湾岸ボカロフォギア~story of urban highway circuit~   作:ヘリーR

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 思いの外長引いたアメ車勢との戦い(笑)も今回でようやく終わります!
 まあ、あくまで、バトルは……なんですけどね?


act.22「黒赤終宴――青を交え」

 「うわぁ、やっぱ速いわねぇ……。コーナリング特化仕様のマシンとは言え、この速度は恐ろしいわ。んー、サーキット時代と何ら変わんないわね、神居」

 

 三玖―――《青桜》の後ろにつけてC1を走っていた鳴は、バックミラーを見て半分呆れ顔になる。

 現役のトップランナーと加減などないバトルをしていたのだ。おまけにストレートスピードはR33とアリストの方が圧倒的に上。短かったとはいえ横羽区間で差は開いているはずである。それがC1を1周弱で追いついてきたのだから、相当な速度でC1の曲がりくねった道路を走り抜けてきたということになる。

 

 サーキット時代からコーナリングスキルには卓越したものがあった神居。チューナーとなってから手掛けてきた車もまた、コーナリング重視のものが多い。

 寧亜のRX-8、百合永のエボ3、そして《草薙竜》―――恵未のFC。どれもしゃかりきにハイパワーを求めず、コーナリング性能に重点を置いている。

 彼自身が乗る180SXについても、言わずもがなと言うわけだ。

 

 どれもUHCにおいては決して馬力が高いとは言えない。上記の4台で1番高いのでも百合永のエボ3が620馬力。対し三玖のR33が720馬力、鳴のアリストは780馬力だ。パワー差は歴然としている。

 

 しかしその差はC1や八重洲、副都心といったエリアではないに等しいどころか、逆転しうる。

 あくまで「UHCにおいては」決してハイパワーとは言えないだけで、500馬力超など一般的に言えば十分オーバースペックだ。そのパワーで、速度を大して落とさずにコーナーを抜けていけるのだから、直線でのディスアドバンテージなど気にならない。

 

 普段からUHCを走り込んでいるわけではないし、現在はチューナーとしての活動がメインであることもあってあまり話題にはならないわけだが―――いざ走れば、環状において《黒蜻蛉》より速い存在はないと、鳴は考えている。

 匹敵するとしたら、それもまた彼の手掛けた車だけ―――。先に行ってしまったキャロルの《ダウルダブラ》でさえ、C1においてはきっと彼に叶わない。

 

 コーナーを1つ2つと抜けていく。抜けるたびに、後ろのリトラクタブルヘッドライトは近付いてくる。

 

 「もうすぐ2周目か……まずは浜崎橋で抜かれないようにしなきゃね」

 

 浜崎橋。江戸橋ほどの急カーブではないが、適度なアクセルオフやブレーキによる減速を要し、無理にベタ踏みで突っ込めば壁にぶつけてしまう。乗り手の技術が反映される場所なので、オーバーテイクの勝負所ともなる。

 道幅は決して広くない。だが、小柄なボディの180SXなら、インが空いていればノーズを差し込んで抜くことも可能だ。

 そして神居のテクニック―――うっかりインを少しでも空ければ、間違いなくやられる。

 

 「インベタで突っ込まないと抜かれるわね。はぁ〜、気が重いわ……」

 

 前には《青桜》がいる。アウトインアウトのラインを取れなければ減速が大きく、浜崎橋を抜けた頃には少し差が開くだろう。

 前門の虎、後門の狼ならぬ前門の《青桜》、後門の《黒蜻蛉》だ。鳴には大きなプレッシャーがかかっている。

 絶大な重圧を前後から感じながら浜崎橋へ。前のR33は外から突っ込みアウトインアウトの軌跡を取るが、鳴のアリストはインインインの『後ろに抜かさせない』ラインを描く。

 

 しかし―――ミラーに映る180SXは、驚くべき行動に出た。

 

 「―――ッ!? なんでアンタもインから突っ込むのよ!?」

 

 アリストの真後ろにつけてコーナーへと突っ込んで行ったのだ。

 傍から見れば、そして当事者である鳴ですら、その意図を理解できない。

 

 しかし、それはすぐに理解へと至る。

 

 180SXのノーズがアリストよりも数瞬早く右を向く。その角度は、アリストよりも浅い。

 浜崎橋を半分と少し行ったところで、インベタのアリストに対し180SXは外へと膨らんでいく。

 

 神居はそこで弱めていたアクセルを奥まで踏み込み、ハンドルの操舵角を強めた―――アリストの()()へと、その車体をねじ込んだのだ。

 

 「なっ……いくらなんでも、無茶がすぎるわよ!?」

 

 鳴は驚く。狭い浜崎橋でインから差し込んでくるならともかく、アウトから抜きにかかってくるなど、普通は考えられない。

 

 だが―――それを成し遂げるからこその、黒翅神居である。

 

 「その走り方、俺の走り方をよく知っているからこそのものだろうが……チューナーになっても、俺なりに変化はしている。サーキット時代のままと思わないことだ、鳴」

 

 パワースライドをカウンターステアで抑え込みながら、180SXはアリストと横並びで浜崎橋を抜ける。

 インベタでコーナーを抜けたアリストはラインが破綻しないようにするためすぐには加速に移れない―――強心臓2JZの加速力を発揮する前に、180SXに前に出られてしまう。

 

 「……くぅー。ホント、なんてやつなの、アンタ………」

 

 鳴は前に出たマットブラックのボディを見つめて感嘆の声を漏らす。その漆黒のボディは、すでにもう1つの存在―――シアンのR33にターゲットを変えている。

 

 「さあ、三玖……このC1という難コースで、どこまで神居を抑えられるのかしら? 見せてもらうわよ」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 「浜崎橋で、外から抜いた……?」

 

 コーナーを抜けてからバックミラーを覗き見た三玖は、後ろの2台の並びを見て状況を悟る。そして鳴と同じく驚く。

 それほどまでに神居のやったことは信じがたいことなのだ。

 

 だが、驚いてばかりもいられない。そのリトラクタブルヘッドライトは、すでにこちらを睨みつけている。

 

 「コーナーで、いかに隙を見せず走れるか……か。今までそんな風にC1で抜かれる危惧なんてしたことないけど……」

 

 これまでにない状況。《青桜》が逃げ切るのではなく、抜かれるかもしれないという、滅多にないシチュエーション。

 だが―――三玖の顔には笑みが浮かんでいた。

 

 「―――やろう、R! ここC1で、どれだけあの《黒蜻蛉》を抑えられるか……挑もう!」

 

 ―――今回は俺らが挑戦者というわけか。良いじゃないか、やってやる―――。

 

 浜崎橋、それに続く2連S字を抜けた頃には、マットブラックのボディは真後ろにつけていた。UHC現役トップランナーとコーナリングの天才たる元レーサー、その戦いが幕を開ける―――!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 「俺の走り方を熟知しているわけではあるまい……だが、隙はないな。しっかりと最もスピードの乗るラインでコーナーを抜けていく。無理矢理抜きにかかる余地などない、か……」

 

 神居は冷静に前を走るR33を分析する。これまで何度も顔を合わせたことはあれど、バトルはこれが初めてだ。それゆえに、まずは後ろから様子を見る。

 

 「知らないが故に、最も抜かれにくいラインを取る……。まあ、常套手段だな」

 

 分析しながら、彼は頭を悩ませる。いくらコーナリングに長けた神居と言えども、トップスピードの速いR33をそれだけで抜きにかかるのは無謀、かつ危険だ。先程の鳴の場合はインベタで来るだろうと予測できたので良かったが、クセを知らない三玖に対してはそうした予測が効かない。

 それゆえに―――彼は勝負所を絞る必要があった。

 

 (生半可なコーナーではまず抜けまい……必ずブレーキングやアクセルオフによる減速を要するコーナー、この先には……)

 

 一周目のルートを思い返す。抜きどころは、どこにあるか。

 

 (千代田トンネル出口……は、ハーフアクセルで抜けられるな。大きな減速を必ずしも必要としない。となると……)

 

 1つ目に現れた候補を除外したその先に残ったものは―――。

 

 (………()()()。江戸橋前で新環状に向かうから、江戸橋での勝負は不可。む……)

 

 彼は千代田トンネル出口での勝負を考えかけたが、その直前に脳裏をよぎるものがあった。

 

 (……新環状に入ってすぐ。大きな左カーブとそれに続く狭い右カーブ………ここか。だが……)

 

 何もC1で抜く必要はない。千代田では仕掛けづらいことを考えれば、C1を抜けたあとにチャンスがある。それに違いはない。ただ、その後に問題がある。

 

 (そこで抜けたとして、すぐに直線区間だ。720馬力のRB26のフル加速などされたら、すぐに俺を抜き去っていくだろう)

 

 ここがUHCではなく現役の首都高であったなら、湾岸線とてまっすぐ踏めば良いだけのコースではなかった。進路を塞ぐ一般車を避けて300km/h近くで左右にスラロームしなければならないのだから。

 しかし、ここはすでに一般車など存在しようもない首都高の形をしたサーキット―――ほぼ直線区間の湾岸線は、パワーと直進安定性、そしてドライバーのスピードに対する度胸のみが勝負を決める。

 

 度胸に関しては差などない。なれば、パワーも直安性も上のR33が有利―――!

 

 (………仕方あるまい。少し無謀だろうが、千代田トンネル出口で仕掛ける準備をしておこう。なに、隙を見せたならばそこを突くだけだ―――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 「気を抜けない……。コーナーの度に後ろにヒヤヒヤしてるのがわかる……。これほどのプレッシャーを感じることは、そうそうない………」

 

 三玖は未経験のプレッシャーの大きさに耐えながら、ひとつひとつとコーナーを抜けていく。

 額から垂れてくる汗を拭う余裕など皆無。ハンドルから片手を離すのは、シフトチェンジの時のみ―――。

 

 (千代田トンネル……ここの出口から先は連続する高速コーナー……。急カーブではないけど、一切油断はできない)

 

 千代田トンネルを抜ける、出口の右コーナーに差し掛かった、その時だった。

 

 「―――――!?」

 

 一瞬ながらリアの荷重が抜け、うまくインを突けなかったのだ。そして、無論―――神居がその隙を逃すことはなかった。

 

 「く、ッ……!」

 

 壁にぶつけないようにRの姿勢を制御、それを終えた頃にはマットブラックの180SXはミラーから消え、自分の前を走っていた。

 

 「これは……うん、そういうことか……」

 

 三玖は突然起きた相棒の異変の原因にすぐ思い当たる。神居もまた、同じく。

 

 「そういや向こうは連戦だったな……タイヤがキテるか」

 

 三玖は偽物から続いての2連戦。しかも、偽物戦の時に内回りの千代田入り口で無茶なコーナリングをしている。タイヤが消耗していてもおかしくはないのだ。

 

 「なんだかハンデにつけ込んだようで悪いが………まあ、抜いてしまったからには、このまま離しにいかせてもらう」

 

 離れていく漆黒のボディ。気づけば、鳴の赤いアリストもRの前に出ていた。

 だが―――鳴のアリストも、そして三玖のR33も、一度前に出た180SXとの距離を詰めることはなかった―――。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 かくして、海ノ上SAには、神居の180SX、少し間を空けて鳴のアリスト、三玖のR33と続いて入ってきた。

 リアタイヤが垂れていたR33はストレートでもそのパワーを地面に伝えきれず、アリストを抜くこと叶わずだったようだ。

 

 そして―――。

 一同はキャロルと階、まだ20代前半と見られる男に、左目に傷を負った中年が若い女の子を泣かせているという(とてつもなく勘違い甚だしい)修羅場を目にする―――!




 神居の180SXもやっと本格参戦したことですし、今回は鳴、階、神居、そしてキャロルの愛車スペック紹介いたします!

赤青 鳴
―――元キャラ:MEIKO
年齢 28歳
使用車
トヨタ アリスト(JZS161)
カラー ダークレッドメタリック
エアロセットC
GTウィング(ストレート)
780馬力

赤青 階
―――元キャラ:KAITO
年齢 27歳
使用車
トヨタ スープラ RZ(JZA80)
カラー ブルーマイカメタリック
エアロセットD(5DX+以前はセットE)
車種別ウィングA
780馬力

黒翅 神居
―――元キャラ:神威がくぽ
年齢 28歳
使用車
日産 180SX(RPS13)
カラー マットブラック
エアロセットF
車種別ウィングC
550馬力

キャロル·マールス·ディーンハイム
年齢 25歳
使用車
マツダスピード アテンザ(GG3P)
カラー ダークピンク
 (両前ドアに2本のストライプ、左前は赤と青、右前は黄色と緑)
エアロセットC
カーボンボンネット
GTウィング(3D·2(トリプルフラップ))
オリジナルV4ツインターボエンジン『チフォージュ·シャトー』
800馬力


 キャロルのアテンザにある4本のストライプはオートスコアラー(赤…ミカ、青…ガリィ、黃…レイア、緑…ファラ)を表しています。
 これまで登場してきたシンフォギア勢(響、翼、クリス、マリア)の車にもファイアパターンやレーシングストライプ、トライバルといったステッカーの描写をしていましたが、あれはナシにしようか今考え中です。
 しかし、キャロルの4本ストライプだけは譲れない……! ここは変更する気はありません。

 また、イラストなど期待される方もいるようなのですが……はずかしながら、私、画力は絶望的です。それぞれの車の姿は、皆様の想像力にお任せする他なく……!
 そしてそれに際して、これまでは正直「読者の皆様方のご想像におまかせします」状態であったホイールに関して、ちゃんと設定をしていこうかな……と考えております。最近ホイールに興味湧いたので……。
 と言っても、ほぼBBSかRAYSになりそうなのですが。笑。

 これからも様々なバトルを繰り広げていく車たちの姿を、皆様と想像を膨らませながら書いていければと思います! それでは、また次回!
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