湾岸ボカロフォギア~story of urban highway circuit~   作:ヘリーR

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act.2「撃槍」

 深夜一時頃、海ノ上SA。

 まだまだ多くの走り屋で賑わっているところに、二時間ほど前、ここを出発した2台の車が戻ってきた。

 まだ耳に新しいRB26の音にロータリーサウンド。

 

 「おい、この音……あの2台が戻ってきたんじゃないか?」

 「ん?……ああ、本当だ」

 

 SAに入ってきたその音の主を見て、再び海ノ上SAは興奮の熱に包まれる。

 UHCの二大巨頭、《青桜》と《草薙竜》が戻ってきたのだ。

 

 2台は適当な場所に車を止め、中から三玖と恵実が出てくる。

 

 この二人、三玖と恵未は、容姿もかなり整っているため、二人が降りてくるとギャラリーは盛り上がった。

 

 「うおお!《青桜》の子超かわええ!」

 「《草薙竜》の子もかなり可愛いぞ!」

 「俺は《青桜》押しだな!」

 「いいや《草薙竜》だね!」

 

 二人はそんなのには慣れているのか、気にせずSAの喫茶店に向かう。

 手頃なカフェオレを二人とも頼み、空いてる席に座る。

 

 「やっぱダメかぁー、300㎞超えるとすごいナーバスになるんだよなぁ……三玖、どうだった?後ろから見てて、何か変わったところはなかった?」

 「ごめん、300㎞超えてからのナーバス感以外は何も…」

 「そっか……こればっかりは仕方ないかな。もうすぐ神居(かむい)も大阪の出張から帰ってくるって言うし、そのときに聞いてみるよ」

 「うん。その方が良いと思う。私、あんまりロータリー詳しくないし……。ねぇ、ところで…」

 「分かってる。あのエボ8のことでしょ?かなり速かったもんね」

 「『Gungnir』って銘打ってあったけど…初めて見るよね?あの速さだったら、もっと名前知られてても良いはずなのに」

 「聞いたことすらなかったね。いったい、何者なんだろう?」

 「全然分からない……明日、(めい)さんに聞いてみるよ」

 「うん、よろしく。こっちでも情報収集しとくね」

 

 そう言って、二人はそれぞれの帰路につくのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 翌日。三玖は自身のR33のチューニングを担ってもらっているチューニングショップ『ステップランブル』に来た。

 

 「…お、三玖じゃん。おひさー、元気してる?」

 「鳴さん、お久しぶりです。私はこの通りピンピンしてます」

 

 やって来た三玖にいち早く気づき出迎えに来たのはステップランブルの敏腕女社長(?)、赤青(しゃくじょう)(めい)だ。

 

 「あ、三玖ちゃん。珍しいね、こんな時間に来るなんて」

 「階さん、お久しぶりです」

 

 次にやって来たのは、鳴の弟、赤青 (かい)だ。

 この姉弟は、少し前までは『《赤獅子》《青獅子》コンビ』と呼ばれる凄腕のレーサーとしてサーキットに名を馳せていたが、UHCの完成する少し前に引退、チューナーへと転向した。

 レーサーとしても、チューナーとしても、『走り』にかける情熱は変わらない。

 

 「すみませんが、早速Rの点検をお願いして良いですか?」

 「よーし、お願いされたぞ」

 

 階は張り切って三玖のRのもとに点検工具を持って向かっていった。

 向かっていった階と入れ替わるように、ステップランブルの駐車場にシルバーのマツダ・ロードスター(NA6CE)が入ってきた。

 

 「あ、三玖だ~!久しぶり~!」

 「久しぶり、輪ちゃん。調子はどう?」

 「もう絶好調も絶好調!」

 

 ロードスターからウィンドウを開けてサムズアップするおてんばを思わせる、大きめのリボンカチューシャをしたショートで金髪の女の子は山吹(やまぶき)(りん)。三玖より2つ年下だ。

 

 輪がロードスターを停め、降りてきた。

 

 「(れん)くんの調子はどう?」

 「あたし以上に絶好調だよ!もうそろそろUHCに走りに行っても良いくらい!」

 「そっか、もう少しでみんな一緒に走れそうだね」

 「うん!」

 

 蓮とは、輪の双子の兄に当たる山吹蓮のことだ。

 

 「……ねぇ、三玖。前から気になってだんだけどさ」

 「??なんですか、鳴さん?」

 

 何を隠そう、三玖は―――

 

 「―――蓮のこと、好きなの?」

 「!!!!」

 

 三玖の顔が瞬間湯沸し器のごとく真っ赤になる。

 これが何を指し示しているかは、言うまでもないだろう。

 

 「い、い、いやいやいやいや、べべべべ別に、私はただ蓮くんの調子がちょっと気になっただけで、そんなことは―」

 「顔がすべてを物語っているわよ。正直なとこ、どうなのよ?」

 「むぅ……………」

 

 三玖が唇を尖らせて、紅潮した顔をうつむかせつつも目線だけは鳴を見上げる。

 かわいい。これは誰が見てもかわいい。

 こんな三玖を見ると、まるで妹のように抱き締めてあげたくなる鳴であった。

 そも、鳴に妹はいないのだが。

 

 「……はい。好きです」

 「よしよし、良い子良い子」

 

 まるですねた幼子を扱うように三玖の頭をポンポン叩く鳴。何も知らない人が端から見れば少し年の離れた姉妹に見えただろう。

 

 ……ただ、それにしては二人の体は成熟しているし、

 会話はもはや姉妹を通り越して親子のようだが。

 

 「……蓮くんには内緒ですよ。もちろん、他の人にも。ここの3人だけの秘密ですからね」

 「分かってる分かってる」

 

 と、秘密の会話が一段落した(?)ところで、階がRの点検を終えて戻ってきた。

 

 「見たところ、エンジン系の消耗も少ないし、ブレーキもしっかりしてる。駆動系統も滑らかだし、いつもUHCを走り込んでるとは思えないくらい綺麗なもんだよ。かなり大切に乗ってるね」

 「そりゃあ、大事な相棒ですから…」

 

 本当の走り屋とは、どれだけ走り込むとしても、決して車を乱暴には扱わない。

 走り屋にとって車は『相棒』。

 その心が欠けた者は、決して真の走り屋にはなれない。

 

 「………で、三玖?まさか点検だけが理由でここに来たんじゃないわよね?何か訊きたいことがあるんでしょう?」

 「さすがは鳴さん、鋭いですね」

 

 三玖は鳴が他の用があることを当てたことには驚かず、もう一つ―――本命の用事を明らかにする。

 

 「昨日、『Gungnir』と銘打たれた黄色いエボ8を見ました。その時、私はバトルに応じれる状態ではなかったので先に行かせましたけど、それだけで分かったんです――この車は速い、って。でも、その速さのわりに誰も知らないし、話を聞いたこともなかったので、情報入手のために、鳴さん達なら何かを知っているかも……と思い、今日ここに来た次第です」

 

 果たして、

 鳴と階の二人は、思うところがあるようだ――顎に手を当てて考えている様子。

 やがて、階が沈黙を破る。

 

 「『Gungnir』……ガングニール、撃槍、ねぇ………鳴姉さん、これって?」

 「ええ、たぶん、あなたの思っている通りよ……ついにキャロルが動き出した。そういうことと考えて間違いないでしょう」

 「……キャロル?」

 

 三玖は何のことだか分からない。

 

 「キャロル・マールス・ディーンハイム。私の大学時代の3つ下の後輩よ。階から見たら2つ年下ね。同じレースサークルに所属してたんだけど、あの子はすぐにチューニングの才能を発揮してたわね。かなりの腕前であることだけは保証できる」

 「へぇ……でもどうして、その、キャロルさんだって断言できるんですか?」

 「?ああ、そっか……確かにこれは、説明が必要ね」

 

 鳴は一旦顎に手を当てて考えてから、説明を始める。

 

 「キャロルには、仲の良い年下の子達がいてね、その子達が運転免許を採った暁には、その子達の車をチューンしてやりたいって。『Gungnir』は、多分その中の一人よ」

 「へぇ……でもなんでそうだって分かるんですか?」

 「ん、ああ……そうか……説明が難しいわね」

 

 鳴は数秒考えてから、再び口を開く。

 

 「私も階も、その子達にどんな過去があったか知らないけど、なんか、神話とかに出てくる武器の名前が好きだったのよ」

 「……で、その一人が?」

 「ええ――かなりガングニールを好んでいたわ」

 

 三玖の中ですべての話が繋がった。

 

 「もしかすると、他の子もこれからUHCに出てくるかもしれないわね………たぶん、車名ロゴの下に神話上の武器の名前とかが刻まれてるかもしれない。また似たような車を見かけたら、連絡ちょうだい」

 「分かりました」

 

 こうして話は終わり、三玖はRに乗ってステップランブルを出るのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 時間は遡ること七時間ほど前――つまり深夜3時頃。

 《青桜》と《草薙竜》を目撃、バトルを仕掛けようとするも2台の意思を察して抜いていったエボ8――《ガングニール》は、その後も一時間ほどUHCを走ってから、自らの住まう家へと帰ってきた。

 家の駐車場に車を停めると、そのエンジン音に気づいたのか、一人、《ガングニール》の主を迎えに家から出てきた。

 

 「おかえり、響」

 「ただいま、未来。もしかして、私を寝ずに待っててくれてたの?」

 「当たり前でしょ?響は人を心配させるようなことしかしないんだから」

 「ええ~?そんなことないよぅ。……でも、まあ、確かに今日は遅かったかも」

 

 エボ8――《ガングニール》から降りてきたライトブラウンの髪の少女は、立花(たちばな)(ひびき)

 その響を迎えに出てきた黒髪の少女は、小日向(こひなた)未来(みく)

 二人はかなり仲の良い幼馴染みだ。

 その仲の良さは、もはや親友を通り越して恋――否、夫………いや、何も言うまい。

 

 「そんなことより聞いてよ未来~。今日ね、いきなり《青桜》と《草薙竜》に会ったんだよ!」

 「良かったじゃない。で、仕掛けたの?」

 「うん。だけど、なんか事情がある感じで、受けてもらえなかった。また近いうちに会ったら仕掛けてみる」

 「そう。……あんまり、無理はしないでね」

 「大丈夫。でねでね、2台を見たとき……」

 「はいはい。外は寒いから、とりあえず家に入ろ?」

 「あ、そうだね。ごめん、未来」

 「それにしても、ずいぶん楽しかったんだね。みんなにも話してあげないと」

 「うん!」

 

 響の心は、楽しみと喜びで満たされていた。




自分は少し終わり方が下手みたいです。
そこは許してくださいm(__)m

 響と未来、キャロルに関しては戦姫絶唱シンフォギアを参照願います。

 今回の新キャラとして、赤青姉弟が登場しました。
 元ネタはMEIKOとKAITOです。
 それから山吹輪、蓮。蓮はまだ名前のみの登場ですが、本格的な物語への参加を楽しみにお待ちください。
 多分、輪の本格的な参加も蓮と同時期になるかもです……。鏡音リン・レンファンの皆様は、もう少しの辛抱をお願い致しますm(__)m
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