることは機動力の上昇、これであった。
「助かります、無茶を言って申し訳ありません。」
と深々頭を下げていった。
「いいんですよ、みなさんが全力を発揮できるように改装するのが私の仕事ですから。」
と返されてしまった。ふと、頭をあげると後ろにちっちゃい子供のようなものがバタバタと小さい箱を持って動き回っていた。不思議に思って明石に
「あのちっちゃい子は誰ですか?」
「あーあの子は妖精さんと呼ばれていますよ。」
と言われたがピンとこなかった。
「主には私の仕事の手伝いでいろいろな装備の開発、生産から修理までできる万能な子ですよ。あ、大和さんのバルジもあの子たちが直してくれたんですよ。」
とせっせと働く子を指さした。確かにかなりの数艦娘がいる以上ひとりでは回せるわけがないと思っていたが、まさかこんな小さい子が修理をしていたとは思わなかったのである。明石があっといい
「そうだ、せっかくですし、いいもの見せてあげますよ、こっち来てください。」
と工廠の奥に案内されるがまま付いていくことになった。
「先ほど、装備の開発といいましたが、現存する兵器を参考に妖精さんたちが新型兵器を開発しているとこですよ。」
と案内された部屋で戦闘機と思われる機体の組み立てられていた。まだ骨組みだけでエンジンすら取り付けれてすらいなかった。
「実はこれは司令にも見せてはいないんですが、先ほど二、五航戦に配備されたばっかの零戦二一型の改良三二型のさらなる改良を加えている最中なんです。他にも九九艦爆や九七艦攻の新型機も開発中ですよ、こっちはロールアウトまで少しまだ時間が必要えすね。」
指をさした方向には同じように新型機と思われる機体が着実に作られていた。これが配備されたら航空戦も随分楽になるんだろうなと思いつつ
「あれ、じゃ私たちの主砲の改装とかはあるんですか?」
とちょっと素朴な疑問を口にしてみた。
「それは内緒…というともっと気になるでしょうからちょっとだけ公開しますが、改46㎝砲は開発中ですよ、勿論大和さんが運用できる範囲での改良なので設計等早速問題が出てきているので、全く進んではいないんですがね。」
トホホと言いつつ申し訳なさそうに言われてしまった。
「それでもいつか必ず実装させますので、楽しみにしててくださいね。完成した時には提督より早くお伝えしますよ。それまでにしっかり経験積んできてくださいね。」
と付け足されたので、今後の楽しみが増えたなと思った。
「今日はありがとうございました、これで戦場でも暴れることが出来ます。」
「いーえ、活躍の報待ってますよ~」
と新たに改装してもらった装備にウキウキしながら工廠を後にするのだった。
さて、ここは場所が変わって鎮守府沖。
工作部隊奇襲の報を聞いてスクランブルで出撃した二航戦、五航戦は目標に向けて全速力で進んでいた。
編成は、二航戦は正規空母蒼龍、飛龍を中心に軽巡阿賀野、駆逐艦卯月、睦月、如月の計6隻、一方五航戦は、同じく正規空母翔鶴、瑞鶴を中心に軽巡能代、駆逐艦秋雲、朧、時雨、白露の計7隻合わせて13隻にもおよぶ大艦隊である。
双方輪形陣を引いて臨戦態勢を整えていた。
「翔鶴姉ぇ、索敵機から打電、敵機動部隊を発見したわ!!」
サイドテールの活発な女の子が嬉しそうに隣にいる翔鶴に伝えた。
「相手も工作部隊に夢中でしょうし、こちらから仕掛けましょうか。」
瑞鶴の言葉に白いロングヘア―、雰囲気は落ち着いていて大人びな感じの女の子が艦載機の発艦準備を始めた。
この二部隊は鎮守府を出撃して速攻航続距離に自慢の零戦を索敵に出し速攻、敵機動部隊捕捉に取り掛かったのであった。しかも、この零戦は先ほどのくだりにもあったように赤城や加賀の装備していた二一型ではなく、新型の三二型である。空母搭載用に主翼は折り畳み式にしてあり、二一型より航続距離は劣るもその他の性能は二一型のそれをしのぐものであった。この判断が敵の早期発見の報を知らせてくれた。翔鶴は二航戦にも出撃の旨を伝え、零戦三二型13機、九九艦爆13機、九七艦攻21機を瑞鶴と共に発艦さえた。
「アウトレンジで決めたいわね!!」
と意気揚々に隣では艦載機を発艦させていた。
「瑞鶴、そんなに慌てなくてもいいのよ。」
諭すように穏やかな口調で言ったが
「あっののの加賀には負けないんだからあああああ。」
と額に青筋をぴきぴきと浮かべながら歯ぎしりさせていた。それもそのはず、傷付いて出れない一航戦に代わっての参戦となっている。出撃前に加賀に何か言われたらしい。前からこのふたりは仲がいいのか、悪いのかいまいちわからないがいっつもいがみ合っている。私、翔鶴も正直、赤城さんには負けたくないとライバル心を燃やしてるなどとは表には絶対に出さないが。
一方、二航戦の方も
「大物を狙っていきましょう。」
「五航戦には負けられません!!」
と意気込むふたりからは、零戦三二型7機、九九艦爆11機、九七艦攻11機を発艦させた。四隻の空母の艦載機からなる計142機にも及ぶ第一次攻撃隊がかたき討ちのため飛び立っていった。
「戦果をあげられるといいわね。」
と心配そうな蒼龍に
「自分たちの艦載機を信じましょう、それより敵襲に備えて直掩機を出しておきましょう。」
と至って落ち着いてる飛龍は上空に数機の零戦を待機させた。それに続いて蒼龍も直掩機を飛ばしておいた。
翔鶴、瑞鶴も直掩機を用意しこれで後は攻撃隊からの戦果報告を待つだけとなった。
さて、いち早く敵機動部隊を見つけ、発艦した航空機たちはというと敵に気が付かれることなく敵艦隊上空付近にまで到達していた。敵の編成は空母ヲ級elite3隻、軽空母ヌ級1隻、軽巡ヘ級elite3隻、駆逐ロ級2隻、駆逐イ級5隻と大艦隊であった。しかも、ちょうど最上たちの部隊を強襲した部隊が着艦して補給中だったので、完全に隙だらけであった。直掩の戦闘機も少なく雲を利用しているがこれほどの大編隊に気が付いていない様子だった。”まだ”深海棲艦も高性能レーダーや高角砲を装備しているわけではないので一気に敵艦隊に向けて攻撃を開始した。
ここで敵の直掩も存在に気が付いたが後の祭りである。高々度から一気に降下してきた新型三二型も前に敵機を一瞬で火だるまとなって墜落していった。こちらに気が付き対空射撃を行ってきたが完全な奇襲となっていたため、まばらで容易に潜り抜けて魚雷を爆弾を投下していった。勿論狙いは空母であったが、奇妙なことに直撃コースの魚雷の射線に駆逐イ級が割り込んできた。
―ドゴオオオオオオオオオオオオオオンンンンン
凄まじい轟音とともに跡形もなくイ級は姿を消していた。攻撃して妖精たちは困惑していた。空母を守るために自分を犠牲にした…。
っとここで、妖精さんの追加説明だが、工廠にもいたが艦載機にも乗ることがで居るのである。というか、搭乗員専門の妖精と言ってもいい。それぞれの空母に配置され各空母にひとりエースクラスの操縦能力を誇る妖精も存在するとかしないとか言われている。今後の展開で間違いなく出てきて艦隊のピンチを救ってくれるだろう。今はそんなものはいなさそうだがもしかしたら紛れているかもしれない、将来のエースパイロットが…。
と予想外の事態に見舞われたが、取り巻きの駆逐イ級3隻と軽巡ヘ級1隻、軽空母ヌ級を血祭りにあげていた。肝心の空母ヲ級はきっちり健在ではあるが一番の問題だが。
妖精より戦果の聞いた翔鶴が
「深海棲艦も感情があるのかしら…」
と呟いた。それに瑞鶴が
「庇うなんて聞いてないわよ、でも、捨て身の庇いなんてうちらでもしないわよ。」
と呆れと驚きを隠せない表情だった。
「そうね、でもヲ級が一隻も沈めれてないってことは。」
「無傷の空母三隻からの艦載機が飛んでくるわね…。」
ふたりの表情は厳しいものになった。ともあれ攻撃隊の帰還の前に直掩機の収容、燃料の補給を行いさっきより少し多めに待機させることにした。攻撃隊に参加して一部の零戦も燃料が残っていれば上空に待機するように指示を出していた。これは蒼龍たち二航戦も同じように敵機がくるまで待機という形となった。
第一波の攻撃が去ったあと、補給を整えたヲ級から艦載機が発艦していった。まだ、無傷で健在の三隻の空母から計100機の航空隊が次々と翔鶴たちへ向けて飛び立った。
第一波の攻撃隊を収容し補給している最中に翔鶴たちの上空に敵機が襲来した。さっきの敵と真逆な状況になってしまった。ただ、相手と違うことは直掩機がきっちり待機していたことである。上空で待機していた零戦隊が一気に敵編隊に突っ込んでいった。数に劣るものの性能に物を言わせてばったばったと敵機を撃墜していった。それでも零戦の合間を縫って攻撃機が翔鶴に向けて爆弾を投下した。
「翔鶴姉ぇ、上!!」
瑞鶴が上空を見ながら回避行動に移った。
「当たるわけないわ。」
翔鶴型航空母艦は、先の4隻の空母と違って初期設計から空母として開発された最新鋭の艦であった。速力、搭載機においてバランスの取れた傑作艦と言える。上空から飛来する爆弾を難なく避け対空砲火で数機の爆撃機を撃墜させた。
駆逐艦の対空砲火も厚かったため、雷撃機も容易に近づけず、遠くから魚雷を放ってきたため、回避に苦労することなく翔鶴たちの横を素通りしていった。
100機に及ぶ攻撃隊であったが、直掩の零戦の活躍と連携した回避と対空砲火のおかげで、卯月が至近弾を喰らって軽い損傷で被害はかなり軽微に終わった。
「被害はほとんどないようね。」
と艦隊の被害を確認してほっとした。
「あらかじめ攻撃隊が来ることが予想できたからね、あんだけの攻撃隊が来たのにこの被害で済んでるのは、ちょっと出来過ぎね。」
警戒しつつも子の戦果に瑞鶴もかなり嬉しそうだった
「瑞鶴、慢心はダメよ、まだ空母が三隻まるまる残っているのよ、補給を終わらせて一気に叩きましょう。」
「そうね、補給もほとんど済んでるしすぐにでも発艦できるわよ!!」
手にはいつでも発艦できるように手には矢が握られていた。
「二航戦の方々にも第二波の攻撃隊の発艦を提案しましょう。向こうの準備は終わってるかしら?」
自分の補給状況を確認しながら二航戦のほうをちらっと見たが、わざわざ確認を取る必要はなさそうだった。蒼龍、飛龍は艦載機の数は翔鶴たちより少ないため速攻補給をすませ瑞鶴と同じように矢を番えて既に待機していた。
「いつでも発艦できます!!」
「どうよぉ!」
蒼龍、飛龍からは意気揚々としたセリフが飛んできた。翔鶴はそれを確認し
「第二次航空隊発艦!!!目標は敵空母、この攻撃で確実に沈めるわよ!」
と艦隊に力強く告げ艦載機を上空に飛ばしていった。
まだ、翔鶴たちにはこの敵機動部隊のほかに別動隊の大型装甲空母が近づいていることにまだ気がついてはいなかった。
はい、今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
ちょっと今回の戦闘は長引きそうなのでここで一旦終了にしました。
まだ、金剛たちの出撃等さまざまな展開が待っていますので楽しみにしていただけると嬉しいです。
ここらで今後の展開のネタバレ。とある艦娘には今後の展開上轟沈描写を予定しております。その時には告知致しますので、轟沈描写、または嫁が沈むのが嫌な方いましたらその話は飛ばして呼んでいただけると幸いです。まだまだ先にはなりますが、あらかじめ告知しておきます。
それでは第二波の攻撃隊の活躍等、今後の戦闘もお楽しみいただけたら幸いです。
それではまた次回もお楽しみに