湾岸ボカロフォギア~story of urban highway circuit~ 作:ヘリーR
待っていた方、お待たせ致しました!
UHC横羽エリア。
湾岸エリアに次ぐ、直線の長いハイスピードエリアだ。
C1や新環状のようにドライバーのテクニックがものを言うのではなく、ただその車のパワーが直接タイムに影響を与えるコース。
そこを、シアン色のR33―――《青桜》が疾走する。
乗っているのはもちろん三玖。無心で、ただ無心でアクセルを踏み込み、横羽のストレートを駆け抜ける。
唯一、今までと違うことがあるのなら、それは―――。
―――大きなGTウィングが着いていることだろう。
「……………」
タイヤは路面にしっかりと吸い付き、直線でもカーブでも驚くほどに安定した走りができている。装着したGTウィングが影響しているのは間違いない。
「…………………」
しかしながら、三玖は何かしらの違和感を感じていた。
ウィングを着けたことによる走りの変化かもしれない。慣れれば問題ないのかもしれない。
そう思うが、それでも、三玖はこの違和感と向き合えると思えなかった。
理由はわからない。ただ、この違和感が嫌なのだ。いつか慣れるとか、そういうのではなく。
三玖の頭は、この違和感と向き合うことを拒絶していた。
「…………………………」
ただひたすらに無言でアクセルを踏み続ける。
カーブが迫る。ブレーキを踏み、減速に合わせてクラッチを切りギアを落とす。
カーブを抜ける。再び強くアクセルを踏み込む。加速。遅れないようにギアを上げていく。4速、5速。まだ加速は続く。8000回転近くまで回って、加速が止まる。スピードメーターの針は350㎞にギリギリ到達しない程度だ。
気も遠くなるような速度の中で、三玖は冷静だった。
このスピードを出してなお、ぐらつくことのないボディ。ウィングの恩恵とはここまで大きいものだったかと驚く。
―――――でも。それでも。
―――――私はこの『R33』を受け入れられない………。
横羽線を走り抜け、降りた先にある喫茶店に寄る。
シアン色のR33は、赤いアリストの隣に駐車した。
車から降り、三玖は喫茶店の中へと入っていく。
案内された先の席には、既に鳴と階が座ってコーヒーなんか飲んでいた。
「お、早かったわね。どうだった、ウィングを着けて走った感想は?」
三玖が近づくや否や、早速鳴が訪ねる。
その問いに、三玖は静かに首を横に降る。
「……走りはとても良いですけど、私はこの『R』に乗り続けたいとは思わないです」
そんな三玖の言葉に鳴も階も両目を驚きで見開いた。
しばらくの沈黙。コーヒーを啜ってから、鳴が再び問う。
「どうして?」
「………わかりません。ただ、私の心が、この『R』に拒絶反応を示しているんです」
「ふうん……」
鳴からすれば、その拒絶反応がなぜ起きたのかは分かりようもない。それは、横にいる階も同じだろう。
如何せん、本人が嫌がっているチューンを彼女の車に施すことはできない。
「……となると、おそらく他の形のGTウィングも全部ダメだろうね。残る候補は純正と、GT-S純正のやつだけか」
「そのようね。三玖、残りの候補は今階が言った2つだけど、どっちを先に試す?」
「………そうですね……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日の晩。
再び横羽線を疾走するシアン色のR33。
今度は、純正のウィングを装着している。
GTウィングほどではないが、やはりウィングレスに比べれば安定感はある。
しかし、これもやはり、三玖の体は受け付けなかった。
「これもダメ、か……。そうなると残るはGT-S純正のやつだけね」
再び例の喫茶店にて三玖の報告を聞き、嘆息混じりに鳴は言った。
「すみません……面倒ばかり掛けてしまって」
「気にすることはないわよ。ただ、こうもウィングに拒絶反応を見せる子はめずらしいから。ラストのウィング、明日、試すわよ。今度は私も隣に乗るわ」
「はい………えっ?」
思わず三玖はきょとんと聞き直してしまう。
「隣に乗るわよ。ここまで違和感を感じるんだもの。何か、あなただけが原因ではない気がする」
「…………」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
再び翌日の晩。
またも横羽線を疾駆していたシアン色のR33は、今度はアーチ型の小さなウィングを装着していた。
そして乗員も一人ではない。助手席に赤青鳴が座っている。
「……………」
「……………」
小型のウィングと言えども、ないのに比べれば空力性能は上がる。
事実、以前に試したGTウィングやR33純正に比べれば劣るが、ウィングレスの状態のときに比べれば安定性が増しているのは確かだ。
三玖は難しい顔をして運転している―――やはり合わないのだろう。
一方、助手席の鳴はと言うと―――こちらもまた、顔に難色を示している。
(一体何なのかしら………明らかに走りやすくなってはいるのに、なぜか体がそれを心地いいものと思わない……)
三玖と同様、ウィングを装着したR33に感じる違和感。理由が全くわからない。
「………これは、中から見るだけじゃダメそうね……」
「……? どういうことですか、鳴さん?」
「後ろからついていって見たほうがいいかも、ってこと」
「………」
かくしてR33はまた例の喫茶店に着いた。
そこには赤色のアリスト―――鳴のアリストが既に停められていた。
「事前に階に私のアリストで来て、って頼んでおいて正解だったわね」
「ふぅん………そういう魂胆なら、そうと教えてくれればよかったのに。姉さんは変なところで隠し事をするんだから」
理由も知らされぬまま姉の車をここまで運転してきた階が呆れ顔で小さな抗議の声を漏らした。
「あら、文句があるのかしら? そんな弟には歩いて帰って来てもらおうかしらねぇ」
「すみませんでした」
「うん、それでよろしい」
そのまま少し喫茶店で休憩を挟み、それから再び、東京へと戻るべくシアン色のR33と赤いアリストはUHC横羽線へと入っていく。
ちなみに階はアリストの助手席に座っている。
入ってすぐに加速。ほんの一瞬にして270㎞まで加速し、そのままスピードをキープ。
鳴と階が前を走るR33の違和感に気づくまで、そう時間は掛からなかった。
「………ぐらついてる……?」
「ホントだ。ぐらついてるね」
R33のボディが、ずっとぐらついている。ガタガタと、もがくように。
「…………どうして……?」
だがそれは、鳴からすれば信じがたいことであった。
「そんなにおかしいことなのかい、姉さん?」
「そうか……あなたは、あれに乗ってないものね。乗れば分かるけど、ウィングレスの時に比べたらかなり安定感があったのよ」
「ふうん……それなのに、外から見るとものすごく不安定。だからおかしい、と」
「そういうこと」
その後も怪訝に思いつつずっとR33の後ろをついていた鳴だったが―――異変は、突然訪れた。
R33のぐらつきが急激に強くなったのである。
「………ッ!?」
「なんだあれは……そんなことがあるのか!?」
鳴も階も驚きにその目を見開き、口は閉じることを忘れる。
幸いにもすぐそこにPAが迫っており、三玖は慌てて進路変更しそこへ入っていく。アリストもそれに続く。
「ねえ三玖、どうしたの!? 一体何が………」
車を停めるや否や、アリストから鳴が飛び出し、同じく車から降りてきていた三玖に迫る。
三玖の体は少し震えていた。瞳も少しばかり揺らいでいる。
「………声が、聞こえたんです……」
車の声が聞こえる。僕もそんな乗り手になってみたかったり(笑)。
そろそろ原作勢にも少しずつ出てもらおうかなと考えてます。