ポケットモンスター◆スピリットクリスタル◆   作:わた雨

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野生のプライド!? きまぐれのビート!

 美しい緑の木々が光合成を繰り返して、澄み渡った空気がとても爽やかで心地いい。付近には小川も流れており、清らかな和流(せせらぎ)が耳と心に染み渡る。鳥のさえずりやポケモンのなきごえも多く、気配がいたるところに感じられた。この場所は、五感全てで森の自然を堪能できるのだ。

 ここは29番道路。ワカバタウン〜ヨシノシティ間を繋ぐほぼ一直線の道路である。地形のほとんどが森林であり、今にもポケモンが飛び出してきそうな草むらもたくさんある。あまり舗装された道はないが、車の通れる道は一応あり、わだちで目立っている。これに沿って歩いていけば、ヨシノシティはそう離れた町ではない。沿っていけば、だが。

 そしてヒビキたちはというと、ただ今まさに道草中であった。

「おーい! ビート〜! 迎えに来たぞ〜!」

 林の中、ねそべいわがあるお気に入りの場所で、ヒビキは友の名前を大声で呼ぶ。声は木々の音叉でよく響き、遠くには伝わらないが、いつもはこの辺にいるはずなので十分聞こえているはずだ。

 しかし、何度か呼んでもいっこうに姿を現さない。

「おかしいなー。どういうつもりなんだ、アイツは」

 ヒビキは不満そうに口を尖らせた。傍らではアラシ(ヒノアラシ)がねそべいわの上にちょこんと座り、大きく欠伸をしている。眠たそうだ。この場所の居心地の良さがそうさせる。そして、あつらえたように平たく大きい岩があるのでついついねそべってくつろいでしまう。ねそべいわの完成というわけだ。

「約束、覚えてないんじゃない?」

 コトネとミント(チコリータ)もねそべいわに腰を下ろして休憩する。バッグから水筒を取り出すと、蓋をコップにして水を注ぎ、ミントの前に置いた。自身は水筒に直接口を付けて水を飲み、ミントは頭の葉っぱを上手に使って水を掬って口に運んでいる。くさタイプのポケモンにとって水はもはや栄養と呼べるものであるため、ミントはごきげんになった。

「そんな訳ないよ。男と男の約束だからな」

 ヒビキは鼻をフンと鳴らす。

「アイツはオレと一緒に来てくれるはずさ。親友だもん。――おおーい! ビート〜!」

 もう一度、深く息を吸い込みビートを呼ぶ。響き渡り重なる声、また訪れる静寂。

 すると、静寂の中から、ガサゴソと物音が聞こえた――瞬間、

「ヒノオォ!?」

 悲鳴が耳に入ってきた。これは、アラシの鳴き声!

「どうしたアラシ……ああっ!」

 見ると、アラシの顔に、白いベタベタした繊維状のものが付けられていた。アラシは手でそれを取ろうともがいているが、粘着質なせいでうまく取れないでいる。

「これは……虫タイプポケモンのわざ、『いとをはく』の糸!? 近くに野生の虫ポケモンがいるのか!?」

「そんなことは後でいいからっ! 水で洗い流してあげないと」

 コトネがアラシの顔に付けられた糸を、水筒の水で洗い流す。水が苦手なのか、アラシは露骨に嫌な顔をするが、暴れることはなくしっかりと糸を取ってもらった。

「くそう。どいつだ、いきなりこんなことしやがるのは!」

「ヒノヒノ〜!」

 アラシは憤りを隠せず地面を踏み鳴らした。辺りの草むらを睨みつけて、相手を探す。

 その時、またもガサゴソという茂みの揺れる音が聞こえた。

「ヒノッ!」

 それをアラシは見逃さなかった。音の聞こえた方へすかさず首を回し、茂みの揺れを捉えると、一目散に頭から飛び込んだ。

 すると、何かがアラシを(かわ)して飛び出てきた。橙色の団子のような姿をしており、頭と尾の先端にトゲを持っている。

「―――って、ビートじゃんか! オレだよ、ヒビキだ」

 草むらから飛び出してきたのはヒビキの友達、ビードルのビートだった。

 睨むような目つきでヒビキたちを見ている。特に、アラシとミントには敵意を向けているのがまる分かりだった。

「やっと出てきたと思ったら、何のつもりだよ。いつものきまぐれか?」

 ヒビキは困り顔を浮かべながらビートに歩み寄る。ビートはヒビキを見上げるが、表情は至って険しいままだ。

「今日は遊びに来たんじゃないんだ。オレはトレーナーになったんだ。約束しただろ? 一緒に旅に出ようって」

「……」

 少し間が空いたが、ビートは頷いた。話は覚えているようだ。

「だったら―――うわっ!」

 表情をほころばせかけたヒビキの顔に、細い針が飛んできた。ヒビキは間一髪で躱したが、尻もちをついてしまった。ビートがいきなり『どくばり』を撃ってきたのだ。

「ヒビキ!? 大丈夫!?」

「大丈夫だけど、『どくばり』って……シャレにならないぞ。おいっ!」

 ヒビキは立ち上がってビートに怒りの表情を向ける。友達として、今の行為は許せるものではない。

 しかし、ビートは詫びるわけでもなく、鼻を鳴らしてヒビキを睨み上げる。

 その視線にヒビキはたじろき、歯を食いしばって、拳を握り締める。

「……なんだよ。オレと一緒に、行きたくないっていうのか?」

 ビートは頭を縦に振る。

「……オレのこと、嫌いになったのか?」

 ビートは首を横に振った。それは違うらしい。

「……? どういうこと?」

 ヒビキは拳を緩めて、困惑した表情になる。ビートの考えていることが、いまいち理解できない。今に始まったことではないが、今回は特に。

「旅をしたくないってこと? ここにいたいのか?」

 ビートは否定の向きに頭を振る。これも違う。

「…………? ますます解んねぇ。頼むから教えてくれよ。どうして行きたくないんだ」

 するとビートは、ヒビキから視線を外すと、別のものに睨みを向けた。ヒビキの時より敵意の強い眼光だ。その視線の先には―――アラシだ。

「……ヒ、ヒノ?」

 アラシは身をすくませている。自身を指差して、苦笑いを浮かべながら首を傾げた。

「……ビィ!」

「ヒノノ〜!?」

 ビートの『いとをはく』!!

 アラシは攻撃を躱した!

 アラシはじたばたと辺りを右往左往する。

「アラシが嫌いなのか……?」

「ビィ!」

 鳴き声で答える。どうやら肯定らしい。

「でも、初対面だろ? 何が気に食わないんだよ」

「フーン!」

 鼻を鳴らしてそっぽを向く。どうやら理由もなく、なんとなく気に入らないらしい。

「……はぁ? ……コトネ、どういうことか分かる?」

「んーん……。ああ、そういえば、ウツギ博士からこんな話聞いたことあったよね」

 虫タイプを怖がるミントをモンスターボールに戻したコトネに伺うと、何か思い出したようで、顔の前で人差し指を立てた。

「野生のポケモンは、人に飼われているポケモンに強い敵意を燃やす傾向がある―――って」

「あ〜! そういえば。だからかぁ。ビートはまだ野生のポケモンだから……」

 ヒビキは理解すると、両手を腰に当て、ビートをなだめるように言う。

「なぁ、オマエもオレのポケモンになるんだから、な? 仲良くだな―――って! うわたたたっ!」

 またもビートはヒビキにどくばりを放つ。今度は足元で、ヒビキは必死に滅茶苦茶なステップを踏んで『どくばり』を躱した。

「何なんだよぉ」

「強情だねぇ。野生のポケモンとしてのプライドってカンジ?」

「野生のプライドだって!?」

 ヒビキは訝しげな表情でビートを見つめた。ビートは鼻を鳴らし、身体を反って威張るような姿勢を見せつけてくる。双貌の奥には、自信に満ちた炎と煌き。そして、弱々しく情けない表情をした目の前の一人のトレーナーの姿―――炎で燃やされる、ヒビキの姿。

 

 野生のポケモンをナメるな。

 決してタダでは降らない。

 トレーナーになったばかりのお前なんかには負けない。

 出会ったばかりのポケモンにも負けない。

 野生を ナメるな トレーナー。

 

「――――――!!」

 

 なんとなくだが、言いたいこと、伝えたいことは解った。

 それを受けたヒビキの心に、ついにボっと火が灯った。ヤル気の炎。元気の炎。負けん気の炎。そして誇り―――プライドの炎が。

「……いいぜ。そっちがその気なら、こっちはトレーナーのプライドだ! 正々堂々・正攻法でオマエをゲットしてやるぜっ!!」

 宣戦布告の言葉と共に、ベルトから外したモンスターボールを正面に掲げる。

 アラシも傍らに付き、気持ちを整える。

 ビートもやっとその気になってくれたヒビキを(たた)えてくれたようだ。身体を低くして尾をしの字に曲げ、尾先と針をピンと張って戦闘態勢を取った。

 静寂。―――否、心臓の鼓動のみが自らに響く。

 そして、風が通り抜けて森がざわめいた――!

 

「よーし! 初めてのポケモンバトルだ!! 行けっ! アラシ!」

「ヒノォ!!」

 

――――――――――――

 

 

 相手は野生。ホームであるこの林のことならなんでも知っている。

 木々の間隔と高さに太さ。更には木肌の質感や枝の広がり方、しなり具合までも熟知しているのだ。もちろん、地面と草々に関しても。この場所のあらゆる自然を味方につけられる。

 つまり、地の利は明らかに相手にあるということだ。

 

 ビートは木々の上から糸を吐いたり、『どくばり』を撃ってきたりと、安全圏からの攻撃でこちらをじわりじわりと消耗させる戦い方でヒビキとアラシを翻弄している。

 アラシは木登りは得意ではないようで、もたもたしていると、ビートはすぐに『いとをはく』をターザンロープのように使って次の木へと移ってしまう。

 そしてアラシを馬鹿にするように嘲笑。さっきからこの繰り返しだ。

 しびれを切らしたヒビキが声を荒げる。

「コノヤロー! いい加減にしろよ! アラシ、近づけないならこっちも遠距離攻撃だ! いけっ『かえんほうしゃ』!!」

「ヒノッ! ……ヒノ?」

 ヒビキの指示に一度は威勢良く返事をしたアラシだったが、少し間を置いてから首を傾げた。ヒビキの顔を不思議そうに見返す。

「どうしたアラシ!? 『かえんほうしゃ』だ!」

 もう一度指示を出すが、アラシは首を振ってじたばたとジェスチャーでヒビキに訴えかける。

「ええ? なに、なんだって?」

「そんな大技、まだ覚えてないって言いたいんじゃない?」

 アラシが素早く何度も頷く。大肯定だ。

「そうなのか……」

「貰ったばかりでまだ育ててもいないポケモンに何を期待していたのよヒビキは……」

 コトネが呆れ顔で溜め息を吐いた。

「それなら……えーと、なんだっけ。……そうだ、アラシ! 『ひのこ』だ!」

「ヒノ! ……ヒノノ?」

 またもや返事からの疑問符。これも分からないらしい。

「これもダメ〜!?」

「まだほのおタイプのわざはひとつも覚えてないみたいね」

「ノォ〜……」

 アラシはしょんぼりとした。期待を裏切ってしまったと思い、落ち込んでしまったようだ。

「アラシ……」

 ヒビキは落ち込むアラシの姿を見て、唇を強く噛んだ。

(ポケモンの力を引き出すのがトレーナーの役目なんだ。出来ないことを命令するなんて、何やってるんだよ、オレは!!)

 思い出す。自分の役割を。ヒビキは決意を固め直し、アラシの頭を撫でてあげた。

「気にするな。出来ない事はいつか出来ればそれでいいんだ。だったら今は、出来る事、精いっぱい、やろうぜ!!」

「そうよ! まだ何もかも始まったばかりなんだから。元気出して、アラシ!」

 ヒビキとコトネの言葉に、アラシは顔を上げた。ヒビキの表情は、昨日、自分を認めてくれた時の表情と同じだった。

 自分を焚きつけてくれた、太陽のような笑顔。

 アラシの心にもまた、くすぶっていた炎が蘇る。

 

―――今の自分に、出来ること―――

 

「あのヤロー、全然攻撃してこなくなったと思ったら、のんきに居眠りしてやがる」

 木の上のビートは、油断しきっているようだ。木登りができないアラシと未熟すぎるヒビキに飽きてしまっている。

「アラシ、ゴー!!」

「ヒノォ〜!!」

 ヒビキが掛け声をかけ、アラシが飛び出した、と思いきやヒビキも一緒になって飛び出していた。むしろ、ヒビキの方が前を走っている。

「ちょ、ちょっとヒビキっ!?」

 コトネが素っ頓狂な声を上げた。ポケモンバトルでポケモンより前に出るトレーナーなんて愚か者にも程がある。

 ビートもヒビキとアラシの声で目を覚ましたが、木の上にいる限りは安全だろうと、油断は直さず大きなあくびをした。ヒビキの無邪気で猪突猛進な性格は、よく知っているつもりらしい。

 しかし、ヒビキには考えがあった。

 ビートのいる木に近づくと、身を屈めたのだ。

 

 相手は野生。ここは相手のホーム。地の利は相手にある。

 ならばこちらは?

 トレーナーとパートナーのポケモン。あるのは―――

 

「今だ、アラシ! 行っけぇ〜!!」

「ヒノヒノォォォ!!」

 アラシが助走の勢いはそのままで飛び上がり、屈んだヒビキを踏み台にして駆け上がる。

 

―――数の利。そしてポケモンの力を引き出すトレーナーの知の利と、それに応えるポケモンとの絆の利!

 

 アラシの足がヒビキの頭まで差し掛かったタイミングで、ヒビキは勢い良く身体を伸ばして跳ね上がった!

 更に、そのジャンプが最高点に達したところで、今度はアラシがジャンプ!

 二段構えの跳躍が、アラシを一気にビートのいる高さまで押し上げる!

「ビ、ビィッ!?」

 一瞬の間に目前まで迫ってきたアラシに、ビートは驚いて身を強ばらせることしか出来なかった。

 ヒビキは、自分の身を省みずジャンプをしたため地面に思い切り倒れ込んだが、痛みに顔をしかめることもせず、すぐさま声を張り上げる。

「アラシ! 『たいあたり』だぁ!」

「ヒノォ〜ッ!!」

 今までの勢いを込めた強烈な『たいあたり』が炸裂し、ビートは木の上から放り出された。アラシも跳ね返ってビートとは逆方向に落下する。

 ヒビキは立ち上がりもせずに足で地面を蹴って、落下点でアラシを身体で受け止める。

「いちちち……。やったぜ、アラシ!」

「ヒノ!」

 アラシの頑張りを喜び、褒めるヒビキ。しかしアラシは、はっと別の方向に目を向ける。

 アラシが気づいたのは、ビートの姿だった。まだまだ体力は残っているようで、『どくばり』を発射しようと、尾先の針をアラシたちに向けていた。

「……ヒノ!」

 アラシがヒビキの胸の中から飛び出す。

「アラシ!?」

 ヒビキが手で制止するも遅く、アラシは一直線にビートに向かっていく。

 ビートの『どくばり』が発射され、アラシの身体に突き刺さる。

「ア、アラシッ!」

 ヒビキの声が聞こえる。しかし、アラシは立ち止まらなかった。真っ直ぐ走り続けながら狙いを定める。

 

―――今の自分に出来ること―――

 

 ビートは次々と『どくばり』を放ち、アラシの身体に命中させていく――と、突然、静電気でも受けたようにビクリと身体を震わせた。アラシの『にらみつける』が決まったのだ。身を強ばらせて、防御を忘れる。

 

―――それは、今持っているわざのすべてを尽くして、ヒビキに初勝利をあげること―――

 

 アラシは渾身の力を込めて『たいあたり』を繰り出した。頭からビートの身体に突っ込み、顎を上げて跳ね上げる。

 宙に浮いたビートは、完全に目を回していた。戦闘不能間近だ。

「チャンスよ、ヒビキ! ボールを投げて!」

「……今だ!! モンスターボール!!」

 ヒビキはモンスターボールを構え、スリークォーターのフォームで投げつけた。ボールは見事ビートに命中してパカリと開き、溢れ出た赤い光でビートを包み、中に吸い込んだ。

 ボールが閉じて地面に落ちる。開閉面の中心のボタンが光りながら、大きく左右に揺れる。まだ少し、ポケモンが抵抗しているあらわれだ。

 緊張感が辺りを包む。揺れが止まって光も消えれば、ゲット成功だ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 ヒビキもアラシもコトネも、ただただボールを見守る。

 額に汗を滲ませながら、その瞬間を。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

―――フォォ……ォン―――

 

 静寂に伸びやかな電子音が響き渡り、ボールの揺れ、中央の光が、消えた。

 

 ……ゲット成功だ!!

 

「や、やったぜ〜!!」

「やったね! ヒビキ、おめでとう!」

「ヒノヒノ〜♪」

 ヒビキはボールに駆け寄った。拾い上げ、歓喜の表情で「くぅ〜」と声を漏らしながらボールを握り締める。そして空に(かか)げると、高らかに言い放った。

 

「ビードル、ゲットだぜ!!」

 

 ずっと言ってみたかった、憧れだった台詞を言うことが出来て、感無量らしい。しばらくポーズはそのままで余韻に浸っていた。

 コトネが拍手を贈ってくれると、ヒビキは照れ笑いをしながら頭を掻く。

「アラシ! オマエ、本当によく頑張ってくれたよ。ありがとうな!」

「ヒノ! ヒ、ノ……」

 ヒビキがアラシを褒め称えると、アラシはガッツポーズで応えたが、疲れてしまったのか、その場に倒れ込んでしまった。

「ホントにお疲れ、アラシ。初めてのバトルだったけど、出来栄えは最高だったぜ!」

「すごかったよアラシ〜♪ ヒビキとも息ピッタリで! ……って、あれ?」

 コトネは何かに気づいたようだ。アラシの顔を覗き込むと、神妙な表情に変わり、頭に手を触れる。

「……!! ヒ、ヒビキ! アラシ、すごい熱があるよ!」

「ええっ!? ……ほんとだ。熱い。これってもしかして―――毒!?」

 アラシはずいぶんと顔色を悪くしていた。歩く元気ももう無いらしく、その場にへたりこんで苦しそうに呼吸をしている。

「キズぐすりは、あった」

 ヒビキが急いでバッグから取り出し、コトネが手際よく処置する。何度かマリン(マリル)に使ったことがあるようで、使い方が的確だった。

「でも、これじゃあ傷は直せても毒まではね。毒消しはワカバタウンには売ってなかったし……」

「こういうときは……」

―――ポケモンセンター。

 ヒビキはアラシのモンスターボールを取り出してかざす。

「すぐに連れて行ってあげるからな。ボールの中で少し休んででくれ」

「ヒノォ……」

 申し訳なさそうななきごえを上げて、アラシはボールへと戻った。

「それにビートも、すぐに回復させてやるからな。オマエももう、オレの大事な仲間だ」

 アラシの戻ったボールと、ビートをゲットしたボールを握り締め、思い出す。お母さんの言葉だ。

(ポケモンに無理をさせないこと……。いきなり約束破っちゃったなぁ)

 ヒビキは次の町、ヨシノシティへ続く道を見つめる。一泊野宿をして、明日の日没頃に着ければ良いと思っていたが、そうもいかなくなった。ポケモンに無理をさせて傷つけてしまったのだ。

(母さんごめん。もう一個の約束も破っちゃうよ。オレ、今から無理する)

 ヒビキはボールをベルトに固定して、靴ひもをきつく結び直した。

「コトネ、オレ、先に全速力でヨシノシティに行くよ。早くポケモンセンターに連れて行ってあげないと」

「分かってるって。あたしの事は気にしなくていいから、早く連れて行ってあげて」

 ヒビキは走り出す。自分のために無理をしてくれたアラシのために。

 今度は自分が、アラシのために出来る事をする番だ―――!

 

 ―――トレーナーたるもの、ポケモンのためであれ―――

 

 ヒビキは、かつて自分がポケモントレーナーを目指すきっかけの全てをくれた人物――自らの父親の言葉と行動を思い出していた。

 ポケモンを極めること。それは、ポケモンのために生きることであると、そう説いて、ポケモンのためなら自分の身の危険も(いと)わないあの背中に。

 やっと手を伸ばし始められただろうかと。

 ヒビキは全速力で29番道路を駆け抜けながら、笑っていた。

 自分は本当にトレーナーになったんだと、改めて実感したのだった。

 

 

―――TO BE CONTINUED

 




―――アニメ的次回予告―――

くたくたになってやっとたどり着いたヨシノシティ

ポケモンの病院、ポケモンセンターでアラシとビートを治療して貰わなくちゃ

でも最近、この町では怪しい奴らの噂があるらしい

そんな話を聞いていたら、なんとホントにその怪しい奴らが現れて

しかも、ポケモンセンターにいるポケモンたちを奪うなんて言ったんだ!

ここには傷ついたポケモンばかり、オレのポケモンだっているんだ!

オマエらの好き勝手になんて絶対させてたまるか!

次回、ポケットモンスタースピリットクリスタル

ポケモンセンターを守れ! 対決ロケット団!

―――みんなもポケモンゲットで! OK!! 完璧!!
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