湾岸ボカロフォギア~story of urban highway circuit~   作:ヘリーR

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act.13「江戸橋の攻防」

 「RX-8………!」

 

 ベージュ色のエイトは、恐ろしい速度で2台に近づく。

 ブラックバードに《アガートラーム》、決して遅い訳ではない。むしろ速いくらいだ。

 この2台にエイトがいとも簡単に追い付けた原因は、そのドライバーにあった。

 エイトのドライバーは言わずもがな寧亜。彼女は特に卓越したドライビングスキルを持っているわけではないが、ことここ、C1においては話が変わってくる。

 その寧亜のC1エリアにのみ特化したドライビングテクニックに気づいたのは、《アガートラーム》の助手席に座っている翼だった。

 

 「………ラインだ」

 「え?」

 「走行ラインが違うんだ! だから、カーブの多いC1でこんなにあっさり追い付かれるんだ!」

 「どういうことよ? 私たちのラインが間違ってるってこと!?」

 「いや、そうではないんだ……決してマリアのラインも、前のブラックバードのラインも間違ってはいない。だが……」

 

 ライダーで培われた技術があったからこそ、気づける微差。

 

 「……あのエイトはさらにそれを切り詰めた、限り無く最短距離を走っているんだ……!」

 

 そう。

 限界ギリギリの、攻めに攻めた最短経路。

 それを寧亜は走っている。

 

 「少しでもハンドル操作やアクセルの調整を誤れば、その瞬間に車体を壁に当ててしまうような、スレスレのラインを攻めてきている……だがそれを走りきれるなら、追い付けるのも納得が行く!」

 「………面白いわね。速ければ速いほど、やる気が出るってものよ」

 

 2台のポルシェに、エイトを加えた三つ巴のバトルが始まった―――。

 

 

 

 「……すごいよ、寧亜ちゃん」

 

 寧亜の操るエイトの助手席に座っていた恵未は、ただ感動していた。

 ステアリングは神居が直した。だが、その走行ラインは前と変わっていないのだ。

 

 「う?」

 「ステアリングを直したから、またあのギリギリのラインを攻められるようにしようって話だったのに、もうできてるんだもん」

 「はんどる切る角度とか、覚えちゃった。だから、あのらいん、辿れる」

 「……」

 

 ハンドルが重いというマイナスの要因が、寧亜の持ち前の才能を通したことで、プラスの結果へと昇華された。

 このような芸当、才能がなければできないはずなのだから。

 絶句していた恵未だったが、気を取り直して前を走る2台に意識を向ける。

 

 「RGT……あの車名ロゴの下の『Airget-Lamf』の文字、間違いない。鳴さんの後輩がチューンしてるっていう―――『S.O.N.G.』の、ひとり……」

 「う。このあーるじーてぃー、速い」

 「でも……その前を走ってる911もかなり速いよ。あれは……もしかして……」

 「……ぶらっくばーど?」

 「……だと思う。戻ってきたんだね、首都高に」

 「う。速いよ、やっぱり」

 「……やるの?」

 「やらない理由もないよ」

 

 寧亜はグッとアクセルを踏み込む。

 加速。トルクが細いロータリーエンジンだが、高回転域に差し掛かれば車重の軽さも影響して申し分ないアクセラレーションを発揮する。

 そして寧亜の最短ラインを辿るテクニック。これらが噛み合うことで、C1を恐るべき速度で走り抜けられるのだ。

 なればこそ。

 C1を走っている今が好機――。

 

 

 

 「……RGTの後ろ、もう1台来ているナ」

 

 ブラックバードの助手席に座る北見が3台目の存在に気付いた。

 

 「エンジン音からしてRE車。リトラクタブルライトでないところから考えると……多分RX-8だろう」

 「自然吸気(NA)のREですか……その割には、かなり速いですね」

 「NAであるゆえにターボラグがないこと、その軽量さと重量バランスの良さが幸いして、エイトというのはかなり曲がりやすく、そして立ち上がりが良い車だ。そして、あのドライバーはそれを最大限に生かせている」

 「………と、言いますと?」

 「走行ラインがかなり攻めたものになっている。一歩間違えればフロントを壁に擦ってしまうくらいのスレスレのラインだ」

 「……かなり熟達しているんでしょうか」

 「さあ、どうだかナ。……どうするんだ? コーナーの多いC1を走っていては、こちらが不利だが?」

 「……確かに。ここで湾岸エリアへコースを変えれば、ストレートの速いこちらが有利でしょう。ですが、向こうはおそらく、ここがC1だからこそ仕掛けてきてるんじゃないですか? だとしたら、乗っかるのが筋ってものじゃないかと」

 「ククク……さすがだナ」

 

 江戸橋の分岐点。3台は湾岸エリアへとつながる新環状右回りには行かず、そのままC1へ。

 分岐点を過ぎたその先には。

 C1内回りにおいて最大と言っても過言ではない急カーブーー江戸橋カーブ。

 

 「……仕掛ける」

 

 寧亜の操るエイトは、目一杯アウト側にラインを取り、速度を殺さずに江戸橋カーブへと差し掛かった。

 

 「……来るわね。でも、抜かさせないわよ。こっちも攻める!」

 

 後ろのエイトが仕掛けてくることを察したマリアは、前に行かせまいと出来る限り減速せず、かなり高速で江戸橋カーブに差し掛かる。

 前のブラックバードはしっかりと減速したので、《アガートラーム》とエイトはそれを抜いた。

 そこでマリアの無謀さに気づいたのは、となりに座っている翼だった。

 

 「よせ、マリア! 向こうは軽量FRだが、こちらは車体の重いRRだぞ! こんなスピードで突っ込んだら――」

 

 しかし、もう遅かった。

 RGTのタイヤはその速さの下で路面を捉えきれず、スリップしてしまう。

 だが、エイトはきっちりと曲がり切り、滑るRGTの横を通り抜け、その後ろをブラックバードが駆けてゆく。

 《アガートラーム》は、負けたのだ。

 

 「………………」

 「………熱くなりすぎたな、マリア」

 「……そのようね」

 

 スピンアウトしたことで冷静になったマリアは、小さく嘆息する。

 

 (それにしてもあのエイト……かなり上手かったな)

 

 落ち込むマリアをなだめつつ、翼の思考は寧亜のエイトに向いていた。

 

 (良い相手を見つけた……次は、私がここに来る番か)

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 「あのRGTのドライバー……熱くなりすぎたナ。チューニングはかなりできていたが、運転者のメンタルが少し弱かったか」

 

 すでに追っては来ない銀色のRGTを思い返しながら、北見は言った。

 

 「熱中すると周りが見えなくなるタイプなんでしょう。あのタイプは、そんな状況でも冷静を保てるようになったとき、かなり手強い相手になりますヨ」

 「そうだナ。そうなれば、もっといいバトルができるだろう」

 「……ところで北見サン。冷静に江戸橋の手前で減速したのは良いんですが、抜かれたが最後、どんどん離されてますヨ」

 「しょーがねーナ。あの速さについていくには、コーナリングスピードが違いすぎる」

 「……足回りの強化と、ボディの低重心化を加えてお願いできますか?」

 「クックック……請け負った。ボディは高木にも頼んでおきナ。それに関しては、アイツの方が詳しい」

 「分かりました。……今日は、ここまでにしましょう」

 「ああ。ここは思っていた以上に速いヤツが多い。これだけでは不十分だナ」

 「……………」

 「それに……アイツも、そろそろ動き出す頃合いだ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 ブラックバードは降りた。

 この日の勝負は、寧亜のエイトの勝利に終わった。

 

 「すごいよ寧亜ちゃん! あの2台を負かすなんて!」

 「う。正直、びっくり」

 「この調子だよ! 頑張っていこう!」

 「う!」

 

 思わぬ相手に勝ってしまったことで、恵未と寧亜は勢い付いていた。

 これからもどんどんUHCを走り込んでいこう。そんな話をして盛り上がり、この日は別れた。

 

 

 

 

 ―――『S.O.N.G.』で最速と謳われる()()()()()使()()に狙われているなどとは、二人は知る由もない。




 マリアさんはやっぱり、豆腐メンタル(笑)。

 さて、キャラ紹介第二弾です。
 今回は鳴、階、寧亜について。

・赤青 鳴
  ―――元ネタ:MEIKO
 使用車 トヨタ アリスト V300(JZS161)
     カラー:ダークレッドメタリック
     エアロセットC
     GTウィング(ストレート)

・赤青 階
  ―――元ネタ:KAITO
 使用車 トヨタ スープラ RZ(JZA80)
     カラー:ブルーマイカメタリック
     エアロセットE
     車種別ウィングA

・六茶 寧亜
  ―――元ネタ:IA
 使用車 マツダ RX-8 type-S(SE3P)
     カラー:ベージュメタリック
     エアロセットE
     純正ウィング

 神居はよく考えたらまだ車が走ってはないので、紹介はお預けです。
 次はシンフォギアサイドの紹介しようかな。
 ではまた。
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