湾岸ボカロフォギア~story of urban highway circuit~   作:ヘリーR

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 いやはや、お久しぶりです。
 相変わらず更新速度遅いですが、書いてないってことはないのでそこのところお願いしますm(__)m


act.12「黒鳥と銀腕」

 「ブラックバード?」

 

 キャロルの口から出てきたその名に、響は素早い反応を返した。

 ここは響たちの住んでいる家。共同生活の場ではあるが、無論彼女たちのミーティングの場にもなりうる。

 

 「ああ。最近UHCに出てくるようになったらしい。まだUHCが普通の首都高だった頃に、悪魔のZと共に突如消えた訳だが、思ったより早く戻ってきたな」

 

 湾岸の帝王ブラックバード。怪鳥は、ある時期を境にかの悪魔とともに姿を消した。

 

 「……なあ。前から気になってたんだけどよ、どうしてその2台は急にいなくなったんだ?」

 

 クリスが素朴な疑問をキャロルにぶつける。確かに、気になる点ではある。

 

 「そうだな……悪魔のZに関しては俺も理由は知らないが、ブラックバードに関してはそれらしい理由がある」

 「というと?」

 「……多くの逸話が残っているその2台だが、まあ、そこの細かな話は省略しよう。ある時、ブラックバードはカーボンモノコックの超軽量化仕様に改造されている。これは、絶対に車検を通ることはできない代物だ」

 

 二度と戻ることのできない改造により、ブラックバードはその寿命をはっきりと決められてしまった。

 

 「車検を通り得ないクルマを所持し続けることはさすがに無理があったんだろう……その瞬間に、あと一年でブラックバードが廃車となることを、乗り手は覚悟していたんだ」

 「……なるほど。そして?」

 「それからちょうど一年が経つ頃に、ブラックバードは姿を消した、というわけだ」

 

 そう――事実、ブラックバードはそこで自らの寿命を終えたのだ。

 

 「……だとしたら、今復活したって言われてるブラックバードは別物ってこと?」

 

 響が尋ねる。

 

 「乗り手は同じだ。ただ車は違う。車種こそ同じ911だが、さっきも言った通り、ボディを切り刻んだカーボンモノコックの超軽量仕様は元に戻ることのできないものだ。新たに見つけたと考えるのが妥当だろう」

 「へぇ……」

 「なら、そこまでして戻ってきた理由が気になるな」

 

 クリスが新たな疑問を抱く。

 911ターボ3.6。ポルシェターボは数あれど、希少な空冷モデルで、なおさら希少な限定モデル。とても安く買えるようなものではないのだ。

 

 「……完全燃焼したはずの情熱が、再び燻り始めたんだろう」

 

 キャロルは自身の見解を語る。

 

 「……調子に乗らせると良くないと思って黙っていたが、最近お前たちが話題になっているのを知っているか?」

 「ちょくちょく聞いてるぜ。すでに首都高で走っているアタシとコイツの話は特にな」

 「えっ、そうなの!?」

 「相変わらず情報に疎いな立花。《ガングニール》に《イチイバル》、この2台は既に走り屋の中では知られた存在になりつつあるぞ。ついでに、俺たちチームの名前……『S.O.N.G.』の名も少しずつ広まっている」

 「おお………!!」

 

 響が目を輝かせて話を聞いている。

 

 「で、だ。今までのUHCの覇者《青桜》に《草薙竜》、そしてそこに俺たちを加えた数多くの情報は、やはりかつての首都高の支配者だった彼らの元にも入るだろう。そして、再び走りに対する熱が再燃したんだろうと俺は考えている」

 「……でも、話に聞いたところによると、まだ本調子ではないって話じゃない?」

 

 それまで黙って話を聞いていた桃色の髪の女性が、初めて口を開いた。

 彼女の名前はマリア・カデンツァヴナ・イヴ。キャロルとは同い年だ。さらには、長身かつナイスバディなところまでそっくりである。

 

 「ああ、おそらくはまだ調整段階なのだろう。自分から勝負をしかけることはないらしい。勝負を挑めば応じるが、あまり距離を走らずに降りるようだ」

 「早く本気で走らないかしら。勝負、してみたいのよね」

 

 マリアはブラックバードの存在がかなり気になっているようだ。もちろん、理由がないわけではない。

 

 「今までそんなに話に乗って来なかったのに。やっぱり同じポルシェベース使いだからですか、マリアさん?」

 

 響がマリアに問う。

 

 「その通りよ、響。車は違えど、なかなか出会うことのないポルシェ使いだもの。気にならないわけないじゃない」

 

 マリアはポルシェ専門チューニングメーカー、RUF車の乗り手だ。

 RUF・RGT。ポルシェ997をベースに造られたこれまた高級スポーツカーだ。

 それをどうやって手に入れたかは聞くだけ野暮というものだ。知らぬが仏。

 ともかく、数少ないポルシェベース使いとして、マリアがブラックバードを気にかけるのは当然なのかもしれない。

 

 「まあでも、走ってるって言うなら今のうちに一度顔を合わせときたいわね。今夜にでも行こうかしら」

 「そこは各々、自由にするといい。では、今回のミーティングはここまで。解散!」

 

 各々席を立ち、それぞれ別れていく。

 その中で、自身の車の元に迷わず向かおうとしているマリアの後ろを追う者がいた。

 マリアには少し届かないものの背は高く、体型はすらりとしたモデル体型だ。髪は青い長髪。

 彼女の名前は風鳴翼。元々は凄腕のバイクのライダーだったが、キャロルたちの影響を受けてこちらの世界にも足を踏み入れた。ライダーだった頃から鍛えられてきた適切な走行ラインを見抜く力と、天性のドライビングの才能でいとも簡単にドライバーとして開花した。もしかすると『S.O.N.G.』の中で一番の速さを誇るかもしれない。

 

 「マリア、本当に行くのか?」

 「そうね。ブラックバードに会えるか確証はないけれど、行かないことには会えないし」

 「……私もついていっていいか?」

 「ええ。けど、どうして?」

 「そのブラックバードや《青桜》、《草薙竜》の他に、どんなやつがいるのか、見てみようと思ってな。ただし、自分ではまだ走らない。助手席に乗せてくれ、マリア」

 「……わかったわ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 その日の晩。新環状線を疾走する銀影がひとつ。

 RUF・RGT―――シルバーメタリックのボディには若干色味の違う銀色のトライバル柄の派手なステッカーが貼られているが、同じ銀同士なのであまり目立たない。

 だがリアにある『RGT』の文字、その下に白く刻まれた『Airget-Lamf』の文字は、小さいながらはっきりとわかる輝きを放っている。

 『Airget-Lamf』――《アガートラーム》。

 ケルト神話の神ヌァザの別名にして、『銀色の腕』を意味するそれが、《ガングニール》や《イチイバル》と同じく、マリアの操るRGTに与えられた名だ。

 

 「RRとは思えないな……安定感がある」

 「ふふ。さっきから感心しっぱなしね、翼」

 「ストレートが安定しているのはまだわかるが、重心が後ろに偏ったこの車でカーブをああも簡単に抜けていけるのは、やはり驚きを禁じ得ないな」

 「キャロルと、あとチューンを手伝ってる二人……藤尭さんと友里さんのお陰ね」

 「……ああ、そうだな」

 「………でもそれなら、ブラックバードもかなりの腕前よね? ずっとここの最前線で走り続けていたんだもの」

 「……確かに。そういうことになるな」

 「俄然楽しみになってきたわ」

 「………フフッ」

 

 やる気に満ちているマリアを見て、翼は思わず微笑んでしまう。

 

 「……? 何よ?」

 「いや、何でもない」

 「…………何よ、もう」

 

 《アガートラーム》はC1エリアへ入る。

 そこで、邂逅する―――。

 

 「前に何かいるわね………あれは……」

 

 それは、マリアが会いたいと望んでいたあの車。

 黒い911ターボ3.6。

 

 「ブラックバード!いきなり会えるなんて幸運じゃない……早速仕掛けるわよ!」

 

 パッシング。前を走る911に勝負の意思を表明する。

 それを見た島は―――。

 

 「――RGTですね。ここが首都高だった頃でも、一度も出会ったことがない車種です」

 「勝負を望まれてるぞ。乗るのか?」

 「……北見サン。チューンは、もうほぼ完成なんですよね?」

 「ああ。あとはちょいと微調整するだけだ」

 「であれば、乗りましょう……僕と同じ数少ないポルシェ乗りであることも気になりますが―――」

 「……が?」

 「――僕の勘と、この車が告げているんです……こいつは速い、と。であれば、撃墜(おと)し甲斐があるってものです」

 「ククッ……衰えてないな。腕も、勘も」

 

 戦闘モードに入る―――アクセルを踏み込み、ギアを2速から3速へ。

 その加速は他を圧倒する。しかし、後ろにはピタリとRGTがついている。

 

 「ついてくるか……やはり、速い……!」

 

 島の眼は燃えていた。久しく走っていなかったこのステージで、久しく出会うことのなかった強敵に出会えたのだから。

 

 対し、ブラックバードを追う《アガートラーム》。それを駆るマリアも、燃えに燃えていた。

 

 「この様子だと、本調子になっているようね………! 撃墜し甲斐があるわ!」

 

 テクニカルなC1を信じられないスピードで駆け抜けて行く。これが2台とも超高速域では不安定になりがちなRRの駆動方式なのだから、他者からすれば衝撃だろう。

 

 そして。

 

 邂逅するは、この2台だけではなかった―――。

 

 「………後ろだ」

 

 翼がボソリと言う。

 

 「何か来てるの?」

 「ああ。………この音は……」

 

 翼は後ろから聴こえてくるエンジンサウンドに耳を澄ます。

 

 「………ロータリーだ」

 「ロータリー!? C1なら確かに小回りの効くロータリー車は速いけど、このスピードに追い付いてくるなんて速すぎるわよ!」

 「……しかも、これは……ターボじゃない、NAだ!」

 「なっ!?」

 「ならば当てはまる車種はひとつ……見えてきたぞ―――」

 

 後ろから猛スピードで2台追い上げてきているのは。

 ベージュ色の――――。

 

 「RX-8……!」




 というわけで、RUFとポルシェの邂逅でした。
 もともとマリアの車はRt-35にするつもりでしたが、調べてたらRGTの方がカッコいいな~と思い、変更しました。
 会うべくして会った2台のポルシェに、こちらも会うべくしてなのか、会ったエイト。
 勝負の行方や如何に!? 次回をお楽しみに!
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