湾岸ボカロフォギア~story of urban highway circuit~   作:ヘリーR

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 一体何ヵ月ぶりの更新でしょう……?
 亀更新ホントにすみません。


act.9「頂点に立つ者への試練」

 キャロルと会ったその日の晩、三玖はいつになく真剣な面持ちでUHCを走っていた。

 全神経を車から伝わってくる感覚に集中させて走る三玖の頭の中では、ずっとキャロルのあの言葉が繰り返されていた。

 

 ―――もし、これでウィングを着けたら、どうなるんだろうな?

 

 彼女はそれに対する答えを持っていない。

 考えたこともなかった―――ウィングを着けようなど。

 彼女はこれまで《青桜》に乗り続けてきて、何も感じなかった。

 否、感じてはいた。ただそれは、彼女の乗るR33から伝わってくる思い。

 

 ―――これで大丈夫だ。

 

 彼女はそんな愛車の思いを汲んで、それ以上のカスタムはしなかった。

 その結果が、現在の《青桜》。400Rに似せたエアロに、ウィングレスのシアン色をしたBCNR33スカイラインGT-R。

 

 「ほんとにこれでいいの、GT-R?」

 

 愛車に問いかけてみる。

 短い返答だった。

 

 ―――さあな。

 「………」

 

 どうやら、ひとりで考えろ、ということらしい。

 三玖の苦悩はしばらく続きそうだ。

 

 すると後ろから、聞き覚えのあるエンジン音が聞こえてきた。

 バックミラーを覗く。

 赤いアリスト―――赤青鳴のアリストだ。

 

 「鳴さん? 帰ったんじゃ……」

 

 三玖が疑問に思うのも束の間、鳴のアリストのヘッドライトが点滅する―――バトルの申し込みだ。

 

 「ッ!! …………」

 

 断る理由もない。彼女はアクセルを踏み込む。

 後ろのアリストも加速し、三玖のRの背後にピッタリとついてくる。

 三玖はメーターをチラッと見る。310キロを超えている。

 300㎞/hオーバー―――彼女とて、久しく出していなかったスピードだ。そも、ギアを5速に入れたのも久しぶりだ。

 これこそハイスピードバトルという快感に酔いしれながら、彼女は新環状エリアへ。アリストも当然ついてくる。

 フルアクセル。グイグイ加速していく。

 330㎞/hを超えた―――通常なら、頭の中はコースの把握と車の操作のみを考え、他は一切を忘れて空っぽになっている状態になるレベルのスピードだが。

 ………彼女はそんな状態に追い込まれるはずの状況にあってさえ、あの言葉が脳内で繰り返される。

 邪念とは言えないが、現在の状況を考えれば、邪魔な思考だ。

 そんな状態で、こんな状況にいる。なれば、迎える結末はひとつ―――。

 新環状を抜け、C1エリアにさしかかり、最初に来たS字カーブ――そこで、《青桜》はスリップした。

 ハンドルの切り具合を間違え、なおかつハーフアクセルを忘れたことによるものだった。

 なんとか衝突は避けられたが、彼女はその事実に呆然とする。

 

 ―――私は、なんで。

 ―――こんなところで滑ったの……?

 

 鳴のアリストは、滑ったR33を避けてから路肩に寄せ停車する。

 降りてきた鳴は、呆然としている三玖の元へ来た。

 ドアをノックされる。

 三玖は素直にウィンドウを開ける。

 

 「………悩んでるわね」

 「……はい」

 

 それから、数秒の沈黙。

 鳴が溜め息をつく。

 

 「………なら、試してみれば?」

 「……試す?」

 「ええ。試しもしないで悩んでるのは愚策というものよ。一度、ウィングを着けて走ってみるの。それで、しっくり来なかったら、外せばいいのよ」

 

 キャロルが言うだけ言って帰っていったあの後、鳴はキャロルの真意を考えていた。

 あの笑み。

 あれは何かを試しているような笑みだった。

 そこに気付いたとき、鳴はキャロルの思惑が分かった。

 そう、試しているのだ―――三玖が、人の意見を聞いてすぐにその通りにしてしまうかどうか。

 鳴とキャロルはこんな会話も交わしていた。

 

 ―――走り屋たるもの、性能だけで車を選んじゃいけないでしょう?

 ―――好きな車を自分ピッタリにカスタマイズしてこそ、走り屋だものね。

 

 『自分ピッタリ』。

 これが答えだと、鳴は気づいた。

 ただ、その答えを教えはしない。教えては、彼女の成長を阻害してしまうからだ。ヒントを与えるだけにとどめる。

 そのヒントが、『試し』だ。

 三玖が自分に『ピッタリ』な《青桜》を見つけるためのヒント。

 ウィングと一口に言っても、いろんなウィングがある。ひとつがダメだったからと言って、すべてがダメになるとは限らない。

 

 「ものは試しよ。やってみてもいいんじゃない?」

 「……そうですね」

 「それじゃあ、明日の昼過ぎくらいにうちのガレージに来て。いろいろ準備しておくわ」

 「ありがとうございます」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 あの後、キャロルは何周かC1エリアを回りながら、道中で黄色のエボ8と赤いR34―――《ガングニール》と《イチイバル》―――と合流し、再び海ノ上SAに戻ってきた。

 

 「いや~、ちゃんと合流できて良かったよ~。これでできなかったらどうしようかと思ってたんだ~」

 「できなかったら先にここに来て待ってればいいだろ。お前の知能指数は猿以下か?」

 「ひどいな~キャロルちゃん。私、人間だよ?猿じゃないよ?」

 「単なる例えじゃないか……全く、生粋のバカだな、おまえ」

 「えへへ~」

 「誉めてないぞ……」

 

 キャロルと響、そしてこの会話には参加していないがクリスは、そんな会話を交わしつついつものフードコートに向かう。

 手頃な席に座り、各々好きなメニューを頼む。

 

 「……で、会ったのか?」

 

 クリスが唐突に話を切り出す。

 会った、というのは、つまり鳴たちのことであろう。

 

 「ああ。元気そうで何よりだった。連絡先もしっかり交換してきたさ」

 「《青桜》の件は? やっぱりアンタの先輩っつー人がチューニングしてたのか?」

 「どうやらそのようだ。その《青桜》のドライバーも一緒にいたしな」

 「へぇ………どんなやつだったんだ?」

 「おとなしめな、だけどしっかりした感じの印象を受けた。あれがトップランカーっていうんだから、世の中わからないな」

 「へぇ……私も会ってみたいなぁ」

 「そのうち会えるだろ。特に響、お前は頻繁に走ってるんだからすぐ会えると思うぞ?」

 「よぉっし、頑張るぞー! ……ところでキャロルちゃん」

 「何だ?」

 「どうしてさっきから笑ってるの?」

 「……!」

 

 キャロルは《青桜》の話になってから、ずっと薄ら笑いを浮かべていた。

 そう――彼女がどんな選択をするか、楽しみで。

 

 「……何、少し試しているだけだ」

 「試す?」

 「ああ。《青桜》のドライバーを……な」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 翌日、約束通り、三玖は『ステップランブル』へとやってきた。

 

 「うわぁ………よくここまで集めましたね」

 

 来て、目の当たりにしたのは集められた多種多様なウィング。

 

 「R33純正からGTウィング各種、Rじゃない通常のスカイラインGT-S33の純正まであるわよ。気になったものを選びなさい」

 「…………」

 

 思った以上の壮観さに、三玖は思わず息を飲む。

 ひとまず、ひとつひとつじっくり見てみることにした。

 

 まずはR33純正ウィング。

 それほど大型でもないが、R33にはよく似合うよう設計されている。大型でない割には空力性能もよさそうだ。

 続いてストレート型GTウィング。

 最も一般的なGTウィングで、レーシングカーに使われるだけあって空力もかなり考えられていよう。

 3D型GTウィング。

 板の中央部がやや盛り上がったGTウィングで、ともすればストレートより空力は良いだろう。

 ツイン型GTウィング。

 ダブルフラップのGTウィング。《ガングニール》が装着しているものと同型。その重厚な見た目に恥じない空力性能を発揮すること間違いなし。

 そして、スカイラインGT-S33の純正ウィング。

 小型なアーチ型ウィングだ。空力性能はあまり期待できないが、物好きなドライバーはこれを装着するかもしれない。

 

 「どれを選ぶかはあなたの自由よ。そこに私は口出ししないわ」

 「…………じゃあ、これ……」

 

 そう言って、三玖が選んだのは―――。




 何を選んだのか、自分もまだ考えてません(笑)。
 そして今さらですが、車に意思があるパターンです。
 これからもよろしくお願いします。
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