時間は少し遡る。
第二、五航空戦隊と共に第二戦隊も鎮守府を出撃していた。提督は空母機動部隊の他に素性打撃部隊もいると予想、機動部隊だけではなくこちらも援護と言う形で第二戦隊にも出撃を命じていた。このまま敵艦隊の撃滅に成功すれば基地の防衛にそのまま付かせるというおまけ付きだが。
編成は戦艦金剛、比叡、重巡古鷹、加古、駆逐艦夕立、春雨、五月雨の計7隻である。
翔鶴たちとは別行動で迂回をして基地に近づいく予定となっていた。このままだと夕方に基地周辺に到着予定なのだが。
ここらでざっと鎮守府の勢力範囲を説明しておこう。大きな島国の漁港を鎮守府として改造してあるのだが、北方方面は基本平和で深海棲艦の影響下が最も少ない海域で基本遠征はこちらへ出撃に資材を持ち帰る算段となっている。
そして、最も深海棲艦の暴れている海域は、南方から西方海域にかけてである。今回は敵の補給路の分断兼新たなる進出拠点の足掛かりとして基地作成に取り掛かったのだがいきなり前途多難である。ここさえ取れば南方への遠征が可能となり少し厳しくなり始めた資材状況においてありがたい予定となっている。ここの攻略が終わらないことにはもう暫く鎮守府の資材もカツカツになるだろう。そのため、提督自身も主力艦隊を3つも出撃を決定したのだった。それくらい超重要地点だった。ここから潜水艦がしばしば鎮守府沖に来ることもあり輸送路の確保が急がれていた。
さて、話を戻そう。
迂回するため急ぎ鎮守府を出撃して金剛たちはレーダーに奇妙な艦影を捉えていた。
「お姉さま、レーダーに敵ありです!!」
自前の22号水上電探に反応があった比叡はおねえさまこと金剛に伝えた。
「水上偵察機を飛ばすデース!!敵空母は翔鶴が戦ってるはずデース。」
帰国子女のような海外訛りが入った提督の秘書艦を務めているのが第二戦隊の旗艦も務めている。金剛自身こんなにまで近くに来ているのに気が付かなかったのはおかしいと思い、ひとまず水上偵察機を4機飛ばして編成を見ることにした。
状況によっては撤退、攻めれるならこのまま進撃しようと考えてた。
「おねえさま、敵機動部隊とは考えにくいですが、何が目的なんでしょう。」
「分からないデース、提督は、水上打撃部隊も予想しろ言われたケド…。」
それだと敵の行動がかなり速いなと感じつつ
「敵もこっちの行動を予想してるっぽい~⁇」
語尾の口調がぽいが特徴の駆逐艦夕立がボソっと口にした。
「まさか、こちらの作戦が相手にバレていたと!?」
「比叡落ち着くデース。とりあえず、ここで待機して偵察機の報告を待つデース。」
「おねえさまの言う通りですね、少し慌てました。」
とそんなやり取りをしていたら水上偵察機からの通信が返ってきた。
「補給艦4に重巡1駆逐3の編成デース。」
「これはもしかして敵もあそこに基地をもう一度作り直す気だったんですかね、それならおねえさま、ここで一気に叩きましょう。」
比叡の言葉に全員異存はなさそうだった。
「なら、このまま全速力で敵に追いつき補給部隊を撃破するネー!!」
金剛の掛け声とともに一気に敵艦隊に近づいた。
戦艦と言えども近代化改修をすませて高速戦艦へと改良がなされた少し古い戦艦だがまだ現役の戦艦である。駆逐艦とも劣らない速度を出して一気に自身の射程圏内に敵影を捉えた。
「敵も気が付いていなさそうネー!!一気に行くよ、比叡!!」
「はい、おねえさま!!」
「35.6㎝砲全門撃ちます、ファイヤー!!!」
「撃ちます!!」
さすがに大和の46㎝砲ほどではないが、補給艦からしてみればこの口径の砲弾を喰らえばひとたまりない。直撃こそなかったが敵をけん制するには十分な一撃となった。
金剛たちの接近に気が付いた敵艦隊は重巡、駆逐が補給艦を守るようにこちらへ向かってきた。
「補給艦に逃げられる前に蹴りを付けるデース‼」
新たに次発装填して向かってくる重巡に目標を定め
「夕立もいくっぽい~」
横から駆逐艦めがけて海軍のロングランスと謳われた酸素魚雷を発射させた。戦闘は一瞬で戦況が確定した。金剛の主砲により、重巡は大破、夕立、春雨、五月雨の魚雷が駆逐艦に直撃、これを轟沈させてたのであった。
「春雨も活躍です、嬉しいです。」
魚雷の一つを命中させて喜ぶ中
「ちょ、駆逐艦にお株奪われちまったぜ。」
「補給艦は私たちがやります!!」
加古、古鷹の両重巡が逃げ惑う重巡に20.3㎝砲と魚雷を放った。日頃より厳しい訓練のおかげかさっさと命中させて補給艦を始末してしまった。
「おねえさま、空母が護衛についてなくてよかったですね。」
「比叡の言う通りネー、テートクにはこのことを伝えとくデース、夕立お願いネー」
「了解っぽい~」
夕立に極秘回線による暗号電文を鎮守府に伝えさせた。
「やっぱりこの補給艦たちが基地に向かっていたのは間違いなさなそうだけど、あそこはそれほど重要な拠点だったってことですね。」
いつになく真面目な表情で比叡が呟いた。
「あそこは南方の補給路確保のためには大事なとこデース、敵もここの重要さには気が付いているようネー、一刻も早く敵艦隊を排除しないといけないネー」
日も真上に上り切っていた、少しでも早く到着して基地の守備に付かなければいけないと思い
「このまま全速力で基地に向かうネー」
と艦隊に指示を出してそのまま基地へと向かうのであった。
場所は変わってここは第二、五航戦。
第二波の攻撃隊を発艦し終わって大編隊が敵機動部隊を撃滅すべく上空へと消えていった。
「相手もこちらが攻略してからの行動が早かったですね。」
蒼龍は隣の飛龍を見ながら直掩機の補給を行っていた。
「そうね、ここの攻略にあれだけの艦隊どこから来たのかしら。」
「ほかにも拠点が近くにある可能性があるかもしれない。」
「または…この作戦行動を予想しての反撃部隊、もしくは増援部隊が用意されていたか。」
飛龍は早めに補給をすませ直掩機を飛ばしていた。
「飛龍、この状況で直掩機いる⁇」
「なんか嫌な予感しない⁇前世の記憶のせいかな。」
そう、このふたりには前世に痛い目にあった記憶がある。海戦の名前はミッドウェー海戦。慢心と油断、これが招いた悲劇。赤城、加賀、蒼龍、飛龍の4隻の空母を失う大敗北を決した海戦である。
それを思い出したのか、蒼龍も
「そうね、準備を怠る理由はないわ。」
と補給の済んだ零戦を上空に待機させていったのであった。このあと、二人の予感は見事に的中するのである。
翔鶴たちの放った航空隊は敵機動艦隊の上空に来ていた。先ほど直掩機の零戦が返り討ちにしたため、直掩機もそこまで数があがっていなかった。
上空の守りが薄いのをいいことに一気に大編隊が敵艦隊に向けて攻撃を開始した。上空の敵機はさっさと零戦が片づけてしまい、まばらな対空砲火のやすやすと潜り抜けて至近距離から魚雷を爆弾を投下していった。厳しい演習の成果か、命中率8割と驚異的な攻撃に指し物ののヲ級たちも次々と炎上して空母としての能力を失っていった。ヲ級たちも反撃の艦載機を飛び立たせることすらできずほぼ一方的な攻撃によって第二波の攻撃隊が帰投準備するころにはほとんどが壊滅していて追加攻撃が必要ないほど、大破炎上しているのが浮遊しているのみとなっていた。
艦載機の妖精も満足して帰ろうとしたが”それ”は現れたのだった。
上空より数は多くないが敵機が近づいてきた。妖精たちはどこから飛んできたのか困惑ぎみだったが、九七艦攻も九九艦爆も既に武装は投下済みだったため即座に帰投を決め、燃料の余裕のある零戦三二型だけが、敵編隊に向けて突撃していった。
敵機も今までの艦載機と変わらないので、そこまで苦労することなく数では劣勢でも性能でカバーして互角以上の空中戦を演じていた。
敵機も不利と判断したのか、すぐに撤退していこうとしたので、零戦の一機がこっそり後ろから撤退する編隊の後ろを付いていくのであった。
二、五航戦でも零戦以外を収容しながら危機感が募っていた。空母三隻の撃沈成功は十分な戦果であったが、まだ空母機動部隊が控えてなるとまずい状況であった。索敵外から艦載機をこちらに飛ばされてしまってはひとたまりもない。幸いに零戦隊が残って撃退してくれたようだが、敵の位置が全く分かっていないのは脅威と言えた。妖精の判断で一機が編隊を追っているようだが正直見つかれば落とされかねないので、期待はできない。
「翔鶴ねぇ、そろそろ日が暮れるしもう攻撃隊は発艦できないよ、どうする⁇」
「とりあえず、鎮守府にこれを報告しましょうか、闇に紛れて朝方に索敵行って攻撃隊を発艦させましょうか。」
「そうだね、まだ武装も残ってるし攻撃隊はまだ発艦できるわ!!」
朝から急きょの出撃で二回の戦闘があったがまだまだ元気そうな瑞鶴は意気揚々と艦載機をチェックしていた。
翔鶴自身艦載機の被害も少なくまだ発艦は出来そうなことを確認して
「蒼龍さん、飛龍さん艦載機の方はどうかしら⁇」
「問題ないですよ‼」
「まだまだいけるよ‼」
とふたりの方も問題なさそうだった。しかし、如何せん時間が悪すぎる。この時間発艦させたら着艦のころには真っ暗になってしまう。残念ながら近代のようなレーダー誘導や光とかもあるわけもなく着艦できない機体で大変なことになるだけである。
「まずは見えない敵艦隊の攻撃範囲から出ましょう。少しでも遠くに行けば少なくとも攻撃は回避できるわ。」
と全体に通達。全員それに従って一旦、鎮守府方面に進路を取ることにした。さすがに夜間でも発着艦できて戦闘もこなせる様な万能機体など存在しない為最善の判断だと言えた。
暫く戦闘海域から離脱していたら単機で敵編隊を追っていた機体から通信が届いた。敵にはまた新型の深海棲艦がいるとのことだった。戦艦並の主砲を装備しながら体には大きな飛行甲板を装備しているらしい。随伴には系空母ヌ級が二隻だけだったが新型の深海棲艦の制空力がどんなものなのか全くの未知数である。そして、編成のすべては聞けることなく通信は切れたのであった。
「また新型の深海棲艦ね…。」
とぼやく瑞鶴の顔もさっきのような元気な表情は消えていた。いつものような機動部隊との戦闘ならこんな状況でも持ち前の無邪気さ全開だったのあろうが、大和と戦った新型の情報もある。敵も強化されているのは間違いないのであった。いつも見る敵とは違い完全に異種の形をしてるようだが、前のとはまた別ものの存在であるため、完全に未知数の敵に艦隊全体の雰囲気は一気に暗くなった。
「そうね、敵の情報が分からない以上、下手に動けなくなったわね、一応提督に援軍頼もうかしら。」
「一応艦載機も後一度分の資材と装備しか残ってないから一航戦が来てくれると助かりますよ。」
と蒼龍も援軍要請には賛成だったが
「暗号もばれてたりしませんかね、通信したら位置ばれますよね。」
と飛龍は懸念を示していた。
「ばれてももう夜だから敵も艦載機を飛ばしてこないわ、通信したらすぐに場所移動しましょう。救済策すらなっているか分からないけど今はこうするしかないわ。」
このまま残りの攻撃機で新型とやりあって勝算があるか微妙である。
「いつもなら翔鶴ねぇと一緒ならやれるわ!!なんて今回は言えないわ…」
「そうね、瑞鶴、今回は不安要素が多過ぎるわね。」
正直、日が暮れてくれてよかったと翔鶴自身ほっとしていた。あの状況で敵艦載機に襲われていたらどうなっていたか分かったもんじゃなかった。艦載機ももしかしたら新しくなっている可能性もある。零戦では相手にならない艦載機も出てこないとは言い切れない。そんなありもしない予想ではあったが、全体の士気が下がるには十分するほどの情報であったのは間違いなかった。おそらく表情から蒼龍も飛龍も同じ気持ちなのが伝わってきた。ただ、全員共通して言えることは夜が明けるのが非常に恐ろしいということだけであった。
―鎮守府提督室
翔鶴からの援軍要請を聞いた提督は部屋へ大和を呼び寄せていた。
「大和、悪いねこんな夜中に。」
「いえ、まだ起きていましたので。」
いつも優しい口調が初めから厳しいものであったため、まずい状況なのはすぐに察しがついた。
「提督、まさか状況が芳しくないのですか⁇」
いきなり直球過ぎるかと思ったが
「その通りだよ、大和が戦ったのとは別の新型深海棲艦が出現したらしい。」
「また新型ですか、今回はどういった奴なんですか。」
「それが、戦艦クラスの主砲を持ちながらかなり大きな飛行甲板を持つような異種らしい、詳しいことはわからにようだがな。」
敵もなかなか変わった開発者でもいるのだろうかとちらっと昼間の工廠でのやり取りを思い出していた。
「先の戦闘に出撃させたばっかで申し訳ないんだが、長門も陸奥もまだ入渠中だ、お前には一航戦の赤城たちと同行して援軍に夜中に出撃してもらいたい。」
予想した通りだと思い
「わかりました、すぐに準備致します。」
と提督に敬礼をした。
「あぁ、夜中に出撃でしんどいと思うが頼んだぞ。」
「かしこまりました。」
と言って執務室を後にした。
軽く仮眠を取って明石から調整してもらった装備を身に付け準備を整えた大和は赤城たちの準備が整うのを待っていた。
正直、新型、未知の存在と戦う不安こそあったが、調整してもらった装備がどんなものなのか試すチャンスがいきなり来たので楽しみで仕方なかった。そんなことを考えていたら一航戦の全員が揃っていた。
「それでは出撃しましょう。」
赤城の合図で一航戦+大和の部隊が翔鶴たちの援軍に向かうべく夜中にひっそりと鎮守府を出撃していくのであった。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
んー、提督との進展が全くなく書いてる本人がやきもきしています…w
長いですが展開上かなり厳しい鎮守府事情が伝わればと思います。
さて、夜と言えば、夜戦ですね。
金剛たちが敵艦隊と遭遇…
さて、続きは次回をお楽しみください。次回でとりあえずこの戦闘に蹴りが付けられたらと思っていますのでww
そろそろ本気で提督との進展を考えますwww
それでは次回もよろしくお願いします。